算数・数学ワーキンググループ(第5回)における主な意見

1.算数・数学において育成すべき資質・能力について

(1)算数・数学における見方や考え方(案)について
○ 小学校のところに帰納的・類推的・演繹的というふうに詳しく書いたのは良いが、現行の学習指導要領では、本文ではなくて算数的活動の5年生において初めて演繹が登場する。中学校になってから演繹的な考え方を学ぶという大きな枠があったと思うため、小学校については、帰納・類推だけを示し、「など」としておくのも良いのではないか。ただし、小学校から演繹的に考えることが重要であるという議論の上で入れるのであれば、それも結構だと思う。
○ 資料5では、中学・高校の「論理的に考え考察する」という表現に対応する小学校の部分は、「見通しを持ち筋道を立てて考察する」となっている。「演繹的」の表現の代案ということであれば、あえてそういう表現もあり得るのではないかと思う。

2.資質・能力の育成のために重視すべき算数・数学の評価の在り方について

(1)個別の知識・技能について
○ 「概念」ということが明確に位置付けられた点について、本日欠席の委員の中にも、算数・数学においては概念の獲得、形成が大事だと指摘している委員もおり、是非、明確に位置づけていただきたい。なお、平成10年と現在の学習指導要領では、小学校では算数で概念という用語を使っていなかった。意味という言葉を使っていたと思うので、もし可能であれば、今後、大枠が決まった段階で、数と量と図形については、概念という言葉をうまく位置付けてほしい。
○ 現行の高等学校の指導要領では、中学校に比べて少しレベルが高く体系的な部分という含みを込めて基本というふうに使われていることを踏まえると、小学校のところが知識・技能を概念、性質というふうに格調高くされたのであれば、基本という言葉を残すかどうか検討する必要があると思う。
○ 数学を学習するとき、意味が分からなくも、とにかく計算はできるということが数学の大きな特徴である。知識と技能の観点が一緒になったときに、例えば、計算ができているということについて、計算ができたということイコール意味が分かっているというふうに誤解が生じてしまうことが強く懸念される。数学に関しては、この議論はしっかりやって、同じ観点の中に入っていても、それぞれ違う文言で柱を立てるということが大事だと考える。
○ 知識・技能がひとまとめになることで、答えは出せるが、何を自分がやっているのか全く分かっていないという心配はあるが、一方では、それぞれ小・中・高において、概念とか原理、法則を理解するという言葉が完全にはっきりと書かれており、絶対落としてはいけないところが明確にはなっていると思われるため、この書きぶりで、そこを理解していただけるのではないかと考える。

(2)思考・判断・表現について
○ 三つの柱の中の思考・判断・表現については、この内容が、学校現場で誤解しないよう、教科ならではの特性が見える形に、学習指導要領やその解説書での表現の仕方を工夫する必要があると考える。
○「考察する」という表現について、もろもろの数学的活動を進めていく際に、縁の下の力持ちとして働くものとして見方・考え方もあるため、その辺のところも整理をしながら、適切な表現をまた探ってほしい。

(3)主体的に学習に取り組む態度について
<「主体的に学習に取り組む態度」の表現について>
○ 「学習に取り組む態度」というと、例えば宿題をやってきたかとか、発言をしたかとか、ノートを真面目にとったかとか、そういうイメージが先に出る。もう少し数学的にこんなところを見てほしいというメッセージが込められるよう、例えば、「主体的に数学を活用しようとする態度」とか、数学独自の文言に変えても良いのではないか。
○ 「主体的」という文言が意味することをうまく発信していかないと、自分だけで学習に取り組めば良いのだと誤解されてしまう。本来、算数・数学というのは、知的なコミュニケーションのツールとしながら成立するものであって、現行の中学校の指導要領などでも、数学的コミュニケーションの重要性というのが強調されている。算数・数学では自分が納得するだけではなくて他者を説得する、そのために質の高い表現方法を考えていく、そこに教科としての非常に重要なポイントがある。主体的に学習に取り組む態度に算数・数学の持っている教科の価値としての協働性や、数学的コミュニケーションの重要性を打ち出してみても良いのではないかと思う。

<振り返りについて>
○「問題解決の過程を振り返る」という表現は、主体的に学習に取り組む態度の中で記載されていることから、このような表現になっているかと思うが、一般の先生方には少し難しい文言になっている。
○ 「学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする。」という記述については、非常に重要なことで、これからの子供たちにそういう力を付けていきたいし、そういう教育が実現したら良いと考えているが、この文言をそのまま出すと、学習を振り返るということが小学校の教育現場においては、単なるおさらい、学習感想に終わってしまう可能性がある。そこで、「学習の成果を振り返る」とすることで、算数らしい、今日学んだことの意味を問う等の意味合いが込められるのではないか。
○ 振り返りは、子供たちのやる気、意欲を育てる教育として本物になっていく大切なところである。深い学びを算数において実現する勘どころが、この振り返る場面であるので、小学校の学習を振り返って、よりよく問題解決しようとするというのは、これはこれで十分に練られた文章ではあるが、さらに知恵を絞りたい。
○ 振り返る学習の範囲が広すぎるという懸念は各委員共通している。よりよく問題解決するというものの、「よりよく」であるから、その前に問題解決が存在するはずであり、その辺も考えての表現を工夫してほしい。

<その他>
○ 小学校では、中・高と異なり「問題解決しようとする」という表現になっているが、この表現については、伝統的に引き継がれている表現であり、振り返って評価・改善したものをまた新しくさらに生かしていくという趣旨であれば、それで良い。
○ 小学校では、よりよく問題解決しようとする中に、問題を解いた後にさらに発展させようという趣旨も感じ取れる。一方、中・高の記述は、評価・改善で止まっていて、改善の中にさらに問題を解いた後で発展させたり進化させたりというニュアンスが出ていない。むしろ、中・高の方は評価・改善、さらに発展だとか、そういう言葉も付けてみた方が主体的に取り組む態度の柱としてはいいのではないか。解いて終わりにしないで、さらに自らそこを踏まえて何かやるという意欲が出るようなものを示した方がいいのではないかと思う。
○ 中学では、高校と異なり、「粘り強く考え」との文言が入っていない。中学校においても、数学的なセンスは非常にあるにも関わらず、しっかりと時間をかけてその学習に向き合えないために、本来の力として結び付いていかない子供たちがいる。したがって、必ずしも数学の力というよりも、数学を身に付けるための粘り強さ、根気強さみたいなものをこの主体的に取り組む態度の中に文言として入れた方がいいのではないかと思う。

(4)全体の構成について
○ 記載の細かさの程度について、米国の細かい列挙型に比較し簡潔であるが、日本は伝統的に学習内容が緻密によく考えられており、この程度の細かさがちょうどよいと考える。
○ 三つの柱から横断的に見ていくという考え方が根本にあるが、既に算数・数学教育の中では、数学的な見方・考え方として独自の位置付けもあるため、今までの数学的な見方・考え方と同じだとの誤解が生じないように、これまでの見方、考え方との関係をきちっと説明すべき。

3.統計的な内容等の改善について

(1)小・中・高等学校を通じた統計教育のイメージ、内容等の整理について
<小・中・高等学校を通じた統計教育のイメージ、内容全体について>
○統計教育の本質的特性、又は統計の教材の持っている本質的特性を見つめ直して、統計教育によってどのようなジェネリックな能力が育成されるかを整理した上で、それをベースにして小・中・高をしっかりとつなげていくということが非常に重要。例えば問題解決のプロセスでは、課題を発見して、そこから必要に応じてデータを収集して、いろいろな問題解決をして、もう一回振り返って、批判的に物事を見ていくということである。一方、例えば将来を予測するとか、傾向をつかむとか、物事を比較するとか、思考・判断の材料として統計を使っている訳だが、そのようなものの見方は非常に重要な能力で、大切。それらが、どの学校種の段階でどの程度まで狙っていくかというようなことを丁寧に整理していかないと、同じようなことを繰り返しやっていたり、学校種でひっくり返ってしまったりというようなことにもなりかねない。
○ 小学校、中学校の学年進行に応じて何をやるかというときに、質的なものから入って量的なものに入るという学年進行のやり方と、最初はどちらかというとグラフィカルなもの、視覚的なものから、数量的ものへ、そして、高校にいくと少しフォーマルに、数理的になるといった、二つ大きな戦略というものがあるのだろうと思う。ただし、小学校においても、科学的な問題解決のプロセスとして統計といった科学的アプローチがあるということを意識しておくことは重要。
○ 小・中・高で指導の重点が見えるように何か工夫できないかという意見が多いという印象がある。データの種類とか、表現の手法とか、判断をどの範囲で行うのかというようなことに配慮しつつ、小学校はこれだと、中学校はこれだ、高等学校はこれだというようなことが示せると良いと思う。
○ 学習の充実という点は良いが、従来の小学校では45分の中で収まらないのではないか。

<扱うデータについて>
○ 大学の共通教育では、最初に、質的データ、量的データという話が出てくる。高等学校で、相関比などに入っていくのは難しいが、そういう場面が身近にあるということを高校の出口として身につけるということはあり得ると思う。
○ 小・中・高の全体のカリキュラムを考えた上で、例えばデータは、小学校は主として質的なデータを、中学校は質的データ及び量的データの両方を扱ったり、問題解決における特徴も、小学校では現状の把握や比較までで、中学校ではさらに傾向や関係を見るなど内容を次第に増やしていくというような大きな視点でカリキュラムをきちっと作った方が良いと思う。

<「意思決定」、「批判的」の記述について>
○「意思決定をする」という記述について、統計教育の中では、統計の資料というのは一つの判断材料ではあるが、意思決定をするとまで書いてしまうのは、書きすぎているように思う。「意思決定につなげていく」などが良いのではないか。
○意思決定をするというのが全学年に入っていて良い。日常生活になるほど、使えるというふうに実感できるというのは、統計の教育において有効に働くのではないかと思う。
○「批判的に考察する」の「批判的」という文言に違和感を覚える。だまされない児童、子供たちを育てなければいけないというのは分かるが、もう少し客観的とか、多面的とか、そういう言葉に変えた方が良いのではないか。

(2)小・中・高等学校を通じた統計教育の改善の方向性について
○ 文系の人は理系の勉強をだんだんしなくなるという現状を考慮すると、小学校における統計教育の事例では文系の例を出した方が将来的に良いのではないかと思う。

(3)統計教育における数学科と情報科との関係について
○ 示された案では、情報科との関係性が非常に充実したものになることが期待できる。なお、既存の数学自体もモデリングやシミュレーションと非常に密接な関係であるということを意識するための一つの科目として、データの分析やデータの活用というものが位置付けられ、統計的な内容が情報と数学等をうまく結ぶような接着剤・触媒のような役割となれば非常に望ましい。
○ PPDACサイクルについて、小学校・中学校における算数・数学の活動の中でも是非この種の活動を取り入れてほしい。
○ 数学科と情報科の連携に関し、教える時期等についても、情報科との連携がとりやすいよう、今後留意してほしい。また、情報科の解説書作成時には、数学Iで教えている内容も掲載すると良い。

(4)問題発見・解決のプロセスについて
○ 「一応の結論」という表現の中に、結果を見ることと、その結果を解釈をすることの両方入っているかもしれないが、下のところの「結論と主張」と同じように、数字としての結果を見ることと、それを解釈するというところでいろいろな知識を使って解釈をすることを分けて記載した方が、現実のプロセスに近いと思う。

4.その他

○ 小学校部会における議論に関連して、中・高学年で外国語活動及び英語が増えるということで、それに関連して、短時間学習が話題になっているが、算数・数学に充てている時間がしっかりと確保され、質が落ちないようにしていくというのは、委員の総意だと思うため、その点に十分配慮すべき。
○ 学校現場では、朝などでは必ずしも授業時数に組み込まれないでいろいろ工夫してやっているということではあるが、そうしたような時間が授業時数に組み込まれると、算数を学ぶ時間が実質的に減ってしまうようなこともあるため、その辺の工夫は是非お願いをしたい。


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-- 登録:平成28年05月 --