アメリカにおける教育に係る権限と責任はすべて州及び州以下の地方自治体(主に学区)に帰属している。したがって、各自治体によって教員給与に関する施策は区々であり、連邦として統一感のあるシステムとはなっていない。例えば、教員の給料は、学歴(取得学位及び追加の取得単位数)と勤続年数によって区分された給料表に基づいて決定されるのが通常であるが、学歴の区分や昇給が頭打ちになる勤続年数は様々である。また、能力・実績に基づく給与についても、これを導入している例としていない例が見られる。校長などの管理職については教員のような給料表が存在しない場合が多く、給料決定方法はやはり様々である。なお、学区教育委員会と管理職は12ヶ月契約を結び一年間、勤務校における責任を有するのに対して、一般の教員は長期休暇を除いた月数の契約を結び、その間、180日~190日程度勤務して期間給料の支払いを受ける仕組みとなっていることが多い。公立学校教員の給料は学区が支給するが、給料額は地域によって異なる。一般的に、一年間の教員経験ごとに一段階昇給、15年~20年ほどで頭打ちとなり、さらに昇給を目指す場合には、研修を受講する等して上位資格・学位を取得する必要がある。近年、給料表を基本とした給与総額と児童生徒の学習成果の高さには相関関係が見られないとする複数の研究成果が発表されており、給料と複数の給与体系の併用や、教員の知識・技能ベースに基づく給与体系との併用を目指す動きが広がりつつある。(注1)
(注1)「世界の教員養成2」日本教育大学協会、学文社、平成17年、p.12.
公立学校の教員は、各学区の教育委員会に雇用される。教育という公共サービスに携わり、給料を公費によって負担されていることなどから、公立学校の教員は公務に従事する者である。しかし、教員を公務員として直接的に規定する法令はなく、教員と学区の教育委員会との関係は主に、1.市民としての権利と自由を規定した合衆国憲法の規定、2.公立学校の運営を規定する法令(主に州レベル)、3.雇用条件を規定する学区教育委員会との雇用契約、を法的根拠とするとされている。(注2)
学区による教員の雇用は学区教育委員会と教員の契約による。雇用に関する契約の枠組みは州法で規定されており、通常、試用期間における期限付きの雇用契約(probationary contract)と継続的な雇用契約(continuing contract)が定められている。州によっては、期限付き契約(term contract)など複数の形態の契約が定められている場合もある(注3)。
(注2)「諸外国の教員2」文部科学省、平成18年、p.24. アメリカにおける公務員の勤務関係の法的構造からすれば、このような状況は一般の公務員と比較して著しく異なるものではない。
(注3)「諸外国の教員」文部科学省、平成18年、p.24.
教員の勤務条件は、州の法令等で定められている部分もあるが、実質的な勤務条件(給料や労働日数など)は、(個人ベースではなく)団体交渉により合意された学区教育委員会と教員団体(組合)間の協約(agreement, contract等)によって決定される場合が多い。ルーズベルト政権の下で、1932年以降の一連の立法により、民間部門における労働組合の結成や団体交渉の実施を認める法的整備が行われ、公的部門においても、1959年のウィスコンシン州を皮切りに、各州で認められるようになった。現在では、ほとんどすべての州で、教員による団体交渉が認められている。
団体交渉に関する州法の規定内容は州により多様であるが、共通点は1.公的に雇われた者に特定して組合に参加する権利を付与すること、2.教育委員会等の雇用者側に対して、組合活動に従事することを理由として教員を異動させたり、懲戒処分を科したりすることを禁ずること、3.交渉当事者に「誠実に交渉する」義務を課すことなどである。
ニューヨーク州では1967年に「公務員の公正な雇用に関する法律(Public Employees' Fair Employment Act)(通称「テイラー法(Taylor Law)」)が制定された。同法は、1.公的部門におけるストライキの禁止、2.公的機関に対する労働者団体との交渉の義務づけ、3.公務員の労使関係を調整するための州機関である公務員労使間交渉委員会(Public Employment Relations Board)の設置を柱とするもので、団体交渉で決定する「雇用条件(terms and conditions of employment)」については、「給与、諸手当、勤務時間、及びその他の雇用に関する条件」と定めている。この規定に基づいて、公務員労使間交渉委員会は、公務員団体交渉で協議されるべき事項として、義務的事項(mandatory subjects)、非義務的事項(nonmandatory/permissive subjects)及び禁止事項(prohibited subjects)の3つに分類して示している。
出所:「諸外国の教員」文部科学省、平成18年、p.54
カリフォルニア州上院法160号(1975年)、通称ロッダ法(Rodda Act)により、教育委員会(school board)と組合(union)は少なくとも3年間に1度、交渉しなくてはならない。交渉結果によって、給料と手当、勤務時間、勤務日その他の教員の労働条件に係る多くの事項が決定されるとともに、前期の契約期間中に明らかになった課題への取り組みがなされる。交渉は、学級規模の縮小や教員の研修及び評価などの事項について新たな立法がなされた場合に特に重要となる。このような場合には学区は新法が教員の勤務条件に与える影響について組合と交渉した後でなければ、新法に基づく措置を実施することができない。
出所:カリフォルニア州教育省
州によって状況は異なっている。例えば、カリフォルニア州の場合、教員の労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)は全て保障されており、教員は教育専門的職業を対象とする(一般の公務員とは異なる)特別の法制度の下に置かれているが、ウィスコンシン州においては、労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)のうち、団結権と団体交渉権は有しているものの争議権は有していない。
教育人事行政の重要な部分(募集、採用、配置、研修、評価、給与、転任、昇格、解雇、退職)は学区教育委員会の所轄事項である。(注4)教育委員会は教員の雇用関係において雇用者(使用者)の地位に立つ。アメリカでは、日本のように都道府県・指定都市段階での採用は行わず、各学区が教員採用において独自の方法を採っている。父兄や一般教員が教員採用の審査段階に参画している場合、彼らの要望が反映されているともいえる。また、最終的に教育長が採用の決定を行う場合でも、当該学校の校長と教科主任による面接が志願者についてなされるため、自己の学校に適した人材を選ぶ余地が残されている。これに対し、教育委員会側に審査権限が集中している場合もある。(注5)
(注4)「世界の教員養成2」日本教育大学協会、学文社、平成17年、p.9.
(注5)「世界の教員養成2」日本教育大学協会、学文社、平成17年、p.9.
カリフォルニア州教育基本技術試験(California Basic Educational Skills Test: CBEST)の2004~2005年の合格率は79.5パーセントであった。CBESTはほぼ全ての資格認定証(credential)、免許証(certificate)、許可証(permit)の要件となっており、カリフォルニア州内の教育者の業務を遂行する際に重要な基本技術と考えを評価するものである。ウィスコンシン州のように採用試験を実施していない州もある。
教職を希望する大学1年生の割合は、1968年から1982年の間に、26パーセントから6パーセントに減少したが、最近では、若干増えて10パーセントとなった。これは、教職が女性にとって数少ない選択可能な職業だった時代が変化し、現在では、医療や法律、ビジネスの分野でも女性が職業を選択できるという事実を反映している部分もある。
教員候補者の多くは、教員以外の職業の選択肢がある場合、他の職業を選択する傾向がある。また、公立学校で教えることを選択した者の大学入学時のスコアは、教えることを選択しなかった者よりも低い。
教職員等の役割は各州によって定められている。(注6)カリフォルニア州とウィスコンシン州の事例は以下のとおり。
(注6)「諸外国の教員」文部科学省、平成18年、p.20.
校長や一般教員、カウンセラー、学校図書館司書のほか、学校では補助教員や事務職員、用務員等が配置されている。校長や教員等がそれぞれ専用の免許を必要としているのに対して、これらの職員に関しては一般に免許制度は取られていない。このほか、学校によってはボランティア(児童生徒の親等)が一定の役割を果たしている場合もある。
近年、学校の教職員の中で急増しているのが補助教員である。公立学校を構成する教職員のうち補助教員の占める比率は最近30年ほどの間におよそ5倍に増えた(1969年の1.9パーセントから2001年には11.4パーセント)。補助教員は、一般教員やカウンセラー等の専門の職員の監督下で教育活動を行う者で、この場合においても各補助教員の担当分野は決まっている。最も多くの補助教員は特別支援教育を担当分野としている。
連邦教育省の調査によると、公立の一般校における教員の配置状況をみると、初等教育機関(第8学年までの学年で構成されている学校)1校あたりの一般教員の数は32.1名、中等教育機関(第7学年以上から始まり、第9学年以上の学年を含む学年で構成される学校)は52.5名となっている。
学校レベルにおける教員の組織構成は地域や学校規模によって異なるものの、一般教員について初等教育では学年を単位とした組織、ハイスクールでは英語、数学、外国語等、教科を単位とした組織が形成されている。また、ミドルスクールでは一つの学年について数名の教科担当教員がチームとして組織される。カウンセラーや学校図書館司書・メディア担当教員等の専門業務を行うものについてはそれぞれの部門が独立して設けられている。
出所:U.S. Department of Education (NCES), Digest of Education Statistics 2003, (tab.79)
(注)一般校にはオルタナティブ・スクール、障害を持つ児童生徒を対象とする学校、職業教育学校、初等中等教育一貫校、無学年制の学校は含まれていない。
出所:U.S. Department of Education (NCES), Condition of Education 2004, p164(table 28‐1), Schools and Staffing Survey: Overview of the Data for Public, Private, Public Charter and Bureau of Indian Affairs Elementary and Secondary Schools, p.29(table 1.09).
アメリカにおける教員の給料表策定については、(a)州政府又は学区教育委員会が単独で策定するケース、(b)州政府と教員組合との労使交渉の結果を受けて学区を抱える郡政府あるいは学区が策定するケース、がある。例えば、テキサス州においては、州政府が策定した給料表(策定の過程において組合との交渉は行われない)をベースに郡政府以下の地方レベルで実行ベースの給料表が策定されている。通例では、州レベルの給料表記載の金額をミニマムとして、学区独自の給料表が策定されている。また、カリフォルニア州やウィスコンシン州では、州政府と教員組合との交渉を経て、各学区において策定されている。その際、(a)学歴、(b)勤続年数、(c)財源、といった要素が考慮される。
通常、給料表は、一般教員の他、校長、カウンセラー、学校心理士など、職種に応じて学区ごとに作成される。補助教員や学校事務員などについても職種に応じて給料表が定められている。一般教員の場合、給料表上の給料額は主に経験年数と教員が受けた教育水準の2つの基準によって決定される。取得学位や大学院教育における取得単位数によって給料表を区分し、それぞれの区分において勤務年数に応じて毎年一号俸ずつ昇給されるように策定されている、どの区分も昇給は概ね15年前後で最高号俸に達してしまうため(号俸の段階は学区によって異なる)、学士号を取得して教員になった者は、大学院教育を受けて単位や学位を取得しなければ、昇給が頭打ちになる。
例えば、カリフォルニア州内の各学区の教育委員会では、学区と教員の代表者による団体交渉を通じて教員の給料表を定めている。給料表は経験年数と教育レベル(取得学位及び追加の取得単位数)によって区分されており、教員の給料は、給料表中の当該教員が該当する教育レベルの欄のなかで、学区における勤続年数に応じて昇給していく。例えば、「学士+60単位(BA+60)」レベルは、追加の60単位を有する学士保持の教員給与のレベルとなる。教員の専門性を発展させるものとして給料表との関係で単位として認定されるものの具体的内容は労働協約において定められている。学区によっては一定数の専門科目の単位取得を教員に要求するところもある。州法により、1985年以降に採用された教員は、資格認定証(credential)を維持するため、5年ごとに150時間の専門性育成クラスを修了しなくてはならないこととなっている。
1999年度の公立学校教員の所得のうち、基本給の全国平均は3万9,857ドル(約420万円)である。夏季休暇中にサマースクール等の指導などで得た補足的な収入を含めた全国平均所得は4万2,949ドル(約450万円)となっている。教育段階別にみると、初等教員(2002年度の全国平均額は4万5,658ドル)に比べて、中等教員(同4万6,119ドル)の方が若干平均給与が高くなっているが、ほとんど差はない。
州別の平均給与をみると、州によって大きな開きがある。カリフォルニア州やミシガン州などでは5万ドルを超えているのに対して、ノースダコタ州やミシシッピ州では3万ドル台前半となっている。
また、同じ州内においても雇用者である学区により、教員の平均給与には格差がある。例えば、ニューヨーク州の学区別平均給与をみると、平均給与の差は2倍以上となっている。
近年、基本給と複数の給与体系の併用、例えば全米教職専門基準委員会(NBPTS)の顕彰制度と連結したいわゆるメリットペイまたは成果ベースによる給与体系との併用や、教員の知識・技能ベースの給与体系(knowledge‐and‐shills‐base pay)との併用を行う動きが広がりつつあり、給与総額の実際は人によってばらつきがある。
2001年~2002年度の平均給与推定は、州間・州内格差はあるものの、初等教育44,426ドル、中等教育44,718ドルであり、増加傾向にあるが、これは教職の魅力を高め、優秀な人材を教職に引き込むための施策の一つである。
単位:米ドル(注7)
(注)追加手当には以下のようなものがある。
単位:米ドル
単位:米ドル
(注)州合計の平均給与は2002年
出所:The University of the State of New York, The State Education Department, A Report to the Governor and the Legislature on the Educational Status of the State's Schools: Submitted June 2001.
(注7)1ドル=122円 2006年11月1日現在の為替レート。以下、各国通貨の為替レートは参考値として注に記載。
住居費や交通費等の手当が支給されることはほとんどない。カリフォルニア州では、教員、教頭、校長が退職する際に、退職手当は支給されないが、ウィスコンシン州では、退職手当は支給されないものの、退職後に未使用の病休が残っていれば、その病休に相当する金額を受給する権利がある。また、残業手当については、ウィスコンシン州のように、概念そのものが存在しない州もあれば、カリフォルニア州のように、制度は存在するものの、時間外勤務に対して残業手当が必ずしも支給されるわけではなく、また、支給される額も様々である、という州もある。なお、教員は連邦法である公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)においては割増賃金規制の適用除外対象とされており(いわゆるホワイトカラー・イグゼンプションの一類型)、時間外勤務手当が教員に支払われるかどうかは、州法、労働協約又は個別雇用契約にその旨の規定が置かれているか否かによって決まる。
能力・実績に基づく給与制度は、連邦あるいは州として規定されているものではなく、個々の学区において独自に採用されている制度である。したがって、すべての学区において能力・実績に基づく給与があるわけではなく、また、その仕組みもそれぞれに異なっている。
州で定められた評価制度の基本的枠組みのもと、各学区は地域性やニーズを考慮して独自の教員評価方法を策定し、実施している。公教育の財源の多くを地域の教育税に依存するアメリカでは、教員評価の意図が職能成長にあるものの、地域住民の不満を反映した教員評価に基づく不適格(incompetency)教員の解雇も多い。
一般的に公立学校教員の場合、各学区等で採用後2~3年程度は試用期間として教員評価に重きが置かれている。しかも試用期間が過ぎてテニュア(tenure:終身在職権)を取得しても、少なくとも数年に一度は教員評価を受け、指導力不足や適格性欠如を理由に失職に追い込まれることが、日本に比べて少なくない。例えば、ジョージア州では、
の8項目を教員の解雇理由としている。さらに、2000年7月1日以降の新規採用教員については、学区による解雇(雇用契約の打ち切り)決定に対する弁明機会の提供などの手続きが廃止されることになった。十分な指導力をもたない教員に対して、身分保障を見直し、解雇手続きの簡素化を図ったり、教員評価(勤務評定)を基に雇用契約を単年度更新とする州もみられつつある。(注8)
(注8)「世界の教員養成2」日本教育大学協会、学文社、平成17年、p.11.
勤務時間は、通常授業時間を含めた学校内勤務時間として学区と教員組合との間の協約で定められている。教員の90パーセントを占めるフルタイム教員の勤務時間の上限は、一般的に8時間程度であり、これは協約に定められているが、勤務実態に関する調査を見ると、公立学校では週当たり49.7時間が学校業務にあてられている。(注9)
(注9)「世界の教員養成2」日本教育大学協会、学文社、平成17年、p.12.
教員の勤務条件は、基本的に学区と教員との間の契約によって決定される。この中で年間の契約期間に関しても定められており、通常は9~10ヶ月となっている。この契約期間には学区との契約の中で定められた職務を行わなければならないが、期間外(通常は夏期休暇中)については、学区の業務以外の職について賃金を得ることは認められている(換言すれば、夏期休暇中には給与は支払われない)。
ただし、学区との契約によらない仕事に従事して収入を得る教員は少ない。連邦教育省の統計によると、1999年度に公立学校教員のうち、学区の業務以外の仕事で、個別指導等の児童・生徒あるいは成人に対する教授・指導に関連した職に就いた者は約4.4パーセント、教授・指導以外の教育関連の職種から収入を得た者は3.2パーセントであった。また、教育と関係ない職について収入を得た者は9.2パーセントであった。
通常、公立学校教員の週当たりの勤務時間数は37時間程度で、他の職種(通常40時間)に比べて短い。しかし、授業準備に費やされる時間はこの中に含まれておらず、夏季休暇中(6~8月)の勤務もない。こうした条件の違いのため、他職種との給与比較は困難である。ただし、同水準の就職条件(学士号取得以上)の職種の平均給与と比較するとかなり低い。一方、時間当たりの給与では最高水準に含まれる。
専攻分野 | 平均給与 |
---|---|
工学 | 47,900ドル |
経営学 | 41,000ドル |
保健・医療等 | 39,400ドル |
行政学・公共政策 | 30,400ドル |
バイオロジー | 30,700ドル |
数学等 | 42,800ドル |
心理学 | 28,800ドル |
社会科学 | 33,900ドル |
歴史 | 30,000ドル |
人文学 | 30,100ドル |
教育学(教員養成を含む) | 27,600ドル |
その他 | 32,800ドル |
全体平均 | 35,400ドル |
出所:U.S. Department of Education (NCES),Digest of Education Statistics of Education 2003,2004(table.387)
出所:U.S. Bureau of Labor Statistics, National Compensation Survey,2003
出所:U.S. Bureau of Labor Statistics,2002 National Occupational Employment and Wage Estimates
(注10)「諸外国の教員」文部科学省、平成18年、p.62.
初等・中等教育の教員養成は州ごとに州内の4年制大学で行われ、教員免許の発行も各州で行われている。1980年代以降は、複数の教育報告書が教員の質の向上を提言したことをうけて、優秀な教員の確保と教員の質の向上が各州で図られており、特に教員養成制度改革、教員免許制度改革として展開されている。
各州及び各大学の養成カリキュラム強化の具体策には、以下のものがある。(注11)
(注11)「世界の教員養成2」日本教育大学協会、学文社、平成17年、p.7‐8.
教員は1年を通して給料以外に、サマースクールをはじめ、課外授業、課外活動のコーチ、成人教育講座のコーチなどの学校内外の活動を通じて収入を得ることができる。
連邦教育省によると、1999年度の授業期間中に、学区との契約に基づき成人教育講座の講師や課外活動のコーチなど、通常業務以外の業務に従事して給料以外の収入を得た公立学校教員は全公立学校教員の40.7パーセントに上り、その平均収入は2,443ドル(約32万円、1ドル129円で換算)、夏期休暇中にサマースクール等の指導により給料以外の収入を得た者は20.6パーセントで、その平均所得は2,307ドル(約30万円)であった。州及び学区は、教員の給料を補うために、一時的あるいは毎年、賞与を支給している。5州では、特別支援教育担当教員や数学、理科など教員が不足がちな分野の教員を対象に賞与を支給している。また34州では全米優秀教員認定証の取得者を対象に賞与が支給されている。
最近の調査報告によると、この認定証の取得者が増えるにつれて、認定証取得者を対象として支給してきたボーナスに要する費用が増大し、州の懸念材料となっている。例えば、ジョージア州の場合、こうしたボーナスに要する2005会計年度の予算額は2004会計年度と比較して3倍(470万ドルから1,560万ドル)に増大する。カリフォルニア州の場合、経費増大の結果、2003~4年予算法により認定証取得教員すべてに対して支給してきたボーナスを廃止し、認定証を取得し、かつ教育効果が上がらない学校で教える教員にボーナスを支給するよう制度を変更した。
全国的な組合はNEA(The National Education Association)とAFT (The American Federation of Teachers)の2つがある。前者にはプレスクールや高等学校の教員も含めて270万人の組合員が、後者には100万人の組合員がいる。
公立学校教員の教員団体(組合)の加入率は80パーセント程度である。
カリフォルニア内ほぼ全ての学区には、カリフォルニア教員組合(California Teachers Association: CTA)、あるいはカリフォルニア教員連合(California Federation of Teachers: CFT)に加盟する教員組合が存在する。ロサンゼルス教員連合(United Teachers of Los Angeles: UTLA)やサンフランシスコ教員連合(United Educators of San Francisco: UESF)のように独自の教員組合を有する地区もある。
組合の主要活動は、団体交渉において、教員を代表することである。
ウィスコンシン州の組合には、NEA(The National Education Association)、WEA(Wisconsin Education Association)、SEA(Stoughton (local) Education Association)がある。
これらの組合の影響は大きく、給与、労働時間、労働条件について交渉する。
また、テキサス州の組合は、TCTA(Texas Classroom Teachers Association)、TSTA(Texas State Teachers Association)、ATPE(Association of Texas Professional Educators)がある。
アメリカ教育省の統計によると、1970年以来教育予算は増加傾向にあり、2005年6月には約680億ドルとなっている。GDPに占める教育費の割合も、近年増加傾向にあり、2003年には4.6パーセントに至っている。
出所:アメリカ教育省
初等中等教育局財務課