2.高等教育の将来構想

  • 知識基盤社会化に対応するため、高等教育機関は社会との連携を強化し、それぞれの特性を明確にして多様な要請に応えていく必要がある。
  • その際、高等教育の質的保証・向上を図るとともに、高等教育機会の確保が重要。
  • こうした高等教育の充実により、国民一人一人の能力の向上が図られ、我が国や国際社会の発展に資する。

(1)様々な需要に対応した高等教育の多様化

1.高等教育機関の位置付けや役割の明確化

  • 中等後教育の各種教育機関はそれぞれの使命と特色を有するもの。
  • 多様化が進み、大学とは何かといった本質や、高等教育機関間の違いが不明確になってきており、それぞれの位置付けや役割を明確化することが必要。
     (各高等教育機関の位置付けや役割等に関する論点については次ページ参照)
  • その際、設置形態論(設置主体論)についても併せて検討することが必要。

2.多様なタイプの大学の発展

  • 高等教育の中核を担う大学についても、それぞれの理念・目標や大学院の有無等の違いに応じて、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学など、多様なタイプの大学が必要。
  • 一方、例えば教養教育の適切な実施といった、大学として最低限求められる共通の要素についての考え方を整理する必要があるのではないか。
     また、各大学の機能に即した分類の可能性を検討することが必要ではないか。
  • 教育研究の活性化を図り社会や産業界との連携や国際交流を推進するため、女性や外国人の教員への採用や、企業等を含めた教員の交流、教員の流動性の確保といった教員の多様性や専門性の向上、また、それに応じた処遇の改善が必要ではないか。
     さらに、職員についても多様な専門性を有する人材の配置が必要ではないか。

各高等教育機関の位置付けや役割等に関する論点

1)大学院

  • 大学院における研究者養成の在り方
     大学院における研究者養成機能を強化するための方策を検討することが必要。(なお、科学技術系人材の養成については、科学技術・学術審議会人材委員会において2次にわたる提言が出されていることにも留意。)
  • 大学院や専門職大学院における専門職業人養成の在り方
     研究者養成と高度専門職業人養成の両方を担う修士課程・博士課程と、高度専門職業人養成に特化した専門職学位課程との関係や、専門職大学院の今後の展開(医療等の分野の拡大等)について検討することが必要。

2)学部

  • 次の点についての検討が必要。
    • 高等学校教育の多様化や教育内容の増加、大学院進学者の拡大等を踏まえた学部教育の位置付けや修業年限の在り方
    • 学部における基盤的な教育内容(単なるスキルではなく、課題探求能力、文章を読み表現する能力、ものの見方や考え方等の分析能力の向上。21世紀に必要な教養教育の充実や人格形成など)
    • 授業方法の改善や厳格な成績評価など学生の主体的な学習の促進策
    • 各学部の特色として、教養教育、専門教育、専門基礎教育、専門職業教育のそれぞれの位置付けや在り方
    • 専門職大学院における教育との関係。特に法科大学院との関係での法学部教育の在り方
    • 海外の大学との連携推進 など

3)短期大学

  • 社会や時代の変化に対応した短期大学の位置付けやコミュニティ教育、教養教育、専門職業教育の在り方はどうあるべきか、地方自治体等との関係はどうあるべきか等について検討することが必要。

4)高等専門学校

  • 専攻科への進学や大学への編入学の普及を踏まえた高等専門学校の位置付け、5年一貫の実践的技術者養成という設置目的を踏まえた高等専門学校の今後の在り方等について検討することが必要。

5)専門学校

  • いわゆるダブルスクールや大学卒業者の入学の増加等も踏まえ、職業教育機関としての役割も担う専門学校の今後の方向性はどうあるべきかを検討する必要があるのではないか。

6)その他の教育サービス

  • 高等教育と教育サービス産業等のそれぞれの特性を踏まえた役割分担を検討する必要があるのではないか。

(2)高等教育の質的保証・向上

高等教育の質的保証・向上の必要性

  • 高等教育の質の確保については、各高等教育機関において主体的に理念や目標を設定し、自己点検・評価等により自ら検証していくことによって、質的保証・向上を図っていくことが基本となる。
  • 知識基盤社会を支える高等教育機関としてそれぞれの使命を果たしていくためには、事前規制から事後チェックへという流れも踏まえつつ、行政による質的保証や、多元的な評価システムによる各高等教育機関の自律性を基本とした質的保証・向上が不可欠。

1.各高等教育機関における取組

  • 各高等教育機関においては、自律的・主体的にそれぞれの理念や目標を明確にし、それに基づいて教育研究を実施するとともに、入学者選抜や教育内容・教授方法の改善(FD、学生による授業評価等)、厳格な成績評価(GPA等)の実施、高等教育機関のマネジメント改革、施設設備の改善等により質的保証・向上を図っていくことが必要。
  • また、これらの取組について自己点検・評価を実施し、その結果に基づいて改善を図っていくことが重要。

2.高等教育制度とその運用

  • 設置認可の意義と限界
    • 教育研究水準や学位等の国際通用性の確保、学生の保護等の観点から、高等教育に関する法令の整備や、これに基づく設置認可等による最小限の質的保証が必要。
    • これらの制度や設置認可は、認可後実際に行われる教育等の質について直接保証するものではないという限界を有する。
  • 制度の弾力化や設置認可の緩和により質の保証にどのような影響が現れているのかを検討することが必要。

3.多元的な評価システム

  • 教育の質的保証に関する大学の主体的な取組
     認証評価をはじめ第三者評価に関する大学の主体的な取組は、社会からの評価を可能とする意義もある。
     このようなシステムが自主的に責任を持って運営され、社会的な信頼を確立することが、国による規制を最小限にするための不可欠の条件である。
  • 認証評価制度の定着
     認証評価制度の定着のためには、評価機関の主体性を前提としつつ、評価活動の質的向上に向けた取組等に対する支援が必要。
  • 情報公開
     大学設置基準等で情報の積極的な提供が義務化されていることを踏まえ、国民に対して積極的に情報提供を行うことが必要。
  • 国際的な高等教育の質の保証のための方策
     高等教育の国際的な展開やe-Learningによる高等教育の提供が進む中、高等教育の国際的な質の保証を図るための枠組みに関する検討が必要。

4.社会と連携した取組

  • 高等教育機関の質的保証・向上のためには社会からの適切な評価が必要。
  • 例えば、卒業生の質の向上のためには、企業等において採用時の評価に応じた適切な処遇を行うこと等により、間接的に卒業生の質の向上に資するといった方策を働きかけることが必要。

(3)高等教育機会の確保

1.高等教育の全体規模に関する考え方

  • 高等教育機関への進学状況については、大学・短期大学を合わせた全体規模はほぼ大学審議会が示した試算どおりとなっているが、学部進学者がのび、短期大学進学者が減少している。
  • また、大学院と専門学校の学生数が拡大している。
  • これからの高等教育の規模を考える際には、多様な年齢層の学生や留学生、いわゆるe-Learningなど遠隔教育を視野に入れた検討が必要。

2.人材需給と地域配置に関する考え方

  • 人材需要と高等教育における対応(人材需給のミスマッチへの対応)
    • 検討に当たって考慮すべき事項の例
      • 今後の社会構造と人材需要の変化
      • 人材育成に要する時間
      • 人材の流動性
      • 生涯学習の観点 等
  • 地域配置に関する考え方
    • 検討に当たって考慮すべき事項の例
      • 地域における教育機会の確保
      • 大学の地域貢献機能
      • 人材の流動性
      • 遠隔教育の可能性 等

3.生涯にわたる学習機会の確保

  • 幅広い年齢層に高等教育の機会を提供
     知識基盤社会における成人の再教育など生涯学習需要に対応するため、幅広い年齢層が高等教育を受けやすくなるようシステムの柔軟化が進められてきており、各高等教育機関においては一層の柔軟な取組が必要。
  • 学生の多様性への対応や新たな留学生政策の構築
     18歳人口の減少や成人の再教育など生涯学習需要の増大、グローバル化等により、従来以上に年齢、能力・適性、履修歴、国籍等が様々な多様な学生への対応が必要。
     また、海外からの留学生の受け入れや、日本から海外への留学の推進など学生の相互交流について、量的拡大に加えて質の向上にも配慮した留学生政策の策定が必要。
     → 留学生部会で検討中。
  • 遠隔教育の拡大とその課題について検討することが必要

4.生涯にわたる学習機会の確保

  • 教育費の家計負担の状況や、教育機会の確保に与えている影響の検証が必要。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

-- 登録:平成21年以前 --