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資料2−1

設置基準と設置認可の現状と課題について

大学設置・学校法人審議会

1.設置認可の現状

(1)申請者・申請内容の多様化

  • 1専門職大学院制度の創設や株式会社の参入などにより、申請者・申請内容が多様化。
  • 2「規制緩和によって設置認可がされやすくなった」という申請者側の意識変化があったのか、設置者としての自覚と責任を欠くような準備不足の申請が増加。
  • 3申請件数は減少したものの、多様性と設置基準の抽象性とが相俟って審査自体は困難に。1校当たりに付す審査意見の数自体は大幅な増加傾向。
  • 4規制緩和の影響もあり、私立大学の経営の継続性、安定性の確保が難しくなっており、教育・研究の質の確保・向上に影響を及ぼすことが懸念される。(校地、校舎の全部借用が認められたが、借料が経営を圧迫している例も見受けられる。)
  • 5大学等を誘致、支援する自治体に対して、大学設置に関する十分な情報が伝わっていない。

(2)設置基準が定性的・抽象的

  • 1設置基準の準則化により審査内規が廃止され、規制緩和の観点から定量的基準も不在。
  • 2申請内容が多様化する中、大学人の常識からすれば不適切と思える申請についても、設置基準に具体性がないため、最終的に「不可」とするには明確な根拠を示し難い状況。
  •  最近問題となった具体例については、平成20年1月23日の大学分科会制度・教育部会における「佐藤弘毅委員説明資料」【別添】を参照。

(3)届出制度で想定外のケースが出現

  • 1届出制度の導入により、柔軟な組織づくりは促進されたものの、本来の届出制度の趣旨を逸脱するような届出設置も出現。
    (例)
    • 数回にわたる届出の結果、認可申請時とは異なる分野の学部等を届出設置(AからABからB)
    • 基礎となる学部等とは異なる国家資格等を取得する学部等を届出設置(看護師から理学療法士)
  • 2学部・学科名や学位に付記する専攻名称に、国際通用性に疑問があるようなものが出現。設置認可審査があれば意見を付して修正を求められるが、届出の場合は困難。
  • 3教員審査や設置審議会との「対話」を回避して届出制度を抜け道的に活用し、不十分な組織改編が行われるとすれば、一方で設置認可の審査を厳格に行っている意義が薄れる。

2.設置基準に係る課題

  • 1定性的・抽象的な規定についての明確化が必要
    (例)
    • 専任教員の要件(年齢、給与、勤務日数、授業時間数、雇用形態、管理運営への参画)
    • グラウンド、体育館に係るハード面の基準(広さと本部校舎からの距離)
    • 研究室、研究費等の研究環境に関する基準
    • 図書の冊数
  • 2多様な形態を踏まえた通信教育設置基準の見直し
  • 3学校教育法第103条の「大学院のみを置く大学」(大学院大学)の要件の明確化
    • 「教育研究上特別の必要がある」ことを審査要件化することが必要であり、典型的な場合等を設置基準に明記することが必要
    • 「大学とすることができる」について、校地・校舎の定量的基準がないものの、大学らしさ(大学であること)をどのような形で担保するかを設置基準に明記することが必要

    <学校教育法>

    (大学院のみを置く大学)

    第103条  教育研究上特別の必要がある場合においては、第85条の規定にかかわらず、学部を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができる。
  • 4専門職大学院で養成する人材を受け入れる側のニーズ把握の徹底、専任教員の役割・責任の明確化
  • 5大学院、大学院大学に関する校地・校舎の基準
  • 6グローバル化の中で、学部・学科名、学位に付記する専攻名などが、国際通用性のあるものとなるよう、限定を付すことが必要。

3.設置認可(設置審査)に係る課題

  • 1審査の簡略化の観点から審査期間を短縮化したが、申請内容の多様化に対応し、審査の質を確保する観点から、例えば大学等の新設や収容定員の増加を伴う改組の場合には、審査期間を1年〜1年半程度確保するなど、十分な審査期間の確保が必要。申請者にとっても、審議会との「対話」が深まり、意見対応に時間がとれるため有益。(現在は、審査意見伝達後の補正申請まで、1ヶ月程度しか確保できない状況)

    <現状>

    大学新設 7ヶ月
    3月末申請 (審査意見・補正申請 2往復)
    学部等設置 5ヶ月
    5月末申請 (審査意見・補正申請 1往復)
  • 2形式要件は具備しているため受付は行ったものの、設置の趣旨・教育上の目的、教育課程、施設・整備などの面で大学の設置に関する基本的理解を欠いているなど、明らかに準備不足である申請に対しては、第一次審査で審査を打ち切り、「不可」とするなどの厳格な対応が必要。
  • 3審査の厳格化の観点から、教員に関する情報等、申請書類に添付する書類や記載内容等の手続面の改訂が必要。
  • 4学際分野の審査に際しては、複数の分野別専門委員会で、それぞれの観点から審査を行い意見を付しているが、同方法では限界があり、新たな審査方法を構築することが必要。
  • 51つの学部又は学科内に複数のコースを設け、認可又は届出を行った学位とは異なる分野の学位を授与するケースが見られる。教育プログラムとそれにより授与される学位を一体的に捉え、認可又は届出を行った学位分野が維持されるようにすべき。
  • 6自治体からの財政支援等を伴う設置申請については、申請者に対して、審査の過程においても、当該自治体と十分な連携を図るよう求めることが必要。

4.届出制度に係る課題

  • 1制度導入の趣旨に鑑み、既存の学位の分野の見直し・細分化が必要。(学際分野の位置づけなど)
  • 2既存の学部に新たな学位の分野を追加する場合のルールの厳格化が必要。
  • 3設置計画履行状況等調査の実施によるフォローアップが必要。

5.設置計画履行状況等調査(認可後のフォローアップ)の現状と課題

(1)現状

  • 1新たに設置認可を行った大学、学部、研究科等について、完成年度まで毎年報告書の提出を求め、書面、面接又は実地調査を実施。問題点については、留意事項として通知。
  • 2従来、大学設置・学校法人審議会決定に基づき実施していたが、平成18年に省令に根拠規定を設け、以後、毎年の調査結果を公表。
  • 3大幅な設置基準の緩和以降、役割が一層増大しており、今後、届出設置についても実施予定。(現在試行中)

(2)今後の課題

  • 1対象件数は、設置認可に係るものだけで毎年400件以上。物理的に、面接や実地調査を行えるのは、合わせて100件程度。今後、届出設置についても調査の対象を拡大したいが、限られた資源の中で質と量のバランスを確保しつつメリハリを効かせて実施することが必要。
  • 2設置計画履行状況等調査は、設置認可時の留意事項への対応状況、設置計画が確実に履行されているかを調査するものであり、最低限の質を担保する役割を果たすが、教育研究の質の向上について調査・評価することは困難。設置認可制度の特質とその限界を踏まえ、設置認可後の質の保証に関する国としてのフォローアップの枠組みを構築することが必要。

6.質の保証システムの構築に向けて

  • 1設置計画履行状況調査によって最低限の質を担保するとともに、分野別認証評価システムの構築や文部科学省の視学委員制度の復活等によって、設置認可後の教育研究の質の維持・向上を図り、設置の前後を通じて、「担保」と「向上」の両側面から「質の保証」を図ることが必要。
  • 2各大学の自発的な教育研究の質の向上を促すためには、設置認可申請書の基本計画書や教育課程の概要等の設置認可に係る書類や認証評価の結果等を大学ごとに整理してポータルサイトに掲載するなど、大学の基本情報の公開を徹底することが必要。