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中央教育審議会「薬学教育の改善・充実について」(中間報告)に関する
パブリックコメントの結果について(概要報告)

1: パブリックコメントの概要
(1)期間  平成16年1月21日〜2月4日
(2)告知方法 文部科学省ホームページ、記者発表等
(3)意見受付方法 郵便、FAX、電子メール


2: 受付意見数
意見等の提出者は171名(個人・団体)で、185件。その内訳は以下のとおり。

(1) 薬学教育の修業年限延長について
1修業年限について(27件)
26年制学部と4年制学部の並存について(46件)
3薬剤師国家試験受験資格について(62件)

(2) 設置基準等について
1大学設置基準等について(10件)
2大学院設置基準等について(1件)

(3) その他
1実務実習の受け入れ体制・指導体制の整備等について(10件)
2共用試験の実施について(4件)
3第三者評価について(6件)

(4) 全体を通しての意見(19件)

また、意見等の提出のあった関係団体名は以下のとおり。
◆社団法人  日本薬剤師会
◆社団法人  日本病院薬剤師会
◆社団法人  日本私立薬科大学協会
◆日本学校薬剤師会
◆全国薬害被害者団体連絡協議会
◆日本製薬工業協会


3: 意見の概要
事務局において、論点ごとに適宜集約・整理したものである。
(1) 薬学教育の修業年限延長について
1修業年限について

賛成意見>
 医療人としての自覚をもった薬剤師を養成するために、6年に延長することに賛成。
 薬剤師は、医薬品の安全供給にもっと責任を持って任務を果たすことが社会から求められている現在、薬学6年制を歓迎。
 薬剤師養成には、基礎、専門及び実務を含む6年間の教育が必要であることには異論はない。
 6年制に賛成。現行ではカリキュラムは過密であるし、実務実習も不十分。
 職業人としての薬剤師に必要な知識、技能、人格の成熟のためには、現状の4年の修業年限では不足。6年制に賛成。
 病院実習を経験した学生の立場からいっても、疾患の分子学的メカニズムの解明と薬の多様化に伴い、薬学部で学ぶべき内容は著しく高度化していることを実感。6年制に移行することで対応できる能力が必要。
 薬剤師の介入による誤投薬防止は、医療に対する国民の信頼を高めるもの。6年制移行に賛成。
 中間報告に、薬剤師養成のための薬学教育については学部段階の修業年限を4年から6年に延長することが明記されたことは十分に評価できる。
 薬剤師養成であれ、研究者養成であれ、ともに人の生命に関わる領域の人材を育成するとの原点に立てば、薬学教育6年間に賛成である。

反対意見>
 2年分の学費は親の負担が大きい。卒後教育で補えばいい。
 修業年限を延ばせば、薬剤師志望者が減少して医薬分業が滞るのではないか。
 薬学6年制の議論先にありきではなく、医薬品の安全使用や薬害の防止といった社会的要請に応えることができ、効率的で能力を発揮できる薬剤師の就業環境を確約すべき。
 4年から6年に延長する理由が不明。年数で学力を判断することは間違い。
 薬学教育は現在の4年間で十分。6年にするとカリキュラムにゆとりができすぎて、遊んでしまう学生が増加する。
 医療薬学系の分野だけを増やし、薬局ないし病院薬剤師を養成することのみを目的とするのであれば、6年制は反対。
 6年制の導入により薬剤師の地位や待遇の向上など、どのくらい望めるのか疑問。
 薬学6年制は本当に薬学部の教育として必要なのか。薬剤師養成だけが薬学部の存在理由なのか。もっと時間をかけて議論すべき。
 私立大学は薬剤師養成塾になっている。6年になれば、薬剤師国家試験対策の時間に余裕ができるだけになり、怠惰な学生が増える。
 諸外国が6年制を取り入れているのは事実であるが、日本とは違う教育方法である。単に年数を延ばせばいいという問題ではない。

26年制学部と4年制学部の並存について

賛成意見>
 6年制薬学部のみでは、薬学研究者の育成は図れない。薬剤師養成と研究者養成は、全く別個のものであり、便宜的に一律にするのは間違い。
 大学進学後に進路について考える余裕のある学部4年+修士2年の方が、学生にとって優しい制度である。
 研究の心得をもった人材は、国公立大学から生まれると考える。4+2のルートは不可欠。
 4+2に賛成。「課題発見能力」及び「問題解決能力」は、修士課程での自立した個別課題研究の実施、学会での発表を通じたコミュニケーション能力の育成、修士論文作成による問題点の整理能力の育成が役立っている。
 薬学教育は、理学部での教育と比べると、生物学と化学の両方を理解でき、さらに医療に関する実学的な知識と関心をもった学生を輩出してきた実績がある。6年制学部のみでは、日本の薬学研究に空洞化をもたらしかねない。
 日本の薬学の基礎研究は大きな財産。実学志向の強い学部6年+大学院のシステムでは研究者養成は困難。4+2を存続させるべき。
 薬学教育の目的は、薬剤師の養成だけではなく、医療に関する多様な分野で活躍する人材の育成もある。4+2を残すべき。
 4+2の併置に賛成。薬学教育に多様な選択肢を与えることは、世界のサイエンスにとっても非常に重要。
 学部6年+大学院博士4年という制度で研究者養成に成功している例は、世界的にも見当たらない。獣医学教育制度を学部6年+大学院4年博士に移行したことにより、研究能力が低下したことは認めざるを得ない。4+2を残し、多様な制度であることが望ましい。
 4+2の制度を存置することに賛成。4年で一旦学士をとり、その後の進路をどうするかを考える機会となる。できるだけ選択肢の多い4+2の制度がよい。
 医者になりたいから医学部へ行く、歯医者になりたいから歯学部へ行くというのとは違い、薬学とは、医療関係の知識・情報を得やすいだけでなく、多方面に生命科学・基礎科学を勉強することができるため、他学部と違い稀有で有意義な学部である。その意味からして、4年制学部は必要。
 薬学出身者がノーベル賞候補になっている国は日本以外には最近例がない。4+2を残すことで、企業の研究において化学がわかり、生物がわかる研究者を育成できる。
 4+2の併置は大切。例えば医学部のように医師養成に特化すると資質のない学生も医師になってしまう。学生が自ら薬剤師としての適正に欠けていると判断した場合の受け皿が必要。
 4年制学部には、基礎研究と、複雑化する医療との接点を今後担い続けていく重要な役割が求められている。
 国立大学は、全て、日本を代表する研究大学であることを考慮すれば、大学院修士課程を廃止し、学部6年制に移行することは賛同できない。4+2を残すべき。
 多様性の確保、優秀な人材の確保には4+2の存置が必要。
 4+2が重要。大学院の教育は、学部までの受身の教育とは異なり、自ら目的と方向性を設定する主体的なもの。日本の製薬業界が世界に通用するレベルにあるのは、このような研究態度を身につけた優れた研究者が多いからである。

反対意見>
 医学や歯学、獣医学との制度の整合性を優先すべき。6年制一本とした方が「医療の担い手」としての薬学教育が明確となる。並存すべきでない。
 4年制学部を残すことに反対。臨床教育を受けずして卒業する4年制の薬学士を作ることは将来に禍根を残す。
 並存させることは、看護士の正と准の区別を再現させるようなもの。
 6年制学部に基礎を置く医学、歯学、獣医学において、現に4年間の博士課程で十分な質と量の研究者を輩出していることを鑑みれば、4+2を残さないと研究者養成が出来ないという心配は杞憂である。
 基礎薬学と医療薬学の統合という観点は大事。仮に両者を分断し、固定化するような制度を導入することは、日本の薬学の将来に大きな禍根を残すことになる。
 薬剤師を職業に志す者とそうでない者とを分けて教育することは、それぞれが閉ざされた世界に埋没し、お互い刺激しあって向上することもなくなってしまう。

その他>
 薬剤師を目指すか、研究者を目指すかの進路を高等学校卒業時に決定するのは困難。2年次までは共通の教育を行い、その後進路の振り分けを行う制度にしてはどうか。
 学生の立場からみると、6に行くか4+2に行くかは、受験資格の有無以外にどちらに行けばいいかの判断材料がない。

3薬剤師国家試験受験資格について

賛成意見>
 薬学の4年制学部卒業後、更に薬学関連の修士課程で実務実習等一定の条件を履修することにより、薬剤師国家試験受験資格を付与する制度も導入することは非常に重要。
  4+2の大学院修士課程で研究の手ほどきを受けた者が、薬剤師として活躍することは、今後の医療の進展を促すものとして大切。
 4+2修了者に一切受験資格が付与されないとなると、医療の場で発生する実践的な諸課題が、基礎研究の場に適切にフィードバックされる環境も失われることとなる。
 4+2修了者に一定の条件のもと、受験資格を付与することについては、6と4の並置という、多様な人材育成を目指す制度設計の精神を生かすためにも、強くその実現を望む。
 試験の合否の判定は、客観的に高度な医療現場に対応可能かどうかの判断の問題であり、このことと受験資格の制限とは何ら関係がない。4+2にも受験資格が認められないと、日本の薬系大学は専門学校・専修学校化してしまう。
 受験資格については、6年制学部卒であれ、4+2卒であれ、資格を得るに足る能力と資質を備えていれば問題ない。資格とは制度によって与えられるものではなく、能力によって与えられるものである。
 研究者が薬剤師免許を有することは、医薬の創製においても医療を理解するうえで重要である。
 薬剤師の資格を有する研究者養成が時代のニーズである。医師との協力による人への応用研究など、薬剤師免許があるからこそできる研究がある。
 将来、薬学部の教官になる際に、薬剤師免許を有していることが、ほとんど必須となっている。このような現状があるため、4+2出身者にも受験資格を与える必要がある。
 全員が薬剤師免許を取るために薬学部に入るわけではないが、せっかく薬学部に入ったのに、薬剤師と他方面に進むのだからという理由で、受験資格を与えないというのは如何なものか。その者達にとっては理学部、工学部など他学部に進むのと変わらないのではないか。一定の条件の下に付与するのではなく、4年制学部卒業+2年修士修了すれば、当然に受験資格を付与すべきである。
 4+2に薬剤師になる方策が一切ないとなると、6年制学部との間に大きな溝が生じ、両者が別々の道を歩み出し、薬学の統一性が取れなくなるおそれがある。
 不況の時代に、入学前に免許取得の可否が決まってしまうということは、入学者が6年制に流れ、4+2の薬学生の空洞化をもたらす。それは将来、優れた医薬品開発につながる研究に携わったであろう優秀な学生、研究者の減少につながり、研究水準が低下する。
 6年制学部卒業者との競争的環境の創出と学習意欲の向上を図れるという観点からも、6年制に加え、4+2年制修了者にも受験資格を与えるべきであり、一時的な措置とすべきでない。
 製薬会社の研究職として求められているものは、薬学を学んだ大学院生であり、且つ、薬剤師免許をもっている人間、即ち、薬を創る面と使う面の双方を有している人間である。
 医療の高度化に伴い、現場の医療人には幅広い知識の他に研究能力も求められている。4+2にも受験資格は必要。
 薬剤師としての資質は4+2でも十分に備えている。知識はあっても薬剤師として社会で生かすことができないのは残念。
 新薬の開発は血のにじむような研究の苦労があってのもの。その苦労を知った上で薬剤師になる人間は有益。
 教育年限の選択は各大学のミッションに基づいて行われるべきことであるものの、いずれの形態においても、その教育内容の検証により、薬学教育の共通の到達目標の一つである薬剤師の受験資格を可能にすることがその前提である。したがって4+2であっても、薬剤師養成のための教育要件を満たせば、受験資格は与えられるべき。
 6年制を卒業して臨床現場にすぐに対応できるタイプの薬剤師と、4+2を修了し、臨床経験は劣るものの、薬学研究を行うことができ、研究と臨床を直結できるタイプの薬剤師の双方が必要である。

反対意見>
 国家資格制度は、医師・歯科医師・獣医師と同様にすべきである。
 国民は、医学部=医師の養成、薬学部=薬剤師の養成、看護学部=看護師の養成と考えており、国民の望む医療に薬剤師はどう応えるべきか、さらに国民の公衆衛生の維持・向上における薬剤師の役割を考えるならば、薬剤師教育は6年制学部による一貫した教育が必要であり、薬剤師国家試験受験資格は6年制学部の卒業者のみに認めるべきである。
 4年制学部卒業後、受験資格を取得したい場合には、6年制学部に編入学をすればいい。なぜ、薬学にだけ特別な措置を講じる必要があるのか理解できない。
 薬科学部という学部は、薬学部と他の生命科学系学部の中間的存在の中途半端な学部。薬科学部に対する中途半端な措置により、今後、理学部や工学部等の生命科学科等から、薬剤師国家試験受験資格の付与を求める要求が出てくるのではないか。
 製薬企業において薬学出身者が活躍する分野は、研究・開発・生産・営業がある。これらいずれの分野においても薬剤師免許が必要ということはない。
 4年制学部の修士修了者に一定の条件の下に受験資格を付与することは、医療人としての教育を受けていない者に、ただ薬剤師免許を与えるための抜け道である。編入学で対応すればよい。
 6と4+2は学ぶべき内容が大きく異なるはずである。であれば、4+2を修了後、一定の条件の下で受験資格を付与することは矛盾している。
 4年制学部を卒業し、修士課程を修了してから、条件つきで薬剤師免許の受験資格を付与することは、不適当であり、平等でない。
 4+2に一定の条件のもとで受験資格を付与してしまうと、薬剤師以外の道を目指してきてそれが叶わなかった場合に、不本意ながら薬剤師の道を選択するという可能性はないか。
 6年制学部による修得単位数の増加、実習期間の延長に伴い、現実として6年制学部と同等の教育を修士課程修了者が受けることは物理的に不可能。従って、4+2に受験資格は不要。
 実際に製薬業界で活躍している研究者は薬学出身者というよりも、理学部、農学部、工学部などの他学部出身者が多い。「大学で適当にやっていても薬剤師として食べていける」という安易な気持ちを学生に抱かせないためにも、6年制学部卒業の学生だけに受験資格を認めるべき。
 受験資格は6年間の学部教育のみとするべき。他の方法での教育課程が存在することは社会的に混乱を招くことになる。
 調査研究協力者会議では、6年制の最初の4年間と、4年制の4年間の教育カリキュラムは異なるべきとはっきり謳われている。このように学ぶ内容に明らかに違いがあるにもかかわらず、受験資格を問題にすること自体、本来は非常に無理がある。
 受験資格に関し、国内における複数の教育課程を認めることは、学生にとっても、国民にとっても分りにくく、適当な制度ではないと考える。最終報告においては、この点を配慮していただきたい。

その他>
 受験資格を限定するよりも、国家試験の難易度を上げるべき。
 4+2を修了した者に、薬剤師国家試験受験資格を付与するためには、「6年制薬学部で履修する薬学教育モデル・コアカリキュラム及び実務実習モデル・コアカリキュラムを含む正規の薬学教育186単位に相当する教育内容を何らかの方法で履修した場合」に限るべきであり、このような教育内容の保障は、国の認証を受けた「評価機構」の判断に委ねるべき。


(2) 設置基準等について
1大学設置基準等について
   卒業の要件について、6年制学部と4年制学部で共通する部分がどのような科目で、単位数でいくつまで許容されるかのガイドラインが示されないと、限りなく共通の部分が多くなるのではないか。
   6年制学部は、医学教育に準ずる教育を目指していることを考え、従来の設置基準における薬学部の教員数を大幅に増員する必要がある。6年制学部においては少なくとも医学部の3分の1(できれば2分の1)の教員数が必要。
   仮に4年制学部卒業者にも、その後、何らかの方法で薬剤師資格取得の道を残すならば、専任教員数について、学部、大学院を通じて、同様の基準が要請される。
   臨床教育に直接携わっている者の一定数の採用を義務付けて欲しい。
   6年制学部と4年制学部との間での教員の交流等を考慮すると、両学部の共通授業部分を明らかにして、設置基準上の両方の専任教員数は少なくとも共通部分では基本的には同一とするべき。
   専任教員数については、それぞれの教育内容に応じた増員を行う必要がある、とされる点について、法人化後国立大学の教員定員は、一般論としては法人の自由裁量に委ねられるとされているが、本件のように教育制度の根幹にかかわる大きな制度改正においては、スムースな制度移行を可能にするため、予算措置等の特段の配慮が必要と考える。
   6年制学部はこれまでの薬学教育に不足していた医療薬学教育分野を追加するという整理であれば、4年制学部を学士(薬学)、6年制学部を学士(医療薬学)とすべき。
   6と4の学位の名称の区別がわかりにくい。学問分野の違いとその目的の違いを明らかにし、それが適切に反映される名称にすべき。
   薬剤師を目指す6年制学部卒業者は「学士」の学位であるのに、薬学研究者を目指す4年制学部+修士課程修了者は「修士」の学位も取得できる。これでは薬剤師を薬学研究者の下位に位置づけてきたこれまでの構図と変わらず、薬学教育の改革にならない。
   単に修業年限を延長するだけでなく、臨床教育施設設置の義務を盛り込むべき。

2大学院設置基準等について
 4年制学部に基礎を置く大学院として、医療薬学を履修しない薬科学部を卒業した後に、大学院において医療分野の専攻を作ることは不可能と思われる。


(3) その他
1実務実習の受け入れ体制・指導体制の整備等について
   実務実習のカリキュラムの充実と、きちんと教えられているかの監視システムが必要。
   研修医の給料はきちんと手当てされるようになるのに、薬剤師の実務実習はなぜ無給のままなのか。
   実習を長期にするのはよいが、そのために増加する実習経費は学生負担になるのか。相当な出費になる。
   薬学生の実務実習を円滑に推進していくためにも医学部同様、相応の実務実習国庫補助が必要。
   「医療の担い手としての実務実習」は、病院や薬局などで調剤を行う薬剤師だけでなく、製薬企業に勤める全ての薬剤師にも必要。
   実務実習に関しては、実務実習モデル・コアカリキュラムをまとめた文部科学省と、病院及び薬局を統括する厚生労働省の全面的な協力を前提としていることを明示していただきたい。
   実務実習に携わる指導者を教員とする場合の教員審査では、研究能力だけの審査に終わらない制度が望ましい。
   実務実習の学生の配置には、個々の病院・薬局と大学との個別交渉ではなく、薬学教育協議会の調整機構に調整を任せるのが最良の方法。
   実務実習の受入れ体制・指導体制の整備については、日本薬剤師会においても積極的に取り組むこととしており、既に体制整備のための検討を開始している。(日本病院薬剤師会も同旨。)
   実務実習の受入れ体制・指導体制の整備については、教員以外の職員の充実に努める必要があるとあるが、教員以外の職員の充実は絶対条件であることを明記してもらいたい。

2共用試験の実施について
   共用試験に合格する出題基準を明確にし、合格者には調剤助手等としての位置づけを与えられるような内容を付加すべき。
   既に先行している医学と歯学の共用試験システムを利用する方向で検討するのが最良。

3第三者評価について
   第三者評価を実質的に機能させて、単に「モデル・コアカリキュラムを踏まえているか」ではなく、薬剤師職能の細分(例えば、職場の種類)に対応可能な教育評価を、評価機構で行うべき。
   薬学教育という形で閉鎖した中での評価システムを考えるのではなく、医学・歯学・看護学など、他の医療系教育分野と相互に乗り入れることができる第三者評価を目指すべき。
   当面は大学基準協会等の専門科目部会などが対象となると考えられるが、将来的には薬学教育協議会などの薬系大学人を中心とする組織を立ち上げることが望ましい。

(4) 全体を通しての意見
   法科大学院のような実務型薬学スクールの導入を図るべき。
   医師などの医療チームから求められる薬剤師の能力とは、化学、分子生物学、製剤などの知識であって、臨床の知識ではない。
   製薬企業が薬学出身者に求めているものは、研究内容ではなく、語学力、理論立てて質疑応答ができる能力、コミュニケーション能力などである。
   現在の薬学教育では、薬物療法に携わる臨床に関する知識が身についていない。
   医療薬学は国家試験との関連もあることから、力が入れられているが、教養教育は手薄な感じがする。
   今後の薬学教育には薬の歴史、薬の文化史を学ばせることが大切。
   実学教育は比較的短期に改良することができるが、独創性やリーダーシップのための教育は、一度消失すると再構築に50年からの期間を要する。この点を踏まえて、薬学教育改革を行ってもらいたい。
   水俣病などの公害と同様の「社会的災害」としての薬害について、被害者の実態を踏まえた被害者支援のあり方、被害の社会的原因と再発・根絶対策のあり方などを社会薬学的に教育する薬害教育が不可欠。
   薬害教育の充実を求める。具体的には、1「薬害」を必須科目として位置づける2薬害被害者や薬害事件を担当した弁護士を講師として招く3薬学教育モデル・コアカリキュラムに記されている「総合薬学研究」の中の重要課題として「薬害」を取り上げる。4薬剤師国家試験の問題にも「薬害」を出題する。
   病気を治す、あるいは病苦を軽減する薬の開発に期待が高いのは当然であるが、他方で、病気を予防し、根絶を図り、健康を増進するような「予防・社会薬学」が必要である。
   病気を治療する薬の開発は、医学、化学、物理学、生化学など、あらゆる分野の統合的な知識が必要であり、それを満たすことができるのは薬学をおいて他にない。
   民間企業への就職においては、6年制の薬学教育課程修了者が、同年限の他学教育課程修了者等と比べて、薬学という学問の特性は言うまでもなく、薬物治療に対する理解、生命倫理に対する理解など明瞭な価値特性を有することが必要。
   製薬企業の研究所に勤務している経験から述べると、現在の採用は、修士卒が一番多く、次に博士で、学部卒は皆無である。修士を出ていれば、研究能力についてある程度推測できるし、大学での研究と少し違う分野に移してもやっていける。しかし、博士卒は、研究分野を変えてもらうとき、随分と制限がある。学部卒は研究をほとんどしていないので、本人の適性が判断できない。
   「学校薬剤師」は、薬剤師職能の公衆衛生活動の寄与増進の面を担い、子どもたちの健康づくり、薬の正しい使い方、環境教育などに従事している。これらの専門教育を一層充実するための教育課程が必要。
   薬剤師に対する生涯教育の、十分な体制整備が必要。
   薬剤師の職能について考えるべき。例えば薬剤師資格の10年ごとの再認定などを実施してはどうか。これほど専門知識が必要とされながら、一度取得すると生涯有効というのは極めて不思議である。
   薬剤師の能力向上には、初期教育の充実よりも卒後の継続的な学習の方が効果がある。免許更新制を導入すべき。


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