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  資料 4  


「総合的な学習の時間」についての関係審議会答申

1.中央教育審議会 第一次答申(平成8年7月19日)
       「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(抄)

第2部   学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方
   第1章   これからの学校教育の在り方
   (1) これからの学校教育の目指す方向

     [5]   横断的・総合的な学習の推進
   子供たちに[生きる力]をはぐくんでいくためには、言うまでもなく、各教科、道徳、特別活動などのそれぞれの指導に当たって様々な工夫をこらした活動を展開したり、各教科等の間の連携を図った指導を行うなど様々な試みを進めることが重要であるが、[生きる力]が全人的な力であるということを踏まえると、横断的・総合的な指導を一層推進し得るような新たな手だてを講じて、豊かに学習活動を展開していくことが極めて有効であると考えられる。
   今日、国際理解教育、情報教育、環境教育などを行う社会的要請が強まってきているが、これらはいずれの教科等にもかかわる内容を持った教育であり、そうした観点からも、横断的・総合的な指導を推進していく必要性は高まっていると言える。
   このため、上記の[2] の視点から各教科の教育内容を厳選することにより時間を生み出し、一定のまとまった時間(以下、「総合的な学習の時間」と称する。)を設けて横断的・総合的な指導を行うことを提言したい。
   この時間における学習活動としては、国際理解、情報、環境のほか、ボランティア、自然体験などについての総合的な学習や課題学習、体験的な学習等が考えられるが、その具体的な扱いについては、子供たちの発達段階や学校段階、学校や地域の実態等に応じて、各学校の判断により、その創意工夫を生かして展開される必要がある。
   また、このような時間を設定する趣旨からいって、「総合的な学習の時間」における学習については、子供たちが積極的に学習活動に取り組むといった長所の面を取り上げて評価することは大切であるとしても、この時間の学習そのものを試験の成績によって数値的に評価するような考え方を採らないことが適当と考えられる。さらに、これらの学習活動においては、学校や地域の実態によっては、年間にわたって継続的に行うことが適当な場合もあるし、ある時期に集中的に行った方が効果的な場合も考えられるので、学習指導要領の改訂に当たっては、そのような「総合的な学習の時間」の設定の仕方について弾力的な取扱いができるようにする必要がある。 


2.教育課程審議会答申(平成10年7月29日)
      「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」

2   各学校段階等を通じる教育課程の編成及び授業時数等の枠組み
(2)「総合的な学習の時間」
   「総合的な学習の時間」の創設の趣旨
   「総合的な学習の時間」を創設する趣旨は、各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保することである。
   また、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]は全人的な力であることを踏まえ、国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するために教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保することである。
   我々は、この時間が、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐくむことを目指す今回の教育課程の基準の改善の趣旨を実現する極めて重要な役割を担うものと考えている。

   「総合的な学習の時間」のねらいや学習活動等について
(ア)「総合的な学習の時間」のねらいは、各学校の創意工夫を生かした横断的・総合的な学習や児童生徒の興味・関心等に基づく学習などを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることである。また、情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付けること、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成すること、自己の生き方についての自覚を深めることも大きなねらいの一つとしてあげられよう。これらを通じて、各教科等それぞれで身に付けられた知識や技能などが相互に関連付けられ、深められ児童生徒の中で総合的に働くようになるものと考える。

(イ)「総合的な学習の時間」の教育課程上の位置付けは、各学校において創意工夫を生かした学習活動であること、この時間の学習活動が各教科等にまたがるものであること等から考えて、国が目標、内容等を示す各教科等と同様なものとして位置付けることは適当ではないと考える。このため、国が、その基準を示すに当たっては、この時間のねらい、この時間を各学校における教育課程上必置とすることを定めるとともに、それに充てる授業時数などを示すにとどめることとし、各教科等のように内容を規定することはしないことが適当である。
   高等学校については、生徒の学習成果がこの時間のねらいからみて満足できると認められるものについては単位を与え、この単位は卒業に必要な修得単位数に含めることが適当である。
   「総合的な学習の時間」のこのような特質にかんがみ、教育課程の基準上の名称については「総合的な学習の時間」とすることとし、各学校における教育課程上の具体的な名称については各学校において定めるようにすることが妥当であると考える。

(ウ)「総合的な学習の時間」の学習活動は、(ア)に示すねらいを踏まえ、地域や学校の実態に応じ、各学校が創意工夫を十分発揮して展開するものであり、具体的な学習活動としては、例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題、児童生徒の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題などについて、適宜学習課題や活動を設定して展開するようにすることが考えられる。その際、自然体験やボランティアなどの社会体験、観察・実験、見学や調査、発表や討論、ものづくりや生産活動など体験的な学習、問題解決的な学習が積極的に展開されることが望まれる。
   なお、具体的な学習活動として、小学校において、国際理解教育の一環としての外国語会話等が行われるときには、各学校の実態等に応じ、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活動が行われるようにすることが望ましい。さらに、高等学校においては、「課題研究」や「産業社会と人間」との関連を考慮し、生徒が主体的に設定した課題について知識・技能の深化・総合化を図る学習や、自己の在り方生き方や進路について考察する学習なども、この時間において適切に行われるよう配慮することが望まれる。
   各学校においてこの時間を展開するに当たっては、ある時期に集中的に行うなどこの時間が弾力的に設定できるようにするとともに、グループ学習や異年齢集団による学習など多様な学習形態や、外部の人材の協力も得つつ、異なる教科の教師が協力し、全教職員が一体となって指導に当たるなど指導体制を工夫すること、また、校内にとどまらず地域の豊かな教材や学習環境を積極的に活用することを考慮することも望まれる。

(エ)「総合的な学習の時間」の授業時数等については、この時間を活用して各学校で多様な学習活動を展開するためには、ある程度まとまった時間が必要であることなどを考慮し、小学校においては、別表1のとおりとし、中学校においては別表2のとおりとすることとする。小学校については、低学年において総合的な性格をもつ教科である生活科が設定されていることや生活科を中核とした他教科との合科的な指導が進められていることなどを考慮して、第3学年以上に設定することとした。また、中学校については、各学校において一層創意工夫を生かした特色ある教育課程の編成が行えるよう、下限及び上限の幅をもって設定することとした。
   高等学校については、一人一人の生徒の実態に応じた多様な学習や各学校の特色に応じた教育の展開を可能とするため、「総合的な学習の時間」に充てる授業時数及び単位数に幅を設けるものとする。

(オ)「総合的な学習の時間」の評価については、この時間の趣旨、ねらい等の特質が生かされるよう、教科のように試験の成績によって数値的に評価することはせず、活動や学習の過程、報告書や作品、発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて、児童生徒のよい点、学習に対する意欲や態度、進歩の状況などを踏まえて適切に評価することとし、例えば指導要録の記載においては、評定は行わず、所見等を記述することが適当であると考える。


3.教育課程審議会答申(平成12年12月4日)
      「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」


第2章   指導要録の取扱い
3   小・中学校の指導要録
(7)「総合的な学習の時間」の評価
   ア   「総合的な学習の時間」については、各学校において学習活動を定め、学校や児童生徒の実態に応じた特色ある教育活動が展開される。このような趣旨から、学習の状況や成果などについて、児童生徒のよい点、学習に対する意欲や態度、進歩の状況などを踏まえて評価することが適当であり、数値的な評価をすることは適当ではない。

   イ   また「総合的な学習の時間」は、横断的・総合的な課題などについて、体験的な学習、問題解決的な学習を取り入れ、各教科等で身に付けた知識や技能を相互に関連付け、総合的に働かせることをねらいとしており、それを通じて、自ら学び、自ら考える力や学び方、ものの考え方などの確かな育成に資するよう、評価に当たっては、各教科の学習の評価と同様、観点別学習状況の評価を基本とすることが必要である。
   この時間の学習活動の展開に当たっては、学習指導要領に示された二つのねらい(1自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること、2学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること)などを踏まえ、各学校において具体的な目標、内容を定めて指導を行うことが必要である。そして、その目標、内容に基づき、観点を定めて評価を行うことが必要である。

   ウ   以上の点を踏まえ、「総合的な学習の時間」の評価については、この時間において行った「学習活動」を記述した上で、指導の目標や内容に基づいて定めた「観点」を記載し、それらの「観点」のうち、児童生徒の学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記載するなど、児童生徒にどのような力が身に付いたかを文章で記述する「評価」の欄を設けることが適当である。
   「観点」については、各学校において、指導の目標や内容に基づいて定めることとなるが、例えば、学習指導要領に定められた「総合的な学習の時間」のねらいを踏まえ、「課題設定の能力」「問題解決の能力」「学び方、ものの考え方」「学習への主体的、創造的な態度」「自己の生き方」というような観点を定めたり、教科との関連を明確にして、「学習活動への関心・意欲・態度」「総合的な思考・判断」「学習活動にかかわる技能・表現」「知識を応用し総合する能力」などの観点を定めたり、あるいは、各学校の定める目標、内容に基づき、例えば、「コミュニケーション能力」「情報活用能力」などの観点を定めたりすることなどが考えられる。

4   高等学校の指導要録
(3)高等学校においては、各教科の学習の記録について、観点別学習状況の欄は設けず、各教科の観点を踏まえた評価をすることから、「総合的な学習の時間」についても、欄としては「学習活動」と「評価」から構成し、評価に当たっては、各学校において指導の目標や内容に基づいて定められた観点を踏まえて行うこととすることが適当である。

 

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