資料5 第1回~第4回教員免許制度ワーキンググループにおいて出された主な意見

(下線部分は、第4回ワーキンググループにおいて出された意見を踏まえて追加した部分)

1.教員養成・免許制度の改革の基本的な考え方

1.教員を取り巻く社会状況と教員の現状

 現代の特色は変化のスピードが速いという点であり、この早い変化に対して、教員が対応しきれていない。

 家庭や地域社会の教育力の低下が、教員に対する過度の期待となっているが、これを当然の前提としては、学校教育が成り立たなくなる。家庭や地域社会の教育力をいかに高めていくかが、現在、地方で行われている教育改革の核心である。

 子どもや教育についての研究が進歩しており、学習障害児や注意欠陥/多動性障害の児童などの新しい知見を学ぶことは、教員として不可欠である。

脳科学と教育の関係などについても入れていく必要がある。

現状の変化のスピードが早すぎ、また、LDやADHD等の最近分かってきたものに教員が即座に対応することが難しいという状況がある。全体的に教員が不十分であるという論理になっているが、条件整備も必ずしも十分ではなかったということも触れるべき。

 教職のキャリアの中で、学びのスピリットが必要という捉え方は重要。それぞれの教員が、得意分野を生かして、自己啓発していく姿勢も必要。

教員の専門性や適格性、教員を支える基盤となる知識も、時間の経過や社会の変化の中で古くなってくるという側面がある。そこをどのように手当てしていくかが、専門職の立場から常に重要なテーマであり、それが学びの精神につながっていくのではないか。

 現在、学校では正規教員の比率が減っており、その分、負担が大きくなっている。教職のあるべき姿をきちんと整理しなければ、更新制の導入以前に、夢のある職場でなくなってしまう。

 新採教員の中には、能力の問題だけでなく、親や子どもへの対応への疲れや、一生懸命やるが評価されないこと等、自分の夢が崩れ、人間性を否定されてしまうことでやめる者もいる。教職に夢を持つ教員が育てられるような環境を整備し、保護者や地域が支えていかなければならない。

 教員になったものの、夢破れてやめるという人の中には、忙しすぎて、本来の仕事ができないという面がある。教員の仕事を整理していかなければ、教員が実力を発揮できないと考える。

2.教員に求められる資質能力

 教職は、父母や一般社会から多大な信頼を寄せられ、尊敬される仕事であるという自覚を持つとともに、それに安住せず、常に向上する気持ちを持たなければならない。

 「教職とは国民あるいは社会の信頼により支えられる職業である」と明記することが必要。

 教員を大事にするという社会的合意がない限り、学校教育はうまく機能しない。教育という行為は、教員に対する信頼と尊敬がなければできないし、教員に対する社会の見えない期待があるからできる。言葉として表現しがたい風土というものを制度設計の土台にしなければならない。それを踏まえ、処遇を具体的に縛るということではなく、信頼と尊敬に値する職としてふさわしい処遇をしなければいけない。

 現代社会において、自ら課題を見出し、総合的に探求し、どのように改革するかを決定・実行することが、あらゆる場面で必要になっている。同時に、それらを解決するために、自分の専門分野のみならず他分野の力も統合して事に当たる力が必要になっている。課題探求能力は、教育活動を行っていく上で必要不可欠であり、教員には強く求められるということを明確にする必要があるのではないか。

 教員は、子どもの中にある資質能力を開くことにより、子どもの素晴らしさを学び、教員としての専門性が高まっていくという面がある。

3.教員養成・免許制度の現状

 これまでの教養審答申では、大学が養成する教員像を明確に持ち、それを達成する組織構成とカリキュラム編成をしなければならないとしている。また、最小限必要な資質能力という仕上がり基準まで示されているが、大学によっては、これらが理解されていないのではないか。

 修士課程の場合、教科専門と教職専門のどちらを履修しても良いため、教職専門を全く取らずに、教育や子どもについての知見がなくても専修免許状を取得している事実がある。

教員は現場で育つ、生涯をかけて研修をして、資質を高めていくことは当然だが、少なくとも教員として学校に送り出していく時には、最小限に必要な資質能力を持った学生を送り出さなければならない。

教員は現場で育つものであり、子どもたちと接し、授業を通して、指導法が成長していくこともあるため、今のカリキュラムで、授業を組み立てていく上で、必要なものが不足していないかも視野に入れて議論すべき。

これまで、教員養成についても様々な努力・工夫をし、改善もされてきており、そのような積極面についても触れるべき。

素晴らしい教員養成を行っている大学がある一方で、変化が激しい現状の中で、変っていない大学が相当数ある。中教審等から具体的な取組も提示されているが、これらをどのように担保するのかを徹底しなければならない。優れた取組みを行う大学の成果を波及させると同時に、問題の多い大学は排除しなければならない。

4.教員養成・免許制度の改革の基本的な視点

 排除のための更新制ではなく、研修を受ければ十分力を持って子どもの前に立てる教員をつくるという更新制を考えたらどうか。実力を付けて、大学の教職課程から送り出していくシステムをつくらなければならず、また、教員が尊敬され、夢を持って教員になる人たちが増えるような社会にしなければならない。

 大学全入時代になると、きちんとチェックをしなければ実力のない教員が現場に入り、教職に対する尊敬がなくなり、教員不信が社会を支配することになるのではないか。

 教員養成段階で、最小限必要な資質能力を持った教員として送り出さなければ、現場は困る。1年間の条件附採用期間できちんとチェックされておらず、このことが不適格教員や指導力不足教員を生み出しているのではないか。

 これまで条件附採用期間は形骸化していたが、ここ数年、厳格に扱われるようになってきた。教員は23歳で教壇に立ち、生徒と相対するという職責を担うこととなるため、保護者からすれば、10年後に検証されても困る。採用段階で、しっかりした教員が採用されているという安心感を与える制度はどうあるべきか、また採用段階でどのくらいの資質能力を備えた教員を確保できる制度とするかが、更新制の在り方を規定していくのではないか。

 14年答申では、免許制度の抜本的検討とあわせて、更新制の検討が必要とされていたが、一方で、この秋までに更新制を検討するとされており、「抜本的」の範囲の整理が必要ではないか。

 更新制に視点を当てつつ、教員免許制度全体との関わりを持ちながら検討していくのが良いのではないか。

 更新制が、直ちに現職教員に適用されるものではないと仮定すると、教員養成、免許授与の要件を含めて、理想的な教員免許制度の在り方を検討する中で、現行の免許制度の良し悪しも考える必要がある。

 教員を取り巻く現状を考えると、適正な待遇が一定程度確立されることが必要。

 処遇を一律に上げていくのか、実績主義にしていくのかは論議があるが、多くの頑張っている教員の給与・待遇は全体的に向上させていくべきである。

現在、様々な政策について、政策評価等の形で事後チェックがなされているが、教員養成についても、政策から各大学の努力に至るまで、評価という視点から、課題を検討する必要があるのではないか。

5.教員免許更新制について

(1)導入の意義及び位置づけ

 更新制の導入が、教員の社会的ステータスや、信頼を高めることにつながるという方向で検討する必要がある。現在は、社会の変化が激しいため、一度取得した免許が生涯有効で良いのかが、多くの専門職に対する見方なのではないか。このため、一定の時期に更新することで、専門性や適格性を保証していくことが重要なのではないか。

 更新制導入の是非について検討する際、教員の社会的信頼が上がるのか下がるのかが大切な視点である。更新制については、社会の中で教育活動をしていく上で支えとなるものとして、機能するようにする必要がある。研修等がある中で、更新制がどのような位置を占めるのかを議論する必要があるが、基本的には古い知識を常にリニューアルする、あるいはそのような専門性を持つ者であると制度的に位置づけられれば良い。

 更新制がプラスに作用していくのであれば、大学と免許状の授与権者、任命権者、学校の管理運営責任を持つ教育委員会との間で、現職研修を含めた制度設計ができて、教員がモチベーションを高めながら、学び続け、免許が更新されていくものとなる可能性があるのではないか。

 様々な社会の批判がある中で、排除の論理ではなく、これだけの力を持った教員であると保証するようなものとして、更新制が考えられないか。

 初等中等教育の教員の質の低下は諸外国と同じであり、その中で、優秀な教員や質の高い教育を維持していかなければならず、ここに更新制の必要があると考える。更新制については、排除するのではなく、処遇をきちんとしていけば優秀な人材は来る。これからは、学校に競争原理を入れていくべきであり、優秀なやる気のある教員を入れなければならない。

 更新制を導入する際には、現場で育つ人をどのようにフォローアップしていく制度とするのかという点も重要である。

 教職に対する信頼の確立に関しては、14年答申においても、教職、学校、教員の社会的信頼の向上について、一連の体系を提示したのではないかと考える。その中で、改めて更新制がどのようなインパクトを持つのか議論する必要がある。また、更新制を打ち出した場合、どれほどの成果が得られるのかの見通し、吟味が必要である。

 更新制の導入がどのような効果をもたらすのかについては、見通しを最大限求めながら論議を重ねることが大切である。

新採教員は完成された教員ではないということを前提に組み立てていくと、教職に就いてから、自己努力により、実践的な授業力が身に付いていく。そのために、更新制や評価が必要という論理になる。

(2)他の制度(現職研修、公務員法制、他の資格制度等)との関係

 更新制については、上進制、初任研、10年研、処遇等を統一的に考えて導入する必要がある。ほとんどの教員は更新されると考えるが、その中から優秀な教員を選び出して、上進や資格認定していくというのが良いのではないか。

 適格性を確認した上での免許の授与と、初任者研修との関係は避けて通れないのではないか。

 非常勤講師等は、正規の教員と異なり、初任者研修を受けていないという実態を踏まえる必要がある。また、10年研の実態を押さえておく必要がある。

 採用試験を受けて通らなかった人が、臨時に任用され、初任者研修も受けないということは議論していく必要があるのではないか。

 各都道府県では、10年研の評価を持っており、また、ほとんどの都道府県で人事評価も行っているが、ねらいは排除でなく、育成評価である。その視点は更新制にもつながると考える。

 今までは、研修を受けさえすれば、どれだけ力がついたかは、ほとんど評価されなかったが、不十分であれば再度研修を受けさせるなど、研修における評価が必要である。

 研修について、熱意のある教員がモチベーションを高めて、専門性を高めていくための条件整備がなされていない。また、研修は飽和状態にあり、特化、自由化、組織化が必要である。特化とは必要な人に必要な研修を行うこと、自由化とは選択させること、組織化とは現場で育てることである。

 人事評価や指導力不足教員の問題は、更新制とは直接結びつくものではないと考えれば良いのではないか。

 医師や弁護士は終身免許で更新制はないが、医師や弁護士は、患者や相談者が選ぶことができる。教員の場合は、子どもが選ぶことができず、医師や弁護士と同じに扱うことはできないのではないか。

 14年答申では、医師や弁護士等との比較において見送ったが、仮に他は他として、教職は教職として捉えるのであれば、その論理をどのように組み立てるのかは、大きなテーマになる。

 更新制のある他の資格は、教職に比べると少数で、性格がはっきりしている。教職の場合、職務上の広範な能力が求められ、また人数も多いことをどのように考えるのか検討しなければならない。

(3)平成14年中教審答申との関係

 14年答申は、教員生活途中における更新の可能性について議論したが、今回は免許付与段階を重視している。子どもや保護者からすれば、新任であっても免許の公証性で証を立てている。免許状の授与段階で、教員としての適格性を判断することが可能であれば、排除の論理が出てくる必要はない。

 問題教員を排除するために更新制を導入するとなると、14年答申と合わなくなってくる。現在の教員の指導力不足等の問題は、人事考課や業績評価、給与の問題と連動してクリアできる可能性はあるため、現在の教員の問題は置いた上で、更新制を考える必要がある。

 10年研については、各都道府県でも色々な手法を加えているが、これが更新制の代替だとは思えない。一番必要な研修は、教員同士の教材研究や、学校を越えた公開授業やその後の研究であり、これらを服務上の研修とした方が、教員の自主的な向上が期待できる。

 14年答申の時は、問題教員を排除するという論理のもと、更新制の議論を行い、10年研により資質能力を高める方向の結論となったが、その後の実態を考えると疑問がある。条件附採用期間後の不採用者数は、14年から15年に激増している。更新制によって何を得ようとしているのか、意義・目的ははっきりさせなければならない。

 更新制の代わりに10年研が導入されたが、実態は10年研の趣旨や更新制が目指したところが理解されていないため、更新制の意義、ねらいを再度検討することが必要ではないか。

 14年答申と今回の諮問との間隔が短いため、なぜそうなったのか説明は必要である。

 14年答申で、更新制の導入には慎重であるべきとされて2年しかたっておらず、この2年で何が変わり、なぜ導入するのか、現状についてのデータを基に必然性、妥当性について検討すべき。

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

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