4.制度改正が円滑かつ実効性をもって機能するために

1.各大学における自主的な検討と取組

 現行制度においては、大学教員の職の在り方や講座制・学科目制等の教員組織の在り方は、学校教育法や大学設置基準等の法令によって、大学制度としての共通の大枠が定められ、それらを踏まえつつ、各大学が、自らの権限と責任において、具体的な各教員の役割や、教授、助教授、助手等の各教員間の関係、教員組織の具体的な編制等を定める仕組みとなっている。
 本報告が示す制度改正案は、長年、助手等に係る見直しが求められてきた経緯を踏まえたものであるが、その手法は、各大学が、それぞれの理念や実情に基づいて多様に教員組織を設計することを可能にするという大学の自主性・自律性の確保という観点から、教員組織に関する大枠である学校教育法や大学設置基準等を改めようとするものであり、基本的に、各大学の裁量が現行制度以上に広がることを意図している。すなわち、准教授や助教について、教育研究を行うことを主たる職務とする職であるという位置付けを明確化し、その上で具体的な各教員の関係や組織編制等については各大学の裁量に委ねようとするものである。
 したがって、本制度改正によって、従来、行われてきた組織的な体制や教員相互の連携協力に支障が生じるような運用に陥ってはならないことは当然であり、また、既に述べたように、各大学や各分野の実情に応じて、連携協力や指導・支援、診療等の職務については必要に応じて指揮監督が必要であることは言うまでもない。
 この制度改正が円滑かつ実効性をもって機能するためには、各大学が、制度改正の趣旨を活かして自ら創意工夫を凝らし、積極的に取り組むことが必要である。本検討委員会としては、各大学において、真摯な検討と取組が行われ、教育研究の活性化等が図られることを切に期待する。

2.各大学において制度改正が実施されるまでの期間

 これまでも、大学の中には、助手制度の在り方等の大学教員の職の在り方や講座制・学科目制等の教員組織の在り方について検討を重ね、既に種々の取組を行っている例も多々見られる一方で、多くの点で学内における検討を待つ例もあるなど、検討状況や取組状況は各大学によっても異なる状況が見られる。また、分野によっても実情が異なっており、検討や取組に必要な時間も異なるものと考えられる。
 このため、本制度改正が実施されるには、このような多様性を踏まえ、各大学が所要の検討や取組を行えるよう、適切な準備期間を置くことに配慮することが望まれる。
 これに関連して、今回、意見募集において各大学や教職員から寄せられた意見等を見ると、学校教育法上の大学教員の職の在り方と、各大学における個々の教職員の具体的な処遇(例えば、従来からの経緯や位置付けを踏まえて、給料表をどうするか、定年の取扱いをどうするか等)の関係についての理解が必ずしも十分浸透していない状況も見られた。文部科学省においては、学校教育法や大学設置基準等の規定は大学制度としての共通の大枠を定めたものであり、個々の教職員の具体的な処遇は、各大学において、関係法令の諸規定を踏まえつつ、各々の方針や実情、経緯等を勘案して定めるものであること等について、各大学における今後の検討や対応に資するよう、情報の提供や運用等に関する説明に十分意を用いることを求めたい。

3.助教等若手教員の活躍を通じた教育研究の活性化促進のための環境作り

 各大学において、今回の制度改正を踏まえた取組が、若手教員の活躍等による大学全体の教育研究の活性化に、一層つながりやすくなるよう、支援措置の充実を図っていくことが求められる。
 例えば、研究教育拠点の形成支援に係る審査において、助教等若手教員が活躍できる環境作りを考慮すること、助教等に就いた若手教員が自らの資質能力を十分に発揮できるように、若手教員が利用できる競争的資金(研究費)の充実やスタート・アップも含めた教育研究活動のために必要な環境(研究費、設備の確保等)の整備、若手教員に配慮した組織的な教育研究を展開するための施設マネジメントへの支援等について、検討していくことが望まれる。
 本検討委員会としては、学校教育法や大学設置基準等の制度改正、各大学における自主的な教員組織の編制、若手教員の活躍を通じた教育研究の活性化を促す支援措置などが相互に相俟って、今回の改正が一層実効性あるものとなり、大学において質の高い教育研究活動が展開されることを強く期待する。

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