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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 中央教育審議会大学分科会 > 大学院部会医療系WG(第3回)議事録・配布資料 > 資料1−2


資料1−2
中央教育審議会大学分科会大学院部会
医療系WG(第3回)平成16年12月2日

大学院部会医療系WG各委員からの御意見について


1. 「審議経過の概要」で示した基本的方向性と分野別の現状

〈各大学院の目的・役割の明確化について〉

 臨床系大学院の役割は研究者育成なのか専門医育成なのかを明確にすべき。
 伝統的に区分されている従来の基礎系・臨床系を統合し、大学院の機能を研究者育成と専門医育成に分けてはどうか。
 現行の学士課程と課程大学院を制度的に見直す必要もありうる。または、学士課程は現行のままとして教育内容のコア化・選択性を明確にし、課程大学院も研究者育成を主とするコースと専門医育成を行う高度専門職大学院と区分する方法もある。さらに非医学系出身者対象の修士の充実も必要。
 医系大学院を研究者養成の場としてみた場合、他の生命科学系大学院(農学、理学など)にはない特性・機能はなにかを明確にする必要がある。これを明確にすることが課程制の実質化につながると思う。他の医療系大学院も同様である。
 臨床系大学院は、それぞれの専門分野で研究マインドを持った優れた臨床医等を養成することを目的とし、基礎系大学院は、医学・生命科学等の領域で研究者として自立できるだけの基礎的知識と研究能力を修得させることを目的とすべき。
 医療系の大学院の現状を考えると、「研究者又は大学教員の養成を行う課程」ないしは「研究マインドを有する医師の養成」を行うところであり、「優れた臨床の知識・技術を有する医師の養成を行う」課程とすることは難しい。基本的臨床実地能力を獲得するための卒後研修必修化がはじまり、各診療部門における専門医制度も臨床能力を評価認定するものである。
 これらの修得は専ら病院などの実地臨床場面において行われる。また進歩した医療技術の習得も指導者と高度の設備を有する臨床施設でなければ不可能である。
 基礎系分野と臨床系分野の境界領域の発展に伴って学問的連続性がうまれつつある現状において、大学院教育におけるMDとnonMDの役割と機能を、その構成員である学生・教員の両面から再検討する必要がある。
 医科学・歯科学修士課程や、MD-PhD,DDS-PhDコースの設定により、様々なキャリアパスの構築が試みられ始めているが、医療系学部教育の位置付けと構造の再検討が必要である。
 大学院の充足率が基幹大学に集中しているのでないか。国立大ではほぼ一律の専攻設置がなされていることも問題である。地方大学大学院に特色ある専攻系を備えるべき。
 全国の医療系各分野において、各教育研究機関の最先端・最優秀な学生と教員を連携・結集した、全国横断的連携組織を構築して各機関に所属する臨床医療施設を効果的に活用して研究医療を実践する。
 看護学領域では、課程の目的をすでに高度専門職業人育成と教育・研究者育成にわけて考えており、修了生が担う機能を明確にすることは、学生にとっても教員にとってもよいと考える。但し、両者が持つべき能力の共通性と特殊性の線引きは困難で、教育内容が過重になっていく傾向にあることは課題である。

〈医療系大学院における専門職業人養成について〉

 アメリカにおけるメディカルスクール等のプロフェッショナルスクールは研究者養成ではなく専門家養成を目的としており、また、研究者養成のためにはPh.Dコースがあり、その辺ははっきり分かれている。ロースクールが設置されたことで、日本でも今後プロフェッショナルスクールが増えていくと思われる状況の中で医療系大学院をどう考えていくかが課題である。
 メディカルスクールについては、現在、医学部の中では編入学定員を設け、学士入学制度を実施しているところが多数あり、まずはこの制度の検証が必要であると思う。この制度で卒業して医師になる者が、高校卒業で直に医学部に入って医師になる人よりも、本当に社会から求められるより良い医師になっているのかどうかについてしっかり検証した上でメディカルスクールを考えなくてはいけないと思う。
 公衆衛生大学院をどう考えるのかという問題がある。日本ではまだ少ないが、アメリカでは40以上ある。アメリカの公衆衛生大学院は非常に幅があり、強力である。日本でこの公衆衛生大学院というものをどう考えるのかという問題がある。
 高齢化社会やグローバル化が進展していく中、国民の健康を守るための公衆衛生学を発展させる必要があり、この分野の人材養成が重要。我が国の公衆衛生大学院は、発足したばかりであり、教員の有資格者も少ないため、まず既設の大学院を充実したうえで、人材の需要の動向を勘案しながら、公衆衛生大学院の在り方を検討することが今後の課題。
 医学研究科の養成する専門職として何を想定するのか具体的に例示する必要がある。臨床専門医の養成がまずあげられるが、現行の臨床研修医制度、後期研修システム、各学会の認定する専門医の認定要件などとの整合性との調整を図る必要がある。また、臨床専門医以外の専門職(例:臨床心理士、治験コーディネータなど)についても検討する必要があるほか、修了要件、年限なども含めた検討が必要である。
 歯学部卒業者の多くが臨床医を目指す現状を考えると、より高度な臨床能力の修得を目的とする大学院の充実を図るべき。その場合、次のように、課程の目的別に3つの形態が考えられる。
1  大学院博士課程(4年制)は従来の大学院歯学研究科で、優れた研究者・教員の養成を目的とし、博士(歯学)の称号を授与する。
2  専門職大学院臨床博士課程(4年制)は、高度な歯科臨床知識および医療技術を持った歯科医師の養成を目的とし、臨床博士(歯学)の称号を授与する。
3  専門職大学院臨床修士課程(2年制)は、コ・デンタル・スタッフ(歯科技工士、歯科衛生士など)を対象とし、高度な歯科医療技術者の養成を目的とし、臨床修士(歯学)の称号を授与する。
 現状では、医療人としての適性を見ることなく、単なる偏差値や学費支弁者の経済的条件を満たす高校生のみが医学・歯学の分野に進学し、その結果、患者の全人格を総体的に捉える能力に欠如した医療従事者が多く輩出されている。このため、広い教養と基礎科学の素養を身に付けた人材(4大卒業者)に医療人教育を実践するデンタル・スクール構想はこれらの弊害を取り除く方法の一つとして意味がある。また医学・歯学部卒業者が、基礎医学研究を回避する傾向への歯止めとしても有効な方策である。
 歯科医師臨床研修制度がスタートするが、学部教育、臨床研修、大学院教育という、教育の一貫性を確保する方策を検討する必要がある。また、歯科技工士や歯科衛生士は歯科医療の重要な担い手である。歯科技工士や歯科衛生士を対象とした専門技術を修得するための大学院教育課程を設置する必要がある。
 専門職学位課程については、医療系に関してどのような専門領域を対象とするか明確でない点も多い。どのような専門職のニーズがあるのか、また、関連学会、職能団体による認定(認定医,認定薬剤師など)の違いを明確にするなどの条件整備が必要。
 薬学部の場合,6年制を終了しても学士であり,(専門職)学位の取得には,博士課程への進学が必要となる。しかしながら,現行の博士課程において、専門薬剤師養成のためのプログラムや指導体制など,組織作りの指針を早急に作成する必要がある。

2.
課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立
(大学院のスクール化)

教員の教育・研究指導能力の向上のための方策

〈教員の教育・研究指導の在り方について〉

 臨床医学系の大学院生が大学病院での大きな労働力になっている。専門職業人養成として学習する中では当然臨床を行う必要はあるが、大学院生がいなければ病院が成り立っていかないという現状には問題があり、臨床医学の大学院生は労働者なのか修学者なのかという点は議論が必要。
 基礎医学系の研究者のポジションは少ないが、日本の基礎医学が本当に世界に伍したるものになっているのかについて検証することが必要である。日本の基礎医学研究者のポジション、論文、研究成果等が必ずしも十分なものではないという意見も聞く。
 研究内容が高度に細分化されており、また、プロジェクト研究の多い医学系では、狭い領域のみの教育(ときに一部実験の分担または手伝いに)に終始する傾向がある。また、将来研究者を志向していない者も多く混在している。したがって、研究者育成と専門医育成などを区分していくことも必要となる。医学系修士課程においても同様に研究者育成と専門職業人育成のコースを設ける必要がある。
 薬学系大学の新設に伴い、薬学系大学院の新設も増える可能性が大である。国民医療・福祉の観点からは良質で高度な教育を学部のみならず大学院においても確保することは極めて重要であり、大学院教育の質の抜本的向上を目的として、授業評価の実施、シラバスの作成、Faculty Development等の大学院教育の体系化を推進するべきであると考える。
 学生の持っている研究課題の遂行、教員が行っているテーマに学生が加わって行う研究、どちらもが可能なように、学生に対し保障することが必要ではないか。

〈教員の教育・研究指導能力の向上方策について〉

 自身が高い研究能力を持つ先端的教員と、優秀な自己啓発能力を持つ学生を有機的に組み合わせて、かつ相互の情報交換を促進する制度を確立した上で、この組織に対して傾斜的・重点的に優遇措置を担保して、次代の指導者を循環的に養成する特別組織の構築を検討する。
 任期制や能力制の導入と実施をさらに徹底し、成果に見合った評価が必要であり、研究業績による研究費の傾斜配分制度の導入などを推進すべきである。さらに、一定基準以上の成果をあげた研究者に対しては、サバティカルやインターンシップによる海外研修の機会を与えることも一策である。
 現在の多様な大学院の目的に関して、一人の教員が総てを網羅することは不可能であるから、突出した能力を持つ個人を如何にして発見し各構成員を組織的に構造化するかについての、社会システム設計に関する実践的基礎研究が急務である。この場合、各現場における人事評価基準に流行や偏重が生じないように、価値の多様性を担保しつつ突出した人材が育つ芽を摘まないように配慮する制度の構築が不可欠である。
 教員,大学院学生が国際会議などに積極的に参加し,国際交流をはかるとともに,大学院の教育を英語でできる環境にすることも重要。さらに,研究者の充電期間にあたる,いわゆるサバーティカル制度を導入するなど,人的,経済的な支援が必要である。

〈教育・研究指導の適切な評価について〉

 教員の教育・研究能力を公正に評価し、高い能力を持つ教員を手厚く待遇するためのインセンティブを持つ制度をどのように設計するかが課題。
 課程制大学院における授業評価、および教員へのフィードバックによる大学院教育内容の充実を図るため、学部教育と同様の学生による授業評価を実施してはどうか。また、別個に大学院生および指導教員に対して、大学院教育についてのアンケート調査を実施してはどうか。
 教員の能力評価のうち、特に診療能力・実績の評価が適切に行われていないため、この評価方法の在り方について検討することが必要である。
 研究成果の公表や競争的な研究資金の獲得など既に,多くの国際的な競争を促す方策が採られているが,必ずしも国際的な評価に耐えられない分野・研究者も多い。大学機関が自己評価と外部評価を受け,研究者自身が国際競争に常に晒され,評価を受けている自覚を持つことが重要。
 教育・研究指導に対する教員の教育活動評価の在り方、その活用方法はどうすべきかという課題があり,これを単に自己評価に留めるのか,あるいは,教員の昇任や再任評価に用いることの法的根拠などを議論する必要あり。
 教育・研究指導の評価方法は,従来の学内での学位審査の方法とともに専門薬剤師指導者も加え,同時に指導者に対する評価になるもので,教育体制の改善に活用される。
 教員評価を公正に行うことは難しいが、研究者としてはその学問領域に貢献する研究をしているかどうかの評価の視点が必要と考えている。教育能力に関しては研究指導の成果としての修了生の輩出(学位授与)みならず、コースワークへの貢献を評価する必要があろう。学生からの評価も必要である。

〈コースワークの充実について(講義・演習・実験の組み合わせ方、授業の形式など)〉

 狭い研究の手伝いによる名目上の単位習得の現状から、将来の基盤となる実質的な広い学習(複数のコースワーク、多様な研究手技習得も必要)を行う実質的教育への転換を図るべき。
 課程制大学院の役割を十分認識させるための意識改革、博士課程・修士課程の授業のあり方等、狭い専門領域以外に広く学習させるための方策をどのように具体化するかが課題。
 実験系では、個別の教育・研究指導と専攻系共通のコースワーク授業を明確に区分して実施すべきである。また、シラバスに一般目標と到達目標を具体的に記載し、実施べきだと思う。
 生命倫理、動物実験倫理、基本的実験技術、統計解析、英文論文作成等の共通コースワーク(一部は選択性)を設定し、組織的指導を行ってはどうか。
 充実したコースワークの実現のため、現行の大学院設置基準における修得単位数(30単位)を再考するとともに、1単位互換制度の積極的導入、2学部在学中の研究活動を大学院単位として認定するなどの方策を検討すべき。
 コースワークの充実により、全体的な教育・研究レベルを上げることも大事だが、より最先端の研究推進の観点から、極めて優秀な学生の吸上げをいかに行うのかも課題。
 専門職学位課程については,理論と実践を重視したコースワークの単位習得を含めた検討が必要。

〈大学教員の採用について〉

 大学院の教員評価においては、研究業績のみならず指導実績も評価すべきである。大学院教員の採用に際しても指導実績を高く評価するように任用基準を設定する必要がある。1指導人数、2指導内容、3指導された大学院生の進路、4大学院生の指導教員に対する評価などを評価項目として採用する。これらの評価項目を導入するだけで、教員の意識は大きく変わると予想される。
 優れた教員を育成するためには、競争原理を導入するのが良策と考える。競争原理を導入する前提として、教員の任期制の導入および教育と研究に対する評価基準を各大学院において明確にする必要がある。基準に基づいて、透明性のある評価を行い、教員としての再任可否を決定する。
 医・歯学系では、臨床との乖離がない教員の体制を引いているが、看護学領域では臨床と教育との分離が大きいため、これが課題になっている。臨床教授の採用や教員の実践の場の確保への取り組みで、双方が乗り入れる努力をしている。

今後の研究者等として必要な高度な素養の涵養のあり方

〈各大学院の人材養成機能に即した高度な素養の内容について〉

 国際保健医療の分野や国内の医療政策・医療経済分野において活躍できる人材の養成が必要であるなど、大学院修了者のキャリアパスが多様化している。そのための語学力、国際法、医療・保健行政法などの素養を涵養することも必要である。
 臨床歯学系の大学院においては、研究活動を通じた科学的根拠に基づいた医療(EBM)の実践の素養を身につけさせている。
 大学院教育において、研究者養成面に要求される素養としては、語学力を含め明らかに日本だけではなく世界で通用することが必須である。その一方で、高度専門職業人養成の面では専門知識と共に人間としての幅広い素養の涵養が重要で、専門知識の修得と共に豊かな人間性が求められる。この両者の教育をどのようにして行うかが医療系の教育に課せられた問題である。
 研究者には論理性と表現力は必須である。現在、学部教育の中ではこうした訓練は困難であり、大学院での教育にならざるを得ない。さらに、さまざまな基礎教育を受けてくる学生では、大学院の中でのあらゆる場面(論文作成過程を含め)での指導が必要になっている。
 医療において倫理は非常に大きな比重を占める。研究者は倫理性を常に考えて、研究を遂行するものであり、倫理性の涵養は最も重要な点だと考えている。看護倫理のコースワークをおいている修士課程は多く、また研究倫理審査等の過程を経ることによっても学んでいる。

〈各大学院の人材養成機能に即した高度な素養を涵養する方法について〉

 大学院修了時における達成目標にもよるが、ほとんどの場合で大学院修了で到達目標が完成することはないと思われる。継続的な研修が必要であり、そのシステムの在り方を検討すべき。
 研究活動には、様々な到達レベルの人材の参加が不可欠であり、各人の適正もまた様々である。従って、大学院教育にあっては学生個別の適正を的確に判断して、各レベルの人材を公正に評価しつつ、それぞれを将来的に適正数を養成するような先見的制度設計が必要である。
 医療系では学位に関する多様なニーズが存在するので、目的に合わせて多種類の名称の学位・称号を設定して、それぞれにおける単位認定や過程修了要件に多様性を持たせて、様々なレベルの人材を無理なく無駄なく養成するシステムを構築することを検討する。
 大学院過程の途中で脱落しようとする学生をすくい上げて適正に適合した研究職務遂行者として評価し活かしつつ、その一方で、先端的に優秀な学生を安易に安住せしめないように優先的に達成を促進涵養するシステムを構築する必要がある。
 研究活動の達成度は、研究者個人あるいは研究グループのリーダー個人の能力に大きく依存する。したがって、優秀な学生には初期の段階から研究を主体的に組織して遂行することが可能なような新たな大学院研究助成制度を検討する必要があろう。また、この制度の中で、多様な人材を組織的に活かす、研究管理者としての能力を養成するメカニズムを構築することも必要である。
 教員の教育・研究指導能力のレベルにばらつきがあるので、一人の大学院生に対して複数の教員による指導体制を整備すべきである。
 それぞれの大学院コースの教育目標を明確化し、大学院教育での教育カリキュラムを体系化する。高度専門職業人として専門教育と共に生命倫理学、コミュニケーション学などの教育が求められ、一方の研究者養成に関してはglobal standardが基本となる。Faculty Developmentが特に重要となるであろう。
 研究者/大学教員の養成に必要な教育は,どの学問分野にも共通の目標と方略が立てられると思うが、研究と教育のウエートは,所属する大学や職務によってことなってよいと思う。研究者/大学教員の養成には,早くからプロジェクトマネジメント(研究計画立案,実施と評価法,論文作成ならびにプリゼンテーションの仕方,外部資金の導入方法などを含む)の教育も必要。

教員・学生の流動性の拡大のための方策

〈教員の流動性を高めるための方策について〉

 教員・学生とも自校出身者の割合がどのように推移しているか、流動性の増加とともに教員・学生確保が困難となっている大学等の状況も合わせし、どのような改善の取り組みをしているかについて把握する必要がある。また、各大学横並びの人材育成の組織構成となっていることから、機能区分を明確にすることも必要。
 教員公募・学生募集の積極的に公開するため、大学・研究機関等の公的な共通ホームページ(電子掲示板・人材バンク等)を開設する。
 先端的な教育研究者のさらなる創造性を啓発するとともに、実効性のある国際的流動性を拡大するためには、教員のサバティカル制度を導入することが急務である。
 例えばEUのエラスムスプロジェクトなど、欧米の国際的な大学院連携教育制度に参加して、国際的な単位互換・連携教育制度や、海外の大学とのジョイントディグリーの授与を制度化することが急務である。また、アジア地域にあっては、我が国主導の国際的大学院教育ネットワークを構築する必要がある。
 学部の講座制組織と大学院の組織を別組織とする。大学院組織においては、講座制を廃止して大領域制の組織に組替えるとともに領域内における人事の流動性を確保するために、教員の総定員数を維持しつつ、職位別定員数を固定しない方式を採用する。領域の膨張・縮小あるいは境界領域の拡大に対応できるように定員を流動的に運用できるような柔構造に組替える必要がある。
 客員研究員制度を確立し、教員の流動性を確保するために役立てる。国内外の著明な研究者・臨床家を短期採用して教育の充実を図ることも一つである。
 大学院教育レベルの国際的通用性が叫ばれる中、語学力の不足は明らかであるため、海外の大学との姉妹校提携によって、これまで以上に人的交流を積極的に行い、語学力および国際感覚を養う必要がある。
 日本社会においては大学のみならず、移動する事によるデメリットがそのメリットに比べはるかに大きく、この点が解消されれば、「流動化」は自然に発生すると考える。「流動化」する事にメリットがあるシステムを構築することが必要である。これを構築した研究科などの部局に対して優遇措置を講じることも一策である。
 同一出身大学の教員枠の設定,教員が1箇所に留まるより,異動する方がメリットがあるシステムとすること,研究者ドラフト制度などを考慮する。
 本学ではいったん教養学部に入り、ここを修了してから薬学部に入るシステムをとっているが、この成績と修士課程に進む際の成績との相関関係が非常に高く、真に薬学を勉強したいと思う者が薬学部に入り、大学院へ進むという状況になっており、このことが学生のモチベーションを持たせる意味で非常に役立っている。
 看護学領域に関しては、教員の流動性をむしろ抑えて安定した教育をすることが課題である。

〈学生の流動性を高めるための方策について〉

 医学系の修士および博士課程において、多様な分野からの学生に配慮した授業科目編成とする必要がある。特に非医学系出身者に対して医学系導入科目を設定する必要がある。ただし、大学院の入学資格に際して、備えておくべき必要最小限の医学・生物学的基礎的素養の条件を提示しておかないと大学院教育が煩雑になり、本来の教育目標を達することができなくなる可能性もある。
 大学院を持たない先端的研究機関との、指導委託や連携大学院制度を利用した、学生相互教育メカニズムを拡大促進して、大学院生・ポストドクのレベルでの有機的連携を図る。また、大学院を持つ大学間での単位互換や、大学をまたがる複数指導教官制度などを検討する。
 臨床系大学院と基礎系大学院においては、学生が途中でコース変更が可能となるような配慮が必要。
 社会人および留学生に広く門戸を開き、入学者の多様化を促進すべきである。また、大学院生に多様な経験を積む機会を与えるために、単位互換制度を整備して、統合大学院、連携大学院を構築することも検討すべきである。
 各大学が特徴を持った教育研究を展開し,それをアピールすることにより,他大学から学生が集まりやすくなる。また,他学部他学科からの受け入れを積極的に行うとともに,必要な教育体制を整えること(工学,理学,農学,薬学系から医科学修士課程への入学など)が必要。
 学部からストレート入学であれば、流動性を求めるのは難しい。いったん社会に出た後では流動性を得やすい。流動性があることのみをよしとするのは危険な面もある。

社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策

 医学研究分野・医療分野・医療関連産業界からの社会的ニーズに対応した医学系大学院博士課程の教育を実施する必要があるが、そのためにも医学と他の分野を融合させた専攻系の設置が必要である。また、研究者育成・専門医養成養成および学際的分野の高度専門職業人育成等に目的を絞った専攻系を設置する必要がある。
 大学側が、医学・医療に関連する行政・保健医療・医療関連産業の動向を把握する必要があり、大学側が積極的に関連分野と継続的意見交換の場をもつことが必要。医療分野では、研究者育成と専門医育成ばかりでなく、総合診療医育成が求められており、専門職大学院として地域にも開かれた研修体制を構築する必要がある。
 国民や社会から求められているのは、やはり国民が納得する医療を提供することに尽きる。そのためには、医療系においては資格試験の問題、医学の研究開発の推進の問題、そして医師養成の制度の問題の3つがあり、どれもおろそかにできない問題である。
 国民が望んでいるのは良い医療政策であり、医学の学術研究についても全て最終的にはこの良き医療政策に還元されることを国民は望んでいる。しかし、国民の考えと実際の医療政策とは大きく乖離があり、学術研究が何故大事かということや危機感が国民に理解されないといけないと思う。
 医療系分野については医師養成機関としての役割から他の分野とは量的・質的に異なる状況が存在することを再認識する必要がある。医療行政における医師の需給問題や国内的な適正配置問題、さらには医師の質的担保に関する問題と連携した対応なくしては、医療系大学院改革は実効性を持たない。
 社会的ニーズとの関係を論ずるにあたっては、医療系分野の中での問題にとどまらず、日本国社会全体における医療系分野の位置付けを視野にいれた考察が必要。しかし一方で、国際的な先端的競争力の確保のため、社会的ニーズと乖離・矛盾した立場をとるべき必要がある場合もあるため、施策を検討するに当たり、「戦術」的考察と、「戦略」的考察を明確に区別し意識して方略を策定する必要がある。
 臨床に関しては、信頼できる、かつ安全な医療の提供を国民は望んでいる。そのためにはEBMを実践できる能力の涵養が必要であり、その教育が専門職大学院で行われるべきである。研究に関しては、医療技術の改良・開発を推進できる人材が望まれている。
 国民の関心事のNo.1は健康であり、老後の良質のQOLは誰も望んでいる点である。良質の医療を国民に提供することが求められているが、必ずしもこの社会のニーズと大学院教育のマッチングが行われてきたとは言い難い。
 薬学系大学院においては大学院教育カリキュラムの見直し等で対応できると考えている。従来の大学院教育は、患者の方にあまり目を向けず、最先端の基礎生命科学研究に重点を置いていたと言っても過言ではないため、生命倫理、社会と医療などの領域についてもこれらを講義科目として積極的に取り上げるべきである。
 社会(国民・医療機関等)からのニーズにはどのようなものがあるのか。薬学研究者,あるいは,専門薬剤師に対する期待がどの程度かについて,教育研究に携わる研究者自身が常に意識することが必要であり,常にフィードバックできる体制を作っておくことが必要。このためには,大学院自身で常に社会に開かれた仕組みを作っておくことが大切(公開講座,市民講演会などを積極的に開催するなど)
 医療に対し、また医療人のさまざまな働きについて、まして大学院修了生の機能について、十分な理解を得られているとは思えない。医療人からの情報提供のあり方にも問題があったと考えるので、社会に役立つことをアッピールして、社会から求められるようにならなければならないと考えている。
 社会が何を求めているか、医療の主人公は市民であることに立ち返って、社会のニーズに応えることが、大学院教育の大前提であろう。

3. 研究者養成機能の充実

博士課程における体系的な教育課程の確立

〈体系的なコースワークの設定について〉

 従来の研究手伝い主体から、実質的な授業(特に研究者育成コースでは、研究の展開ができるような幅広い領域の動向、実験技術指導が不可欠)へ転換すべき。単位認定が内容のチェックなしに形式的になっていないかどうか検証すべき。医学系教員の中には研究者育成と称して、研究の手伝いとの位置づけとの認識が強いのではないか。
 理工系の場合、学部では卒業論文が、修士課程では修士論文が義務づけられており、これらを作成する過程で、基礎的知識、基本的な実験技術、科学的な思考能力、自学自習の習慣、問題解決能力などを獲得しているが、医学・歯学系にはこれがないことが根本的問題。体系的なコースワークを設定する場合、科学的思考能力と問題解決能力をいかに涵養するかの一点に絞られるべきであり、その一つとして、Critical thinking program等を導入して、これらの能力を涵養する教育を実施すべき。
 体系的なカリキュラム編成を行い、複数教員による指導体制を構築し、整備すべきである。さらに、厳密な学年制の導入により学生の実力を正確に把握して、確実な教育を行うべきである。
 医療薬学における専門薬剤師の学位取得には,薬剤師としての体系的な知識の習得とのほか,医療現場での実務の経験を必要とする。実務経験については,指導体制の整っている病院薬剤部,薬局でのモデルカリキュラムの作成が必要。
 臨床系大学院では、関連学会が認定する認定医・専門医等の資格と密接に関連することから、カリキュラムを設定する場合、これら専門医等の資格に則ったものとすることも考慮すべき。このほか、患者を対象とした臨床研究(新しい診断・治療法の開発・評価、臨床疫学、症例報告など)も課すべき。
 基礎系大学院においては、現在の生命科学の基本的技術(遺伝子技術、RIの取扱い、細胞培養、統計処理など)をコースワークで修得させるべき。
 専門薬剤師(博士課程)の教育には,薬学部におけ大学院指導教員ほか,病院医師,薬剤師からなる専門チームを構成し,コースワークにおける教育責任を負う教員組織の体制が必要。
 現行博士課程での評価は,30単位以上を前期課程で習得すれば,博士論文の審査および試験に合格すること満たされるが,博士課程における体系的な教育課程のプログラムが明確でない。一般学位と専門職学位を,例えば,コースワークの課題設定で,その違いを明らかにする。
 創造性と論理性に富む研究者を育成するため、カリキュラムを構築し、コースワークを課している。コースワークと関連を持たせて、博士論文の作成過程を明示している。これは学位取得までの時間を短くする上でも、また修了後の生産性をあげるにも、役立っている。
 社会人学生に対する教育課程と研究指導体制を確立し、専門職を持つ社会人に対応した学びやすい環境を整えることが必要。
 各大学の課程を意識的に特化させ、目標を明確にしたコースワークの設計が有効。これによって大学間の不必要な序列化が生じないように相互間の流動性を担保し、また各種人材の価値と意義を尊重し合うような研究社会制度の確立と並行させることに、注意することが肝要。
 研究者養成の場合、自分で研究を企画する能力を身に付けさせることを重点に指導すべき。そのためには、基礎的な内容のコースワークを充実させることも必要だが、その上で、自分でしっかりしたストーリーのある研究をし、それを論述しきるディサテーションに取り組ませる必要がある。
 ディサテーションを書けるということは、他の分野とも交流でき、社会の人々を説得できるということである。日本の博士論文とされるものの多くがパブリシュの意味を誤解し、特に理系においては学会誌に載せなければならないと誤解している。学会誌に載る形のものにするために、自己の企画によるテーマで十分論述するということをせず、トピックスの集積に陥る危険を孕んでいる。また、共同研究の一部ということも多くなり、それが、学生が教員の研究の手伝い、労働力になるというようなことにつながっている。

〈学位の在り方について〉

 臨床医養成を主要な使命とする医療系大学にあっては、卒業生の社会活動現場における「学位」の持つ意味や価値を、国際的・多角的に再検討する必要がある。臨床医療現場における医療認定資格と、医学研究現場における大学院学位との関係を明確化・分離化・相対化するとともに、相互の関係性や互換性についての再定義を行う。
 特に医療系分野にあっては、各レベルの学位の日・欧・米の間の国際的共通性が著しく低く、若手人材国際交流の障害となる場合が多いことについての検討が急務である。各国の歴史的経緯によって定まってきた医療系高等教育課程構造の比較検討を行って、我が国の現状にマッチした固有の制度を模索する一方で、諸外国から我が国への優秀な若手人材の流入を促すような制度の戦略的構築が望まれる。
 医学・歯学においては、学位授与基準の低さが指摘されており、その見直しが必要である。基礎的知識と科学的思考能力を含む問題解決能力を厳正に審査する必要がある。
 学位論文については、公表はさせるものの、雑誌への掲載は必ずしも義務付けないような配慮が必要。
 臨床系大学院での学位授与に当たっては、博士論文のほか、関連学会等における専門医の取得、臨床経験等も考慮に入れるべき。 
 課程修了によって養成されるべき人材(独創先端的研究者・研究コーディネータ・実働的研究実支援的研究遂行者・研究情報収集管理運用者など)のビジョンを明確に意識したコースワークを設定し、各コースに対応した学位の種類の多様性を導入する必要がある。また、臨床医学系にあっては、医療認定資格と組み合わせた学位制度設計も可能。

〈論文博士制度について〉

 諸外国においては、博士の学位は高度教育を担っている大学院において、その課程を修め顕著な業績をあげた者に授与される。日本における論文博士の制度は明らかに大学院制度の充実の方向とは相容れないものであり、抜本的に見直す時期に来ていると考える。
 論文博士の存在は、博士課程の意味を不明確にするものであり、論文博士制度は廃止した方がよい。もし優れた論文の執筆者に何らかの学位を与えるのなら、「博士」ではなく、他の名称(例えば「碩士」)などにすべきである。
 大学院重点化により、実態としては論博は減少していると思われるが、この制度を廃止してよいかどうかの検証は必要。
 医学・歯学系の論文博士制度は、博士号レベル低下をもたらしている側面があり、改善する必要があるが、これまで他学部出身研究者が医学・歯学の基礎研究を高度に広く支えてきたことも考える必要がある。これらの研究者が博士の学位を取得できるルートを確保した上で論文博士制度を廃止することが望ましい。
 論文博士で学位取得が容易であるならば,課程博士に進学する大学院学生は減少する。課程博士に課すべき単位取得を明確にし,論文博士でも取得を義務付けることも考慮すべきであろう(社会人でも取得可能な昼夜開講制大学院を併設するなどの工夫が必要)。

大学院の研究機能の強化(施設・設備など)

 研究費の獲得状況とも密接に関連して、大学院教育・研究の施設・設備の格差が拡大していないか、また、研究領域でそれぞれ設備等を使用しており、共同した有効利用の推進・機器の共通管理およびそのための維持管理経費が十分賄われているかの精査が必要。
 研究費配分が競争的資金中心になり大学間の格差は今後さらに拡大することが予想されるが、そのなかでも研究を行う上で競争的資金の獲得ができなくても最低限のレベルを保証するシステムが必要かどうかを検討する。国全体での各大学院の適正規模の検討も必要ではないか。
 共同実験施設のセンター化により研究組織の合理化を図る。
 ポスドク制度の充実、研究支援職員(技官、テクニシャン)の確保ができるような国の財政支援が必要である。
 大学院重点化によって、量的整備を目的に、入学が安易になされている傾向がある。量的な拡大を実施する一方で、独立法人化に伴って、人員削減・研究費削減が進行しており、大学院の基盤が脆弱化しているのが現状である。大学院の重点化のあり方について検証を行う必要がある。
 各課程の目的・役割の明確化することは,医療系では,専門職学位取得の目的設定など,特に実務的な領域では比較的容易である。大学院教育機能の強化には,各課程が明確な目的を設定して,人材養成機能,施設,設備,研究費など財政的な裏づけを強化することが必要。
 研究機能を強化する上で組織や施設・設備面での充実は,根本的には財政面での支援枠の拡充が最も重要である。ただし,限られた予算枠の中での配分が適正であるかどうかの検証が常に必要となる。施設や設備が有効に利用されたか,またその利用による成果を厳しく検証(成果報告書の提出とフォローアップなど,第三者評価機関による評価)することが必要である高額機器設備については,とくに効率的な運用(専任オペレーターの雇用,あるいは派遣業務などによる)と共同利用の推進を積極的に行う。
 施設・設備の効果的な運用という点で重要。連携大学院による指導教員の選択肢が増えること,大学院学生の活性化につながるメリットがある。
 大学院教育の連携できる研究施設を持つことは有用である。研究のためには、その領域の実践に必要な施設・設備を兼ね備えることになり、院生の研究が発展する可能性が大きいと考えている。
 欧米諸国の社会経済状況に依存した研究者社会の判断基準に左右されない、我が国独自の研究評価軸を創造する必要がある。そして、その評価軸の影響力を世界を主導すべく拡大しながら運用する戦略的情報システムを、大学院中核機関に集中的に置くことが望まれる。

学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策

〈学生に対する経済的支援について〉

 医学系では大学院博士課程入学が研修等の修了後になることが多いために学生が高齢化している。また、経済的支援も少ないため、論文博士が未だに多く存在する大きな理由の一つとなっている。臨床研修2年間が必修化された現在、経済的支援なしに大学院は維持できるか。
 医学系では、専門研修と連動した新たな課程大学院の枠組みを検討する必要がある。十分な経済的支援を確保した研究者育成と、医師として勤務しつつ専門医研修を行う者を専門職大学院に組み込むことができるかどうかを検討してはどうか。
 医学系の課程大学院は、量的に拡大しても、研究者育成が必ずしも充実しているとはいえない状況である。どのように研究者育成を推進するかについては、医学系大学院に研究者育成コースを設けると同時に、大学院早期修了、授業料免除、修了後の安定的な経済的支援と研究継続する環境を政策的に十分確保することが不可欠である。
 卒後臨床研修の必修化が医学では今年度から、歯学では18年度から予定されている。学部卒業後、臨床研修が終わって大学院に入り博士号を取得するまでかなりの年数がかかることになり、学費支弁者の負担がかなりなものとなってしまう。このため、今後、奨学金の拡充が必要である。
 学生を取り巻く経済環境は厳しい状況に置かれている。したがって、学生が安心して進学し研究に専念できる環境を整備すべきである。そこで、高等教育における奨学金貸与に対して財政的基盤の充実を図るべきである。海外研修に参加するための財政支援も充実する必要がある。
 TA,RA経費の増額。学振枠の増大など,大学院学生への経済支援を拡充してゆく。
 現在大学院への進学率は極めて高いが、優秀な学生の中に27,28歳まで大学院学生として無収入であることで大学院博士課程進学を断念し、最終的に研究者への道をあきらめる者もかなり存在する。奨学金、TAなどの予算措置の充実が必要。
 博士課程の学生は修士課程の、また、修士課程の学生は学部学生の教育義務を課し、TA給与を与えることにより、大学院学生の身分の職業化が可能。また、これにより、その課程自体の教育効果をも促進し、かつ将来の研究教育人材としてのキャリアパスをも開拓することが可能になる。

〈大学院修了者のキャリアパスについて〉

 医学系では博士号取得者が教員(助手)採用の条件となっている場合が多い。研究者育成の場合、大学院修了者のキャリアパスの前提となる助手等ポストは確保されているか。
 国立大学の場合、定員削減のため、医学系でも助手数が大幅に減少している。研究者育成には不安定な任期制の競争的・短期的ポストの確保必要であるが、経済的に安定なポスト(ただし、一定期間ごとの厳密な評価をともなう)の確保も不可欠と考えられる。
 現在の大学院の教育は学位論文作成指導に偏重しているきらいがあるが、研究能力をみずから他業種に生かすことができるように起業化のノウハウなど、研究職以外の職種に対応できる実務能力の教育を課程に組み込むことを考慮してはどうか。
 大学院学生のキャリアーパスに関わるもので,大学院の充実,すなわち大学院学生の受け入れの拡充は,当然卒業後のキャリアーパスの量的,ならびに質的増加を伴わなければならない。新たなキャリアーパスの開拓,確保が重要となる。
 基礎医学研究者の確保をいかにして図っていくべきかを検討すべき。とくに,新たな教育・研究領域の講座などの創生が必要である(例えば,バイオインフォーマティクス,薬剤疫学,再生医療,脳科レギュラトリーサイエンスなどの領域)。
 医科学修士課程枠の拡大と医学部などおける基礎医学研究講座の拡充を図る。基礎医学研究講座は,必ずしも医学部とは限らず,医歯薬学連携大学院などを促進する。
 医療系研究者のキャリアパスの拡大には,アカデミックポジションの拡充。とくに,医歯薬系大学における基礎医学系講座の拡充が必要。また,公務員,公的研究所,産業界などにおいて大学院,とくに博士課程修了者を積極的に雇用すること。ベンチャー企業の創設,科学評論家,サイエンスライターなどマスコミへの啓発活動に従事する人材など,積極的な活動を支援する仕組みも必要。
 医系の大学院では、最近になり医学部卒業者以外の学生を受け入れる修士課程がどんどんで設置されている。これまでの大学院は医学部卒業者への教育というのがある意味で前提となっており、それほどキャリアパスについて真剣に考えていなかったが、医学部出身以外の者が今後は多数を占めると予想される中、彼らのキャリアパスをどう考えるのかという問題がある
 在外公館を通した積極的な広報・支援活動を行い、各国への医療支援と連動した形での人材交流、人的ネットワーク強化の施策を戦略的に策定実施する。

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