資料6 教員養成分野における専門職大学院の活用について(論点メモ)(議論のたたき台)

1.現在の教員養成システムについての認識

(例えば、概ね以下のような方向での整理ではどうか)

 今日、子どもたちの学ぶ意欲の低下や規範意識・自律心の低下、社会性の不足、いじめや不登校等の深刻な状況など、学校教育が抱える課題が一層複雑・多様化しており、このような学校現場の諸課題に対応し得る高度な専門性と、豊かな人間性、社会性を備えた力量ある教員が求められている。

 このため、教員養成の在り方としては、学部段階で、教科指導や生徒指導等に関する基礎的・基本的な資質能力を確実に育成することが求められるとともに、現職教員の再教育も含めて、大学院段階で、特定分野に関するより高度の資質能力や教職としての高度の専門性を備えた多様な教員を養成していくことが期待されている。

 他方、大学における教員養成の現状については、「理論や講義が中心で、演習・実習等が不十分」「教職経験者による指導が少ない」など実践面での指導力の強化等が課題として指摘されており、特に大学院段階では、研究者養成と高度専門職業人養成との明確な区別がないまま、ともすれば個別学問の専門性が過度に重視され、教職としての専門性の育成がおろそかになる傾向がある。

 このような教員養成の課題を踏まえ、高度な専門性を有する教員の養成や現職教員の再教育の充実を図っていくためには、学部段階における教員養成の着実な改善を進めるとともに、とりわけ大学院段階における教員養成・再教育の在り方を見直し、制度的な検討を含め、その格段の充実を図ることにより、教員養成システム全体を充実・強化することが必要である。

2.専門職大学院の活用の基本的な考え方

(例えば、概ね以下のような方向での整理ではどうか)

 わが国における学部段階の高等教育の広範な普及とともに、近年の科学技術の進展や急速な技術革新、社会経済の急激な変化と多様化、複雑化、高度化、グローバル化等を受け、社会の様々な専門的職種や領域において、大学院段階において養成されるより高度な専門的職業能力を備えた人材が求められるようになってきている。

 こうした社会的要請を踏まえ、平成15年度に、従来の大学院制度とは異なり、目的・教育内容・方法・体制等を高度専門職業人の養成に特化した「専門職大学院」制度が創設され、法曹、ビジネス、会計、知的財産、公共政策、公衆衛生など様々な分野で高度専門職業人養成のための専門職大学院の設置が急速に進んでいる。

 同様の観点から、教員養成の分野についても、「教職」という職務内容の高度化・複雑化・多様化が著しい専門的職種としての性格を踏まえ、専門職大学院制度を積極的に活用することにより、教職としてのより高度な専門性を備えた教員の育成が期待される。

 この場合、わが国の教員養成が、「開放制」の原則の下に、一般大学・学部と教員養成系大学・学部とがそれぞれ特色を発揮して行われ、人材を幅広く教育界に求めてきた実績を踏まえ、引き続き「開放制」の原則の下、教員としての基礎的・基本的な資質能力の育成は学部段階で行われることを前提としつつ、大学院段階の教員養成・再教育の充実を図るために専門職大学院制度を活用することが適当である。

3.専門職大学院に期待される目的・機能

(例えば、概ね以下のような方向での整理ではどうか)

 「開放制」の原則の下での教員養成システムを前提に、新たに専門職大学院制度を活用する場合、教員養成における今日的な課題への早急な対応の必要性や、各大学における大学院レベルでの取り組みの実績等を考慮すると、当面、教員養成分野における専門職大学院については、

  • ア)小・中・高等学校等の現職教員を対象に、学校現場における中核的・指導的な役割を担いうる教員の養成、
  • イ)学部段階で教員としての基礎的・基本的な資質能力を修得した者を対象に、より実践的な指導力や得意分野を備えた新人教員の養成
    の目的・機能が特に期待される。
    このため、これらの目的・機能を担う専門職大学院について共通的に必要な要件等を検討する必要がある。

 上記の目的・機能のほか、隣接する機能・目的として、例えば、

  • ウ)小・中・高等学校等の管理者や指導主事等地方教育行政担当者の養成、
  • エ)大学等高等教育機関の管理者や高等教育政策担当者の養成、
  • オ)国際開発協力の専門家など幅広い教育分野の高度専門職業人の養成、

 等が考えられ、今後、その重要性が高まることが予想される。
 こうした機能・目的を担う専門職大学院については、当面、個別大学での主体的な検討により、様々な先導的な取組みがなされ、実績が蓄積されることが重要であり、そうした観点から、各大学の積極的な取組みが期待される。

4.専門職大学院を活用する場合の個別の検討の視点(例)

(1)教育内容・方法に関する検討の視点(例)

  • 上記ア)イ)の目的・機能を踏まえ、専門職大学院の教育内容は、どのような内容が適当か。
  • 現職教員を対象とする場合と学部新卒者を対象とする場合とでは、教育内容はどう区別されるべきか。
  • 特に学部新卒者を対象とする場合、実践的指導力を育成する観点から、学校現場等における実習等をどう位置づけるか。
  • 高度専門職業人としての教員養成に特化した大学院の課程として、どのような教育方法が適当か。
  • 学生に対する授業計画(シラバス)、成績評価基準等の明示や、厳格な成績評価、修了認定など、充実した教育を実現するための取組みをどう考えるか。
  • 学生に対する教育効果を考慮した場合、授業の規模はどの程度が適当か。
  • 教育内容・方法に関する要件を制度的にどう整理するか。

(2)修業年限・修了要件等に関する検討の視点(例)

  • 標準修業年限は何年とするか。
  • 標準修業年限を前提に、現職教員の履修の便に配慮した取扱い(短期履修コース、長期履修学生制度など)をどう考えるか。
  • 課程修了に必要な単位数はどの程度とするか。その場合、必要修得単位数の中で教育実習等をどう位置づけるか。
  • 現職教員と学部新卒者との間で、必要修得単位数について何らかの取扱いの区別を設けるか。

(3)学位・免許状等修了者の処遇に関する検討の視点(例)

  • 学位の国際的通用性等も考慮しつつ、教員養成分野の専門職大学院修了者にどのような学位を授与するのが適当か。学位規則上どのような位置づけとするか。
  • 修了者には、どのような教員免許状を授与することが適当か。(既存の専修免許状とするのか、新しい教員免許状を創設するのか。)
  • 免許更新制との関係をどのように考えるか。
  • 修了者について、初任者研修、10年経験者研修との関係をどのように考えるか。
  • 専修免許状に認められている校長・教頭の基礎資格としての扱いをどうするか。
  • 学校現場での処遇のあり方をどう考えるか。

(4)教員組織・教育体制に関する検討の視点(例)

  • 専門職大学院の教育内容・方法を踏まえ、必要な専任教員の規模等をどう考えるか。
  • 専門職大学院の専任教員について、学部・大学院の専任教員数への算入が制限されていることをどう考えるか。
  • いわゆる「実務家教員」の要件を具体的にはどう考えるか。また、その比率はどの程度が適当と考えるか。
  • 教育委員会等との連携による現職教員の活用など、必要な実務家教員をどのようして確保するか。
  • 実務家教員を含め指導教員の指導能力の確保・向上を図るため、どのような取組みを進めることが必要か。
  • 教育実習の実施など専門職大学院としての教育研究活動上必要となる学校現場をどう確保するか。
  • 都道府県の教員研修センター等との連携をどう考えるか。

(5)評価・情報公開に関する検討の視点(例)

  • 自己点検・評価の扱い(実施、結果公表、外部者検証など)をどう考えるか。
  • 教育活動等に関する情報公開をどう考えるか。
  • 第三者評価(認証評価)の扱い、認証評価団体についてどう考えるか。

(6)その他の検討の視点(例)

  • 学部段階で一種免許状を取得していない者について、対象としてどう考えるか。
  • 入学者選抜のあり方についてどう考えるか。
  • 対象とする学校種(小・中・高等学校等)についてどう考えるか。
  • 現職教員等に配慮した履修形態の工夫(昼夜開講制、長期休業期間の集中コース、サテライト教室など)をどう考えるか。
  • 現在の教員養成系の修士課程等との関係、機能分担をどう整理するか。
  • 導入の時期をいつごろと考えるか、また、国立の場合の整備の方針をどう考えるか。
  • 専門職大学院の導入・定着を図るための支援の在り方をどう考えるか。
  • 教員養成分野の専門職大学院の名称をどう考えるか。

5.隣接する目的・機能を担う専門職大学院の整備方策

 

6.学部段階の教員養成の着実な改善・充実のための方策

 

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