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参考) 




「個に応じた指導」についての関係審議会答申


1. 臨時教育審議会 教育改革に関する第一次答申(昭和60年6月26日)(抄)

第一部   教育改革の基本方向

    第4節   改革の基本的考え方

     今次教育改革は、教育基本法の精神にのっとって進められるものである。本審議会は、この趣旨に従い、個人の尊厳を重んじ、個性豊かな文化の創造を目指す教育を現実の教育の営みのなかで実現することを願い、また、伝統文化を継承し、日本人としての自覚に立って国際社会に貢献し得る国民の育成を図ることを目標とした。この目標に向けて、教育の現状を踏まえ、時代の進展に対応し得る教育の改革を推進するための基本的な考え方として、以下のように考えた。このうち、「個性重視の原則」は、今次教育改革で最も重視されなければならないものとして、他のすべてを通ずる基本的な原則とした。
(1)個性重視の原則
   今次教育改革において最も重要なことは、これまでの我が国の教育の根深い病弊である画一性、硬直性、閉鎖性、非国際性を打破して、個人の尊厳、個性の尊重、自由・自立、自己責任の原則、すなわち個性重視の原則を確立することである。
   人間の生命は過去・現在・未来と結ばれており、また、各個人は家庭、学校、地域、国家などの各レベルにおいて複雑な相互依存関係のなかに生きている。
   個人の尊厳、個性の尊重の考え方の根本にあるものは、この時間・空間という縦・横双方の広がりのなかで、各個人はそれぞれ独自の個性的な存在であるということ、また、個性的な個人が集まって集団の活力を形成しているということである。
   個性とは、個人の個性のみならず、家庭、学校、地域、企業、国家、文化、時代の個性をも意味している。それぞれの個性は相互に無関係に孤立しているのではない。真に自らの個性を知り、それを育て、それを生かし、自己責任を貫くもののみが、最もよく他者の個性を尊重し、生かすことができるのである。
   また、自由とは、放縦や無秩序、無責任、無規律と全く異なるものである。自由は、重い自己責任を伴うものであり、選択の自由の増大する社会に生きる人間は、自由を享受すると同時に、この自由の重み、責任の増大に耐え得る能力を身に付けていなければならない。それゆえ、個人の尊厳、個性の尊重、自由・自律、自己責任は、相互に不可分の一体をなすものであり、また、自分を生かすことは他を生かすこと、自分を知ることは他を知ること、自分を尊重することは他を尊重すること、その逆も真であるというように、すべて表裏一体の関係にある。
   このように自他の個性を知り、自他の個性を尊重し、自他の個性を生かすことは、個人、社会、国家間のすべてに通ずる不易の理想である。
   個性重視の原則は、今次教育改革の主要な原則であり、教育の内容、方法、制度、政策など教育の全分野がこの原則に照らして、抜本的に見直されなければならない。

2. 臨時教育審議会 教育改革に関する第二次答申(昭和61年4月23日)(抄)

第二部   教育の活性化とその信頼を高めるための改革
   第三章   初等中等教育の改革
      第二節   教育内容の改善
      (1)教育内容の改善の基本方向

      
   初等中等教育においては、生涯にわたる人間形成の基礎を培うために必要な基礎的・基本的な内容の修得の徹底を図るとともに、社会の変化や発展のなかで自らが主体的に学ぶ意志、態度、能力等の自己教育力の育成を図る。また、教育内容や指導方法の多様化を推進するとともに、学校教育をできるだけ社会に開かれたものにすることに留意する。

   個々の児童・生徒に対し、行き届いた教育を行い、豊かな人間性を育成するため、指導方法を多様化するとともに評価の在り方を改善する。
     
4     個々の児童・生徒が充実感を味わえるような教育の在り方にするためには、教育の機会や教育内容の多様化を推進するとともに、指導方法の個別化と自主的、自発的な学習方法を重視すべきである。このような観点から、学級規模や教育・指導の方法や形態を工夫する必要がある。さらに、中学校においては、生徒の到達度合に応じた指導方法の多様化を検討するとともに、とくに高等学校においては継続的な問題解決学習などを推進する。
   児童・生徒の能力・適性は、変化し発展するものである。ある時点での一面的な評価の結果がそのまま固定するものではない。したがって、その能力・適性を多角的に開発・評価するとともに、学習の結果だけでなくその探求の過程や成長の過程についても重視し、児童・生徒の多面的な能力・適性の伸長を図るようにしなければならない。この際には、単に知的な学力だけでなく、学校や地域における活動や態度などについての評価を工夫し、人間として好ましい活動等が積極的に奨励されるようにする必要がある。

 

 

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