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5. 教育課程審議会答申(平成10年7月29日)
「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」(抄)


1 教育課程の基準の改善の方針
1   教育課程の基準の改善の基本的考え方
   (2) 教育課程の基準の改善のねらい
       このような基本的考え方に立って、幼児児童生徒の実態、教育課程実施の状況、社会の変化などの分析、検討を行うとともに、将来の教育課程の基準のあるべき姿を展望する中で、我々は次の四点を今回の教育課程の基準の改善のねらいとして掲げることとした。
   まず、「1)豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること」である。このことは、幼児児童生徒の現状や国際化の進展等を踏まえて、これからの時代を担う幼児児童生徒を育成する学校教育の在り方を考えるとき、時代を超えて変わらない調和のとれた人間形成は特に重要であると考えられるからである。したがって我々は、これを改善のねらいの第一に掲げることとしたものである。
次いで、「2)自ら学び、自ら考える力を育成すること」である。これからの激しい変化が予想される社会を生きていく幼児児童生徒の教育の在り方を考えるとき、多くの知識の習得に偏りがちであったこれまでの学校教育の基調を転換することが重要であると考え、これをねらいの第二に掲げることとした。
第三には、各学校が「3)ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること」を掲げることとした。第一、第二のねらいを実現するためには、その基盤としてこの点が不可欠であると考えられるからである。
   そして、第四には、「4)各学校が創意工夫を生かし特色のある教育、特色ある学校づくりを進めること」を掲げた。第一、第二、第三のねらいは、各学校の具体的な教育活動を通して実現されるものであり、各学校が地域や学校、幼児児童生徒の実態を踏まえ、創意工夫を生かした特色ある教育の展開、特色ある学校づくりが極めて重要であるからである。それぞれの具体的内容は次のとおりである。

3) ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること
   完全学校週5日制を円滑に実施し、生涯学習の考え方を推進していくためには、(1)オ及びカで述べたように、時間的にも、精神的にもゆとりのある教育活動が展開される中で、厳選された基礎的・基本的な内容を幼児児童生徒がじっくり学習し、その確実な定着を図るとともに、幼児児童生徒が自分の興味・関心等に応じ選んだ課題や教科の学習に主体的に取り組み、学ぶことの楽しさや成就感を味わうことができるようにすることも必要なことである。
   そのためには、家庭や地域社会における教育との関連や各学校段階間の関連を考慮し、個人として、また国家・社会の一員として望ましい人間形成を図る上で必要な基礎的・基本的な内容を明確にしつつ、教育内容の厳選を図る必要がある。特に義務教育においては、共通に学習すべき内容は社会生活を営む上で真に必要な内容に厳選する必要があると考える。
   また、一人一人のよさや可能性を伸ばし、個性を生かす教育の一層の充実を図ることも重要なことであり、そのために、各学校段階を通じて、幼児児童生徒の興味・関心等を生かし、主体的な学習の充実を図るとともに、個に応じた指導の一層の工夫改善を図ることが大切であると考える。このような考えの下に、教育課程の基準としては、小学校高学年から、選択能力の育成を重視し課題選択などを取り入れ、中学校においては、学年段階に応じ漸次選択幅の拡大を図るとともに、高等学校においては、生徒による選択を基本とし、共通に履修させる内容はいずれの分野に進路を選択しようとも最低限必要な内容にとどめるようにすることが望ましいと考える。

2 教育課程の基準の改善の関連事項
2   指導方法
       基礎的・基本的な内容の確実な定着、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]の育成は、教師による日々の教育実践を通して実現されるものであり、教師の指導の在り方は極めて重要なものと言わなければならない。教師は、児童生徒と共に学び考え、児童生徒の問題解決を助けていくという姿勢に立つことが重要である。また、児童生徒の発達段階等を考慮し、一人一人の興味・関心を生かした指導や、学習内容の理解や習熟の程度に応じ、弾力的に学習集団を編成したり、学級編成を弾力的に行うなど、個に応じた指導の工夫改善を一層進める必要がある。その際、異なる教科間の教師の協力も含め、ティーム・ティーチングなどの指導を一層進めるとともに、特別非常勤講師等による授業を積極的に実施したり、保護者や地域の人々の協力を得たりすることも大切である。特に、小学校では、従来の学級担任による全科担任制にとらわれず、専科指導や交換授業など教師の得意分野を生かした指導方法の工夫改善も重要である。
   特に、実践的コミュニケーション能力の育成を重視する外国語教育においては、ネイティブ・スピーカーによる指導の拡充、外国人との交流など指導方法等の工夫改善を図る必要がある。 また、情報に関する教育における人材の確保、健康や栄養等にかかわる指導における養護教諭や学校栄養職員などの専門性を有する教職員等の参加・協力などを推進していく必要がある。 帰国児童生徒及び外国人児童生徒に対する日本語指導等の一層の充実を図ることは今後ますます重要なこととなってくるが、これらの児童生徒の特性を伸ばすとともに、海外での経験等を生かし、児童生徒の相互啓発を通じた国際理解教育を進めるための指導方法等の工夫改善を行っていく必要がある。
   教育環境に関しては、コンピュータ等の教育機器についてハード・ソフト両面にわたる整備や情報通信ネットワークの整備充実とその活用を進めるとともに、学校図書館における情報機器や図書、視聴覚資料などの一層の整備充実と活用が求められる。教育環境の整備については、こうした学校内にとどまらず、学校外の様々な教育施設・設備の整備・充実など、地域に豊かな教育環境を用意し、その積極的な活用を図ることが大切である。

 

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