空地・運動場に関する特区制度の全国化について(議論のまとめ)

(1)大学のキャンパスに求められる機能・役割について


大学分科会(大学教育部会)では,今回の特区制度の全国化の検討に関連して,大学のキャンパスに求められる機能・役割を以下のとおり取りまとめた。

  •  キャンパスは,質の高い教育研究活動や,学生支援,学生の発意に基づく様々な活動のために必要な空間を保障するもので,知的,道徳的及び応用的能力を展開させ,豊かな人間性を涵養するために必要な大学の構成要素である。具体的には,
    • 質の高い授業を通じた広い知識と高い専門性を育む教育研究活動を支え,学生の学修の定着を図り,高度な学術研究を行う空間として,
    • 多様な資質能力と興味関心,背景を有する学生と教職員等の当該大学の構成員が,集団又は個人で,多様な活動や交流を行う全人的な人格形成を促すために必要な空間として,
    • 開かれた大学として,地域の住民など,学生と教職員以外に開かれた公共性のある空間として,の機能・役割がある。
  • 大学は,幅広い年齢層の多様な学生に教育機会を提供しており,その際,それぞれの学習者のニーズを踏まえた学習環境等を整備している。その中で,学士課程や短期大学の課程の教育については,20歳前後の学生が多く,初等中等教育までの基盤を踏まえ,学生の人格形成機能や生涯にわたる学習の基礎を培うことが重要であり,そのためにも,学修の定着や多様な活動を可能とする空間を保持するという観点が一層求められる。
     
  • 構造改革特別区域推進本部決定による空地・運動場要件の撤廃を行う特区の全国化に際して,空地及び運動場を設置しなくてもよいとする場合は,空地及び運動場を含むキャンパスの機能・役割の意義等を踏まえると,あくまで例外的なものとして考えるべきである。
    空地及び運動場を設置しない場合は,予防措置が求められることとなるが,その場合においても,教育研究の場にふさわしいキャンパスを備えることの重要性を認識した上で同等以上の代替措置を講じること及びその情報が公表されることが確実に担保されていることが必要である。
     
  • 我が国の大学の質保証は,国全体の規制改革の流れの中で,事前規制(設置認可)から事後チェック(認証評価)に重点を転換し,大学間の競争の中で社会からの評価と選択を受ける仕組みを設け,大学の機動的かつ柔軟な対応を可能としながら,その質の保証を図ることとしている。大学設置基準において定められた大学を設置するのに必要な最低の基準を確保し,この基準より低下した状態にならないようにすることはもとより,各大学においては,その教育内容・方法の不断の改善を図り,大学の質的充実を図るとともに,大学認定・認証の仕組みを通じて教育の質の確保が図られねばならない。
    大学分科会としては,今回の空地・運動場に関する特区制度が全国化された後,大学のキャンパスに求められる機能・役割を十分に反映した空地・運動場に関する大学設置基準の運用となっているか,別紙の留意事項を踏まえた不断の確認を行うとともに,必要に応じて大学への支援の在り方も含めて改善のための検討を行い,公的質保証の徹底を図ることとする。

空地・運動場に関する特区制度の全国化に際して留意すべき事項について

(1)代替措置の取扱いについて
大学等については,引き続き,空地を校舎の敷地に有し,運動場を設けることとすることを原則とすること。「法令の規定による制限その他のやむを得ない事由」により空地を校舎の敷地に有しない場合,運動場を設けない場合とは,例えば,大学,研究所,民間企業等が集積する拠点として整備され,既に高度に土地が利用されていること等の理由により,空地及び運動場を設けるために必要な面積の土地の取得が,物理的に事実上困難であることや,土地の取得に関して法令の制限があること等といった,客観的に見てやむを得ない特別な理由がある場合に限られること。
特に学士課程や短期大学の課程の教育については,学修の定着や多様な活動を可能とする空間を保持するという観点が一層求められることに留意する必要があること。

(2)大学等の教育・研究への配慮について
空地を校舎の敷地に有しない場合と運動場を設けない場合のいずれともに,代替措置を適切に講じることにより,当該大学等の教育・研究に支障が生じないものとすること。また,大学等の教育・研究に支障が生じないとは,当該大学等における各学部・学科の教育研究上の目的を達成することが可能であることを意味し,特に体育の授業を行う場合には,運動場を有する必要性が高いものであり,授業に支障が生じないような特段の措置が必要であること。

(3)空地の代替措置について
空地の代替措置については,授業の空き時間により一時的に使用されていない教室の提供ではなく,学生が常時使用可能な,休息,交流その他のための専用の施設を備えること。当該施設の採光等の施設環境や利用時間等の利用形態については,当該大学等の状況に応じて,できる限り開放的であること。ラウンジに備えるべき机や椅子,用具類を収納するロッカーなど学生の様々な活動に有用な設備を備えること。例えば昼休みなど人が集中する特定の時間においても,基本的にすべての学生が昼食をとることに不自由の無いなど,余裕のある空間を確保すること。

(4)運動場の代替措置について
運動場の代替措置として,やむを得ず公共または民間のスポーツ施設を学生の利用に供する場合においても,学士課程や短期大学の課程など,それぞれの課程で学修を行う学生の特性に応じて,学生が希望する球技等の様々な運動ができるよう配慮するとともに,経済的負担については,自己所有の場合と同等の環境を確保できるよう,利用料等について無料とすることが望ましく,やむを得ない場合には,これに準ずるようできる限り低廉な価格とするなど,十分な軽減を図ること。

(5)代替措置の状況の公表等
空地の代替措置及び運動場の代替措置の状況については,学校教育法施行規則第172条の2第1項第7号に定める「校地,校舎等の施設及び設備その他の学生の教育研究環境に関すること」にあたり,代替措置を適用する場合には,当該代替措置の状況を速やかに公表することが学校教育法上求められること。また,当該情報の重要性に鑑み,代替措置を講じていることを入学を希望する者等が的確に認識できるよう,インターネット等の形式により迅速かつ丁寧に周知を図ることとすること。
また,空地の代替措置及び運動場の代替措置を適用した場合,適切な代替措置であるか学生にアンケートを実施するなど検証を実施し,必要な改善を図ることが望ましいこと。

(6)施行について
平成25年1月1日施行とすること。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

-- 登録:平成24年03月 --