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中央教育審議会「大学等における社会人受入れの推進方策について」(答申)(案)

はじめに

 

本審議会は,平成13年4月11日に,文部科学大臣から「今後の高等教育改革の推進方策について」諮問を受けて,大学分科会において,多岐にわたる高等教育の課題について調査審議を進めている。
 このうち,短期大学・高等専門学校から大学院までの高等教育制度全体の在り方に関する問題については,6月に大学分科会の下に制度部会を設置して審議を行うこととし,これまで,学生が個人の事情に応じて柔軟に修業年限を超えて履修し学位等を取得する新たな仕組みについて調査審議を重ねた。
 また,大学院制度の在り方に関する問題については,同月,同分科会の下に大学院部会を設置して審議を行うこととし,これまで,専門大学院1年制コース及び通信制博士課程について調査審議を重ねた。
 このたび,上記両部会における審議に基づき,各界からの意見を踏まえつつ,総会及び大学分科会において更に審議を行い,大学等への社会人の受入れの推進方策の一環として,職業や家事等に従事しながら大学等で学ぶことを希望する人々の学習機会を一層拡大する観点から,「大学等における社会人受入れの推進方策について」結論を得たので,答申を行うものである。


1基本的考え方

 21世紀を迎え,社会,経済が高度化,複雑化し,グローバル化が一層進展する中で,情報通信技術をはじめとする科学技術の進歩や産業構造の変化,職業の多様化が急速に進んでいる。個人が豊かで充実した人生を送るためには,このような状況に的確に対応して,職業においても,生活においても,高度で先端的な知識や能力を適時適切に修得することが必要となってきている。また,近年の長期雇用を中心とする雇用環境の変化や,企業内教育の減少等を背景として,個人が自ら積極的に学習を行い,高度で多様な職業能力を身に付けることにより,生涯にわたるキャリア形成を積極的に展開していくことが求められている。社会全体にとっても,その活力を維持向上させていくためには,時代の変化や困難な状況に柔軟に対応し,新しい時代を切り開いていくことができる,最新の知識に裏打ちされた,課題探求能力,問題解決能力に富む有為な人材が求められている。さらに,高齢社会を迎えた我が国において,個人が自己啓発を図り,より一層心豊かで潤いのある人生を実現することを目指して,人々の多様な生涯学習需要は増大する傾向にある。
 以上のような状況を踏まえ,我が国の大学等は,社会に一層開かれた機関として,産学連携の推進をはじめ,社会経済の活性化や地域コミュニティの形成に積極的に貢献していくことが求められてきており,それらに資する開かれた教育の在り方が必要となっている。
 事実,人々の高等教育に対する需要も個々の事情に応じて急速に多様化してきている。例えば,高度で専門的な職業能力の向上を目指して大学院での高度な再学習を求める者,職業等による時間的制約から長期の在学での学位取得や通信制課程における学習を希望する者,あるいは,一般教養を高めるために大学等における学習を望む者等,多様な学習需要が生じている。
 これらの様々な需要に対応し,我が国の大学等は,幅広い年齢層の人々に積極的に開かれ,これらの人々に多様で柔軟な学習機会を提供していくことが求められている。
 このため,本審議会においては,社会人等の大学等への受入れ促進のための各般の施策を踏まえ調査検討を行い,その一層の促進のための当面の具体的な改革方策について成案を得たので,以下の通り提言を行うものである。

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