参考資料 「2004~2005年政策・制度要求と提言」 教育政策

「我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」意見・関係箇所抜粋

背景と考え方

  • (3)国民所得や国民総生産に対する公教育費の比率は、年々低下傾向にあり、また、日本は、OECDのなかでも教育に対する公共支出の比率が低く、特に高等教育では29カ国中最低である。こうしたなかで、公立小・中学校の校舎等の老朽化が進んでいる。
     また、高等教育機関への進学率が高まり、一部の難関大学を除いて定員割れの大学が急増するなど、大学の二極分化が進んでいる一方、難関大学に入学する学生とその保護者の所得との相関関係が顕著になるなど、教育の機会均等が阻害されつつある状況も指摘されている。
  • (4)額に汗して働くことが軽視され、子どもたちの勤労観や職業観は希薄化する一方、もっとも身近な大人である保護者の働く姿を見る機会も少ない。また、小学校・中学校・高校から高等教育機関までの、子どもの成長段階に応じた、系統的な勤労観・職業観を育む教育やキャリア教育は不十分である。
     こうしたなかで、新卒者の求人が大幅に減少するという雇用情勢や、若年層で“自由・気楽志向”を追求する者の増加と勤労観・職業観の希薄化が進んでいる中で、フリーターが約200万人と推計されているなど、増加傾向が続いている。
  • (5)日本は、年齢主義による入学・就職システムが根強いため、学校教育での学び直しや職業生活の再チャレンジができにくい状況にある。また、学校で職業能力の開発やキャリア教育がほとんど行なわれず、職業能力は企業に入社後に社内で訓練するという状況が長い間続いてきた。生涯学習を進めていく上でも、多様な経験を積んでから、再び学校等で学び直しができ、それらが入学や就職で正当に評価される社会のしくみ作りを進めるなど、“学びの場”の多様性を拡げる必要がある。
     そのためにも、入試制度や入社制度等の改革を通じて「学歴社会」から「学習歴社会」へ転換し、学校での勤労観・職業観を育む教育や、すべての人々が、生涯を通じて自らの意欲と能力に応じた職業教育が受けられるようにする必要がある。

重要な課題

  • (2)子どもの成長段階に応じて、小学校・中学校・高校から高等教育機関まで、系統的な男女平等教育、勤労観・職業観を育む教育やキャリア教育を進める。

要求の項目

8.ものづくりなどの実体験を通じて、勤労観・職業観を育み、キャリア教育を充実させる

  • (1)子どもの成長段階に応じて、小学校・中学校・高校から高等教育機関まで、系統的に勤労観・職業観を育む教育やキャリア教育を進める。
  • (3)学校教育のなかで、将来の生活設計や経済的自立を前提とした、生活経済や税・社会保障等に関する教育を充実させるとともに、職業生活と家庭生活の両立支援の情報等を提供する。
     また、男性の多い職務への女性の進出、女性の多い職務への男性の進出を積極的に推進するため、学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取り扱いなどの関連する行政の連携を進める。
  • (4)関係省庁は連携し、各企業が社員数に対して一定率の学生を受け入れるインターンシップ制度(企業等での実習制度)を全国的に確立する。また、一定期間・社員の一定率以上のインターンシップを実施した企業に対して税制上優遇するなど、国が支援策を行う。
  • (5)高校・高専・短大・大学等の在学中にインターンシップ制度への参加を促進するとともに、インターンシップの期間を単位として認定する制度を導入・拡大する。
  • (6)高校・高専・短大・大学等での職業教育の充実をはかるため、学校・大学運営に、企業経営者や労働組合等が参画するしくみをつくり、仕事や産業の現場に即した教育実践を進める。
     また、産業界の技術者等の外部講師を積極的に活用し、実践的な職業教育を充実する。
  • (7)高校・高専・短大・大学等では、公共職業安定所に配置される求職者に対する能力開発支援や適職・転職支援を専門的に行う「キャリア・アドバイザー」とも連携して、本人の希望・意思を尊重した進路指導を進めるとともに、学校や進路指導の教師と公共職業安定所との連携を強める。
  • (8)既存施設等も活用し、学生や不登校生徒、フリーターなどの青少年が、多様な文化に触れるとともに、職業体験・訓練や多様な学びが経験できる「青少年文化・職業体験センター(仮称)」を自治体ごとに設定し、実社会とふれあえる場とする。

9.入試制度を改革し、「学習歴」を重視した多様性のある学びの場を構築する。

  • (2)教育行政における「公立・私立学校の共通ルールづくり」を進める。
     また、私立学校が、日本の公教育を担う重要な役割を果たしていることをふまえ、私立学校への公費助成制度を拡充するとともに、私立学校の財務状況などの情報公開を徹底する。
  • (3)入試制度は、「ゆとり教育」や総合学習の導入等の新学習指導要領にふさわしい、理解力・思考力・創造性・問題解決能力等の学力の質を重視した入試内容に抜本的に改革する。
  • (6)大学の生涯学習社会への対応を強化するとともに、国際水準の創造的な教育・研究機関としての機能の回復をはかる。現在の、2年制短期大学と4年制の大学を改め、3年制のコミュニティーカレッジと、4~6年制のカレッジに再編成する。
  • (7)大学の入学選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を進めるとともに、学生定員を弾力化し、できるだけ志望大学に進学できるようにする。
     そのため、大学入試センター試験を廃止し、教科ごとに積み上げができる高校卒業程度の学力を認定する絶対評価による「大学進学資格制度(年複数回実施)」を設け、大学進学の基礎資格とする。
     そして、有資格者が特定の大学に集中した場合は、面接と論文による選抜を行う。
  • (8)大学合格後、ボランティア活動や労働体験、海外留学等を大学入学前に一定期間経験できる制度を導入する。
     また、大学の前期課程(1~2年次)では、学生が試行錯誤や多様なチャレンジを通じて、自分にふさわしい高等教育・進路を選択できるよう、大学間での単位互換を拡大するとともに、休学制度の拡充や他学部・大学への転学制度を拡大する。
  • (9)大学は、社会各層・地域・産業界との連携・交流を通じ、起業教育など、大学に対する社会ニーズにふさわしい高等教育を実践するとともに、厳格な成績評価による卒業生の質の確保に努める。特に、理工系大学・大学院は教育・研究水準の確保・向上を促すため、研究体制を抜本的に充実するなどの環境整備を進める。
     また、大学関係者以外の民間の第三者による横断的な大学評価機関を設置し、学生による大学教員の評価システムを整備する。
  • (10)大学は、社会人特別選抜枠の拡大等の編入制度の弾力化、夜間大学院の拡充、科目等履修制度・研究生制度の活用、通信教育・放送大学の拡充を進め、社会人の受け入れを促進する。また、公開講座を拡充するとともに、施設の地域開放を進める。
     特に、連合・労働組合と大学との組織的な協力関係づくりに取り組み、労働運動に関わる講座等を大学に開講するなど、成人教育の一環として労働者教育や労働運動のリーダーづくりにつなげる。
  • (11)保護者の所得や本人の学業成績に関係なく、希望に応じて奨学金を貸与する公的な奨学金制度を充実する。また、学ぶ意欲とともに学力などの一定の基準を満たした学生に対して、無償給付の奨学金制度を創設する。
  • (12)企業・官公庁の人事・採用方針を抜本的に見直し、「学校歴」不問・通年採用を進めるなど、「学校歴」よりも「学習歴」が評価され、個人の適性や個性を生かすことのできるシステムへの転換を進めるとともに、保護者の意識改革を進める。
  • (13)公的資格の取得や受験資格から学歴要因の除去を一層推進するとともに、学習の成果が企業や社会一般で適正に評価される資格制度を整備、充実する。
  • (14)学生が学習に専念できるよう、卒業予定1年以前の企業の早期採用内定活動を禁止する。

10.継続的なキャリア教育と教育の機会均等を確保する

  • (1)個々人の継続的なキャリア形成を実現するため、技術・技能の社会的評価システムづくりを進める。そのため、評価基準の設定や教育訓練コースの開発・実施に、労使の団体が参加する仕組みを作る。
     また、国・地方自治体が認可した職種ごとの「社会的な資格」を中央・地方で創り、技術・技能を社会的に評価・通用する日本版マイスター制度を導入する。その資格の認定は、職業団体が参加した第三者機関が行う。
  • (2)都道府県職業訓練校を、地域の「技術・技能センター」として新たに位置付け、時代のニーズに合ったスキルアップのための機関とし、新規学卒者、離職・転職者、在職者のものづくり等を重視した職業教育を進める。
     また、都道府県職業訓練校はインターンシップを通じた企業との連携や高校生の実習の受け入れなど、専門高校との連携を強める。
  • (3)職業安定所と企業が連携し、離職者、転職者、フリーター、障害者等を対象とした、企業での実習や職業訓練を行う職業教育制度を創設する。
     企業が制度を導入し、実際に実習や職業訓練を行う場合は、失業手当が支給されている場合を除き、一定期間、1人当たり定額(時給)の補助金を国が支給する。
  • (4)高等教育機関で学ぶ社会人に対する公的助成制度を充実させる。また、企業・使用者は有給の教育休暇や教育休職の制度化を進めるとともに、教育を受ける労働者に対して時間外労働等を制限するなど、教育環境を整備して新技術や新技能の修得ができるようにし、リカレント教育(社会人が学校で再び学び直しができる教育体制)や生涯学習の機会を増やすための支援を行う。

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(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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