1.知識基盤社会と高等教育

(1)知識基盤社会化と高等教育への期待

1.高等教育の使命と知識基盤社会化

  • 高等教育は、教育研究を通じて次のような使命を担っている。
    • 高度な専門的知識と豊かな教養、完成された人格といった個人の人間形成と自己実現に寄与すること。
    • 我が国社会の質的な向上と世界の発展の原動力となる優れた人材を養成・確保すること。
    • 人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知を創造すること。
    • これらを通じ、社会の発展や文化創造に積極的に貢献すること。
  • 現在、あらゆる活動が知識や情報を直接的な基盤とするという、いわゆる知識基盤社会化が進んでおり、産業構造をはじめ社会構造が大きく変化。
     こうした中にあっては、国民の知的・文化的基盤の一層の充実・向上を図ることが必要。

2.高等教育への期待

  • 知識基盤社会化や少子高齢化(平成62(2050)年には生産年齢人口(15~64歳)約1.5人で老齢人口(65歳以上)1人を支えるという状況が予想されている。)、グローバル化の進展により、知の創造・継承と、幅広い教養を身に付け知的生産活動を通じて社会を支える「21世紀型市民」の育成を担う高等教育は一層重要になる。
  • このため、大学をはじめとする高等教育機関においては、生涯発達の観点に立ち、教育力、人間形成力、知的生産力、文明の継承能力等を発揮し、社会との連携を強め、それぞれの特色や個性を生かして社会に貢献していくことが期待される。

(2)高等教育が抱える課題

1.高等教育改革の進展と課題

  • 昭和62年の大学審議会の発足以来、高等教育の高度化、個性化、活性化に向けた様々な改革が進展。
  • 他方で、
    • 社会との連携がなお不十分で、社会の変化に対応できていないのではないか。
    • 大衆化と多様化が進む一方で、質的低下を招いているのではないか。
    • 生涯学習需要への対応が不十分ではないか。
    等についての指摘もあるところ。

ア)多様な社会的要請への貢献

  • 高等教育の受益者は学生個人のみならず社会全体である、という視点を踏まえ、知識基盤社会の多様な要請に対応していくためには、高等教育と社会との連携を一層強化する必要がある。
  • 具体的には、
    • 社会の人材需要への対応
    • 教育内容への社会的なニーズの反映
    • 研究面での社会との連携や貢献
    等の面での改革が求められる。

イ)明確な理念と質的水準

  • 設置認可(事前規制)が緩和される一方で、情報公開や評価のシステムはこれから整備が進められるところであり、
    • 進学率の上昇や大学院の量的拡大に伴い、質的低下を招いているのではないか。
    • 大学等の本来の理念や発展の方向性があいまいになっているのではないか。
    等の指摘がある。
  • また、社会の側も、卒業者の採用時の評価に応じた適切な処遇がなされていないなど、高等教育改革に対する支援や協力が十分であるとは言い難い面もあるのではないか。

ウ)生涯学習機会の確保

  • 教育費の家計負担が重く、特に大学院生に対する支援が不十分ではないか。
  • 大学院や短期高等教育機関では学生の年齢層が多様化しているが、学部ではあまり進んでいないのではないか。
  • 多様な年齢層の学習需要に対応した教育内容・方法を提供することが求められる。

(3)高等教育の将来構想(グランドデザイン)の必要性

1.高等教育の将来構想の必要性

  • 知識基盤社会に対応するためには、高等教育機関が各々の特性に応じ多様なニーズに応えていくことが必要であり、そのためには、高等教育システム全体における各教育機関の役割と機能を改めて捉え直すことが必要。
     それにより、各高等教育機関の特色を生かした個性的な発展も可能となる。
  • また、そのような高等教育機関各々が発揮すべき機能を適切に果たしていくためには、事前規制から事後チェックへの流れを踏まえつつ、教育研究の質的保証・向上を図ることが不可欠。
  • さらに、18歳人口の減少や成人の再教育等の需要を踏まえ、一人一人が学びたいときに学べ能力の向上を図れるよう、生涯学習需要に対応できる適切な高等教育機会の確保を図ることが必要。
  • このような視点を踏まえ、社会と連携する多様な発展を基軸とした新たな高等教育の将来構想を提示することが必要。

2.財政措置とアカウンタビリティー

  • 高等教育の将来構想を検討するに当たっては、高等教育に対する財政措置の在り方も検討することが必要。
  • その際、我が国の財政状況を踏まえつつ、知識基盤社会の持続的発展を支えるための投資とアカウンタビリティーという観点、大学等の特性に十分配慮した競争的環境と社会的要請を踏まえた重点的支援の観点が必要。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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