1 「高等教育の将来像」についての基本的考え方:高等教育計画から将来像へ

  • 本章では、中長期的視点(平成17(2005)年以降、平成27(2015)年~平成32(2020)年頃まで)で想定される我が国高等教育の全体構造に関する将来像を示すこととする。

 18歳人口が減少を続ける中、大学・短大の収容力(入学者数/(わる)志願者数)は平成19(2007)年には100%に達するものと予測される(従前の試算より2年前倒し)。
 18歳人口が約120万人規模で推移する一方で、大学・学部等の設置に関する抑制方針が基本的に撤廃されたことにより、「進学率」の指標としての有用性は減少し、18歳人口の増減のみに依拠した高等教育政策の手法はその使命を終え、「高等教育計画の策定と各種の条件整備」の時代から「将来像の提示とそこへ向けた支援」の時代へと移行する。
 国の今後の役割は、1.高等教育のあるべき姿や方向性等の提示、2.制度的枠組みの設定・修正、3.質の保証システムの整備、4.高等教育機関・社会・学習者に対する各種の情報提供、5.財政支援等が中心となろう。

(1)18歳人口の動向とこれまでの高等教育計画

  • 我が国の18歳人口は平成4(1992)年度の約205万人を直近の頂点として減少期に入り、平成11(1999)年度から平成15(2003)年度は約150万人程度となっている。平成16(2004)年度は約141万人で、平成17(2005)年度からは更に減少し、平成21(2009)年度に約121万人となった後は、平成32(2020)年度までは約120万人前後で推移することが予測されている。
  • 大学及び短期大学への進学動向に関して、平成9(1997)年1月の大学審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」では、18歳人口の減少に伴い入学者が漸減し、平成21(2009)年度には全志願者に対する入学者の割合である収容力は100%になると試算されていた。しかし、その後の志願率の伸び悩みを考慮して同答申と同様の考え方に基づき再計算を行うと、大学・短大の収容力は2年早く平成19(2007)年には100%に達するものと予測される。
  • 18歳人口が約120万人規模で推移し大学・短大進学率が50%超に達する一方で、社会人学生、外国人留学生やパートタイム学生について量的に大幅な拡大は見込めない。
  • これまでの高等教育政策において、昭和50(1975)年度から平成12(2000)年度までの高等教育計画では、大学等の新増設について抑制的に対応しつつ、第2次ベビーブームによる18歳人口の急増期においては受験競争の緩和等を目的として、臨時的定員を措置するなどの政策的な対応が図られてきた。
  • 平成12(2000)年度から平成16(2004)年度においては、基本的に抑制基調が継続される中、臨時的定員の解消が進められる一方で、新分野への対応等の事情により新増設の動きは続いていた。その結果、定員規模としては大きな変化は見られなかった。
  • 平成14(2002)年8月の中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」を踏まえ、平成15(2003)年度以降は、大学が社会のニーズや学問の発展に柔軟に対応でき、また、大学間の自由な競争を促進するため、抑制方針は(医師、歯科医師、獣医師、教員、船舶職員の5分野を除き)基本的には撤廃されている。

(2)国の今後の役割

  • このような社会の変化や国の役割の変質を踏まえると、今後は、「18歳人口に対する進学率」の指標としての有用性は徐々に減少し、18歳人口の増減のみに依拠して高等教育規模を想定しつつ需給調整を図るといった、右肩上がりの成長期に採られてきた政策手法はその使命を終え、高等教育の将来像を念頭に置きながら、各高等教育機関・学生個々人・各企業・地方公共団体等がそれぞれの行動を戦略的に選択する中で、高等教育の規模や配置等が決定され、必要に応じて将来像が見直されるというシステムへと転換することが必要となる。「高等教育計画の策定と各種の条件整備」の時代から「将来像の提示とそこへ向けた支援」の時代への移行である。
  • 国の今後の役割は、1.高等教育のあるべき姿や方向性等の提示、2.制度的枠組みの設定・修正、3.質の保証システムの整備、4.高等教育機関・社会・学習者に対する各種の情報提供、5.財政支援等が中心となろう(本章7(1)参照)。
  • このように、今回の将来像においては、
    1. 高等教育の量的拡大への対応
    2. 高等教育の質の保証
    3. 高等教育の多様な機能と個性・特色の明確化
    4. 各高等教育機関の在り方と質の向上
      • 学部
      • 大学院
      • 短期大学、高等専門学校・専門学校
    5. 高等教育の発展を支える財政支援及び各方面の取組
    等が主要な内容として考えられる。
     後述第3章の「ロードマップ」部分では、これらを基本的な方向性として関連施策についての考え方を整理している。本章2以下でも概ねこの順序で記述することとする。

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