平成19年4月1日施行。
現在の大学設置基準では、講座制又は学科目制を原則とするような趣旨の規定となっており、講座制又は学科目制について詳細に定めている。
このため、平成13年の大学設置基準等の改正の趣旨である柔軟かつ機動的な教育研究の展開を実現することや、今日の教員組織の多様化の趨勢への対応等の観点からは、これらの規定を削除することが適切である。
大学設置基準等上には、教員組織の基本となる一般的な在り方として、
※ 教育研究上の目的を達成するため、必要な教員を置くこととし、主たる授業科目は原則として専任の教授、准教授が担当すべきであること
※ 大学は、それぞれの教育研究上の目的を達成するために、教授、准教授、助教等の全ての教員について、役割の分担及び連携の組織的な体制が確保され、かつ、責任の所在が明確であるよう教員組織を編制するものとすること
を定めることとし、具体的な教員組織の編制は、各大学において、当該大学や学部等の目的を達成するため教育研究の活性化が図られるよう、自由に設計できることとすべきである。
若手教員の養成においては、教育面と研究面の両方が重要であり、助教の主たる職務として学校教育法上に規定する職務内容としては、教育と研究の両方とすることが必要である。
このため、例えば、大学が担当させることが適切であると判断した授業科目を担当したり、大学院学生への研究指導に関わることができるなど、自ら教育研究を行うことを主たる職務とすることが適当である。なお、大学設置基準等上、大学に最低限置くことが必要な「専任教員」に含めることができるとすることが適当である。
助教は自ら教育研究を行うことを主たる職務とし、授業科目を担当することができることから、教授等と同様に大学における教育を担当するに相応しい教育上の能力を有すると認められることが必要である。
また、大学教員のキャリアパスの一段階に位置付けられることから、研究上の能力として、少なくとも基本的に修士又は専門職学位の資格を求めることが適当である。
今回の制度改正により、助教について、自ら教育研究を行うことを主たる職務とするとしても、大学、学部等が組織として方針等を定め、その方針等に従って、役割の分担及び連携の下で組織的に行わなければならないこと等について支障が生じないように、次のような措置を講じることが必要である。
このため、ア.の大学設置基準等上の規定に加え、大学院設置基準に、各教員が役割の分担及び連携の下で、組織的に大学院学生の教育を行う体制を確保するよう教員組織を編制するものとする旨の規定を設ける。
国際的に魅力ある大学院教育の展開に向け、各大学院は、どのような人材を養成しようとするのか、その目的や役割を明確にすることが重要である。それに即して、多様な形で、教育研究体制の構築や教育研究活動が責任を持って実施されるよう促進方策を講じる必要がある。
このため、各大学院が、各専攻ごとに、どのような人材を養成しようとするのかを、学則、研究科規則等において具体的に明らかにするとともに、その内容を積極的に社会に公表することを義務付けることとし、関係規定を大学院設置基準に新たに置くことが適当である。
現在、各大学院においては、博士課程を前期と後期に分ける積み上げ方式、修士課程と博士課程(一貫制、区分制)を別々に設置する並列方式などの課程の設置方式を採ることが可能となっている。
並列方式は、本来の博士課程、修士課程の目的に即した教育の課程の編成がしやすくなるなどの利点を有するが、当該課程を編成する専攻ごとに担当教員を配置する必要があり、積み上げ方式に
比べてより多くの教員が必要となることから、この方式の導入は進んでいない。このため、各大学院が並列方式を採用しやすくなるよう、大学院を担当する教員を修士課程と博士課程の専攻それぞれ一つまでは、研究指導教員として取り扱うことができるように平成12年に取扱いを変更したが、大学設置の準則主義の観点から大学院設置基準においてこのことを明確に示すことが適当である。
グローバル化や科学技術の進展など社会の激しい変化に対応し得る人材の養成を行うためには、課程制大学院制度の趣旨に沿って大学院教育の組織的展開の強化を図ることが大切である。
このため、各大学院においては、専攻分野に関する高度の専門的知識・能力の修得に加え、学修課題を複数の科目等を通して体系的に履修するコースワークを充実し、関連する分野の基礎的素養の涵養等を図っていくことが必要である。
大学院の教育機能の実質化を図り多様な展開を促すために、学問分野の特性に応じ、例えば、研究者として必要な研究技法や研究能力を身に付けるためのフィールドワークや文献調査を定期的に行わせるような場合、講義と実習といった複数の授業の方法を組み合わせた授業科目を導入することも重要である。そのような取扱いが容易にできるよう、設置基準における単位の計算方法について明確化することが適当である。また、我が国の単位制度(45時間の学修をもって1単位とすることを基本とする制度)の趣旨に沿って十分な学習量が確保されるよう、その実質化に向けた各大学院の努力が求められる。
博士課程における学修の集成は博士の学位論文の作成であることを踏まえ、博士課程(前期)の修了時においては、修士論文の作成に代えて一定の学修成果を求めることなどにより、5年間の教育が有機的なつながりをもって行うことができるようにすることが重要である。また、修士課程についても、その課程の目的が多様になっていることを踏まえ、体育、芸術等の分野以外にも、高度専門職業人の養成を目的とする課程などにおいては、特定課題の研究など一定の学修成果をもって修士論文を不要とするなど柔軟に取り扱っていくことが必要である。
このため、大学院設置基準上、修士課程及び博士課程(前期)の修了要件として、修士論文の審査及び試験に合格することを基本とせず、各大学院のそれぞれの課程の目的に応じ、特定の課題についての研究の成果(修士論文を含む)の審査及び試験に合格することとするよう見直すことについて検討することが適当である。この場合、各大学院においては、修士論文が研究者としての訓練を積む上で大きな役割を果たしてきたことや、修士論文を課す場合とそうでない場合の公平性を確保しつつ、新しい教育・研究指導の在り方を工夫すべきである。さらに、博士課程(前期)は、現在、大学院設置基準上、修士課程として取り扱うものとされていることに関し、本来、修士課程と博士課程の目的、役割は異なるものであることなどを踏まえて、その位置付け、関係について検討する必要がある。
教育の課程の組織的展開の重要性にかんがみ、それぞれの大学院教育の現場における教育研究の特色、創造性等が阻害されることのないよう留意しつつ、各大学院における課程の目的、教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント(FD))を実施することが必要である。これを踏まえ、各大学において授業及び研究指導の内容等の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする旨の規定を大学院設置基準に置くことが適当である。
大学院の課程の修了時における質の確保を図るとともに、教員の教育能力の向上を図る観点から、教員は、学生に対してあらかじめ各授業における学修目標や目標達成のための授業の方法、学位論文の作成や審査に至るプロセス及び課程の年間計画等を明示することが必要である。また、学修の成果に係る評価及び修了の認定に当たっては、学生に対してそれに係る成績評価基準をあらかじめシラバス(講義実施要綱)などに明示するとともに、当該基準に沿って厳格な成績評価を実施することが必要である。これを踏まえ、各大学院における成績評価基準等の明示等について、大学院設置基準に規定を置くことが適当である。
「専任教員」や「実務家教員」の意義や必要とされる資質・能力等を具体化・明確化する努力が必要とするとともに、早急に取り組むべき重点施策の一つとして、高等教員の質の保証に関連して、設置認可や認証評価等における審査の内容や視点の明確化を図るため、専任教員の教育・研究や管理運営上の責任の明確化を例示。
※ 中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」(抄)(平成17年1月28日)
23ページ16行目~"(イ)設置認可の適切な運用"
53ページ30行目~"3.「12の提言」中高等教育の質の保証についての関連施策"
※ 「構造改革特区の第6次提案に対する政府の対応方針」(抄)
(構造改革特別区域推進本部決定/平成17年2月9日決定)
※ 「規制改革・民間開放の推進に関する第一次答申(追加答申)」(抄)
(規制改革・民間開放推進会議答申/平成17年3月23日)
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室
-- 登録:平成21年以前 --