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第2章 特別支援教育の理念と基本的な考え方 協力者会議最終報告では、特殊教育の果たしてきた役割や障害のある子どもの教育をめぐる諸情勢の変化を踏まえつつ、「特別支援教育」の理念と基本的な考え方が提言されている。 これまでの「特殊教育」では、障害の種類や程度に応じて盲・聾・養護学校や特殊学級といった特別な場で指導を行うことにより、手厚くきめ細かい教育を行うことに重点が置かれてきた。 「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。 また、すでに述べたとおり、現在、小・中学校において通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する指導及び支援が喫緊の課題となっており、「特別支援教育」においては、特殊教育の対象となっている幼児児童生徒に加え、これらの児童生徒に対しても適切な指導及び必要な支援を行うものである。 すでに、文部科学省においては、平成13年の組織再編により「特別支援教育課」が設置されており、都道府県教育委員会等の組織においても組織名称等に「特別支援教育」を用いる例が増加してきている。 また、平成15年度から開始された全都道府県教育委員会に対する委嘱事業(後述)等を通じ、取組に差はあるものの、全体としては特別支援教育の実施体制整備が着実に進められている。 このことは、従来の特殊教育が果たしてきた役割や実績を否定するものではなく、むしろ、これを継承・発展させていこうとするものである。したがって、特別支援教育は、これまで特殊教育の枠組みの下で培われてきた教育水準や教員の専門性が維持・向上できるような方向で推進されることが必要である。 また、LD・ADHD・高機能自閉症等の状態を示す幼児児童生徒が、いじめの対象となったり不適応を起こしたりする場合があり、それが不登校につながる場合があるなどとの指摘もあることから、学校全体で特別支援教育を推進することにより、いじめや不登校を未然に防止する効果も期待される。さらに、これらの幼児児童生徒については、障害に関する医学的診断の確定にこだわらず、常に教育的ニーズを把握しそれに対応した指導等を行う必要があるが、こうした考え方が学校全体に浸透することにより、障害の有無にかかわらず、当該学校における幼児児童生徒の確かな学力の向上や豊かな心の育成にも資するものと言える。こうしたことから、特別支援教育の理念と基本的考え方が普及・定着することは、現在の学校教育が抱えている様々な課題の解決や改革に大いに資すると考えられることなどから、積極的な意義を有するものである。
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