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「学校法人制度の改善方策について」の概要

   我が国の教育に大きな役割を果たしてきた学校法人が,少子化など昨今の法人経営をめぐる厳しい社会・経済の情勢に的確に対応し一層安定した学校運営を行うとともに,公共性の高い法人として社会に対する説明責任を果たしつつ,今後とも健全に発展していくためには,学校法人の公益性を一層高め,自主的・自律的に管理運営する機能の一層の充実を図ることが必要である。

   1.理事機能の強化
      
   理事会については各学校法人の寄附行為の定めにより実態として置かれているものであるが,学校法人の業務に関する最終的な決定機関としての位置付けを明確化する観点から,理事会を法令上に位置付けることが適当である。
   学校法人によっては,理事長のみが代表権を有している場合や担当理事が置かれている場合など学校法人の代表権の制限が行われている場合もあることから,そのような場合にはこれを対外的に明らかにするため登記できるようにすることが求められる。
   学校法人の運営に多様な意見を採り入れる観点から,理事に外部の人材(現に当該学校法人の教職員でない者等)が適切に任用されるようにすることが重要である。
   理事会における検討の充実に資するよう,各学校法人において,非常勤の理事に対し定期的に学校法人の運営状況に関する情報を提供することや理事会における委任状等の取扱いの改善を進めることが必要である。

2.監事機能の強化
      
   監事の監査の範囲及び内容が必ずしも明確でないため,一定の指針等を示すことにより明確化することが必要である。また,監査報告書の作成,評議員会への報告,外部への閲覧を行うこととするとともに,監事が理事会・評議員会へ出席するようにすることが適当である。
   監事の監査を支援する観点から,各学校法人において,理事長等から監事に対して定期的に学校法人の運営状況に関する情報を提供したり,必要に応じて支援のための事務体制を整備したりすることが必要である。
   監事の理事会・評議員会からの独立性を高めるとともに専門性を高める観点から,監事の選任要件における外部性の強化及び評議員との兼職制限が必要である。また,監事の選任は監査される側である理事側のみで選任するのではなく,例えば理事会が推薦し,評議員会の承認を得た者を任命する等の手続きとすることが適当である。

3.評議員会機能の強化
      
   評議員会は,学校法人の業務に関する重要事項について理事会に対し意見を述べる諮問機関としての位置付けであることが原則であり,評議員会の議決が必要な場合であっても,学校法人としての最終的な責任及び権限は理事会にあることを明らかにする必要がある。
   評議員会における検討に資するよう,理事長等から評議員会への事業報告や監事から評議員会への監査報告を行うことが重要である。
   多様な意見を採り入れる観点から,実態として評議員のすべてが学校法人の役員及び教職員という事態が生じることのないよう,一定数以上の外部の人材が選任されるようにすることが必要である。

4.財務情報の公開
  a)義務付けの対象となる学校法人
      
   財務書類の公開を法的に義務付けることが必要である。
   補助金の交付の有無にかかわらず,全学校法人を公開の対象とすることが適当である。
   幼稚園法人等小規模法人についても,他の公共性の高い法人でも規模で差を付けていないことにかんがみ,公開の対象とすることが適当である。

  b)公開を義務付ける財務書類
      
   公開する財務書類は,1財産目録,貸借対照表及び収支計算書(資金収支計算書及び消費収支計算書),2資金収支内訳表及び消費収支内訳表とすることが適当である。ただし,プライバシー保護の観点等から,一般に公開することが適当でないと認められる情報については,公開しないこととできる仕組みを検討すべきである。
   公開する財務書類の様式は,学校法人会計基準によって作成が義務付けられているものはそれによることとする。また,財産目録については,ある程度の統一性を図るため作成例を示すことが適当である。なお,補助金を交付されていない学校法人については,学校法人会計基準に準じて作成することが適当である。
   財務書類を正しく理解できるよう,財務書類の背景となる事業の概要等を説明することを目的とする事業報告書の作成及び公開を義務付けることが適当である。

  c)公開の方法
      
   公開の方法としては,財務書類を閲覧に供することを義務付けることが適当である。
   上記書類の閲覧に加え,各学校法人において一般の人にも分かりやすい公開内容や方法を工夫し,学報,広報誌等の刊行物への掲載やインターネットの活用等により財務情報を積極的に提供していくことが望まれる。なお,その場合,提供する内容を概要とするなど,どのようなものとするかは各学校法人の判断によることが適当である。

5.その他の検討課題
  a)会計基準の見直しについて
      
   学校法人会計基準の見直しに当たっては,専門的・実務的知識が必要とされるため,本小委員会とは別に,新たな組織を設けて検討することが適当である。

  b)外部資金導入方策等の改善について
      
   外部資金導入等の充実のための方策については,今後中長期的に検討していくことが必要である。
   各学校法人において,寄附金及び学校債の活用を推進することが重要である。ただし,募集時期等には十分に留意すべきである。
   社会教育事業や受託研究・共同研究の推進に可能な限り積極的に取り組むとともに,その他の収益事業についても,各学校法人の判断により,事業の精選・効率化を図りつつ可能な限り取り組むことが望まれる。

  c)事務機能の強化方策について
      
   事務機能の強化や効率化を図る観点から,事務機構の再編(必要な部門への重点化等)やアウトソーシングの活用を進めることが考えられる。

  d)会計監査の改善方策について
      
   内部監査,監事の監査及び公認会計士の監査を一層充実させる観点から,相互に情報交換を行う等それぞれの機能の協調が大切である。
   公認会計士の監査機能の充実を図るため,今後とも監査事項等の見直しを図っていくことが必要である。
   経営困難法人に対する監事や公認会計士の監査の在り方を検討することが必要である。なお,公認会計士(監査法人)との監査契約において,必要に応じて監事に対する監査報告を義務付ける契約とすることも考えられる。

          ※   事項に応じ,小規模法人等に対しても適切に配慮。

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