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博物館の現状と課題

1.現状

1.博物館とは
   
   歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する様々な資料を収集、保管、展示することによって、利用者の教養の向上や調査研究等に資するとともに、 資料の調査研究等を行う機関。
(関連条文:博物館法第2条)

   博物館法上の博物館とは、博物館を設置しようとする者が当該博物館の所在する教育委員会に対して登録を申請し、同法の目的を達成するために必要な要件を備えているものと認められた施設をいう(登録博物館制度)。
(関連条文:博物館法2条)

2.博物館の事業
   
   利用者の学習活動に資するため、例えば以下のような活動を実施。
   歴史、芸術、自然科学等に関する実物や標本、模型等の博物館資料を豊富に収集、保管、展示すること。
   博物館資料を利用する際に、利用者に対し案内書や解説書等を用いて、分かりやすく専門的、技術的な説明を行うこと。
   博物館資料についての講習会や講演会、研究会等を開催すること。
   博物館資料に関する目録や図録、研究報告書等を作成することなどを通じて、専門的、技術的な調査研究を行うこと。
(関連条文:博物館法第3条)

3.博物館の職員
   
   館長
   館の総括的な責任者として、館の職務を掌理するとともに、館の職員を監督することを通じて博物館サービスの提供、充実に努める必置の職員。
 
   学芸員、学芸員補
   博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業(例えば、企画展の企画立案等)の専門的事項を行う必置の職員。学士の学位を有する者で大学において省令で定める博物館に関する科目を習得した者及び学芸員資格認定に合格した者が資格を有する。
   なお、学芸員補は学芸員の職務を助ける職員。大学に入学することのできる者は、特別な実務経験がなくてもその資格を有することが可能。

4.博物館への支援
  (1)施設の高機能化・活性化
   
1    学習情報拠点施設情報化等推進事業
   博物館等の社会教育施設における学習支援機能の高度化のため、エル・ネット受信設備等の整備費を補助

  (2)博物館職員の資質向上
   
1    社会教育研修支援事業
   都道府県が実施する社会教育関係者(学芸員を含む)を対象とする研修事業に要する経費を補助

2    社会教育を推進するための指導者の資質向上
   学芸員等の社会教育専門職員を対象に、社会教育に関する専門的、技術的な研修を実施
   ・ 博物館職員講習、学芸員等在外派遣研修、ミュージアム・マネージメント研修等

  (3)博物館活動の活性化
   
1    科学系博物館教育機能活用プロジェクト
   博物館でのスタッフ体験や学習プログラムの開発など、その教育機能の 活用により、地域学習活動や博物館機能の活性化を図るとともに、科学技術、理科離れの防止・解消に資するモデル事業の委託を行っている。

2    社会教育活性化21世紀プラン
   地域内の社会教育施設が中核となり、地域における課題を把握するとともに、その課題の解決に向けた総合的な社会教育事業を行うことを支援。
   支援は、地域・自治体からの提案を受けて実施し、また、優れた事例について、報告書を作成、配布することなどを通じて全国的な普及啓発を図る。

3    地域NPOとの連携による地域学習活動活性化支援事業
   行政とNPOをはじめとする民間団体との連携による地域学習活動の活性化を支援。

4    芸術拠点形成事業(展覧会事業等支援)
   地域の文化芸術拠点としての役割を担う公私立の美術館・歴史博物館が、地域の中核館として、さらにその機能が充実するような支援を行っている。

5    芸術文化振興基金による助成
   特殊法人日本芸術文化振興会では、芸術文化振興基金の運用益により、 1国民に親しみやすい現代舞台芸術公演等や映画の製作活動、2新たな分野を開拓する先駆的・実験的な芸術創造活動、3地域の文化施設や住民が主体的に企画・参加する公演、展示活動、4文化財の保存・活用事業等に対し幅広く助成している。

  (4)その他
   
1    博物館運営の活性化・効率化に資する評価の在り方に関する調査研究
2    日本政策投資銀行による低利融資制度
3    登録美術品制度


2.課題

   
   展示事業が専門的に過ぎるなど、親しみやすい、魅力ある施設と感じられていないのではないか。

【参   考】
1 入館者数の推移
(千人)
 
平成元年度間 平成4年度間 平成7年度間 平成10年度間 平成13年度間
244,880 283,087 286,001 280,649 269,324
 
出典:社会教育調査報告書(平成13年度間は中間報告)
文部(科学)省

2 博物館界の問題点
 
    ・ 学芸員が量・質ともに不十分    75.3%
体験的な展示が少ない 68.5%
展示に面白さがない 67.3%
堅苦しいイメージがある 65.5%
  出典:日本の博物館の現状と課題(博物館白書 平成11年度版)
財団法人日本博物館協会

   
   子どものための企画などに際し、学校をはじめとする関係機関との連携が不十分ではないか。

【参   考】
1 博物館界の問題点
 
    ・ 他施設との連携が閉鎖的    62.0%
 
出典:日本の博物館の現状と課題(博物館白書 平成11年度版)
財団法人日本博物館協会
2 博物館と他機関との連携による教育効果
     博物館には、学校、家庭にない膨大な資料と情報の蓄積があり、更にそれを専門に扱う専門職もおり、連携による共同作業は、地域、学校の「教育力」をパワーアップする大きな戦力となるであろう。
  出典:「対話と連携」の博物館−市民とともに創る新時代博物館
                         財団法人日本博物館協会

   
   所蔵する豊富な学習資源を教育用コンテンツとして有効活用すべきではないか。

【参   考】
博物館資料数
 
    登録博物館    
     人文科学資料 19,896,855
      自然科学資料 7,495,832
    博物館相当施設       
       人文科学資料 6,612,222
      自然科学資料 6,797,583

合   計 40,802,492
出典:平成11年度社会教育調査報告書   文部科学省

   
   地域の学習拠点として、身体障害者や外国人も含めた全ての人々に開かれた施設としての整備を図る必要があるのではないか。

【参   考】
1 登録博物館のスロープ等設備の保有館数
 
    スロープ     422館(55%)
  障害者用トイレ   507館(66%)
  エレベーター   366館(48%)
  簡易昇降機   49館(  6%)
  点字による案内   90館(12%)
 
外国人向け案内
  215館(28%)
 
出典:平成11年度社会教育調査報告書 文部科学省
2 博物館界の問題点
 
    ・ 高齢者、身障者、外国人対応不十分    75.2%
  出典:日本の博物館の現状と課題(博物館白書 平成11年度版)
財団法人日本博物館協会


博物館の現状


博物館数
   我が国における博物館数は、平成14年度には5,360館となっており、そのうち博物館法に基づく登録等が行われているものは約1,100館
職員数
   博物館の職員数(事務系職員等を含む)は、平成14年度には約4万3千人となっており、1館当たり平均約8.4人の職員が配置されているところであるが、専門的職員である学芸員は1館当たり平均約1.1人しか配置されていないのが現状
入館者数
   平成13年度間における博物館の入館者総数は、約2.69億人となっており、国民一人あたり年間2回以上は博物館を訪れている状況
講座・集会数
   平成13年度間における講座・集会数は、約4万講座・集会が開設されている

(1) 博物館数の推移
 
区分 登録 相当 類似 内   訳
市町村 私立
平成2年度 2,968 562 237 2,169 59 225 1,743 941
平成5年度 3,704 619 242 2,843 69 267 2,249 1,119
平成8年度 4,507 715 270 3,522 72 313 2,795 1,327
平成11年度 5,109 769 276 4,064 154 349 3,173 1,433
平成14年度 5,360 816 301 4,243 162 402 3,393 1,403

(2) 博物館職員数の推移
 
区   分 平成2年度 平成5年度 平成8年度 平成11年度 平成14年度
館   長 2,606 3,239 3,897 4,736 5,005
   うち専任職員数(%) 905(34.7%) 1,169(36.1%) 1,434(36.8%) 1,682(35.5%) 1,748(34.9%)
学 芸 員 3,049 3,711 4,589 5,328 5,619
   うち専任職員数(%) 2,421(79.4%) 2,939(79.2%) 3,544(77.2%) 4,019(75.4%) 4,288(76.3%)
学芸員補 616 602 680 655 715
   うち専任職員数(%) 456(74.0%) 444(73.8%) 494(72.6%) 383(58.5%) 422(59.0%)
その他の職員 17,690 21,789 26,035 29,743 31,673
   うち専任職員数(%) 12,411(70.2%) 14,701(67.5%) 16,678(64.1%) 17,743(59.7%) 17,571(55.5%)
合   計 23,961 29,341 35,201 40,462 43,012
   うち専任職員数(%) 16,193(67.6%) 19,253(65.6%) 22,150(62.9%) 23,827(58.9%) 24,029(55.9%)

(3) 入館者数の推移
 
(単位:千人)
 
  合   計  
総合博物館 科学博物館 歴史博物館 美術博物館 野外博物館 動物園 植物園 動植物園 水族館
平成2年度 244,980 11,024 24,786 62,366 45,342 7,077 46,090 12,654 12,439 23,202
平成5年度 283,087 18,666 28,588 71,047 45,765 5,831 44,079 18,254 16,489 34,368
平成8年度 286,001 17,965 33,469 73,073 53,439 5,985 39,387 18,865 12,537 31,281
平成11年度 280,649 19,814 34,669 78,529 53,414 7,836 32,041 19,400 8,503 26,443
平成14年度 269,324 15,816 33,215 77,972 50,426 6,257 34,887 17,365 7,234 26,152

(4) 講座・集会数の推移
 
  合   計  
総合博物館 科学博物館 歴史博物館 美術博物館 野外博物館 動物園 植物園 動植物園 水族館
平成2年度 29,586 3,768 7,696 8,869 3,685 650 2,168 498 392 1,860
平成5年度 40,360 3,388 13,406 9,820 4,200 559 1,625 756 855 5,751
平成8年度 44,921 5,226 14,216 11,335 9,421 790 1,856 1,598 200 279
平成11年度 38,546 4,092 11,812 11,666 6,218 790 907 1,944 163 954
平成14年度 40,154 5,601 12,315 12,600 6,373 484 921 1,211 114 535

   平成13年度間及び平成14年度の数値については、平成14年度社会教育調査中間報告に基づくもの。


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