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中央教育審議会

  


第3部  国際化、情報化、科学技術の発展等社会の変化に対応する教育の在り方


第1章  社会の変化に対応する教育の在り方

  これからの教育の在り方については、既に第1部(3) で述べたように、我々は、これからの社会の変化は、これまで我々が経験したことのない速さで、かつ大きなものとなるとの認識に立って、豊かな人間性など「時代を超えて変わらない価値のあるもの」(不易)を大切にしつつ、「時代の変化とともに変えていく必要があるもの」(流行)に的確かつ迅速に対応していくという理念の下に教育を進めていくことが重要であると考える。
  国際化、情報化、科学技術の発展、環境の問題などのそれぞれに対する教育の在り方については、第2章以下で述べることとするが、これからの社会の変化に対応する教育の在り方の基本は、第1部で述べた、[生きる力]の育成を目指して教育を進めていくことが重要であるということである。
  すなわち、既に述べたように、これからの社会は、変化の激しい、先行き不透明な、厳しい時代であること、そのような社会において、子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性であり、そして、また、たくましく生きていくための健康や体力である、と考えるのである。
  社会の変化に対応する教育の在り方として、我々が次に指摘しておきたいことは、国際化や情報化などの社会の変化に対応し、これらの新たな社会的要請に対応する教育を行っていくことは重要なことではあるが、初等中等教育段階は、これらの変化に主体的に対応できる資質や能力の基礎を、子供たちの発達段階を十分に考慮に入れて育成する必要があるということである。
  そのためには、教育内容を厳選し、[ゆとり]のある教育課程を編成するとともに、指導方法の改善に努め、学校教育の在り方を、これまでの知識を教え込むことに偏りがちであった教育から、子供たち一人一人の個性を尊重しつつ、上述の[生きる力]をはぐくむことを重視した教育へと、その基調を転換させていくことが必要である。
  第2部第1章(1)[2] でも指摘したように、学校教育に新しいものを取り入れる場合には、子供たちの発達段階を十分に踏まえ、基礎・基本に絞り込むとともに、社会の変化によって必要性が相対的に低下したものは、思い切って厳選する必要がある。学校教育は限られた時間の中で展開されるものであることを忘れてはならない。
  また、指導の方法についても、子供たちの、感動を覚え、疑問を感じ、推論するなどの過程を大切にしていく必要がある。どの教科についても、ただたくさんのことを覚え込むことや、与えられた問題をできるだけ多く解くことに終始する学習では、学ぶことの面白さは分からないし、子供たちに、学習への興味や関心はわいてこない。子供たちが試行錯誤を繰り返し、何度も失敗を重ねた末に、初めて味わうことのできる「発見する喜び」や「創る喜び」などを体験させることが大切なのである。
  そのようなことからも、次に指摘したいことは、社会の変化に対応する教育を適切に行っていくためには、各学校において、各教科、道徳、特別活動などについて相互に十分に連携を図ることや、カリキュラム全体を工夫しながら教育活動を進めることが大切であるということである。例えば、インターネット等の国際的な情報通信ネットワークを活用した教育活動を考えてみると、それは、単に情報に関する学習に資するというだけでなく、英語が使用言語であれば英語のコミュニケーション能力の向上に資するものでもあるし、また相手との情報交換等を通して、相手の国の文化や歴史などの学習にも資することとなる。こうした活動は、外国語の時間に行ったり、社会科の時間に行うことも考えられ、狭く情報の教育としてのみとらえる必要はない。関連する教科などが十分に連携・協力しながら、こうした教育活動を展開していくということが重要なのである。
  このような工夫の下に教育活動が展開されるとすれば、子供たちは、情報、外国語、国際理解などを有機的に関連付けて学習できることとなり、その学習も、一層多彩で有効なものになっていくと思われる。
  同様な学習の例は他にも様々に考えられるが、いずれにせよ、教科間の連携・協力、さらには、教科の枠を越えた横断的・総合的な教育活動の展開が、必要かつ有効であると考えられる。
  また、社会の変化に対応する教育を充実したものとするためには、単に学校だけでなく、学校・家庭・地域社会が相互に連携し、それぞれが適切に役割分担を果たしながら、全体として教育が行われるということが重要である。特に、子供たちの身近なところに、様々な学習の機会があって、子供たちが学校での学習を基礎に、自由な発想でそれを発展させ得るような学習環境を整えることは極めて大切なことである。そのためにも、社会教育施設の整備や社会教育関係団体の活動などの一層の充実が求められるところである。また、社会の変化に対応した教育をより豊かに、多彩に行っていくためには、学校における教育活動においても、こうした地域の施設や団体の活動との連携をさらに積極的に図っていく必要があると考える。
  我々は、社会の変化に対応する教育を考えるに当たっては、以上のような点が重要と考えた。
  このような考えを基本に置きつつ、社会の変化の中でも特に教育に大きな影響を与えると考えられる、国際化、情報化、科学技術の発展、環境の問題を取り上げて、これらに対応する教育の在り方について、以下に述べることとする。これらを含め、全体として教育活動を展開していく場合には、学校や地域の実態、子供たちの発達段階等を踏まえるとともに、第2部第1章でも指摘したとおり、教育内容を厳選し、子供たちが自ら学び、考えることの大切さを忘れてはならない。また、国際化、情報化、科学技術の発展、環境の問題と、それぞれに対応する教育の在り方を個別に述べているが、言うまでもなく、これらの変化は、相互に密接に関連しており、これらに対応する教育の在り方について考えるに当たっても、相互の関連を十分踏まえることが必要である。



(大臣官房  政策課)




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