2010年10月18日
日本障害フォーラム(JDF)
JDFは13の全国規模の障害者当事者団体や障害関係団体が、障害の種別やさまざまな考え方の違いを越えて障害者の権利の促進と福祉の増進を目的にできたネットワークであり、一貫して民間団体・政府・国会議員等と協力しながら権利条約を促進してきた。2002年以降、国内外で障害者の権利に関する条約(以下、権利条約)の推進に努めてきたJDFとしては、今回のヒアリングの持ち方等について、大きな遺憾の意を表明せざるをえないことを最初に申し添える。
○1 日本NGO代表団派遣
2002年から2006年まで国連において開催された障害者権利条約特別委員会(以下、権利条約特別委員会)への、のべ200人以上に及ぶNGO代表団の派遣
○2 日本政府代表団顧問の推薦
○3 サイドイベント開催
権利条約特別委員会において、日本政府との協力の下、5回にわたるサイドイベントを開催
○4 IDC(国際障害コーカス)などとの国際連帯
○1 計20回にわたる政府との意見交換会
○2 文部科学省との2回の個別意見交換会(条約締結後)(別添「意見書」資料参考)
■日時:2008年8月26日(火)14:30~17:00
■場所:文科省旧庁舎保存棟6階第二講堂
■日時:2008年11月27日(木)15:00~17:00
■場所:外務省南庁舎666会議室
○3 障害者権利条約推進議員連盟との連携
(結論)
障害に基いて分離する就学先決定のしくみとそれに伴う原則分離教育体制、普通学校・学級での障害児への配慮・支援の不足、言語としての手話による教育体制の未整備、難聴児への日本語教育、盲ろう児への教育、特別支援学校の狭隘化など、権利条約からみた障害児教育体制としてはきわめて不十分である。
(理由)(第7回意見交換会意見書等を整理したもの)
(1)権利条約第2条「障害に基づく差別」に該当、同第3条「非差別原則」に抵触
学校教育法施行令の第5条及び同22条の3は、障害をもつ子どもに対する異なる取り扱いを制度として定めているため、権利条約第2条に抵触する。
(2)原則インクルーシブ教育制度
(3)第24条1項(b)および(c)
(結論)上記ヒアリング事項1にのべた現行制度の問題点を解決するものではない
(理由)原則として障害のある子どもとない子どもの学校を分離する法制度が前提となっているため
(結論)権利条約の規定を踏まえた妥当なものである。
(理由)
(1)障害のある子どももない子どもの異なる扱いをすることなく、原則として、地域の学校へ就学し、ろう児、盲ろう児、その他、希望する場合には特別支援学校・特別支援学級への選択権を保障する、としており、権利条約が規定する差別禁止(異別取り扱いの禁止)、原則インクルーシブ教育体制と分離された環境での教育を認める形となっていること。
(2)障害のある子どもやその親の選択権を認めていること
(3)全ての小学校・中学校での障害児への合理的配慮を行うことを明記していること
(1)特別委員会における議論
○1 国際人権法たる条約に準拠した法制度の確立に向けた議論を
わが国においては、国際条約は法律の上位と位置づけられる。従って権利条約に準拠した法制度設計のための議論をすべきである。そのためには、権利条約(第24条「教育」条項を含む)の交渉過程等も踏まえた条文解釈、差別禁止を基調とする法的性質をふまえることが大前提となる。その前提が特別委員会でもきちんと共有されるべきである。そもそも当ヒアリングの標題が「~権利条約の理念を踏まえた(略)」とされているが、条約は「理念」を規定しているものではなく、法制度として実施すべきことを規定(実施規定)しているのである。
○2 諸外国の差別禁止法制度について認識の共有を
上記(1)と関連し、特別委員会の議論において、欧米や韓国等、諸外国の差別禁止法制度に対する理解が不足していると思われる意見が散見される。たとえば、当特別委員会における合理的配慮(イギリスでは「合理的調整」、韓国では「正当な便宜」)についての議論では、一種の請求権たる合理的配慮についての説明を事務局が適切に行えなかったことや、合理的配慮を行うべき主体と対象に対して、間違った認識で議論が進んだこと、などが見られた。
ちなみに、権利条約上の合理的配慮は、過度なあるいは不釣合いな負担の抗弁が認められるが(同第2条「障害に基づく差別」)、国によっては、義務教育に関する合理的配慮義務については、過度な負担あるいは不釣合いな負担の抗弁を認めない、あるいはごく例外のみを認める、という運用をしている場合があることをのべておく(アメリカや韓国など)。
(2)障害者基本法の抜本改正に向けた議論の欠如
初等中等教育局特別支援教育課