〔3‐65〕高等教育の発展を支える財政的基盤支援の在り方
(1)高等教育への財政的支援の拡充
- 高等教育機関は、教育・文化、科学技術・学術、医療、産業・経済
など等社会の発展の基盤として中核的な機能を有しており、社会にとって極めて重要である。
- 高等教育の重要性にかんがみ、各国で高等教育への投資を充実しつつある。
- 我が国においては、高等教育の費用負担はこれまでも家計に大きく依存してきた。現在では学生納付金が国際的に見てもかなり高額化しており、これ以上の家計負担となれば、個人の受益の程度との見合いで高等教育を受ける機会を断念する場合が生じ、実質的に学習機会が保障されない恐れがある。国は、学習者の教育費負担の軽減に努めるべきである。
- このために、高等教育への公財政支出
と民間企業等からの資金の抜本的な拡充を図るとともに民間企業や個人等からの資金の積極的導入に努めることが必要である。
- 我が国においても、欧米並みの公財政支出の実現に向けた努力をしていかねばならない。そのためには、全ての関係者が、この点について国民(=納税者)の理解を得られるよう最大限の努力をする必要がある。
- 高等教育を受ける学生個人とともに、高等教育を受けた人材によって支えられる現在及び将来の社会もまた受益者である。このことは、高等教育がエリート段階(進学率15%未満)、マス段階(同15%以上50%未満)又はユニバーサル段階(同50%以上)のいずれにある場合でも基本的に変わるものではないと考えられる。
- ユニバーサル段階では、高等教育の普及によって個人が高等教育を受けたことによる収益は低下することと一般的には考えられるが、知的なネットワークの広さと質が極めて重要な意義を持つ知識基盤社会においては、質の高い労働力や研究成果の供給による利益の他に、層の厚い高等教育の存立そのものが経済社会全体の発展の基盤として不可欠の存在となるものと考えられる。
(2)高等教育機関の多様な機能に応じたきめ細やかなファンディング・システム
- 高等教育への国からの財政的支援は、競争的環境の中で高等教育機関が持つ多様な機能に応じた形にシフトし、機関補助と個人補助の適切なバランス、基盤的経費助成と競争的資源配分の有効な組み合わせにより多元的できめ細やかなファンディング・システムが構築されることが期待される。これにより、国公私それぞれの特色ある発展と緩やかな役割分担、適正な競争条件の確保が目指されるべきである。
- 具体的には、平成16(2004)年当時との比較で言えば、1.国立大学法人運営費交付金・施設整備費補助金は教育研究の特性に配慮した経営努力を求めつつ、政策的課題(地域再生への貢献、新たな需要を踏まえた人材養成、大規模基礎研究など)への各大学の個性・特色に応じた取組を支援することができるよう、所要額を確保する必要がある。2.私学助成は、基盤的経費の確保を図りつつ、傾斜配分の考え方
をより徹底しつつに基づいて、特別補助や高度化推進経費特別補助に相当する部分を中心に拡充する必要がある。3.国公私を通じた競争的・重点的支援は、大幅な拡充が期待される。4.企業向け研究費補助金を大学へ開放するとともに、競争的補助な研究資金の間接経費を充実する必要がある。5.高等教育を受ける能力意欲と意欲能力を持つ者を経済的に援助するため、奨学金を充実する必要がある。
- 高等教育機関の財源として、学生納付金や国からの支援だけではなく、民間企業や個人等からの寄附・委託費や事業収入等の自主財源も確保し、財源を多様化
していくすることが望まれる。国はそのような努力を積極的に支援すべきである。
- このような民間企業や個人等からの
財政支援の充実は、社会の大学に対する評価をフィードバックし、大学の社会貢献を一層促す上でも効果的と考えられる。