(6)ドイツ

1.最近の教員給与に関する施策等の動向

 東西ドイツの統一により、旧西ドイツにおいて採用されていた複線型の学校制度が導入されている。教員の採用、給与制度についても、双方のシステムを統合することに時間を要してきたが、現在でも違いを残している。また、連邦制度改革の一環として、これまで連邦給与法に拠ってきた州の官吏としての教員給与制度が、2007年1月から各州政府の権限となる。

2.教員の身分

 公立学校の教員は州の公務員(地方公務員)として身分を有しており、その法的地位は各州の公務員法によって定められている。ドイツの地方官吏は、取得学位や職務の違いに応じて4つのキャリアグループ(高級職、上級職、中級職、単純業務職)に区分されている。教員の場合、基礎学校、ハウプトシューレ、実科学校、特殊教育学校の教員は上級職、ギムナジウム、職業教育学校の教員は高級職に位置づけられている。官吏としての教員は最長5年(通常は3年程度)の試用期間を経て終身官吏となる。官吏としての採用条件が満たされない場合等については、私法上の雇用契約に基づく雇員としての採用となる。雇員として雇用される教員は雇用者である州政府と雇員が所属する団体との間で締結されている労働協約に基づき処遇される。なお、旧東ドイツ各州の教員は、その大半が雇員である。

3.教員の任命権者

 各州政府の文部大臣が教員の任命権者となる。

4.教員採用の方法

 教員は州によって採用され、採用に関する権限は州に帰属するが、実際の選考は、県あるいは郡の学務部を通じて行われる。教員の採用は校長、副校長と同じく、学校単位で行われる。ある学校が新たに教員を募集することを公にし、教員資格を有する者が希望する場合、当該の学校を管理する上級学校庁(Oberschulamt)に願書を提出して選考が始まる。通常、学年度の開始時(8月1日)に人事異動が行われることから、採用時期もこれにあわせて設定されていることが多い。
 教員となることを志す学生は、大学での所定の単位を取得し、第一次国家試験を受験する。第一次国家試験は、論文・筆記・口述試験によって構成されており、これに合格すると、18ヶ月~24ヶ月間の試補としての勤務を経て、第二次国家試験を受験する。第二次国家試験は、試補勤務期間の勤務評定、論文・授業審査、口述・筆記試験という内容で実施される。第二次試験合格者には教員免許状が交付され、これらの有資格者が、州(実際は県・郡の学務部)に願書を提出する。

5.校長、教頭、教職員等の職務内容

 校長・教頭、教員の職務内容は、州教育法に定められている。いずれも、授業、成績評価、生活指導等を職務内容としている。
 日本と異なり校長も、授業を担当することが義務づけられている。ただし、校長、教頭については学校管理の業務があることから担当授業時数は教員より少なく規定されている。

6.学校における教員組織の状況

 基礎学校では学級担任が多くの授業を担当し、中等教育段階の学校(5学年以上)では学級担任制を維持しながら、教科担任によって授業が行われる。音楽、家庭科や宗教等の教科には専科教員もいる。職位別に見ると、校長、副校長、教諭のみであり(ただしギムナジウムでは、上級教諭と教諭の区分があるが、これは給与上の違いのみ)、主幹や主任といった職種は見られない。また、養護教諭(学校看護師)も配置されていない。

7.給料表(俸給表)

 給与に関する規定としては、「連邦給与法(Bundesbesoldungsgesetz)」があり、教員の俸給は中央政府によって策定された俸給表に拠っている。ただし、旧東ドイツ地域の教員の多くは「雇員」であり、「連邦雇員給与基準(東)(Bundesangestelltentarif-Ost)」や、場合によっては、州固有の指針が適用されることがある。

連邦官吏俸給表(西)(注93)

単位:ユーロ(注94)
等級 連邦給与 グループA 月額基本給
2年昇給
号俸
1 2 3 4
A2 1474,59 1510,19 1545,81 1581,42
A3 1536,09 1573,98 1611,87 1649,76
A4 1570,97 1615,61 1660,20 1704,83
A5 1583,67 1640,80 1685,19 1729,56
A6 1621,17 1669,91 1718,65 1767,38
A7 1692,42 1736,22 1797,55 1858,87
A8   1798,45 1850,84 1929,43
A9   1916,09 1967,65 2051,52
A10   2064,60 2136,24 2243,69
A11     2379,94 2490,05
A12     2559,52 2690,81
A13     2880,96 3022,73
A14     2998,41 3182,26
等級 連邦給与 グループA 月額基本給
3年昇給
号俸
5 6 7 8
A2 1617,03 1652,66 1688,28  
A3 1687,67 1725,57 1763,47  
A4 1749,44 1794,06 1838,66  
A5 1773,96 1818,34 1862,73 1907,12
A6 1816,11 1864,85 1913,60 1962,33
A7 1920,19 1981,52 2042,86 2086,64
A8 2008,02 2086,60 2165,21 2217,60
A9 2135,39 2219,27 2303,15 2360,80
A10 2351,17 2458,63 2566,10 2637,74
A11 2600,16 2710,28 2820,40 2893,81
A12 2822,08 2953,37 3084,65 3172,17
A13 3164,50 3306,26 3448,02 3542,53
A14 3366,09 3549,92 3733,76 3856,31
A15   3903,77 4105,89 4267,59
A16   4311,59 4545,34 4732,36
等級 連邦給与 グループA 月額基本給
4年昇給
号俸
9 10 11 12
A6 2011,06      
A7 2130,44 2174,26    
A8 2269,98 2322,39 2374,77  
A9 2418,48 2476,13 2533,80  
A10 2709,38 2781,01 2852,65  
A11 2967,21 3040,64 3114,05 3187,45
A12 3259,68 3347,20 3434,74 3522,25
A13 3637,04 3731,55 3826,07 3920,58
A14 3978,87 4101,43 4223,99 4346,55
A15 4429,28 4590,98 4752,68 4914,37
A16 4919,38 5106,37 5293,38 5480,39

連邦官吏俸給表(東)(注95)

単位:ユーロ(注96)
等級 連邦給与 グループA 月額基本給
2年昇給
号俸
1 2 3 4
A2 1364,00 1396,93 1429,87 1462,81
A3 1420,88 1455,93 1490,98 1526,03
A4 1453,15 1494,44 1535,69 1576,97
A5 1464,89 1517,74 1558,80 1599,84
A6 1499,58 1544,67 1589,75 1634,83
A7 1565,49 1606,00 1662,73 1719,45
A8   1663,57 1712,03 1784,72
A9   1772,38 1820,08 1897,66
A10   1909,76 1976,02 2075,41
A11     2201,44 2303,30
A12     2367,56 2489,00
A13     2664,89 2796,03
A14     2773,53 2943,59
等級 連邦給与 グループA 月額基本給
3年昇給
号俸
5 6 7 8
A2 1495,75 1528,71 1561,66  
A3 1561,09 1596,15 1631,21  
A4 1618,23 1659,51 1700,76  
A5 1640,91 1681,96 1723,03 1764,09
A6 1679,90 1724,99 1770,08 1815,16
A7 1776,18 1832,91 1889,65 1930,14
A8 1857,42 1930,11 2002,82 2051,28
A9 1975,24 2052,82 2130,41 2183,74
A10 2174,83 2274,23 2373,64 2439,91
A11 2405,15 2507,01 2608,87 2676,77
A12 2610,42 2731,87 2853,30 2934,26
A13 2927,16 3058,29 3189,42 3276,84
A14 3113,63 3283,68 3453,73 3567,09
A15   3610,99 3797,95 3947,52
A16   3988,22 4204,44 4377,43
等級 連邦給与 グループA 月額基本給
4年昇給
号俸
9 10 11 12
A6 1860,23      
A7 1970,66 2011,19    
A8 2099,73 2148,21 2196,66  
A9 2237,09 2290,42 2343,77  
A10 2506,18 2572,43 2638,70  
A11 2744,67 2812,59 2880,50 2948,39
A12 3015,20 3096,16 3177,13 3258,08
A13 3364,26 3451,68 3539,11 3626,54
A14 3680,45 3793,82 3907,19 4020,56
A15 4097,08 4246,66 4396,23 4545,79
A16 4550,43 4723,39 4896,38 5069,36

 連邦給与法の連邦俸給規定Aによると、教員は複数のグループに区分され、給料の等級が決定されている。例えば、基礎学校の教員はA12級、ギムナジウムや職業教育学校の教員はA13級とされることが一般的だが、学校の規模に応じて上位の等級とされることもある。
 官吏として採用された時点での年齢によって級号俸が決定される。新任時の号俸は当該等級の3~5号俸。昇給は、5号俸までは2年毎、5~9号俸までは3年毎、9~12号俸までは4年毎に行われる。

主な教員関係官職の給与等級

等級 種別
A12 基礎学校・ハウプトシューレ教員
A13 ギムナジウム教員、基礎学校・ハウプトシューレ副校長
A14 基礎学校・ハウプトシューレ校長、実科学校副校長
A15 実科学校校長、ギムナジウム副校長、職業教育学校副校長
A16 ギムナジウム校長、職業教育学校校長

 さらに、雇員の給与基準は、東西及び連邦レベルと市町村(Gemeinde)レベルの4つに分類される。

連邦レベル雇員給与基準(注97)

単位:ユーロ(注98)
  (西)号俸(2005年10月以降)
等級 1 2 3 4 5 6
15 3.384 3.760 3.900 4.400 4.780  
14 3.060 3.400 3.600 3.900 4.360  
13 2.817 3.130 3.300 3.630 4.090  
12 2.520 2.800 3.200 3.550 4.000  
11 2.430 2.700 2.900 3.200 3.635  
10 2.340 2.600 2.800 3.000 3.380  
9 2.061 2.290 2.410 2.730 2.980  
8 1.926 2.140 2.240 2.330 2.430 2.493
7 1.800 2.000 2.130 2.230 2.305 2.375
6 1.764 1.960 2.060 2.155 2.220 2.285
5 1.688 1.875 1.970 2.065 2.135 2.185
4 1.602 1.780 1.900 1.970 2.040 2.081
3 1.575 1.750 1.800 1.880 1.940 1.995
2 1.449 1.610 1.660 1.710 1.820 1.935
1   1.286 1.310 1.340 1.368 1.440
  (東)号俸(2005年10月以降)
等級 1 2 3 4 5 6
15 3.130 3.478 3.608 4.070 4.422  
14 2.831 3.145 3.330 3.608 4.033  
13 2.606 2.895 3.053 3.358 3.783  
12 2.331 2.590 2.960 3.284 3.700  
11 2.248 2.498 2.683 2.960 3.362  
10 2.165 2.405 2.590 2.775 3.127  
9 1.906 2.118 2.229 2.525 2.757  
8 1.782 1.980 2.072 2.155 2.248 2.306
7 1.665 1.850 1.970 2.063 2.132 2.197
6 1.632 1.813 1.906 1.993 2.054 2.114
5 1.561 1.734 1.822 1.910 1.975 2.021
4 1.482 1.647 1.758 1.822 1.887 1.925
3 1.457 1.619 1.665 1.739 1.795 1.845
2 1.340 1.489 1.536 1.582 1.684 1.790
1   1.190 1.212 1.240 1.265 1.332

市町村レベル雇員給与基準(注99)

単位:ユーロ(注100)
  (西)号俸(2005年10月以降)
等級 1 2 3 4 5 6
15 3.384 3.760 3.900 4.400 4.780 5.030
14 3.060 3.400 3.600 3.900 4.360 4.610
13 2.817 3.130 3.300 3.630 4.090 4.280
12 2.520 2.800 3.200 3.550 4.000 4.200
11 2.430 2.700 2.900 3.200 3.635 3.835
10 2.340 2.600 2.800 3.000 3.380 3.470
9 2.061 2.290 2.410 2.730 2.980 3.180
8 1.926 2.140 2.240 2.330 2.430 2.493
7 1.800 2.000 2.130 2.230 2.305 2.375
6 1.764 1.960 2.060 2.155 2.220 2.285
5 1.688 1.875 1.970 2.065 2.135 2.185
4 1.602 1.780 1.900 1.970 2.040 2.081
3 1.575 1.750 1.800 1.880 1.940 1.995
2 1.449 1.610 1.660 1.710 1.820 1.935
1   1.286 1.310 1.340 1.368 1.440
  (東)号俸(2005年10月以降)
等級 1 2 3 4 5 6
15 3.181 3.534 3.666 4.136 4.493 4.728
14 2.876 3.196 3.384 3.666 4.098 4.333
13 2.648 2.942 3.102 3.412 3.845 4.023
12 2.369 2.632 3.008 3.337 3.760 3.948
11 2.284 2.538 2.726 3.008 3.417 3.605
10 2.200 2.444 2.632 2.820 3.177 3.262
9 1.937 2.153 2.265 2.566 2.801 2.989
8 1.810 2.012 2.106 2.190 2.284 2.343
7 1.692 1.880 2.002 2.096 2.167 2.233
6 1.658 1.842 1.936 2.026 2.087 2.148
5 1.587 1.763 1.852 1.941 2.007 2.054
4 1.506 1.673 1.786 1.852 1.918 1.956
3 1.481 1.645 1.692 1.767 1.824 1.875
2 1.362 1.513 1.560 1.607 1.711 1.819
1   1.209 1.231 1.260 1.286 1.354

8.諸手当

 州の官吏である教員の給与には、俸給及び家族手当、職務手当等が含まれる。

家族手当

月額、単位:ユーロ(注101)
  1号俸 2号俸
(第40条1項) (第40条2項)
給与等級 A2からA8 100.24 190.29

 ※ 2人目の子供の場合は+90.05ユーロ、3人目以降の場合は1人当たり+230.58ユーロ

  • (注101)1ユーロ=154円、2006年11月1日現在の為替レート。

9.能力・実績に基づく給与

 州の官吏である教員については、1990年代後半の連邦法の改正により、各州の権限による実績賞与と実績手当の支給が制度上は可能となったが、その実施状況は各州によって異なる。バーデン・ヴュルテンベルク州では、実績賞与や特別昇給の制度があるが、実質的には賞与はなく、該当者の10パーセント程度に対する特別昇給を行っているのみのようである(注102)。また、ベルリン州においては、現在に至るまで、財源が確保されておらず、実施されていない。

  • (注102)バーデン・ヴュルテンベルク州政府回答による。

10.給与と結びつかない教員評価の内容・方法

 州の官吏全般について行われている勤務評定制度がある。

11.勤務時間管理

 教員の勤務時間に関して法令で規定されるのは、担当授業時間数のみである。教員が担当する授業時間数は各州法において規定されており、州や学校の種類、学校規模などによって異なっている。また、校長や副校長等の管理職、高齢の教員等は数時間の担当授業が軽減される。ただし、職務の内容としては、授業以外の授業準備、授業後の添削、成績評価、会議、保護者との面談、研修等も含むものと認識されている。
 また、教員に限らず、公務員にはフルタイム勤務の勤務時間の過半数の時間を勤務するという条件でパートタイム勤務が認められている。これは教員の場合は、担当授業時間数の軽減を意味する。たとえば基礎学校の場合、2004年/2005年度では全ドイツ189,000人の正規教員のうち、おおよそ週27~29時間と規定されるフルタイム勤務をしているのは87,500人であり、全体の半分に満たない。これに対して過半数の101,500人はパートタイム(teilzeitlich)勤務である。日本で考えられるパートタイム勤務は、ドイツでは公務員としての身分を持つ一方、正規(hauptberuflich)でない時間勤務(stundenweise)が該当する。つまり、正規教員でパートタイム勤務と、正規教員でなくパートタイム勤務は明確に区別されている。正規教員でパートタイム勤務の場合、給料は担当授業時数に応じて支払われる。たとえば、週29時間の授業担当がフルタイム勤務となっている州の場合、過半数15時間以上の授業を担当すれば正規教員の身分を維持でき、この場合、15/29、約50パーセントの支払いとなる。勤務時間数と給料が正比例する仕組みとなっている。

12.長期休業期間中の勤務及び給与

 勤務時間が担当授業時間数によって基本的に規定されていることから、夏季休暇等の長期休業期間中の勤務は基本的に存在しないが、教員個人の判断で授業の準備を行っていたり、会議に出席しているという実態が存在する。学校によっては、長期休業期間の最終週に会議を持つ場合もある。また、給与は通常通り支給される。また有給休暇(Urlaub)は、同期間に取得すべきものとされている。

13.他の職種との給与水準の比較

 連邦官吏俸給表Aに該当する教員は、上級職または高級職に位置する。日本では教員独自の俸給表があること、また義務教育教員と高等学校教員とでは俸給表が異なる点と比べて、一般の公務員と同じ俸給表に位置づけられていること、学校段階による違いよりも学校種による違いとして等級が位置付けられている点が特徴的である。

14.人材確保の方策

 州によっては、教員のイメージアップのためのキャンペーンを行ったところもあるものの、全体として特段の方策(例えば、俸給の増額や手当の増加等)をとってはいない。

15.教員給与の優遇措置

 教員給与の優遇措置は特段行われていない。

16.教員組合、団体の状況

 ドイツには、教員組合として以下のような団体がある。

  • Die Gewerkschaft Erziehung und Wissenschaft(GEW)(教育・科学組合)(ドイツ組合同盟die Bildungsgewerkschaft im Deutschen Gewerkschaftsbund (DGB)における教育組合)
  • Verband Bildung und Erziehung(VBE)(教育連盟)
  • Philologenverband(DPhV)(ギムナジウム教員連盟)
  • Bundesverband der Lehrerinnen und Lehrer an berufsbildenden Schulen (BLBS)(職業学校教員連邦連盟)

17.教育予算の近年の動向

 ドイツでは、連邦憲法にあたる基本法の定めにより、教育に関する基本的権限は州が有している。学校教育に係る経費のうち人件費は州予算から支出されている。施設管理関連費用は郡または市町村が負担している。
 例えば、バーデン・ヴュルテンベルク州では、州の人件費予算に占める教員給与は約50パーセント、州の予算全体に占める割合は約20パーセントである。

お問合せ先

初等中等教育局財務課

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