資料5 アメリカのスクール・オブ・エデュケーション(教育学大学院)の概要

(山田 礼子「プロフェッショナルスクール」(1998年玉川大学出版部)より作成)

1.スクール・オブ・エデュケーションの機能

  1. 教員養成
  2. プロフェッショナル管理者養成
  3. 教育関連研究
     (※)このため、存在が曖昧との面も指摘

(学位)アカデミック学位:M.A Ph.D
 プロフェッショナル学位: M.Ed(主に教師)、Ed.D(学校管理者・行政者)

2.教職の現状

  • 教職志望者の減少、教職に就く人数の減少、質の低下
     (背景:教職という職への評価の低さ、他の職種と比較した給料の低さ → 優秀な学生が低サラリーを嫌って教職市場から離れたのが過去20年)
  • 教師の高齢化
     ※ 教員の質を高めるようなプログラムを開発し、同時にいかに有能な学生を入学させ将来の教師を安定的に供給していくかが、スクール・オブ・エデュケーションの課題。

3.教員養成機関としてのスクール・オブ・エデュケーション

  • 教職の世界における学位に対する評価と業績主義
    • 修士号取得:高校教師の56パーセント、中学教師の47パーセント、小学校教師の45パーセント(1989年)
    • 年間に授与される修士号以上の学位の1/4が教育学分野
    • 現在では小・中学校の新規教師の25パーセントが修士号保持
  • 契機:1983年「危機に立つ国家」の発表
    • 生徒の学力を高めるために教員の能力を向上させることの必要性を強調
      → 発表以降、全米レベルで教員養成プログラムを改革する努力
      (主目的) 一般的に社会的地位の低い教職を高度な専門職へ引き上げること。
    • これら改革の中心として、スクール・オブ・エデュケーションを持つ大学が役割。
  • プロフェッショナル・ディベロプメント・プログラム(教師の教室での指導技術の向上を目指すプログラム)の提供
    • 大学院での提供、契約ベースの教員研修
  • その他の工夫
    • ケーススタディ、自分のパフォーマンスをビデオにとって技術上参考にする方法、シミュレーション授業、など
  • 一般的な教員養成プログラムは、学部課程での教職につながる専門教育と、大学院での教育実習に重点を置いた教職専門教育

4.学校管理者養成機関としてのスクール・オブ・エデュケーション

  • ハーバード大学スクール・オブ・エデュケーション
    • 主な機能:教育政策立案者と学校区・大学等の管理者の育成
    • 学位:Ed.D
    • プログラム(コース):
      1. 管理、計画、社会政策部門
        • コミュニティ教育と生涯学習部
        • 初等中等教育部(初等中等教育管理者、州・学校区教育担当責任者、教育政策担当責任者の養成)
        • 高等教育部(高等教育機関管理者、政策担当者の養成)
        • 都市教育計画部(教師・学校管理者を対象に、大学校区教育長の養成)
      2. 発達と心理
      3. 学習と授業
    • UCLAスクール・オブ・エデュケーション
      • どちらかというと教育関連研究の比重が高い、研究指向型プロフェッショナルスクール
      • 学位:M.Ed、Ed.Dのほか、選考に応じてM.A、Ph.Dを授与
      • M.Edは教員養成プログラム修了者に授与。カリフォルニア州では終身教員免許取得に修士号が条件のため、修士号取得学生の大半がこのコース。
      • 以前は、Ed.DコースとPh.Dコースにおける選択・必修科目の違いがあまり明確でなかった。
         → 1990年代前半より、学校区管理者・政策関係者とのつながりをより緊密にし、教師との連携を積極的にすすめるよう路線を変更、プロフェッショナルスクールとしての性格を再認識。プロフェッショナルプログラムとアカデミックプログラムのトラックの明確な区分。
         → 学校区への教育政策への影響力は伝統的に強くなかったが、近年その影響力が強まりつつある。
      • エデュケーショナル・リーダーシップ・プログラム(学校区、コミュニティカレッジ、高等教育機関の管理職養成)
      • 社会学・比較教育プログラム(Ph.Dしか授与しない)
         卒業生は、国際機関(ユネスコ、OECD,WB)の政策担当部門への就職、開発教育プロフェッショナルとして発展途上国への赴任など。

5.高等教育の管理運営者養成機関としてのスクール・オブ・エデュケーション

  • 私立大学を中心に、学部長などの運営管理者は学者でなく専門家としての運営管理者が携わるのが一般的。
  • このため、高等教育プログラムや管理運営者養成プログラム修了者が、高等教育や成人教育等の運営管理者になるケースが多い。

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