(2)イギリス

1.最近の教員給与に関する施策等の動向

 イギリスでは、1998年緑書「教員:変化という課題に対応する」において、質の高い教員を採用・確保し、現職教員に対して質の向上へのモチベーションを持たせるためには教員給与を増やすべきであり、また、教員給与を増やす際には、実績に応じた給与の仕組みを取り入れるべきだ、との提案がなされた。1998年以降の教員給与に関する政策は、主にこの1998年緑書の提案に沿って行われているといえる。

(a)給与水準の上昇

 イギリスの教員給与は1998年以降大幅に増加している。1998年と2005年で比べると、初任給が約1.3倍、平均給与が就学前・初等教育教員で約1.4倍、中等教育教員で約1.3倍増加している。また、最近でも給料について2006年9月1日からは前年比2.5パーセント増、2007年9月1日からはさらに2.5パーセント増が予定されている。(注12)また、諸手当についても増額が図られている。(注13)

  • (注12)DfES School Teacher's Pay and Conditions Documents 2006 and Guidance on School Teachers' Pay and Conditions(以下STPCDと表記), 2006, p.6.
  • (注13)DfES STPCD 2006, p.6.

(b)実績に応じた給与

 2000年より前は、一般教員は一つの給料表が適用されていたが、2000年からは実績評価を受けて基準に適合していると評価された教員は上級給料表に移行し、さらに高い給料を得ることが可能となった。また、通常の教員の職務に加えて学校内外の他の教員の指導・助言・支援等に当たることを職務とし、高い給料を得ることの可能な上級教員(Advanced Skills Teacher: AST)も1998年に制度化された。2006年9月からは、ASTと同内容の職務を学校内のみにて行い、上級給料表教員よりも高い給料を得ることが可能な優秀教員(Excellent Teacher: ET)も制度化された。

2.教員の身分

 イギリスの教員は、契約により地方当局(Local Authority)又は学校理事会(School Governing Body)に雇用された者である。(注14)公務に従事する者(public sector employee)とは位置付けられているが公務員の身分を有してはおらず、一般の雇用関係法令や教育関係法令においてその任用、資格、勤務条件・給与等が規定されている。勤務条件や給与については、教員とその雇用者が結ぶ雇用契約において個々に定められるが、その内容は『教員給与及び勤務条件に関する文書(School Teachers' Pay and Conditions Document : STPCD)』に基づかなければならない。
 教員には他の一般の公務員と同様に労働三権が認められている。

  • (注14)公営学校の種類により、雇用主が異なる。詳細は『諸外国の教員』文部科学省、平成18年 p.93.

3.教員の任命権者

 公営学校における教員の雇用者は地方当局又は学校理事会であるが、1988年から実施されている自主的学校運営の下、地方当局が雇用者の場合にもその役割は形式的であり、雇用の責任は実質的には学校理事会が負っている。

4.教員採用の方法

 教員の採用については、学校理事会が当該校に必要な教職員の数やその配置(どのレベルの、又はどの教科の教員が必要か、など)及び当該校の予算状況を考慮して行う。一般に、新たに教員を採用しようとする場合には公募を行い、応募してきた教員に対して学校理事会が面接して採用の可否を決定する。
 ただし、通常は当該学校の校長が採用予定の計画策定や採用決定に関して中心的な役割を担い、学校理事会は校長の判断の適不適を評価するのみであると言われている。

5.校長、教頭、教職員等の職務内容

 イギリスにおける各教員の職務内容はSTPCDに規定されている。

教員の職務

教員の種類 職務の内容
管理職教員
 (Leadership Group
校長
 (Head teacher
関係の法令や規則などの枠内で、地方当局、学校理事会、教職員及び親と協議しながら当該校のリーダーシップ、学校内部の組織及び運営・管理の責任を負う。具体的にはSTPCDに列挙してあるが、例えば、学校の目標策定、教職員の採用、教職員の配置や職務の割当て、適切な教育課程の編成実施、教員評価、児童生徒の生活指導、学校の規律・秩序維持、学校外への学校情報の提供及び保護者など関係者との連絡、良い関係を築くことなど。
副校長
 (Deputy Head teacher
 校長補佐
 (Assistant Head teacher
一般教員の職務に加え、校長の指揮の下、主に以下の職務を行う。
  • (a)学校の目標を定めること
  • (b)達成すべき方針を立てること
  • (c)職員や学校予算の運営を行うこと
  • (d)方針の達成状況を把握すること
副校長は、校長不在の場合その職務を代行する。
一般教員 基本給料表教員
 (Classroom teachers
校長の指揮の下、主に次のような職務を行う(具体的には、STPCDに列挙)。
 授業、児童生徒の進捗の評価・記録・報告、生徒指導、進路指導、保護者との連絡・協議、教員評価(自己評価及び他の教員の評価への参加)、研修、他の教員への指導、秩序・規律の維持、生徒の健康と安全の確保、校内会議への出席、他の教員の代替、外部試験の準備や評価、管理運営への参加など。
上級給料表教員
 (Post-Threshold teachers
上級教員
 (Advanced Skilled Teachers
一般教員の職務に加え、主にその勤務時間の約2割を割いて新任教員や後進クラス、教科担当教員の指導・助言・支援等を行う。さらに自分の所属以外の学校への指導等も行う。
優秀教員
 (Excellent Teachers
職務の内容は上級教員と同様だが、自分の所属以外の学校への指導等は行わない。
ファストトラック教員
 (Fast Track Teachers
一般教員と同様

6.学校における教員組織の状況

教員組織については各学校がその実情や予算に応じて定めており、各校ごとに様々である。一般に、初等学校では校長、副校長(規模の大きい学校では校長補佐も)、低学年担当主任、キーステージ1と2の担当主任、特別教育ニーズ担当主任、教務主任、一般教員で教員組織を構成する。中等学校では校長、副校長、校長補佐(副校長、校長補佐は場合によっては複数)、各教科担当の主任、生徒指導担当主任、一般教員で教員組織を構成する。キーステージ3の担当主任、特別教育ニーズ担当主任、学習支援担当主任、社会性及び健康担当の主任、学校体育担当主任などをおく場合もある。
 上級教員はその数が少ないため、上級教員をおく学校は2割に満たない。

7.給料表

 イギリスの教員給与体系は、教育技能大臣が「学校教員調査委員会(School Teachers Review Body: STRB)」の勧告を受けて定めるSTPCDに記載されている。STPCDには、教員の種類に応じた給与体系以外にも、勤務時間・日数、職務等の勤務条件が規定されている。
 2006年版のSTPCDによると、各教員の給料表は以下のようになっている。(注15)

一般教員の給料表(年間給料)

単位:ポンド(注16)
スケール・ポイント ロンドン地区を含まない
 イングランド及びウェールズ
内ロンドン地域 ロンドン郊外 郊外
M1 19,641 23,577 22,554 20,586
M2 21,195 24,924 23,901 22,137
M3 22,899 26,658 25,605 23,841
M4 24,660 28,452 27,366 25,608
M5 26,604 30,594 29,478 27,549
M6 28,707 32,820 31,674 29,649
実績給与後(post-threshold)の給料表
スケール・ポイント ロンドン地区を含まない
イングランド及びウェールズ
内ロンドン地域 ロンドン郊外 郊外
U1 31,098 36,885 33,804 32,043
U2 32,253 38,697 34,956 33,195
U3 33,444 40,002 36,255 34,389

 出所:School Teacher's Pay and Condition Document 2006

優秀教員の給料表(年間給料)

単位:ポンド(注17)
ロンドン地区を含まない
 イングランド及びウェールズ
内ロンドン地域 ロンドン郊外 郊外
35,874 42,789 38,778 36,888

 出所:School Teacher's Pay and Condition Document 2006

上級教員の給料表(年間給料)

単位:ポンド(注18)
ポイント ロンドン地区を含まない
 イングランド及びウェールズ
内ロンドン ロンドン郊外 郊外
AST1 34,083 40,527 36,789 35,025
AST2 34,938 41,385 37,644 35,880
AST3 35,811 42,258 38,514 36,750
AST4 36,705 43,149 39,411 37,647
AST5 37,617 44,067 40,323 38,562
AST6 38,559 45,006 41,265 39,501
AST7 39,600 46,050 42,306 40,545
AST8 40,512 46,959 43,218 41,451
AST9 41,523 47,970 44,229 42,468
AST10 42,591 49,038 45,297 43,533
AST11 43,695 50,139 46,398 44,637
AST12 44,703 51,150 47,409 45,648
AST13 45,822 52,269 48,528 46,767
AST14 46,962 53,409 49,665 47,904
AST15 48,132 54,576 50,835 49,071
AST16 49,413 55,860 52,116 50,355
AST17 50,547 56,997 53,253 51,495
AST18 51,819 58,266 54,525 52,761

 出所:School Teacher's Pay and Condition Document 2006

管理職教員の給料表(年間給料)

単位:ポンド(注19)
スケール・ポイント ロンドン地区を含む
 イングランド及びウェールズ
内ロンドン地域 ロンドン郊外 郊外
L1 34,083 40,527 36,789 35,025
L2 34,938 41,385 37,644 35,880
L3 35,811 42,258 38,514 36,750
L4 36,705 43,149 39,411 37,647
L5 37,617 44,067 40,323 38,562
L6 38,559 45,006 41,265 39,501
L7 39,600 46,050 42,306 40,545
L8 40,512 46,959 43,218 41,151
L9 41,523 47,970 44,229 42,468
L10 42,591 49,038 45,297 43,533
L11 43,695 50,139 46,398 44,637
L12 44,703 51,150 47,409 45,648
L13 45,822 52,269 48,528 46,767
L14 46,962 53,409 49,665 47,904
L15 48,132 54,576 50,835 49,071
L16 49,413 55,860 52,116 50,355
L17 50,547 56,997 53,253 51,495
L18 51,819 58,266 54,525 52,761
L19 53,103 59,550 55,809 54,045
L20 54,420 60,867 57,126 55,365
L21 55,767 62,214 58,473 56,715
L22 57,150 63,600 59,856 58,095
L23 58,566 65,010 61,272 59,508
L24 60,018 66,468 62,724 60,963
L25 61,512 67,956 64,215 62,451
L26 63,033 69,480 65,739 63,978
L27 64,593 71,040 67,299 65,535
L28 66,198 72,642 68,901 67,137
L29 67,836 74,283 70,542 68,781
L30 69,525 75,972 72,231 70,464
L31 71,244 77,691 73,950 72,189
L32 73,014 79,458 75,720 73,959
L33 74,829 81,273 77,535 75,774
L34 76,680 83,127 79,386 77,625
L35 78,585 85,032 81,288 79,530
L36 80,529 89,976 83,232 81,474
L37 82,533 88,983 85,239 83,475
L38 84,576 91,020 87,279 85,518
L39 86,637 93,081 89,340 87,576
L40 88,800 95,520 91,506 89,745
L41 91,017 97,467 93,723 91,959
L42 93,297 99,741 96,000 94,242
L43 95,631 102,075 98,334 96,576

 出所:School Teacher's Pay and Condition Document 2006

  • (注15)イギリスにおける教員の種類については、5を参照。
  • (注16)1ポンドイコール232円、2006年11月1日現在の為替レート。
  • (注17)1ポンドイコール232円、2006年11月1日現在の為替レート。
  • (注18)1ポンドイコール232円、2006年11月1日現在の為替レート。
  • (注19)1ポンドイコール232円、2006年11月1日現在の為替レート。

8.諸手当

 (a)指導学習責任手当(Teaching and Learning Responsibility Payment:以下TLRと表記):指導及び学習過程において追加的な職務を行う一般教員に対し支払われる手当であり、追加的な職務には担任学級以外の生徒への指導や、他の教員の能力向上への貢献等が挙げられる。(注20)手当は2段階からなり、1が最低6,663ポンドから最高11,275ポンド、2が最低2,306ポンドから最高5,638ポンドとなっている。なお、この手当は従来支給されていた管理業務手当(Management allowance)を廃止して2006年に新たに創設されたもの。

  • (注20)DfES STPCD 2006, Paragraph 50・51・52,p.143‐145.

 (b)特別教育ニーズ担当手当(Special educational needs allowance):特殊学校(Special school)に勤務する教員もしくは一般学校において特別教育ニーズを担当する一般教員に支払われる手当。手当は2段階からなり、1が1,818ポンドか、2が3,597ポンドとなっている。(注21)

  • (注21)DfES STPCD 2006, Paragraph 28, p.62.

 (c)代理手当(Acting Allowance):一般教員が、管理職教員(校長・副校長・校長補佐)の代理を勤めた場合に支払われる手当。(注22)

  • (注22)DfES STPCD 2006, Paragraph 45, p.77‐p.78.

 (d)臨時校長手当(Performance payments to seconded teachers):一般の教員が、通常勤務する学校とは異なる学校において校長職を臨時に勤めた場合に支払われる手当。(注23)

  • (注23)DfES STPCD 2006, Paragraph 46, p.79.

 このほか、各学校の判断で支払うことが出来る手当として、通常の勤務日や勤務時間外に行う業務がある場合の追加手当(注24)や、教員や採用確保のために支払うインセンティブ手当(注25)などがある。
 なお、過去に廃止された手当(例えば管理業務手当、社会的優先校勤務手当(Social priority allowance)、内ロンドン地域追加手当(Inner London Area Supplement))などについては、3年間の期限を設けてその額を保証する仕組みになっている。

  • (注24)DfES STPCD 2006, Paragraph 55, p.94.
  • (注25)DfES STPCD 2006, Paragraph 56, p.95.

9.能力・実績に基づく給与

 (a)一般教員は基本給料表に位置付けられるうちは、特段の事由がない限り1年に1回昇給する。

 (b)一般教員は基本給料表(M1~M6)の最上給に到達すると、上級給料表(U1~U3)へ昇給する為の審査(Threshold Assessment)に応募することが出来る。審査では、STPCDに規定されている5つの分野からなる8項目(スタンダード)について評価が行われる。上級給料表への昇給に応募する教員は、公開されている申請書に基づき各項目について自己評価を行う。その後申請書を所属する学校の校長に提出し、校長が各項目について評価を行う。校長は教員が上級給料表にふさわしいかどうかを判断し、昇給の可否を判断する。その後校長の判断は学校理事会に伝えられ、学校理事会は校長の判断をもとに昇給を認めるべきか否かを議論し最終的な決断を下す。制度導入当初は評価の透明性や客観性を高めるためとして外部の機関による審査も行われていたが、現在では評価が定着したとして外部審査は行われていない。審査は以下の8項目について実施される。

審査の評価項目(注26)

 審査の評価項目(注26)

審査方法(注27)

 審査方法(注27)

 なお、上級給料表に昇給した後は、業績評価を経ないと昇給できない。

 (c)上級給料表の最上給に到達して2年以上たった上級給料表教員は優秀教員の審査に応募できる。また、上級給料表の最上給に到達した教員又は優秀教員は上級教員の審査に応募できる。このときの審査の評価項目は以下のとおりであり、外部の評価機関により審査される。(注28)

上級教員の評価項目(注29)

 上級教員の評価項目(注29)

 なお、上級教員に昇格した後は、業績評価を経ないと昇給できない。

  • (注26)"Performance Threshold Standards Assessment 2006/07, Round 7 (England): Support Pack for Schools", TeacherNetウェブページ(URL:http://www.teachernet.gov.uk)。
  • (注27)"Performance Threshold Standards Assessment 2006/07, Round 7 (England): Support Pack for Schools", TeacherNetウェブページ(URL:http://www.teachernet.gov.uk)。
  • (注28)DfES STPCD 2006, Paragraph 32‐35, p.69‐70.
  • (注29)STPCD 2006 Annex2をもとに作成。

10.給与と結びつかない教員評価の内容・方法

 新任教員(Newly Qualified Teacher's)は、年間を通じた導入指導プログラムを修了することが義務付けられている。この期間は学校内の指導教員を中心に観察指導、評価活動が行われる。評価に当たっては、教育技能省が設定した基準(教員としての専門性と実践力、知識と理解力、指導力)を満たすことが求められる。

11.勤務時間管理

 STPCDにおいて、一般教員の年間勤務日数は195日、校長の具体的な指示(場所、時間、内容を限定した形での指示)を受けて働く時間は年1,265時間とされている。
 ただし、教員がその専門的な職務を効果的に果たすために必要な時間(特に、授業の企画・準備、及び児童生徒の成績評価や進捗状況の記録・報告作成を行う時間)はこの1,265時間を越えることが通常である。これらの時間については雇用者が決めてはならないこととされている。
 以上のような勤務時間に関する規定がある一方で、時間外手当についての規定はないことから、時間外勤務及び時間外手当という概念はなく、包括的に基本給で評価していると思われる。
 また、近年、教員の仕事量が多く残業や休日勤務が常態化しているという批判を受け、2003年には教員が行わなくて良い職務として事務的な職務(注30)を明示したり、2005年から「計画・準備・評価の時間」制度を導入したりした。後者は、教員の指定された勤務時間(1,265時間)の10パーセントを授業計画の作成や準備、採点等にあてることを保障する制度であり、教員が指定された勤務時間の10パーセントをこれらの職務に従事できるよう校長が職務を割り振らなければならなくなった。これらの制度は2003年から教員の労働環境を改善させる為の“リモデリング”の一貫として導入されており、教員の仕事量を減らし公私共に質の高い生活を送ることを目的としている。(注31)

12.長期休業期間中の勤務及び給与

 教員は校長に指示を受けない限り長期休業期間中に勤務することはない。また、給料については、校長の指示により勤務した場合は給料の支払対象になるし、勤務を行わない場合は給料の対象外である。
 なお、前述した「教員がその専門的な職務を効果的に果たすために必要な」職務については校長の指示がなくても長期休業期間中に行うことは可能である。

13.他の職種との給与水準の比較

 STRBが勧告を行う際には他の職種と初任給及び平均給与の比較を行っている。4年制大学卒業者の初任給の比較では教員給与は低く、他の職業全体との平均給与の比較では教員給与は高い。STRBは他の職種の初任給及び平均給与の伸び率を主な参考にして教員給与の伸び率を勧告しているが、教員組合には他の専門職と比較して同水準の給与とすべきという意見もある。

大卒者の初任給(年収)(注32)

 単位:ポンド(注33)
 大卒者の初任給(年収)(注32)

フルタイム教員の平均給与とフルタイムの全労働者の平均給与との比較(注34)

 単位:ポンド(注35)
 フルタイム教員の平均給与とフルタイムの全労働者の平均給与との比較(注34)

職種別平均年収(2005年)(注36)

単位:ポンド(注37)
職種例 平均
医師 69,527
法律家 49,136
高等教育教員 34,432
土木技師 32,316
薬剤師 30,950
中等教育教員 29,725
獣医師 29,248
特殊教育教員 28,086
就学前・初等教育教員 27,104
言語療法士 25,416
グラフィックデザイナー 24,345
ソーシャルワーカー 23,901
看護士 20,768

 出所:National Statistics Online Annual Survey of Hours and Earnings 2005

  • (注32)AGR,IDS及びSTRBリポートより。
  • (注33)1ポンドイコール232円、2006年11月1日現在の為替レート。
  • (注34)ONS(2005), Annual Survey of Hours and Earnings 2005.
  • (注35)1ポンドイコール232円、2006年11月1日現在の為替レート。
  • (注36)「諸外国の教員」文部科学省、平成18年、p.104.
  • (注37)1ポンドイコール232円、2006年11月1日現在の為替レート。

14.人材確保の方策

 イギリスでは特に都市部や特定の教科(数学、ITなど)において教員の欠員が著しく、質の高い教員の採用・確保が教育・学習の質向上のための重要な課題として位置付けられている。また、新任教員の定着も課題となっている。人材確保の方策としては、給与水準の引き上げに加え、教員の職務内容を見直して教員以外でも実施することが可能な事務的な仕事(学生からの費用の収集、掲示物等の管理等)は教員が行わなくて良いとするなど仕事量の軽減方策が実施されている。

15.教員給与の優遇措置

 イギリスでは1990年代後半以降、一貫した景気の上昇によって企業の求人が好調であり、またインフレも激しいため、優秀な大学卒業者に対して労働市場の中で教員をいかに魅力ある職業にするかが課題となっている。そのため、他の職種の平均初任給伸び率と勘案しても遜色のない初任給伸び率とされている他、ロンドン地域については給料水準を一層上げるなどの工夫を講じている。

16.教員組合、団体の状況

 イギリスでは、教員の9割以上がいずれかの組合のメンバーとなっている。(注38)この高組織率は、教員組合が提供する組合員への法的支援によるものと考えられている。
 STRBは、毎年勧告行う前に、教育技能省(Department for Education and Skills:)DfES及びいくつかの教員組合からなる連合組織RIG(Reward and Incentive Body)にエビデンスの提出を求めて意見を聞いたり、RIGに参加しない教員組合にも同様にエビデンスの提出を求めて意見を聞いたりしている。労使交渉ではないので両者の合意を得るまで交渉することはないが、毎年の勧告前にこれらの団体・組合の意見を聞くことによりSTRBは教員サイドの要望に常に耳を傾けていると言える。教員組合側からは、このような方法で給与の増額や労働環境の改善を求めてSTPCD策定に参加していると言えよう。
 代表的な教員組合として以下のようなものがある。

  • National Union of Teachers(NUT)
  • National Association of Schoolmasters Union of Women Teachers(NASUWT)
  • Association of Teachers and Lecturers(ATL)
  • Professional Association of Teachers(PAT)
  • (注38)"Attracting, Developing and Retaining Effective Teachers in the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland: OECD Country Background report", Institute for Policy Studies in Education London Metropolitan University, 2003, p.28.

17.教育予算の近年の動向

 GDPに占める教育費の割合を見ると、1980年代後半及び1990年代後半に低下したものの2000年に入ると5パーセント台に復帰し、順調にその割合が増加している。

GDPに占めるイギリスの教育費の割合

パーセント
1979~80 5.1
1980~81 5.4
1981~82 5.4
1982~83 5.3
1983~84 5.2
1984~85 4.9
1985~86 4.6
1986~87 4.8
1987~88 4.7
1988~89 4.6
1989~90 4.7
1990~91 4.8
1991~92 5.0
1992~93 5.2
1993~94 5.1
1994~95 5.1
1995~96 4.9
1996~97 4.7
1997~98 4.5
1998~99 4.5
1999~00 4.4
2000~01 4.6
2001~02 5.0
2002~03 5.0
2003~04 5.3
2004~05 5.4

 ※ 2004~2005年の数値は推定値
 出所:HM Treasury Public Expenditure Statistical Analyses April 2005

GDPに占めるイギリスの教育費の割合

 GDPに占めるイギリスの教育費の割合

 出所:HM Treasury Public Expenditure Statistical Analyses April 2005

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