文部大臣諮問理由説明
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中央教育審議会

  


文部大臣諮問理由説明


平成7年4月26日

  本日は,御多忙中のところ,御出席を頂きましてありがとうございます。
  また,このたびは,皆様方に第15期中央教育審議会委員の御就任をお願い申し上げましたところ,快くお引き受けいただき,厚く御礼申し上げます。
  申すまでもなく,中央教育審議会は,我が国の教育,学術,文化に関する基本的な重要施策について御審議を頂く最も重要な審議会であり,昭和28年に発足して以来,これまで29回にわたって,我が国の文教行政に関する重要施策について数々の貴重な答申を行ってこられました。文部省といたしましても,これらの答申の趣旨に沿ってこれまで各般の文教施策を進めてまいったところであります。
  さて,明治以来今日まで,我が国の発展に当たって,教育が大きな役割を果たしてきたことはだれしも異論のないところであると思います。とりわけ,戦後にあっては,能力に応じて等しく教育の機会を保障するという施策が進められ,教育熱心な国民意識や高度経済成長もあずかって,いまや高等学校に進学する者は同一年令の96.5%であり,大学・短期大学についても約4割の者が進学するという状況に至っております。
  しかしながら,今日,受験競争の過熱化,いじめや登校拒否など様々な問題に直面するとともに,学校週5日制の今後の在り方や青少年の科学技術離れへの対応などについて検討が求められております。さらに,21世紀に向けて,国際化,情報化,科学技術の発展,高齢化,少子化や経済構造の変化など,我が国の社会は大きく変化しており,このような変化を踏まえた新しい時代の教育の在り方がこれまで以上に強く問われてきております。
  このような状況にかんがみ,このたび中央教育審議会を再開し,21世紀を展望した我が国の教育の在り方について諮問することといたした次第であります。
  次に,諮問いたしました事項に関し,検討していただきたい点について御説明申し上げます。
  まず第一は,今後における教育の在り方及び学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方についてであります。
  今日,受験競争の過熱化,いじめや登校拒否の問題,子どもたちの自然体験や社会体験の不足,核家族化や少子化による社会性育成の機会の減少など,豊かな人間形成を育(はぐく)むべき時期の教育に様々な課題が生じており,このような課題に適切に対応し,心身ともに健全な子どもたちの育成を図ることが,今最も求められております。
  そのためには,子どもたちの人間形成は,単に学校のみならず,家庭及び地域社会全体を通して行われるという教育の基本に立ち返ることが何よりも肝要であると考えます。
  このようなことから,21世紀の教育はいかにあるべきかということを展望しつつ,学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方について検討していただきたいと思います。
  また,これに関連して,平成4年9月から導入し,今年度から月2回実施している学校週5日制の今後の在り方について,検討をお願いしたいと存じます。
  第二は,一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の問題についてであります。これまで我が国の教育はともすれば画一的であると指摘されてまいりましたが,近年はこのような反省に立ち,一人一人を大切にしつつその個性を伸ばす教育を重視するという観点から,高校改革,進路指導の改善,大学改革等を図ってまいりました。今後,この問題はますます重要な課題となると考えております。
  こうしたことから,一人一人の能力・適性に応じた教育を今後いかに進めるか,すなわち我が国の学校教育の多様化・弾力化を今後どう進めていくべきか,また,学校間相互の接続についていかに改善し,さらには,過度の受験競争の現状をどう改善していくべきかということについて検討をお願いしたいと存じます。
  なお,これに関連して,特定の分野において稀(け)有な才能を有する者の教育上の例外措置に関しても,大学レベルの教育を受ける方策などその才能を伸長させる方途について,幅広く御検討いただきたいと存じます。
  第三は,国際化,情報化,科学技術の発展等社会の変化に対応する教育の在り方についてであります。
  教育には時代を越えて変わらないという側面もありますが,時代や社会の絶えざる変化に積極的かつ柔軟に対応していく必要もあります。とりわけ21世紀に向けて,我が国の社会が,国際化,情報化,科学技術の発展等大きく変化しているとき,このような変化を踏まえた新しい時代の教育の在り方が強く問われております。
  特に,国際化が進展する中で国際社会において信頼され,また,国際社会において進んで活躍していく日本人,すなわち「世界の中の日本人」をどう育成していくか,また,情報革命ともいうべきマルチメディア時代を迎えつつある中で教育はどう対応していったらよいか,さらには日本の今後の発展のため,いわゆる青少年の科学技術離れにどう対応し,また,創造性のある人間をどう育成していくべきかなど,様々な課題がありますが,これらについて御検討を頂きたいと考えております。
  以上,御検討をお願いしたい点について申し上げましたが,これらの点に関連する事項についても,幅広い視野の下に忌憚(たん)のない御意見を頂戴したいと存じております。
  今後,我が国が,創造的で活力があり,かつ,ゆとりと潤いのある社会を築いていくためには,何よりも,次代を担う子どもたちの心身ともに健全な育成を図ることが重要であり,その意味で21世紀を展望した教育の在り方は,国政の礎とも言うべき重要な課題であります。
  会長,副会長をはじめ,委員の皆様におかれましては,以上のような趣旨をおくみ取りいただき,十分御審議くださるようお願い申し上げまして,私の御挨拶といたします。






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