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(大学院の教育・研究機能の充実/強化)

視点4 大学院教育の質を抜本的に向上するための課題

  【これまでの大学院教育の課題と改革】
   高度な人材養成機能の強化、地域社会・国際社会への貢献など大学院に対する社会の要請・期待の高まりに適切に対応するため、質的な面でも量的な面でも大学院の飛躍的充実を図る必要から、これまで大学院の重点化、すなわち、学部中心の大学運営から大学院の教育研究機能の強化を図るための施策を実施してきた。

   具体的に、これまで実施してきた大学院重点化の質的な面からの主な課題と改革を整理すると、以下のとおりである。
(これまでの主な課題)
   各課程において、どのような人材の育成を目的としているのかが明確ではない、
   目的に沿った体系的なカリキュラムが編成されておらず、それを踏まえた適切な教育研究指導が行えていない、
   学生、教員の流動性が低く、大学においても社会においても多様な経験の蓄積が十分にできる環境ではない、
   制度面も含め教員組織、施設・設備を未だ学部に多く依拠しており、大学院の教育研究機能を十分に発揮できる体制となっていない、
   社会のニーズを適切に踏まえた大学院教育が行われておらず、大学院修了者(特に、博士課程修了者)が社会で評価されるに十分な「付加価値」を高める機能が果たされていない、
   量的な拡大が進んでいくことで、学生の質、ニーズが多様化、教員1人あたりの学生数が増加し、十分な教育研究指導を行える体制・環境となっていない、
   学生への経済的支援が十分ではなく、さらには大学院修了生(特に博士課程)のキャリアパスが不透明であるため、優秀な学生が大学院に進学しない、
   大学院の評価システムが十分ではなく、評価や競争原理に基づく資源の重点配分が機能しにくい状態となっている、などの課題が指摘されていた。

(これまでの主な改革)
   課程制大学院制度の趣旨の徹底
   FD(Faculty Development)、授業評価の実施、シラバスの作成などの奨励
   任期制の導入
   独立大学院、独立研究科等の設置促進、研究科を学部と同等の基本的な組織として法令上明確化、一定規模以上の学生を要する大学院には、大学院専任の教員や専用の施設・設備を備えるようにすること
   インターンシップ、企業との共同研究や寄附講座等の開設の促進
   基盤的経費の増額
   奨学金、特別研究員制度、TA(ティーチングアシスタント)・RA(リサーチアシスタント)に係る予算措置の充実
   自己点検評価、認証評価機関による第三者評価の義務化、21世紀COEプログラムの導入などの取組みを実施してきた。

  【現状における大学院教育の課題の整理】
   このような大学院教育の質的充実に関する取組みが着実に行われている一方で、急速な量的な拡大は、大学院教育の質やニーズの分散化をもたらしている面もあり、上述した課題が引き続き指摘されているところである。加えて、近年の社会・経済・文化のグローバル化の進展や、大学改革の進捗などにより、以下のような大学院教育の新たな課題が指摘されるに至っている。
   専門職大学院制度の創設等により、大学院教育と学部教育との関係、大学以外の専門教育との関係が曖昧になっていること
   求められる専門分野の高度化と学際・融合的な分野の進展により、今後の研究者等として高度な素養の涵養が一層必要になっていること

   これらの課題を解決するためには、大学院における教育の質的な面での抜本的な充実・改革が不可欠であり、国は、大学院における教育の課程の組織的展開の強化(大学院教育の実質化)を大学改革の重要課題と位置づけ、早急に取組みを進める必要がある。

(大学院教育の実質化のための重要課題)
   これらの諸課題を今後の学問分野別の審議も見据え、以下のとおり、大学院教育の実質化のための重要課題として整理した。

《基本的な課題》
(1)  人材養成の観点からの大学院の機能の明確化
(2)  大学院教育と学部教育、大学院以外の専門教育との関係の明確化
(3)  大学院教育の実質化のための大学院組織のあり方

《特に学問分野別検討が必要と考えられる課題》
(4)  課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立
 教員の教育・研究指導能力の向上のための方策
 社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策
 今後の研究者・技術者等として必要な高度な素養の涵養のあり方
 教員・学生の流動性の拡大のための方策
(5)  研究者養成機能の充実
 博士課程における体系的な教育課程の確立
 大学院の研究機能の強化(施設・設備など)
 学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策
(6)  実効性ある大学院評価の確立



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