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中央教育審議会初等中等教育分科会

2003年7月1日 議事要旨
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会総則等作業部会(第3回)

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会
総則等作業部会(第3回)

1. 日   時   平成15年7月1日(火)10:00〜13:00

2. 場   所   ホテルフロラシオン青山   芙蓉(東)(2階)

3.
議   題    必要な学習指導時間の確保について
大野栄夫氏(仙台市教育委員会学校教育部参事)からの意見聴取
佐藤義則氏(さいたま市立片柳中学校長)からの意見聴取

4. 配付資料
資料1    当面の具体的な検討事項の例
資料2 公立学校での授業日、休業日、授業時数等の構成例(PDF:23KB)
資料3 授業時数等に関する学校教育法施行規則及び学習指導要領上の規定(PDF:118KB)
資料4 平成15年度公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について(速報)(PDF:41KB)
   1    年間の総授業時数
年間の総授業日数
特別活動(児童(生徒)会活動、クラブ活動、学校行事)の年間の総授業時数
年間授業時数・日数の充実に向けた取組の例
公立学校における2学期制など学期区分の工夫の導入状況等
公立学校における長期休業期間中の学習等の機会の充実状況
資料5 学校の授業時間に関する国際比較調査(結果概要)(PDF:36KB)
資料6 我が国の数学授業の特徴 【TIMSS1999数学授業ビデオ研究結果報告より】(PDF:413KB)
資料7 年間授業時数、年間授業日数等についての学校教育法施行規則及び学習指導要領上の規定の経緯(PDF:993KB)
資料8 意見発表資料(大野栄夫氏)(PDF:1,689KB)
資料9 意見発表資料(佐藤義則氏)(PDF:648KB)
資料10 今後の日程等(案)

  (机上資料)
          中央教育審議会答申、教育課程審議会答申
  小・中・高等学校等の学習指導要領
  諮問文、文部科学大臣諮問理由説明、初等中等教育局長補足説明等

5. 出席者
(委   員)
安彦主査,浅田委員,今井委員,小栗委員,小久保委員,中許委員,西村委員,船津委員

(意見発表者)
仙台市教育委員会:大野氏,板橋氏,高橋氏,春日氏
さいたま市立片柳中学校:佐藤氏,鏑木氏

(事務局)  
文部科学省: 金森初等中等教育局審議官,河野主任視学官,大槻教育課程課長,今里教育課程企画室長
国立教育政策研究所:月岡教育課程研究センター長

6.議事等
(1)    事務局より,資料2から資料7について説明が行われた。

(2)    大野榮夫氏(仙台市教育委員会学校教育部参事)から,必要な学習指導時間の確保について意見発表が行われた。意見の要旨は以下のとおり。

   仙台市が学期の見直しを検討し始めたのは,平成8年の中央教育審議会答申や平成10年の教育課程審議会答申が出されたこと,また,平成10年の学校教育法施行令の一部改正で,これまで都道府県の教育委員会が定めていた学期が,その学校を設置する地方公共団体の教育委員会が決定できるようになったことが背景にある。
   [生きる力]をはぐくむためには,子どもたちに時間的なゆとりだけでなく,心のゆとりや考えるゆとりを確保することが必要である。2学期制の導入は,学校生活の中にゆとりを生み出して,教員と子どもたちの触れ合いを基盤とした教育活動をより多く実現するための一つの方策である。単に時数を確保するためではなく,学習の充実を図るためには,3学期制よりも2学期制のほうがより効果的ではないかと考えた。
   仙台市の課題として,指導と評価の一体化があった。子どものつまずきに応じて指導の手だてを考えて学習指導をすることや,形成的な評価が大切だが,学期が短いために,期末の総括的な評価,結果の評価になっているという問題意識があった。その他に,長期休業日の過ごし方,進路指導の充実,授業時数の確保が課題であった。
   2学期制の実施を通して,1一つの学期を長期的なサイクルでとらえ,ゆとりの中で実感をもった理解や学びを身に付け,学ぶことの楽しさ,成就感が体感できるような指導を展開したい。2子どもたち一人一人が自分の興味・関心をもとにした,連続的,発展的な学習活動が展開できる指導を推進したい。3学期の長期化を生かした指導の中での多面的な視点の評価による学習指導の充実を図りたい。4長期休業を一つの学期のサイクルの中でとらえ,児童・生徒自身の課題設定による自主学習など自ら学ぶ意欲と態度を育てるなどを目指していきたいと考えた。
   仙台市の2学期制は,10月の中頃に学期の切れ目を入れ,連続5日間の秋休みを設けた。学期の切れ目を意識し,2学期への心構えを新たにさせたいと考えた。
   2学期制を実施して,その実態について調査を行ったところ,子どもと向き合う時間の確保については,小中学校とも90%以上が3学期制と比べて増えたと回答している。学校生活についての話題が多く,放課後の充実・活用も図られたとの報告があった。
   進路指導の充実については,2学期制を導入して明確にその効果が現れた。特に,中学校3年生の受験期の進路指導に,顕著にその効果が現れた。3学期制であれば,12月頃は、2学期の通知表の作成と高等学校入試にかかわる調査書の作成の仕事が重なっていたが,2学期制にすることで,その仕事が分散され,子どもたちへの進路指導にこれまで以上に時間をとることができた。
   このように,2学期制の導入により,各学校で工夫を凝らして,ゆとりの時間を生み出し,子どもと向き合う時間が多くなった。
   指導と評価の充実については,2学期制になって良かったこととして,長いスパンで変容を見ることができ,評価に反映できたことなどがあげられる。2学期制の導入を契機に,各学校では通知表を様々に工夫し,通知表の情報量も多くなってきている。これは夏季休業や冬季休業中に評価資料を分析したりまとめたりするゆとりができたからではないか。
   2学期制では,通知表の機会が1回減ることによって,児童生徒,保護者の不安が大きくなるのではないかという懸念があったが,長期休業前やその前半に家庭訪問や面談を実施する学校が増えている。その場で長期休業までの学習の成果や課題を一人一人に伝え,長期休業中の生活や学習への支援を行っている。また,長期休業中に学校の施設設備を開放したり,相談日を設けて学習の継続を支援する学校も増えている。なお,3学期制では,3学期に授業時数の少ない教科も評価をしなければならない。
   時間割・日課表や行事の工夫としては,行事の時期を移動し,バランスの取れた配列を心がけた学校が多い。小学校では地域と共催の行事を取り入れた学校もあった。それから,教科等の指導と学校行事とのバランスも図っている。
   授業時数の確保については,平成13年度以前に行事等の見直しをした学校が多く,それも含めるとすべての小中学校で授業時間が増えている。授業時数は行事の削減で生み出すことができた学校が多く,増加時数は日課表等の工夫で生み出されたものの方が多い。
   このように,2学期制の導入を契機に行事や授業を見直し,日課表等の工夫が行われ,その結果,授業時数の確保もできるようになってきた。
   これまで長期休業前には,評価のためのテストの時間が多く,進度の遅れを挽回するために,教師主導型の授業が多くなる傾向が強かった。また,成績処理のために短縮授業などが行われることも多かった。しかし,2学期制では,長期休業の前日まで指導計画に従って,子どもの学習を充実させる授業が展開できる。
   現時点では大きな課題と言えるものはないが,通知表が1回減るため,学習状況を長期休業前に保護者や子どもに伝える工夫や学期の途中に長期休業が入るため,学びの連続性を持たせる工夫が必要と考えている。
   今後も学校の自己点検・自己評価を充実させながら,各校が自校の教育目標の具現に向けて,どのような教育活動を展開していくべきかという問題意識を持った上で,教職員の英知を集めて,子どもたちの学校生活や教育課程全般の見直しを図っていくならば,現段階の諸課題の解決はもとより,さらなる2学期制の持つ可能性が現実的な姿として見えてくるのではないかと思っている。

(3)    佐藤義則氏(さいたま市立片柳中学校長)から,必要な学習指導時間の確保について意見発表が行われた。意見の要旨は以下のとおり。

   授業時数にかかわる課題と本校の教育課程の編成方針について説明する。
   さいたま市の中学校は平成14年度の場合,卒業式が3月14日で,3年の授業日数は193日と,1,2年生に比べ7日間ほど少なく,その分授業時数の確保が難しい状況にあった。完全学校週5日制になる14年度の年間授業時数を試算してみたところ,1年生では標準時数980時間を確保できるものの,2年生では6時間,3年生では67時間も不足することがわかった。   よって,教育課程編成を全面的に見直すことになった。新学習指導要領にきちんとのっとり,年間の学校生活の大きな流れは変えずに,標準的な教育課程を展開していきたいという職員の願いもあり,教育課程について4つの方針を立てた。一つ目は,各学期ごとの教育のまとまりの成果を踏まえ,一つ一つの教育的価値を検討し,精選を図って,新学習指導要領のねらいを実現する。二つ目は,35で割り切れない教科の時数については,年間を10週,15週,10週の3つに分け,3種類の時間割で対応する。三つ目は,学校の諸行事による授業カットを減らす。行事の実施方法や時期を変える等の工夫で,授業カットの時数を減らすことが可能になるものがあった。四つ目は,学校行事を安易に廃止したりせず,教科,道徳,特別活動,総合的な学習の時間のバランスがとれた教育課程で,調和のとれた人間の育成を目指すことである。学校行事に自分の存在価値を見出す生徒もいる。学校行事の5種類を適切に取り入れ,生徒会活動も含め,バランスのよい教育課程を編成してこそ,21世紀を担う子どもたちの[生きる力]の育成につながるものと考えている。このような方針のもと,本校の14年度をスタートした。
   次に,授業時数の確保の具体的な方策について説明する。
   授業カット時数の削減については,一つ目の工夫として,2,3学期初めは,学校給食の有無にかかわらず,2日目から平常授業を行った。これまで学期初めは何日か短縮授業をしていたが,その前の長期休業中に会議等を含めしっかりと準備しておくことで,早くから平常授業が可能になった。二つ目は,定期テスト2日目は,その午後に授業を入れた。三つ目は,3年生では,出願や入試で生徒が大勢欠けるので授業が成り立たないなどの理由で授業をカットしてきたが,基本的には平常授業日なので,授業カット扱いをやめた。これらの工夫により,1,2年生で約20時間,3年生で約45時間の授業時数を増やすことができた。
   学校行事や生徒会活動の精選については,一つは文化祭の内容を統合縮小し,準備の時間も削減することなどを行った。13年度までに比べ,学校行事や生徒会活動の時数は減少したが,一つ一つ行事や活動に明確なねらいを持たせ,自主的に取り組ませることで,生徒たちが成就感を味わい,学校行事や生徒会活動の質的低下は可能な限りしないようにと考えた。これらにより,1年生で約17時間,2,3年生で約19時間の授業時数を増やすことができた。
   このような方策を重ねても,3年生については標準時数980時間に届かないため,9月以降,3年生だけ水曜日を6時間授業にした。これにより,10時間の授業を増やすことができ,3年生も987時間を計画することができた。
   また,夏季休業中に行事等を実施した。14年度は新たに二つの行事を夏季休業中に実施し,それにより,ゆとりある学校生活につながった。また,体験学習重視の観点から,今後も新しい事業が計画されるとすれば,行事によっては長期休業中の実施は有効な手段であると考えている。埼玉県内では,既に夏季休業中に授業日として自然教室などの行事を行い,成果を上げている小・中学校もある。
   さらに,会議等の精選も行い,学期初めの職員会議・学年会議を長期休業中に実施した。また,従来,月1回の校内研修会の多くを長期休業中に実施した。このような取組により,授業時数の確保につながることはもちろん,生徒と触れ合う時間や個別指導の機会を増やすなど,ゆとりある学校生活の実現に努めている。
   本校の教育課程の実施と管理については,一つ目は,年間授業計画予定表の作成と配布を行った。年間授業計画予定表を年度当初に教職員と保護者全員に配布した。これにより学校の説明責任の一端を果たすとともに,計画外の安易な授業カットは1時間もなくなった。二つ目は,各教員に月ごとに実施授業時数を報告させ,年度末に教務主任に集計をさせた。三つ目は,各学年主任に毎月,学年経営計画を作成させている。これにより,年間計画を各月に具現化し,確実に実施させると同時に,授業や行事の中身の充実に努めている。
   以上が,本校における14年度の取組であるが,一応の成果を上げることができたものの,指導法の工夫・改善や体験学習の充実等,教育の中身の充実に向け,課題も数多く残されている。15年度は,14年度の反省をもとに改善を加え,さらなる教育の向上を目指し努力している。

(4)    意見発表者と委員との間での意見交換及び「個に応じた指導」の一層の充実について,自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。(□=意見発表者,○=委員,△=事務局)

○   2学期制によって子どもと向き合う時間が増えたという話があったが,特定の時間を設けたのか。どういう形で子どもと触れ合う時間ができているのか。

□仙台市・大野氏   問題解決的な学習や体験的な学習を通して,教員と子どもとの触れ合いを深めていければと考えた。また,2学期制によって教員にゆとりができれば,放課後など,子どもの内面と触れ合う時間が増えると考えた。さらに、夏休みに個人面談をするなどの工夫もしている。

○   2学期制により,子どもたちの在校時間や,授業時数は増えたのか。また,週時程は変わったのか。

□仙台市・春日氏   小学校では,2学期制により,始業式と終業式が1回ずつ減少したため授業時数が増えた。また,2学期制を契機として,授業の開始前に15分程度のスキルタイムを週3,4回設けたことにより,1コマ分増えている。

□仙台市・板橋氏   中学校でも授業時数の確保により,在校時間は増えている。小学校と同様,始業式,終業式の減少による授業時数の増,また,学期末の短縮授業を3回から2回に減らしたことによる増がある。時間割の工夫については,3学期制でも2学期制でも,同様に工夫して時間を生み出すことは可能と考える。

○   片柳中学校では,3年生の出願と入試の時期に21時間の授業時数を生み出しているが,どの中学校でも私立高等学校の受験者が多く,授業が削られているが,すんなりと実施できたのか。

□片柳中・佐藤氏   この21時間は、高等学校入試のために多少人数は欠けるが,個を生かす絶好のチャンスと捉え,残っている生徒に授業を行った。また,3学期の三者面談は,既に進路の方向が定まっているため,授業をカットしてまでの面談はせず,放課後を中心に行った。

○   我々社会教育団体は,長期休業期間にもっとも活発に活動するが,授業時数確保のために長期休業期間が少なくなっていくようで心配である。先日も小・中学生を対象に海外派遣事業の参加者を募集したが,学校行事と重なるため参加できないという子どもが少なからずいた。子どもの参加する活動が教育的なものである場合は,参加を前向きに認めるようにしてもらいたい。

□片柳中・佐藤氏   本校での夏季休業期間中のボランティア清掃活動やクリーン活動は,あくまでもボランティア活動に興味のある生徒の自主参加としており,地域との触れ合いもねらいとしている。なお,本校では長期休業期間中に登校日は設けていない。

□仙台市・大野氏   仙台市も夏季休業期間中に登校日を設けている学校はないが,自発的な登校により、担任との学習相談や図書室,コンピュータ室等で学習するような場合もある。

○   私どもの市では夏季休業期間中に2日ほど登校日があるが,社会教育行事に参加するため登校できない場合は,学校へ申し出ることにより,出席扱いにしている。

○   調査結果によると,中学校3年以外はほとんどの学校で標準時数を確保しているが、2学期制を実施したということは,教育内容を子どもたちが習得するに必要な時間が不十分であるととらえられたのか。

□仙台市・大野氏   必要な時間が確保されていないから2学期制を実施したということではなく,問題解決的・体験的な学習の導入や,「個に応じた指導」が重視されたこと,また,評価も目標に準拠した評価に変わったので,子どもたちの変容の過程,個人内評価も重視し,より長いスパンで評価を行った方がよいと考え,2学期制とした。

○   子どもが教育内容を確実に身に付けるために必要な時間を,どのように確保するか。その方策について議論することが必要である。

○   調査結果によると,小学校はすべての学年において年間総授業時数をほぼ確保できており,標準時数以上の学校も多いが,週時程や時間割を作ることが大変で,内容を伴った各教科の時数が確保されているかどうかは疑問である。例えば,読書タイムやドリル学習を国語や算数の授業時数に組み込むと時数は増えるが,中身は偏ってしまう。各学校で工夫はしているが、35週で割り切れない教科をどう扱うかが大きな課題である。

○   授業時数については,35週や980時間という数字があるが,この内容を学ぶに当たってはこれだけの時間を要するという算出根拠があるはずである。時間の確保だけではなく,中身を確保できたかが問題であり,実際に授業を行ったときに,本当に子どもに力をつけるためにはどれだけの時間の確保が必要なのだろうか。

○   高等学校は35単位時間の授業を1単位として計算するという標準しかないので,35週で割り切れるかどうかという議論は関係しない。なお、授業時数については,十分な指導を行うには現在の時間では足りないと各教科の担任は感じている。大学入試の科目数も増えるので,今の学習指導時間では足りないという声が強い。

□片柳中・鏑木氏   授業時数が980必要なのかについては,私が14年度に3年生の数学を担当した上での話だが,授業時数を確保して,学習内容も丁度終わることができたので、足りないという感覚は持っていない。また,1,2年生については,1,000以上の時数を確保しているので、発展的な学習内容や課題学習的な内容も取り入れたのではないかと思っている。

□仙台市・高橋氏   片柳中学校の資料によると,3学期制のままで週5日制とした時の時数は,中学3年生が913であるが,この時数では,学習指導要領の学習内容を十分実施することは難しいと思う。さらに,個に応じた学習等に十分な時間を確保するためには,それ以上に時数が必要になり,[確かな学力]の形成の面でも,時数は多いほどよい。2学期制であれば,時数の確保が確実にできるうえ,工夫をすればゆとりを生み出すこともできる。
   2学期制により教員の負担が減ったのではないかという話があったが,2学期制により生じたゆとりを進路指導を充実させるための時間に充てるなど,子どもたちの指導に活かしていくための工夫をしており,多忙感や負担は変わっていない。
   なお,教育委員会では,長期休業期間中に,商工会議所や地域の経済団体と協力して子どもたちが積極的にボランティアや地域の活動に加わっていけるような企画を実施している。

○   2学期制を実施してまだ1年しかたっていないので、評価は難しいと思うが、子どもたちの日常の姿勢に何か変化は見られたのか。

□仙台市・春日氏   2学期制によって,7月に通知表の準備がなくなり,教員にゆとりができたため,子どもたちと触れ合う機会が増え,夏休み中の課題等について,子ども一人一人とゆっくり話をする時間が持てた。それによって,子どもたちの夏休みを迎える態度が違ってきて,大いに課題を持って夏休みを迎えることができた。
   今までは,夏休みの自由研究に,市販の工作類のキットを組み立てる子どもが多かったが,昨年度は,1学期の授業に関連する課題研究や自分の興味に応じた課題研究に取り組む子どもが増えた。

□仙台市・板橋氏   中学校についても,小学校とほぼ同じ状況で,学期末事務整理がなくなったことにより,子どもたちと触れ合う機会が増えた。2学期制になってまだ1年余りであるため,子どもたちの具体的な変化については,はっきりとは見えていないと思うが,子どもたちはゆとりや教員との触れ合いの成果を持って長期休業を迎えられたと思う。

□仙台市・高橋氏   昨年度から夏休み中も学校図書館を開放したところ,利用率がかなり上がっている。夏休み中に延べ100人以上利用している学校が,小学校では65校から108校に増え,中学校でも倍以上という状況である。

○   私立中学校は,土曜日を含めて1週間で34コマや36コマの授業を行っているので,公立中学校の授業時数について,保護者が少ないと思うのは率直なところかと思う。今後は,仙台市が行っているようなゆとりがあって,授業を確実に確保するようなシステムの導入や片柳中学校のような取組を行わないと,このままでは公立学校の相対的地位の低下が出てきてしまうのではないか。

○   部活動のスポーツ系は対校試合等が多くあり,成果を表現しやすいが,文化系の成果発表の場は文化祭しかない。その準備期間が少なくなったり,文化祭が縮小されると,日頃の活動の成果を十分に発表できなくなり,文化活動を阻害していくのではないかと心配である。

□片柳中・佐藤氏   文化的な発表については,文化祭の他に,演劇コンクールや吹奏楽コンクール,あるいは発表会等がある。

○   スポーツ関係はみんなの前で見せなくても,試合をして勝った負けたで表現できるが,地味な活動のクラブでは,自分たちの活動を発表する場がないという,教員の声も多い。文化系クラブには,コンクールや大きな発表の場を持たないものも少なくない。

□片柳中・鏑木氏   補足説明をすると,本校の場合は吹奏楽部,演劇部,美術部,科学部等の文化部があるが,14年度の文化祭と以前の文化祭を比較しても,発表の場の確保という点では大きく変わっていない。資料上では文化部は発表がないように見受けられるが,演劇部は,合唱コンクールの前に発表をしており,美術部,科学部については,特別教室等での作品展示を行うなど,子どもたちの成就感を味わわせるようにしている。

○   むしろ片柳中学校はバランスをとろうと頑張っているのではないだろうか。
   1年は1,026,2年は1,013の時数がとれているが,これは望ましい数字なのか,それともまだ足りないという印象の残る数字なのかについてお尋ねしたい。

□片柳中・鏑木氏   3年生が980を超えるように確保しようとしたところ,1年,2年も合わせて増えたという現状の中から出てきた数字で,これだけの時数が必要なのかどうかという議論については、教職員の間で結論が出ていない。

○   高等学校の特殊性として,上級学校からの要求に対応しなければならないという部分があり,国立大学は16年度から入試に5教科7科目を課すなどその要求が年々高くなっていると感じる。高等学校の立場として,ここまでやればよいという判断を各学校がしにくい現状であるが,要はバランスの問題であると考えている。

○   2学期制の成否は,1年間を学びの基礎づくりと学びの発表・まとめの二つの期間に分け,その流れの中で,夏休み,冬休みをどう使うかということに大きくかかわってくる。時数を確保した上で,その確保した時数をどう充実したものにするかということが重要である。

(5)    事務局より今後の日程について説明があり,閉会となった。



(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)


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