〔3‐1〕高等教育の将来構想(グランドデザイン)の基本的考え方

(1)高等教育の将来構想(グランドデザイン)の意義と要素

  • 本章では、中長期的視点(平成17(2005)年以降、平成27(2015)年~平成32(2020)年頃まで)で想定される我が国高等教育の全体構造に関する将来構想(グランドデザイン)を示すこととする。
  • 今回の将来構想(グランドデザイン)の主要な要素としては、
    1. 高等教育の全体規模、ユニバーサル・アクセスの実現、多様な高等教育機関の機能別分化
    2. 高等教育の質保証
    3. 主として大学院段階での高等教育機関の個性・特色の明確化と質の向上
    4. 主として学部・短大・高専・専門学校段階での高等教育機関の個性・特色の明確化と質の向上
    5. 高等教育を支える財政的・社会的基盤
    等が含まれる。〔3-2〕以下では概ねこの順序で記述している。

(2)高等教育に関する基礎的諸条件の変化

(ア)18歳人口の動向

  • 我が国の18歳人口は平成4(1992)年度の約205万人を頂点として減少期に入り、平成11(1999)年度から平成15(2003)年度は約150万人程度となっている。平成16(2004)年度は約141万人で、平成17(2005)年度からは更に減少し、平成21(2009)年度に約121万人となった後は、平成32(2020)年度までは約120万人前後の低位安定期となることが予測されている。
  • 平成9年1月の大学審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」では、18歳人口の減少に伴い大学及び短期大学への入学者は漸減し、平成21年度には全志願者に対する入学者の割合である収容力は100%になると試算されていた。しかし、その後の進学率の伸び悩みを考慮して同答申と同様の考え方に基づき再計算を行うと、大学・短大の収容力は2年早く平成19(2007)年には100%に達するものと予測される。

(イ)社会人、外国人留学生、パートタイム学生等の増大

  • 社会人学生は特に大学院で増加してきており、すべての高等教育機関に在籍する社会人学生は約3万人に達している。また、留学生数は近年急増し、すべての高等教育機関に在籍する留学生は平成15(2003)年度に初めて10万人を超えるに至った。
  • 大学等における社会人の受入れの推進については、従来より大学審議会の累次の答申等を受けて、夜間大学院、通信制大学院及び昼夜開講制の導入等の制度改善が図られてきた。更に残された制度上の課題については、平成14(2002)年2月の答申「大学等における社会人受入れの推進方策について」において、学生が柔軟に修業年限を超えて履修し学位等を取得する長期履修学生制度や通信制博士課程等の導入について提言され、これを受けて制度的な整備が図られてきている。

(ウ)情報通信技術の発達

  • IT技術の発展に伴い、各家庭へのブロードバンド通信が急速に普及しつつある。これまでの通信教育は郵便やテレビ放送等を利用したものがほとんどであったが、時間の融通のきかない社会人が働きながら学んでいくためには、空間的及び時間的制約を受けない環境、例えば、在宅のまま夜間に学べる環境を整えていくことが重要な課題である。このため、今後は、IT技術を利用した履修形態、いわゆるe-learingが中心となっていくものと思われる。

(エ)高等教育の国際化の進展

  • 21世紀の国際社会は、社会・経済・文化のグローバル化によって国際的な競争が激しさを増す社会であり、今後、高等教育機関においても海外分校の設置、外国の教育機関との連携、e-learing等を通じて国境を越えて教育を提供する等、国際的な大学間の競争と協働が進展していくものと考えられる。
  • IT技術の普及・ブロードバンド化に伴い、国内の高等教育機関だけではなく、海外の高等教育機関によっても、e-learingによる高等教育が幅広く提供されるようになるものと考えられる。このように、IT利用の普及等を背景に履修形態の多様化と大学の国際展開が加速すると言える。
  • 海外に目を転じてみれば、米国や豪州の高等教育機関を中心として、東南アジア各国に現地校を開設し、現地校のみでの教育を受けることで米国や豪州の学位を得ることが盛んに行われ始めている。海外の高等教育機関と我が国の機関が提携して、我が国において海外学位の授与や海外において我が国の学位の授与などが複数計画されており、制度的な枠組みの整備が急務となっている。
  • 以上のことは、裏を返せば、我が国の18歳人口が減少を続ける中、各高等教育機関の個性・特色の明確化が国際的な競争的環境の中で一層進むことを意味していると考えられる。
  • なお、国境を越えて展開される大学教育の提供による学位授与の機会を拡大するに当たっては、我が国の学位の国際的通用性の確保に十分留意することが必要である。また、我が国を含めた各国の大学制度、各大学の適格認定を含めた評価、教育内容及び学位の通用性等について判断することのできるように、国際的な大学の質保証に関する情報ネットワークを構築することが急務である。

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