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資料4

平成16年5月11日

特殊支援教育の在り方について
〜肢体不自由児・病弱児を中心として〜


難病のこども支援全国ネットワーク
福島 慎吾

あるべき姿
子どもの最善の利益に基づく就学の保障
自己選択・自己決定という当たり前の概念
可能な限り住んでいる地域とのつながりを

1. 子どもにとってどの学校を選択することが最もふさわしいかのか?
学校は、学習の場だけではなく子どもがまわりと関わりながら発達をし、自律性などのソーシャルスキルを身に付ける重要な場である。
希望する学校を自分で選べることが必要。行政(法令)で就学先を決めるのではなく、子どもの最善の利益に基づき、保護者が決定すべき。
そのためには正確な情報の提供、相談( ノットイコール交渉)の場が必要。

2. 何が必要で、その必要な支援体制をいかに確保するのか?
学校に子どもを合わせるのではなく、子どもに合わせた支援体制を。
肢体不自由児の地域の学校への学校生活には、介助員制度が必須。
保護者の付き添いのない学校生活を保障する重要性。
→医療的ケアの問題、登下校、プール、遠足・修学旅行‥‥
支援費制度によるヘルパーを登下校や学校生活、校外活動時にも利用できるようにすることによって目前の問題のいくつかがすぐに解決できるのではないか。
フレキシブルな教員配置、前籍校と病弱養護学校や院内学級とのシームレスな関係の構築。
病状などから参加できない教科に配慮した評価課程や指導カリキュラムの策定。
事務手続きの見直しによる学籍転籍時の提出書類の煩雑さからの解放。
医療職、教員、保護者とのFace to faceのコミュニケーションの場の設定。
教員に対する実効性ある研修システムの構築。(管理職向け及び担任向けのカリキュラム)
高等学校に対しての上記各項目の重点化。

3. 卒後もきちんと見据えた教育体制に
いまの特殊学校は、住んでいる地域とのつながりがあまりに少なすぎる。
特殊学校卒業後になって、自己選択・自己決定の世界に投げ込むのは、あまりに無責任ではないのか。
以上



【参考資料 1】

◇子ども(児童)の権利に関する条約(抄)


3条(子どもの最善の利益)
 児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。(以下略)

23条(障害のある子どもの権利)
 締約国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める
 締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、かつ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励し、かつ、確保する
 障害を有する児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。

28条(教育)
 締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、
(a) 初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。
(b) 種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。
(c) すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。
(d) すべての児童に対し、教育及び職業に関する情報及び指導が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとする。
(e) 定期的な登校及び中途退学率の減少を奨励するための措置をとる。
 締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。(以下略)

29条(教育の目的)
 締約国は、児童の教育が次のことを指向すべきことに同意する
(a) 児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
(b) 人権及び基本的自由並びに国際連合憲章にうたう原則の尊重を育成すること。
(c) 児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること。
(d) すべての人民の間の、種族的、国民的及び宗教的集団の間の並びに原住民である者の理解、平和、寛容、両性の平等及び友好の精神に従い、自由な社会における責任ある生活のために児童に準備させること
(e) 自然環境の尊重を育成すること。



【参考資料 2】

◇「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」報告書(抄)

平成14年6月21日

1   今後の小児慢性疾患対策の基本的考え方
 検討会では、慢性疾患のある子どもとその家族が抱える多くの課題と要望の全体像を明らかにし、この全体像の中で小児慢性特定疾患治療研究事業が果たすべき方向性を検討することとした。慢性疾患のある子どもとその家族は多面的な要望を抱えており、多様な方法と活動主体によって、これらの要望の実現を目指すことが必要である。

1. 慢性疾患のある子どもとその家族の多様な課題と要望
 慢性疾患のある子どもとその家族の要望を、検討会で患者団体12団体から聴取した結果、「より良い医療」、「安定した家庭」及び、「積極的な社会参加」、を実現することに集約された。これらの要望には、今後目指すべき基本的方向性を多く含んでいると考えられる。以下に内容を示すと、
(1) より良い医療 : より良い医療を受け、可能な限り治癒・回復を図ること
(2) 安定した家庭 : 家族がまとまりながら慢性疾患のある子どもを支えつつ、家族全員がそれぞれの人生を充実して送ること
(3) 積極的な社会参加 : 慢性疾患のある子どもの教育や就職等の社会参加を全うすること 本来、持って生まれた能力の可能性を十分に発揮したい、または、させたいという要望は、一般の子どもとその家族の持つもの以上に強いものがある。社会に参加したいという要望もまた同様である。本人の能力や必要な疾病のケアなどの状況に応じて、これらが十分に行われるよう支援することが必要である。

V   一人一人の状況にあった教育

  小児の慢性疾患の児童生徒にとっての教育は、学習の遅れの補完、学力の向上、積極性・自主性・社会性の涵養、心理的安定などの意義があり、また、病気の自己管理能力の育成など治療上の意義が認められてきている教育は慢性疾患のある子どもが自立し、社会参加するために欠くことのできないものである。この教育をいっそう充実するため、次のような課題に対応する必要がある。

それぞれの病気と慢性疾患のある子どもを理解した専門性の高い教員等を配置し、一人一人の疾病等の状態に応じた対応が必要ではないか。
学校で、慢性疾患のある子どもについて、不必要な制限が行われたり、無理な活動を強いたりするなど不適切な対応を避け、疾患に応じた適切な支援を受けるために、退院後もとの学校に戻ることから通常の学級担任も含め、教育関係者に慢性疾患のある子どもの実態が理解されるよう研修等がなされることが必要ではないか。
慢性疾患のある子どもにも、その状態等に応じ、できるだけ健常児と同様に平等な進学・進級の機会が与えられることが望まれるところである。これの実現を容易にするために、病弱養護学校の幼稚部や高等部の整備及び配置等について検討を行い、地域の実態に応じた対応が必要ではないか。
慢性疾患のある子どもの入院については、成長・発達途上にあることの特性を踏まえ生活環境の整備を行うという面から、病院は、市町村教育委員会との連携のもと、入院している児童生徒のQOL向上のため、院内学級等に必要な面積の専有空間の確保など教育の場の提供等の取り組みが必要ではないか。
専門家の意見を聴くとともに、保護者の意見を踏まえて市町村教育委員会が慢性疾患のある子どもの就学先を決定すること病弱養護学校と小・中学校間の転学が円滑に行われるよう配慮することが必要ではないか。なお文部科学省は、近年の医学、科学技術等の進歩を踏まえ、病弱養護学校等に就学すべき疾病等の程度を定めた就学基準等を見直し制度改正を行ったところである。
運動の制限を余儀なくされている慢性疾患のある子どもの体育について、その状態に応じた柔軟な学習プログラムの普及と、その取り組み状況をいっそう重視した評価が行われるように配慮することが必要でないか。
疾病等があっても、自立していくために、学校における保護者の付添を必要としない環境づくりについて慢性疾患のある子どもの保護者から要望がなされているところである。今後、病弱養護学校等における看護師による対応など医療的ケアの体制整備や教員との連携のあり方等について、医療・教育・福祉等の関係機関が連携を図りながら検討を行う必要があるのではないか。



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