資料2 教員養成の現状等に関する指摘

1.教育職員養成審議会第1次答申(平成9年7月)<抜粋>

2.教員養成カリキュラムの改善

2.教育課程の教育内容の問題点

(1)教育内容に係る問題点

3.不十分な教育内容・方法

  • 教員養成教育の中で、教科の専門性(細分化した学問分野の研究成果の教授)が過度に重視され、教科指導をはじめとする教職の専門性がおろそかになっていないか。教員スタッフの専門性に偏した授業が多く、「子どもたちへの教育」につながるという視点が乏しいのではないか。
     その背景に、各大学において、教職課程が専門的職業人たる教員を養成することを目的とするものであるという認識が、必ずしも明確な形で関係者に共有されていないことがあるのではないか。
  • 教職課程においては授業科目の名称に相応しい包括的・体系的な教育が必ずしも十分になされていないのではないか。
  • 教職課程における開設授業科目の間で教授内容の整合性・連続性は考慮されているのか。体系的な知識及び技能の教授が求められる教職課程において、このような調整がなされなくてもよいのか。
  • とりわけ生徒指導や特別活動に係る科目については、扱う内容が伝統的学問領域と必ずしも整合しないなどのため、学校の実態を踏まえた実践的内容が求められているにもかかわらず、適切な担当教員が確保できなかったり、ごく狭い領域に偏して教授されている例が見られるといわれる。
     そのようなことはこれら科目が制度上位置付けられて間もないゆえの過渡的な現象なのか。そうであるとすればどうしたら早急に改善できるのか。そうでないとすればどこに問題の本質があるのか。
  • 教育実習では、教科指導やホームルーム指導以外の内容が計画的に扱われている例はほとんどないのではないか。教員を志願する者にとって、教育実習は実践に触れ自らの進路を考える極めて貴重な機会であるにもかかわらず、このような実態は大きな問題でないか。また、事前・事後指導についても、大学で修得する理論・方法と実習本体とを円滑に接続するものとして十分に内容が工夫されているといえるか。

2.教育職員養成審議会第2次答申(平成10年10月)<抜粋>

3.修士課程を積極的に活用した現職教員の再教育の必要性

2.修士課程を積極的に活用した現職研修の意義

(1)現職教員が修得すべき修士レベルの資質能力

 現行の教員免許制度に即して考えてみると、現職教員に着目した場合、修士課程等においてその向上が図られるべき資質能力としては、学部レベルの養成教育において修得した教員に求められる最小限必要な資質能力を基盤として、それぞれの現職教員の職務内容や免許状の種類に応じた教科、教職、特殊教育又は養護の分野における専門職業人に必要とされるより高度の資質能力が考えられる。
 そして、それに関わる専門知識は、単に抽象的なものでなく、それを教育指導において実際に柔軟かつ創造的に使いこなし得る実践性へと発展していくものでなければならない。

(4)修士課程での教員養成における開放制の原則

 (略)
 ただし、現職教員を修士課程に受け入れるに当たり、教員養成系の大学院と一般大学・学部系の大学院とでは状況が相当に異なるので、ここでそのことについて触れるとともに、修士課程における教員養成が開放制の原則の実現に果たす積極的な役割を明らかにしておきたい。
 教員養成は、基本的には、教員免許制度に基づき「教員」という特定の専門職業人を養成するという意味において、医師や獣医師を養成する場合と同様いわゆる目的養成の分野に属する性格のものである。したがって、学部における一種免許状授与のための教職課程も、修士課程における専修免許状授与のための教職課程も、教員免許制度に基づいて文部大臣が認定した同じ目的養成のためのカリキュラムを有する組織であることに変わりはない。
 我が国の教員養成制度が戦後一貫していわゆる開放制の原則を採用し、教員養成系の学部や大学院のみならず文学、理学等すべての学問分野にわたる学部や大学院に対しても開かれたものであるため、特に一般大学・学部系の修士課程においては、大学教員自身が教員養成という機能をほとんど意識することなく、当該学問分野の専門教育科目を教員免許制度上の区分である教科又は教職に関する科目等に位置付けて課程認定を受けることが可能となっている。
 このため、一般大学・学部系の修士課程においては、実態として教職に関する科目がほとんど開設されておらず、そこに現職教員が在学し修士レベルの教育を受ける場合、校務への復帰後の実践的指導力の向上を疑問視する向きもある。しかしながら、教科指導に当たって、教科の内容に関する深く幅広い専門知識が、児童生徒への指導の内容・方法のいかんによって、その関心を著しく高め理解を深める効果を持つことは言うまでもない。特に教育実践における明確な問題意識を持った意欲ある現職教員が修士課程に在学する場合、学部レベルで修得した教員として最小限必要な資質能力と自らの教職経験を基盤に、修士課程において適切な履修指導等を受けながら教科に関する高度の専門知識や課題解決の方法を確実に修得し、その成果をその後の教育現場における指導に効果的に生かしていくことが十分に期待できる。
 したがって、一般大学・学部系の修士課程に現職教員が在学し、教科専門科目を中心に学修を進めることは、現職教員の実践的指導力の向上を図る上で十分にその意義が認められるものである。
 さらに、現行の教員免許制度が、教職に関する科目に加え、それぞれの免許状の種類に応じ教科や養護、特殊教育に関する科目の修得をも併せ求めていることを考えると、とりわけ現職教員の再教育に着目した場合、上記のような性格を持つ修士課程における教員養成は、開放制の趣旨の一層の徹底に資するものと期待されるところである。
 上記のことから、本答申においては、現職教員を対象に修士レベルの教育を行う機関として、教員養成系の修士課程のみならず、国・公・私立の一般大学・学部系の修士課程等についても広く対象に含めて以下において関係施策を提言することとする。

3.教育職員養成審議会第3次答申(平成11年12月)<抜粋>

4.教職課程の充実と教員養成に携わる大学教員の指導力の向上

1.教職課程の教育内容・方法の現状

 教員養成の段階においては,採用当初から教科指導,生徒指導等の職務を著しい支障が生じることなく実践できる資質能力を形成する必要があるが,大学における教職課程については,各大学において種々の改善努力がなされているものの,従来からしばしば次のような問題点の指摘や改善意見の提案がなされてきた。

  • 教員養成教育の中で,教科の専門性(細分化した学問分野の研究成果の教授)が過度に重視され,教科指導をはじめとする教職の専門性がおろそかになっていないか。教員の研究領域の専門性に偏した授業が多く,「子どもたちへの教育」につながるという視点が乏しいのではないか。
     その背景に,各大学において,教職課程が専門職業人たる教員を養成することを目的とするものであるという認識が,必ずしも明確な形で関係者に共有されていないことがあるのではないか。
  • 教職課程においては授業科目の名称にふさわしい包括的・体系的な教育が必ずしも十分になされていないのではないか。
  • 教職課程における開設授業科目の間で内容の整合性・連続性は考慮されているのか。体系的な知識及び技能の教授が求められる教職課程において,このような調整がなされなくてもよいのか。特に,教科専門科目と教職専門科目が関連なく教授され,統合されてこなかったのではないか。
  • 大学がどのような教員を養成するかという哲学や理念を持たず,単に教員免許状取得にかかわる授業科目を設定し,その授業科目を担当可能かどうかという視点だけで大学教員を採用しているのではないか。
  • 教職課程においても知識中心の教育が支配的であり,学生の課題探求能力を育成する教育が十分行われていないのではないか。
     これらの課題に対応するため,第1次答申で新たな時代に向けた教員養成カリキュラムについて提言を行い,これを受けて,平成10年,教育職員免許法が改正され,教員養成カリキュラムの大幅な弾力化,教職に関する科目の格段の充実など,大学での教員養成カリキュラムの改善が行われたところである。
     しかしながら,上述した問題点等の解決を図るためには,教育職員免許法の改正のみでは十分でなく,教育職員免許法改正による新しい教員養成カリキュラムをより実効あるものにする観点からの大学の真摯な努力が求められるところであり,教員養成に携わる大学教員の指導力のより一層の向上が必要とされるところである。

4.中央教育審議会答申(今後の教員免許制度の在り方について)(平成14年2月)<抜粋>

1.教員免許の総合化・弾力化

3.教員免許状の総合化・弾力化の方向性

(3)専修免許状

 教員免許状の総合化に関連して,専修免許状の在り方についても検討することが必要となろう。
 専修免許状は,昭和63年の免許法改正により創設された大学院修士課程修了レベルの免許状である。専修免許状は,大学院修士課程修了レベルの資質の高い教員を確保するとともに,一種免許状を有する現職教員が専修免許状を取得する道を開くことによりその研修意欲を高めることをねらいとして創設されたものであるが,処遇面を含めその位置付けが必ずしも明確でなかったことから,現職教員の保有率は,小学校教員が0.9パーセント,中学校教員が1.7パーセント,高等学校教員が28.0パーセント(平成10年度)と低い割合にとどまっている。
 専修免許状については,従来から,例えば,学校教育専修の科目の修得で教科ごとの一種免許状が専修免許状になる現行の方式は専門性の観点から疑問が呈されてきた。このため,専修免許状はある特定の分野の単位を修得した場合に取得するものとし,その修得単位の分野を適切に示すものとするよう改善すべきである。専修免許状を教員の専門性を表すものとするためには,教員免許状の種類として,現在の一種免許状及び二種免許状を基礎となる免許状として,当該教員の教授可能な学校種及び教科を示すものとし,専修免許状は,当該教員の得意分野を示すものとして再構築し,現行の学校種別の区分を廃止して専攻分野別の区分(例えば,理科教育,環境教育,生徒指導等)として専門性を明確にすることが必要である。この場合,教員は,基礎となる免許状の1種類,又は,基礎となる免許状と専修免許状の2種類の免許状を持つことになり,また,専修免許状は専門分野別となるため,複数の取得が可能となる。
 さらに,専修免許状の取得要件として一定の現職経験と教育職員検定を必ず課すことにより,教員としての実践的な指導力や専門性を更に高めることができることなどから,専修免許状取得者について将来の給与面等における処遇の改善に資することが期待できる。このような制度改正を行った場合,学部から直接大学院修士課程へ進学した者については,大学院修了の際に専修免許状が取得できないこととなるが,大学院において必要な単位数を修得した者については,採用後の現職経験と教育職員検定のみで専修免許状を取得できるとする方法を設けることも考えられる。
 以上のような専修免許状の改善については,専修免許状取得者の処遇改善の見通し,免許状の総合化の検討状況,平成10年及び11年において,平成10年免許法改正による再課程認定を行ったばかりであること等大学の状況にかんがみ,専修免許状の種類を専攻分野別の区分とするのは将来的な課題とし,現時点においては,現在の学校種教科別は維持しつつ,専修免許状に免許状取得のために履修した専攻分野を記載することにより,専修免許状の専門性(教員の得意分野)を明確にすることが必要である。
 学校において様々な得意分野を持った教員が集まり,組織としての力を発揮することが期待されている。専修免許状に専攻分野を明記することにより,それぞれの得意分野を意識した教員配置を促進し,特色ある学校づくりが可能となると考える。

5.「今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方について(国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会報告書(平成13年11月))<抜粋>

2.今後の教員養成学部の果たすべき役割ー

2 大学院の在り方

(1)修士課程の在り方
1.修士課程で養成すべき能力
  • 教員の資質の向上を図るため、専修免許状を保持した教員の割合を高めていくことが求められている。現職の教員が専修免許状を取得する方法として大きな役割を担うのは大学院の修士課程による学修である。教員養成学部の修士課程においては、現職教員等の学修や研修のニーズに応えるため、一層の組織的・体系的な履修指導の充実が必要である。
  • 修士課程においては、学部段階での内容を更に深め、教員にとって必要な深い知識を学び、各学校で中核的な役割を担いつつ若手教員を指導できる能力や、新たな課題に対して自らその問題の所在を突きとめ、対応策を見い出し、あるいは従来の方法を修正する能力を育成することが求められる。また、特に「学校現場で生じている今日的課題」への取組も期待されている。
2.教員養成学部の修士課程で授与する学位とその内容
  • 教員養成学部の修士課程では、学部にもまして教員養成学部として独自性のある教育研究に取り組むことが求められる。しかし、その実態をみると、例えば内容が明らかに理学や文学の修士論文と変わらないような論文等をもとに「修士(教育学)」を授与しているという例が見られる。
  • 教員養成学部の大学院では、他の専門学部と同じような内容の学問を追究するのではなく、教員養成の立場からの専門的要素を取り入れた、名実ともに「修士(教育学)」にふさわしい内容の教育研究を展開していくことが求められる。そのためには、教科教育専攻(専修)の場合は、教育に関する研究の副論文を義務付けることも一つの方法である。ただし、その際には、副論文の添付が形式化し、実質が伴わないものにならないよう、運用に十分留意する必要がある。
3.現職教員の再教育のための体制整備
  • 教員は、学校現場で様々な実践経験を積んでから大学院教育を受けることが効果的であると言われている。現実に他の学部に比べ、社会人(現職教員)の占める割合は格段に高い(平成12年5月1日現在、国公私立の大学の修士課程9.8パーセント、国立の教員養成学部の修士課程29.6パーセント)。
  • 実践的な教育研究を目的とする教員養成学部の修士課程にとって、具体的な問題意識と高い学習意欲を持った現職教員を受け入れることは、大学の教員や学部を卒業してすぐ入学してきた学生が学校現場の現状に触れるよい機会となり、教員養成学部全体の活性化につながる効果もある。各大学院においては、積極的な取組が求められる。
  • 現職教員の再教育の必要性やその拡充の方策については、教育職員養成審議会の第2次答申「修士課程を積極的に活用した教員養成の在り方について」(平成10年10月)において詳しく述べられている。本答申自体は、教員養成を行っている一般学部の大学院をも対象とした提言であるが、教員養成学部は教員養成の専門学部として積極的に現職教員を受け入れるための体制を整備していくことが求められる。
  • 特に、これからは教員が職務に従事しつつ修士課程の教育が受けられるよう、同答申等でも述べられているように、例えば次のような形態の教育指導体制の充実を図っていくことが必要である。
    • 夜間、週末、長期休業期間等を活用した授業の実施
    • 衛星通信、インターネット等を活用した遠隔教育の実施
    • サテライト教室を利用した教育の実施
    • 長期在学コースの設定
  • また、教育公務員特例法が改正され、平成13年度から「大学院修学休業制度」が導入された。平成13年度現在、この制度を利用して入学してきた現職教員(公立学校)は155名である。地方公共団体の派遣制度に基づく研修定数の増加を図っていくことが困難な状況であることにかんがみ、今後、この制度に積極的に対応する方策として、各大学において教育の質の確保に留意しつつ、1年制コースの導入も検討されるべきである。
  • 現職教員は、学校現場での多くの経験の中から具体的な問題意識を持ち、修士課程においてそれらを踏まえた実践的な教育研究を希望しており、学部を卒業してすぐ入学した学生とは違った指導方法が求められる。現職教員の再教育に当たっては受入れ体制の整備とともに、現職教員のニーズに応じたカリキュラムの開発と指導体制の確立が必要である。
  • 現職教員の再教育の場として修士課程を活用していくためには、地域の教育委員会等との連携協力が不可欠である。教育委員会が大学に対して何を望んでいるか、あるいは大学として何をなし得るかなど、緊密な連携をとって効果的な大学院教育を実施できるような協議の体制を整備していくことが必要である。
  • 現職教員の指導に当たって重要なことは、修士課程の修了をもって指導が終わるのではなく、その後もいつでも大学教員の指導が受けられるよう、様々な形で関係が保たれることである。このようなことは、現在多くの大学院においてなされているが、今後は教員個人のレベルではなく、組織として対応していくことが求められる。それがまた、教員養成学部と学校現場のつながりを深めていくことにもつながると考えられる。
4.専修免許状の在り方の見直し
  • 現在、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会において、専修免許状について、修士課程で学んだ専門分野を適切に表示できるように改めることなどについて検討が行われている。このような動きも踏まえ、教員養成学部の大学院としてふさわしい専門性の確立に努めるべきである。
(2)教員養成学部における専門大学院の基本的な考え方
  • 平成11年度に、大学院設置基準が改正され、高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を専ら養うことを目的として、特に必要と認められる専攻分野について教育を行う修士課程(専門大学院)を設置することができることとなった。
  • 専門大学院はその目的にかんがみ、専任教員のうち相当数は専攻分野における実務の経験を有する者とすることや、実践的な教育を行うため専攻分野に応じ事例研究、討論、現地調査その他適切な方法により授業を行うなどの適切な配慮が必要とされている。
     専門大学院については、現在、いくつかの大学で教員養成以外の分野において、高度専門職業人として必要とされる資質能力等に応じたコース・カリキュラムや授業方法等を工夫しつつ、その設置が図られている。また、職業資格との関連も視野に入れた新しい形態の大学院や学位の在り方などについて、現在中央教育審議会大学分科会において検討が行われている。
  • 教員養成学部における専門大学院の在り方については、これらの審議状況や免許制度との関連あるいは学校現場等からの需要の動向等様々な面を勘案しつつ、今後、別途検討していく必要がある。

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