【意欲を持って自立への素養や力量を養う青少年期】 |
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青少年期とは、好奇心にあふれ、希望に満ち、失敗や挫折を繰り返しつつもそれらに屈することなく前向きに挑戦し続け、そうした試行錯誤の中で意欲を持って自立した社会人の基礎となる素養や力量を培う時期である。
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現代の青少年の中にも、成績や進路に悩みつつも将来の夢を自分なりに抱き、分からないことをもっと知りたいという意欲を持ち、スポーツや芸術など多様な趣味に打ち込む姿がみられる。また、友達や家族等との人間関係を大切にしつつ、仕事に対して「今の職場が発展するように進んで与えられた以上の仕事をしたい」と考え意欲的に取り組む者も少なくない。
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【意欲を持てない青少年の増加への懸念】 |
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しかしながら近年、学習意欲や勤労・就労意欲の低い青少年がみられ、このような青少年が増えつつあるのではないかという懸念がある。また、学習や労働といった具体的な対象への意欲の減退だけでなく、成長の糧となる様々な試行錯誤に取り組もうとする意欲そのものが減退しているのではないかとも懸念されている。
その背景には、青少年の自己肯定感の低さや、「大人になりたくない」という現状への安住志向、慢性的な疲労感やあきらめ、集中力や耐性の欠如がみられるという指摘もある。
加えて、青少年自身の意識に、将来に備えるよりも現在の生活を楽しみたいという傾向や、負担感や不安感、自信のなさから大人になりたいと思わない傾向がみられることを示す調査もある。
文部科学省が平成17年に全国各地の学校で実施したスクールミーティングにおいては、保護者や教職員から、外で遊ばなくなりテレビやゲームの時間が長いこと、睡眠時間が少ないこと、実体験が少ないことなどの青少年の生活の変化が指摘された。また、我慢できずにすぐにあきらめる傾向があること、主体性がなく受け身であること、学習意欲が低下し基本的な生活習慣が身に付いていないこと、基礎学力、コミュニケーション能力、体力が低下していることなどが、青少年の問題点として挙げられた。
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現代の青少年は、上昇への志向を持たなくても生活が可能な豊かな社会に生きている。意欲が減退していると懸念される青少年の傾向は、こうした現実への適応能力が高いことの現れとみることも可能かもしれない。しかし一方でそれは、青少年が大人になることへの不安を抱き、変化が激しく不確定な未来から逃避しようとしていることの現れとも考えられる。
なお、こうした現状への安住志向といった青少年の傾向は、日本固有の問題ではなく海外先進諸国においても同様の傾向がみられるとの指摘もある。
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わが国の高校生は、諸外国と比較して学ぶ意欲や学習習慣に課題がある。 |
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OECD(経済協力開発機構)
『生徒の学習到達度調査(PISA)平成15年調査』 |
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中高生は、諸外国と比較して将来志向の生活意識を持つ者が少なく、親世代と比較して将来よりも今の生活を重視する者が多い。 |
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財団法人一ツ橋文芸教育振興会、財団法人日本青少年研究所
『高校生の友人関係と生活意識調査報告書』(平成18年) |
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NHK放送文化研究所
『中学生・高校生の生活と意識調査』(平成15年) |
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中高生の半数以上は早く大人になりたいとは思わず、大人になることへの負担感や不安・自信のなさを感じている。 |

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上図で「そうは思わない」と回答した者について
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NHK放送文化研究所
『中学生・高校生の生活と意識調査』(平成15年) |
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【意欲を持てる青少年と持てない青少年の二分化への懸念】 |
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青少年の意欲に関しては、意欲を持てる青少年と持てない青少年に二分化しているのではないかという指摘もある。具体的には、青少年の間に運動する者としない者の二分化が近年目立っており、それらが体力の差に影響していることや、学校外で長時間学習する者と全くしない者に二分化する傾向がみられること、自然体験の多い青少年は生活体験やお手伝いにも積極的に取り組んでいるが、逆に何事にも意欲を持って取り組むことなく漫然と過ごしている青少年もみられることなどが指摘されている。
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【すべての青少年が意欲的な生活を送るために】 |
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ここで我々は、例えば意欲の低い青少年が増加していることをとらえて、青少年全体を一律に問題視することは慎むべきであるが、青少年の意欲は外面に現れにくいためにその実態の把握が難しく、それ故にこれらの懸念が表明されているという事実に着目し、青少年の実像をとらえるように努めることが重要であると考える。
我々は、すべての青少年が意欲的な生活を送ることを願っている。このため、意欲を持てない状況にある青少年に対して、その原因や背景を正確にとらえた上でその改善方策を示すとともに、意欲的に生活している青少年の意欲をさらに高める方策を検討すべきであると考える。
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運動部やスポーツクラブに所属する者としない者では、体力・運動能力に差が見られる。 |
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文部科学省
『体力・運動能力調査報告書』(平成12年) |
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成績等が下位になるほど、家庭学習を「ほとんどしない」割合が増え、学校段階が上がるにつれ、家庭学習をする者としない者に二分化する傾向がある。 |
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成績(小・中学生)は、国語・算数(数学)・理科・社会・英語(中学生)の自己評価の合計点によって三区分し、高校については偏差値によって三区分したもの。 |
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ベネッセ教育研究開発センター
『子ども生活実態基本調査報告書』(平成17年) |
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