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資料4−2
中央教育審議会大学分科会
大学院部会(第22回)平成16年7月8日

大学院の教育・研究機能の基本的整理(案)


 分野別の議論が今後必要と考えられる事項
 機能別の議論が今後必要と考えられる事項


論点

 人材養成の観点から、大学院の機能は如何にあるべきか。

 大学院の着実な量的拡充が図られていく中で、大学院教育の質を抜本的に向上するための支援は、如何にあるべきか。

 大学院教育と学部教育、大学以外の専門教育との関係は如何にあるべきか。

 大学院の実質化のためには、大学院組織は如何にあるべきか。


検討試案

 人材養成の観点から、大学院の機能は如何にあるべきか。
(* 分野別の議論が必要、# 機能別の議論が必要)


次のような考え方で良いか。

今後、求められる人材と教育課程】
 「21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)」(平成10年大学審議会)においても指摘しているが、今後の高等教育においては、学部段階から一貫して課題探求能力(主体的に変化に対応し、自らの将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力)の育成を重視した教育が重要。

 また、今後の社会・経済・文化のグローバル化と変化の激しさを増す国際的な競争社会を俯瞰すると、研究者にしても高度専門職業人にしても、専攻分野に関する高度の専門的知識のほか、それを活用・応用する能力、国際的な場でマネジメントできる能力をもつことも極めて重要。

 このため、今後の大学院教育においては、専攻分野に関する高度の専門的知識の修得に加え、語学力はもとより、体系的なコースワークにより、関連する分野の基礎的素養の涵養を図り、学際的な分野への対応能力を含めた専門的知識を活用・応用する能力(専門応用能力)を磨いていく教育が重要。

 なお、求められる人材を検討し、それを踏まえた教育課程を構築するに当たっては、大学院教育の国際的通用性の確保に留意することが重要。

 また、求められる人材は、社会における職業分野、学問専攻によっても異なり、上述に加えて、大学院に求められる人材養成機能ごとに、必要な教育を検討することも必要。

(創造性豊かな研究者/大学教員の養成に必要な教育)
 産学官を通じたあらゆる研究・教育機関を担う創造性豊かな研究者/大学教員を養成する観点から、体系的な教育課程において、例えば、
 海外、企業での研究経験など、多様な研究活動の場を通じて研鑽を積ませる教育
 学生同士が切磋琢磨する環境の中で、自ら研究課題を設定し研究活動を実施させるなどの学生の創造力、自立力、プロジェクトのマネジメント能力などを磨かせる教育
 加えて、大学教員を目指す学生に対しては、学生に対する教育方法のあり方を学ばせる教育などが重要。

(高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業人の養成に必要な教育)
 社会の各分野において国際的に通用する高度で専門的な知識・能力が必要とされる人材を養成する観点から、体系的な教育課程において、例えば、
 「理論と実務の架橋」を目指すため、産業・経済社会等の各分野で世界の最前線に立つ実務家教員の積極的登用などにより、国際的に活躍できる水準の高度で実践的・継続的な教育
 長期間の単位認定を前提としたインターンシップにより、学問と実践を組合せた教育
 コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力を磨かせる教育などが重要。

(我が国の知識基盤社会を支える幅広い人材層の確保に必要な教育)
 我が国の知識基盤社会を支える高度で知的な素養のある人材層を確保する観点から、まず教育目標など課程の目的・役割を明確化した上で、体系的な教育課程において、例えば、
 学生の知的好奇心などに応え、多様なコースワークから幅広い視点を培い、社会・経済・文化のグローバル化のなかで、柔軟な思考能力と行動力を兼ね備えるための高度な素養を涵養する教育
 論文重視の教育ではなく、養成すべき人材を念頭に関連する分野の知識・能力を体系的に修得するコースワークを重視した教育などが重要。

 社会における職業分野、学問専攻によって求める人材は多様であるため、各大学院においては、大学の自主的・自律的な検討に基づき、養成する人材を出来るだけ具体的に描き、それを踏まえた教育課程の体系化を図っていく必要。(人材養成機能の観点からの機能の多様化、分化)

今後重点を置くべき課題と検討事項】(例)
 各大学院は、各大学院において養成する人材の明確化とそれを踏まえた教員の大学院教育に対する意識改革により、特色ある大学院教育を行うための組織的な取組(FD:Faculty Development)の実施。

 国は、それを踏まえた特色ある大学院教育(Good Practice)への重点支援とそれらの事例を広く社会に情報提供し、大学院教育の改善に活用してもらう取組が重要。

 国は、これら特色ある大学院教育を行っている教員の積極的な評価を導入・支援する仕組みを今後の審議検討の中で具体化。

 これらについては、機能別、分野別によっても実態が異なることから、今後の審議検討の中でさらに具体化。


 大学院教育の質を抜本的に向上するための支援は如何にあるべきか。
(* 分野別の議論が必要、# 機能別の議論が必要)

次のような考え方で良いか。

現状の問題点】
 高度な人材養成機能の強化、地域社会・国際社会への貢献など大学院に対する社会の要請・期待の高まりに的確に対応するため、質的な面でも量的な面でも大学院の飛躍的充実を図る必要から、これまで大学院の重点化、すなわち、学部中心の大学運営から大学院の教育研究機能の強化を図るための施策を実施してきたところ。

 しかしながら、現在の状況を顧みると、急速な量的な拡大が図られている一方で、依然として、
1  各課程において、どのような人材の育成を目的としているのかが明確ではなく、目的に沿った体系的なカリキュラムが編成されていない、
2  学生、教員の流動性が低く、大学においても社会においても多様な経験の蓄積が十分にできる環境ではない、
3  制度面も含め教員組織、施設・設備を未だ学部に多く依拠しており、大学院の教育研究機能を十分に発揮できる体制となっていない、
4  量的な拡大の結果、学生の質、ニーズの多様化、教員1人あたりの学生数が増加したことなどにより、論文指導などの面で十分な教育を行うことができていない、
5  学生への経済的支援が十分ではなく、さらには大学院修了生(特に博士課程)のキャリアパスが不透明であるため、優秀な学生が大学院に進学しないなどの指摘。

これまでの改革】
 国においては、
1  課程制大学院制度の趣旨の徹底
2  任期制の導入
3  独立大学院、独立研究科等の設置促進、研究科を学部と同等の基本的な組織として法令上明確化、一定規模以上の学生を要する大学院には、大学院専任の教員や専用の施設・設備を備えるようにすること
4  基盤的経費の増額
5  奨学金、特別研究員制度、TA(ティーチングアシスタント)・RA(リサーチアシスタント)に係る予算措置の充実などを実施してきたところ。

 また、大学においては、国において実施された施策の積極的な活用を図ることに加えて、大学院の教育研究指導を充実するために、FDの実施、シラバスの作成、授業評価などを積極的に実施してきたところ。

 このような大学院教育の質的充実に関する取組みが行われている一方で、上述した課題が引き続き指摘されているところ。

 今後の我が国の大学院の発展は、教育の質的な面での抜本的な充実・改革が伴わないと困難であると考えられ、国は、大学院の教育研究機能の強化(大学院教育の実質化)を大学改革の重要課題と位置づけ、早急に取組みを進める必要。

今後の検討のあり方】
 今後、国においては、
 大学院教育の実質化を図るための基盤形成の基本的な方向性の明示
 それを実施するための制度的な改革方策、及び財政基盤の充実について検討。
 また、大学院を置く大学は、この重要な課題の当事者としての認識を強く自覚して、自主的・自律的に大学院教育の実質化を図る必要。

 特に、大学院における教育研究活動に力点を置く大学は、学長のリーダーシップの下、大学院教育の実質化を図るための具体的な計画を策定し、改革を実行していくことが必須。

 今後の分野別の審議検討等を踏まえつつ、大学院教育の実質化のための重要課題について、集中した議論を行い、改革支援方策を具体化。

 なお、大学院教育の実質化を図るための改革支援方策については、課程の目的・役割の明確化、教育課程や研究指導のあり方、施設・設備の整備などが相互に連係しており、総合的な取組みの視点が必要。

 これらを踏まえ、大学院教育の実質化の集中的な取組期間を設け、国は、大学の自主的かつ意欲的な計画に積極的な支援を行っていくことも一案。

(大学院教育実質化のための5カ年計画などを設定するなど)
大学院教育の実質化のための重要課題】(例)
 課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立
 教員の教育・研究指導能力の向上のための方策
 社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策
 今後の研究者・技術者等として必要な高度な素養の涵養のあり方
 教員・学生の流動性の拡大のための方策

 研究者養成機能の充実・ 博士課程における体系的な教育課程のあり方・ 大学院の研究機能の強化のあり方(施設・設備など)・ 学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策

 実効性ある大学院評価

先行的取組の実施】
 改革支援方策の全体像について、本審議会において、体系的に具体化を図っていくこととするが、博士課程の教育機能の強化、社会のニーズと大学院教育のマッチングなど大学院教育の枢軸的な事項については、先行的取組として実施していくことが重要。

 例えば、(博士課程の教育機能の強化)
 主として研究上のポテンシャルの高い拠点(専攻)における創造的な若手研究者の育成及び教育の質の向上に関する意欲的かつ体系的な教育プログラムを重点的に支援し、大学院教育の実質化を図る取組み。(社会のニーズと大学院教育のマッチング)
 大学と企業が一体となって、高度な専門性を有する学生を対象に、長期間、単位認定を前提として、産業界等での実践的なトレーニングを実施するために、従来の就業体験型とは異なる新しいインターンシップを構築・支援する、産業界等との人材養成に関する協力関係を確立するための取組み。


 大学院教育と学部教育、大学以外の専門教育との関係について。
(* 分野別の議論が必要)

次のような考え方で良いか。

 大学院教育の実質化を図るにあたっては、我が国の生涯学習社会への移行が一層進展している中で、例えば、専門教育における学部段階の教育との関係や、大学以外の専門教育との関係にも留意することが必要。

大学院における教育課程と学部段階の教育課程】
 大学院教育は、学部段階の教養教育を中心とした専門的素養の上に立ち、専門性の一層の向上を図るための、深い知的学識を涵養する教育を基本として考えていくことが重要。

 このため、学部段階の教育は、自学自習による教養教育を重視した教育、ダブルメジャーなどによる幅広い専門的素養のある人材養成のための教育などを基本として、高等教育としての基礎的能力や生涯学習の基礎等の涵養を培うことを期待。

 なお、大学院教育と学部教育の関係については、学問分野毎によってもその事情は異なることから、例えば、学士・修士課程を通じた一貫した教育プログラムの導入の是非なども含め、今後の分野毎の審議検討を踏まえて、より一層の具体化。

大学院における教育課程と大学以外の専門教育】
 大学院教育は、学部段階の教養教育を中心とした専門的素養の上に立ち、専門性の一層の向上を図るための、深い知的学識を涵養する教育を行うことが基本。

 他方で、専門職大学院制度の創設により、大学院教育と大学以外の専門教育(特に、専門学校(専修学校の専門課程))との関係が曖昧になっているとの指摘。

 専門学校は、実践的な知識・技術等を習得する実践的な職業教育・専門技術教育機関として定着。

 専門職学位課程における教育は、専門学校とは異なり、大学の学部段階の教養教育等を基礎として、特に「理論と実務の架橋」を重視し、高度の専門性が求められる特定の職業を担うための知識・能力を養うもの。

 関係者は、この目的・役割の違いに十分留意しつつ、それぞれの特色を活かし、共に産業社会が求める人材を養成する機関として一層、発展していくことを期待。


 大学院組織は如何にあるべきか。

次のような考え方で良いか。

大学院組織を検討するに当たっての基本認識】
 大学院は、学部段階の教養教育を中心とした専門的素養の上に立ち、専門性の一層の向上を図るための、深い知的学識を涵養する教育課程を提供する場であるという観点から、大学院教育を実施するための適切な組織のあり方について整理する必要。

適切な組織形態の検討】
 これまで大学院の教育研究機能を十分に発揮するに相応しい組織形態を確立する観点から、独立大学院、独立研究科の設置、研究科教授会の設置、研究科を学部と同等の基本的な組織として法令上明確化することなどを実施してきたところ。

 しかしながら、今後、大学院教育の実質化を図る上での課題として、学生、教員の流動性が低い、並びに教員組織及び施設・設備を未だ学部に多く依拠しており、大学院の教育研究機能を十分に発揮できる体制にないなどの組織面の課題が指摘。

 また、専攻分野の教育課程の目的・役割に沿って、教員組織の体制を整備し、提供するカリキュラムの体系性に基づいて教育研究の展開を図る考え方も重要。

 このような観点で、大学院を置く大学は、大学院教育の実質化のための組織改革のあり方について、積極的な検討が必須。

 例えば、大学院における教育研究活動に力点を置く大学は、大学院教育に関わる教員、施設・設備(図書館等の共有施設を除く)等について、学部組織と完全に切り離した独立化を指向していくこともひとつの有効な手段。

 これにより、学部教育との適切な役割分担、学生・教員の流動性の向上、教員の教育・研究指導能力の向上に繋がるものと期待できるが、その実行に当たっては、いずれの大学においてもこれまでの体制の抜本的な変革が必要。

 また、他方で、学問分野等によっては、学部(学士)段階の教育と連係し、学部段階からの一貫した教育プログラムの導入により、大学院教育の機能強化を図る試みも、現在、有効に行われていることにも留意する必要。

 このため、本審議会においても、分野別、機能別に、今後、さらに検討を深化させる必要。



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