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資料2
中央教育審議会大学分科会
将来構想部会(第7回)H14.3.12






第三者評価制度の導入等による大学の教育研究の質の
保証を図るためのシステムの構築について(骨子案)
   
   
1   総論
   
   大学の教育研究の質の確保については、現在、国による厳格な設置認可と各大学における自己努力に負っている。
   総合規制改革会議等においても提言されているように、国による事前規制は一層緩和し、大学が自らの判断で社会の変化に対応して多様で特色のある教育研究活動を展開できるようにすることが肝要である。
   大学設置に係る事前規制を緩和することに伴い、設置後の教育研究活動等の状況に対する国の関与は引き続き謙抑的としつつ、今後は当該大学以外の第三者が継続的に事後チェックを行うことによって、国際的通用性等の観点からも大学としてふさわしい質の維持向上が図られていくシステムを構築する必要がある。
   このため、大学設置後のチェック体制を整備するとともに設置認可の弾力化を図ることにより、大学の自主性・自律性を踏まえつつ全体として大学教育の質が確保され、その一層の活性化が可能となるような新たな方策を講じる。
   
   
2   設置認可の在り方の見直し
   
  (設置認可の対象)
   大学の設置に関しては、現在、学部の学科レベルまで国の認可の対象としているが、国による事前規制は一層緩和するという考え方を踏まえ、大学が主体的・機動的・弾力的に組織改編できるよう、設置認可の対象は大学の教育研究の質を保証する上で必要不可欠な事項に限定する。
   設置認可の対象を限定する方法として、大学の基本組織である学部のみを認可対象とし、その下部組織である学科は届出事項とすることが考えられるが、この場合、同一の学位を授与する課程でも学科にするか学部にするかという組織の違いだけで取扱いが異なるという問題が生ずるため、諸外国の例のように、学位を授与する課程としての同一性という観点を加味することが必要と考えられる。
   したがって、国の設置認可の対象は、大学の基本組織である学部等の新設・改廃について行うことを原則とするが、改編前後の「学位課程としての異同」を勘案して次のような弾力的な取扱いとする。
 
(1)  現在授与している学位の水準・分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は、学部等大学の基本組織の設置であっても国の認可は不要とし、届出で足りることとする。
<例>・ 同一の学位を授与する昼間・夜間それぞれの学部を昼夜開講制の1つの学部に改組する場合、授与する学位が改組前と同じであれば学部の設置であっても届出とする。
(2)  新たな水準・分野の学位を授与するための組織改編の場合は、学部の学科の新設であっても新たな学位課程の新設として認可の対象とする。
<例>・ 医学部の中に既設の医学科とは別に看護学科を新設する場合は、看護学部の設置の場合と同様、認可の対象とする。
 ・ 既設大学に新たに「法科大学院」の課程を設置する場合は、研究科として設置するか専攻として設置するかを問わず、認可の対象とする。
(3)  短期大学の学科については、大学の学部に相当する短大の基本組織として認可の対象とするが、審査の手続きや内容の簡素化を図るものとする。
   私立大学の収容定員は、学科又は課程を単位とし、学部ごとに学則で定めており、その増減に係る学則変更には国の認可が必要であるが、今後引き続き認可対象とするのは大学全体で収容定員が純増する場合のみに限定し、大学全体の定員内における学部(特定分野の学部を除く)間の定員の増減等は当該大学の裁量に委ねることによって、大学による自律的な組織編成を容易にする(学則変更の届出は必要)。
   届出事項となったものについて、届出内容が法令に適合しない場合は、変更その他国による必要な措置が講じられるようにする。
   
  (設置審査の取扱い方針)
   大学、学部等の設置に関する審査に当たっては、現在、抑制的に対応する方針がとられているが、看護、情報、社会福祉等特定の分野に関しては抑制方針の例外とされているため、これらの分野に係る学部が大量に増設されるなどの状況が見られるところである。したがって、大学間の自由な競争を促進するためにも、医師、教員等人材養成の需要が満たされているため現在は拡充を認めておらず、かつ、今後もその取扱いを継続する必要があると認められる特定の分野を除き、抑制方針を撤廃する方向で検討する。
   首都圏、近畿圏、中部圏における工業(場)等制限区域・準制限区域内の大学の設置等については、大都市部における過当競争の抑制、地方における大学教育の機会の提供、地域格差の是正等の観点から抑制的に取り扱っているが、大都市部における大学の自由な発展を阻害している等の批判があることを踏まえ、抑制方針を撤廃する方向で検討する。
   
  (校地に係る基準の見直し)
   大学設置基準等において、校地面積基準(校地が校舎の3倍以上)や校地の自己所有比率規制(原則として基準面積の2分の1以上が自己所有)が設けられているが、これらについては、学生等の多様な活動を可能にするとともに学校法人の資産確保の面で一定の役割を果たしていることから、数量基準を撤廃することは適当ではないと考えられるが、例えば校地面積基準を校舎面積と連動しない形で定めることを検討するほか、合理的な理由があれば基準の緩和を認めるなど、基準自体の在り方について検討を行うこととする。
   
   
3   第三者評価(適格認定)制度の導入
   
  (新たな第三者評価制度の導入)
   国による事前規制を最小限のものとし、事後チェック体制を整備するとの観点から、大学の教育研究活動等の状況について、国の認証を受けた第三者(認証評価機関)が定期的に評価し、一定の基準に達しているかどうかをチェック(適格認定)するとともに、大学が自ら改善を図ることを促す制度を導入する。
   大学全体を組織体として評価する、いわゆる機関別第三者評価について、各大学は認証評価機関による評価を受けることとする方向で検討する。
     ただし、我が国では機関別第三者評価を実施する機関が必ずしも十分育成されておらず、現在、その整備充実に向けた努力が関係方面で進められているという状況にかんがみ、その適用については一定の猶予期間を設ける等の配慮が必要である。
   大学の専門性を様々な分野ごとに評価する、いわゆる専門分野別第三者評価について、特に高度専門職業人養成に特化した大学院(専門職大学院(仮称))においては認証評価機関による評価を受けることとする。
   
  (認証評価基準)
   国は、適格認定のための第三者評価を実施する機関に係る一定の基準(機関認証基準)を示し、認証申請のあった機関のうちこの基準を満たすものを認証評価機関として認証する。
   機関認証基準としては、例えば以下の事項を定めることが考えられる。
     ・   大学評価のための適切な基準を定めていること
     ・   適切な評価が実施できる体制が整備されていること
     ・   定期的に評価を実施すること
     ・   評価結果について一般に公表すること
     ・   評価結果に係る不服申立て制度を整備していること
   
  (第三者評価の結果を踏まえた措置)
   適格認定されなかった大学、特にその修了が国家資格の受験資格等とつながる専門職大学院(仮称)に対する対応の在り方について検討する。
   
   
4   法令違反状態の大学に対する是正措置
   
   今後の大学の教育研究における質の維持向上は、新たに導入する第三者評価制度及びその評価結果を踏まえた各大学における取組が基本となるが、このような大学の自主性・自律性を踏まえた事後チェックシステムに移行する以上、法令違反の状態に陥った大学に対しては、国として厳正に対処していく必要がある。
   しかしながら、違法状態の大学に対する国の措置としては、行政指導以外には、現行法令上、学校の閉鎖命令及び私立大学以外の大学に対する変更命令しか付与されておらず、国の是正権能は限定されている。
   このため、違法状態にある大学に対する改善勧告など、閉鎖命令に至る事前の措置を導入する方向で検討する。
   設置認可取消について、現行法令上明文化されていないため、諸規定を整備する。
   
   
5   留意点
   
   設置認可の弾力化に当たっては、第三者評価機関による評価の成熟化が不可欠であり、その実施のためのスケジュールの明確化等を図るなど、新たなシステムへの円滑な移行に留意する。
   第三者評価機関に対する国の支援方策について検討する。
   教育研究活動や財務関係の状況など大学の情報提供を一層促進する。
   大学の存続や学生に対する教育機会の提供が困難になった場合、学生が学習を継続して行うことができるよう、適切なセーフティネットの整備について検討する。



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