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2.奉仕活動・体験活動をどのように推進していくのか

  1.奉仕活動・体験活動に関する現状

  我が国の国民は,ボランティア活動に興味・関心は持つものの,ボランティア活動等の経験は総じて少なく,情報不足,技術力・知識不足,相談体制の未整備,時間的制約などの理由から,ボランティア活動等に参加することを思いとどまっている人がかなり多いということが伺える。また,子どもについては,現在,ボランティア活動に参加している割合は低くなっているが,一方で,ふだん地域の人たちとふれあいのある子どもほど,ボランティア活動等の地域活動に関心を持っているという傾向がある。
  これらを踏まえ,興味・関心を持っている人に「もう一歩を踏み出すきっかけ」や「もう一歩を踏み出す後押し」となるような仕組みづくりを行うとともに,大人が率先して活動に取り組み,子どもたちが活動に参加しやすいような環境を作ることが必要である。

(1) 国民の活動、意識の現状
  全国で活動するボランティアは700万人を超えており、環境保護や社会福祉、国際交流等幅広い分野にわたっている。
  平成10年の特定非営利活動法人(NPO)法の制定により、NPO法人の活動を支援する基本的枠組みができ、NPO法に基づき法人格を取得した団体が5,826団体(平成14年1月)になる等、非営利の活動が多様な場面で継続的に行われる機会が増大している。
  ただ、アメリカやイギリスに比較すると我が国のボランティア活動参加率は低く、特に30代前半の若い世代で低いという特徴がある。(「国民生活白書」平成12年度)
  一方、ボランティア活動に対する意識については、「国民生活選考度調査」(平成12年)によれば、国民の4人に3人は社会の役に立ちたいと考え、実際にボランティア活動への参加意識を持つ人は3人に2人の割合となっており、ボランティア活動に対する関心は非常に高い。しかし、現在活動を行っている人(又は過去に活動を行ったことがある人)は、3人に1人に過ぎない状況にある。活動の妨げの原因としては「ボランティア団体に関する情報がないこと」を挙げる人が約4割を占め、国や地方公共団体に望むこととして、情報提供や相談体制の整備を挙げる人が多い。
   
(2) 青少年の活動、意識の現状
  子どもの地域社会との関わりについては、小学校、中学校、高等学校と学年があがるにつれ少なくなる傾向にあり、ボランティア活動についても、小学校、中学校、高等学校と進むにつれ少なくなる傾向にある。学校における体験活動についても、小学校、中学校、高等学校と進むにつれ少なくなる傾向にある。(「地域の教育力の充実に向けた実態・意識調査(平成13年9月・10月調査)」(子どもの体験活動研究会)「学校における体験活動の実施状況(平成12年度)(文部科学省調べ)」)
  青少年のボランティア活動に対するイメージとしては、「やりがいがある」「勉強になる」といった項目については肯定的に回答するものが多くいる一方、「遊びより面白い」「かっこいい」といった項目については否定的に回答するものが多い。(「青少年のボランティア活動に関する調査」総務省(平成6年))
  また、「学生のボランティア活動に関する調査報告書」内外学生センター(平成10年)では、大学生がボランティア活動を始めるにあたっての障害要因について「大学の時間が忙しい」「情報不足」「活動のための技術や知識がない」などが挙げられ、支援策として「情報提供」「研修会等の実施」「単位認定」等が挙げられている。


団体所属ボランティアと個人ボランティアの人数推移

「ボランティア活動年報2000年」(社会福祉法人全国社会福祉協議会全国ボランティア活動振興センター)


地域の教育力の充実に向けた実態・意識調査報告書

「地域の教育力の充実に向けた実態・意識調査報告書(平成13年9月・10月調査)」(子どもの体験活動研究会)


  2.初等中等教育段階の青少年の学校内外における奉仕活動・体験活動の推進

〜多様な体験を重ね、豊かな人間形成と将来の社会参加の基盤作りを〜

  初等中等教育段階のすべての青少年に対し多様な奉仕活動・体験活動の機会が与えられるように,学校内外を通じて質量共に充実した活動の機会を拡充していく必要があり,小・中・高等学校,専修学校高等課程など,初等中等教育段階の時期における発達段階に応じたふさわしい活動を行うことが重要である。
  学校においては,1活動のコーディネートの窓口を明らかにするとともに,すべての教職員が協力して取り組むための校内推進体制の整備,2地域の協力を得るための学校サポート(学校協力)委員会(仮称)を設けるなど体制作りに努める必要がある。また,実施に際しては,発達段階に応じた活動の実施,興味関心を引き出し自発性を高める工夫や,自発的なボランティア活動等の高校における単位認定など,活動の適切な評価などに配慮して取り組む必要がある。また,教育委員会においては,各学校における取組がスムーズに行われるよう,学校での具体の活動の実施のために必要な支援措置を講じるなど様々な措置を行う必要がある。
  教育委員会においては、地域の関係団体や関係行政機関等と連携しつつ,支援センターなどの推進体制を整備し,学校の教育活動と地域の活動の効果的な連携に留意しながら,1教材・プログラムの開発,指導者の養成・確保とともに,2ボランティア活動等を積極的に評価する高校入試の工夫や「ヤングボランティアパスポート(仮称)」の作成,活用などによる地域における活動の促進等に努める必要がある。また,企業においても,社会を担う主要な構成者として,学校や地域における様々な体験活動に対する施設の開放や,社員の指導者としての派遣,青少年の受入れなど,青少年の奉仕活動・体験活動に対する積極的協力を求めたい。
  国においては,こうした学校や地域における取組を支援するため,推進体制の整備や教職員研修等に対する支援,参考となるプログラムの開発や事例集の作成等を行うとともに,すべての青少年が発達段階に応じて,奉仕活動・体験活動を着実に経験できるようにするため,1奉仕活動・体験活動の実施状況の全国調査,2学校や地域を通じた活動の目標の検討,3ボランティア活動等と関連付けた大学入試の推進が求められる。

  平成13年7月の学校教育法及び社会教育法の改正により学校内外を通じた体験活動の促進が求められることとなった。学校においては,平成14年度から実施される新学習指導要領において,「生きる力」の育成を目指す観点から体験活動を重視するとともに,新たに「総合的な学習の時間」の創設等を行ったところであり,体験活動を教育活動に適切に位置付け,その充実を図ることが求められている。また,平成14年度から学校週5日制が完全実施されることを受け,家庭や地域における多様な体験活動の振興や奨励を一層推進する必要がある。
  高校までの青少年の時期においては,豊かな人間性や社会性を培うため,学校教育や地域において,社会奉仕体験活動,自然体験活動,職業体験活動など,質量共に充実した多様な体験活動を提供していくことが求められる。子どもたちの豊かな直接体験は,人や社会,自然などへの興味や関心を高め,思考や理解の基盤となるとともに,問題解決的に活動に取り組むことで各教科等で学んだ知識・技能等が生活と結び付き,総合的に働くようになることが期待される。また,様々な対象と直接かかわることは,机の上だけの学習と異なり,大きな成就感や充実感などが得られるとともに,他者との関係の在り方を学び,生き方の探求などにつながり,豊かな心の育成や望ましい人間形成に資するものと考える。
  青少年の時期においては,子どもたちの成長が著しいことから,それぞれの発達段階にふさわしいねらいや内容を創意工夫し,多様な体験活動を行うことが重要である。小学校の時期においては,具体的な活動を通した思考から徐々に物事を対象化して認識できるようになり,例えば,身近な対象にかかわる体験から,教科等の学習も生かして社会や自然などに広く目を向け,かかわる体験に発展させていくことが考えられる。中学校の時期においては,自己の内面に気付いていくという特徴が見られ,例えば,自分の思いを生かしながら大人の社会にかかわったり,友達と共にに活動し感動を味わったりする体験が考えられる。また,高校生の時期においては,自己を確立し,成人となる基礎を培う段階に当たることから,例えば,社会奉仕や職業など社会にかかわる体験は,自己の在り方や生き方を考え,将来の進路を主体的に選択する能力や態度を身に付けるとともに,社会についての認識を深める上で重要な要素と考えられる。
  なお、いうまでもなく,すべての教育の出発点は家庭教育にある。家庭は基本的な生活習慣や倫理観,自制心,他人に対する思いやり,自立心などを育成する上で重要な役割を果たしている。家庭において,子どもに毎日決まった手伝いをさせるなど家庭での役割を与える,親子で地域の様々な活動に参加する等,社会を支える一員としての自覚を育む基盤づくりをしていくことが重要である。

(1) 学校における体験活動の充実のための取組
  学校においては,地域における活動との連携と適切な役割分担を図りながら,奉仕活動・体験活動を学校の教育計画に適切に位置付けて実施する必要がある。その際,学校において次のことに配慮することが重要である。
1 学校としての体制作り
  各学校においては,奉仕活動・体験活動のコーディネートの窓口となる担当を明らかにし校長の指導の下に全教職員が協力して校内推進体制を整備する必要がある。また,地域の人々の協力を得るとともに関係団体等との継続的な連携関係を構築し学校の活動に幅広い支援が得られるように,保護者,地域の関係者等による学校サポート(学校協力)委員会(仮称)を設けるなど推進体制を整備することが求められる。更には,地域のボランティア活動団体等の人材の協力を得て,学校における活動の推進のための助言者として,具体の活動の企画や校内研修などに対する支援を受けることも考えられる。
2 教職員の意識・能力の向上
  学校の体制作りとあわせて,教職員一人一人が奉仕活動・体験活動の意義や理念を正しく理解し,これらの活動に係る指導の力量を高めていくことが不可欠である。奉仕活動等の経験のない教職員も多い現状を踏まえ,教職員一人一人が自信を持って指導に当たることができるように,校内の研修はもとより,後述のような教育委員会等が実施する研修や,ボランティア団体等の外部機関が実施する研修等に積極的に参加することが求められる。
3 活動実施上の配慮
  体験活動を学校の教育活動として実施する場合,以下の点への配慮が求められる。
教育活動全体を通じた体験活動の充実
  発達段階に応じた適切な活動の機会の提供が行われるよう,自校の教育目標や地域の実情を踏まえ,学校として活動のねらいを明確にし,現状の教育活動全体を見直し,(a)学校行事等の特別活動,総合的学習の時間をはじめ教科等の学習指導,及び部活動等の課外活動など教育活動において適切な位置付けを行うこと,(b)小・中・高等学校等のそれぞれの取組に継続性を持たせ,発達段階に即して活動の内容や期間等を工夫すること,(c)各教科等における学習指導との関連を図ることなどが求められる。特に教科担任制を採る中学校・高等学校においては,教科担任の教員の間の緊密な連携協力が求められる。
  また,長期休業日は,まとまった体験活動を行いやすい。学校も,児童生徒が任意で参加する活動などを計画,実施したり,地域における社会福祉協議会,NPO関係団体,青少年団体などの関係団体等による取組に協力したり,様々な活動の場や機会についての情報の提供を行うなどして,子どもたちの体験活動の充実に努めることが大切である。
興味・関心を引き出し,自発性を高める工夫
  子どもの興味・関心を引き出し,自発性を育てる工夫として,例えば,(a)発達段階や活動の内容に応じ,活動の企画段階から子どもを参加させたり,(b)子どもが選択できるよう多様な活動の場を用意することも考えられる。
事前指導・事後指導
  活動前に,体験活動を行うねらいや意義を子どもに十分理解させ,子どもたちがこれから取り組む活動についてあらかじめ調べたり,準備をしたりすることを通じ,意欲を持って活動できるようにするとともに,活動後は,感じたり気付いたことを振り返り,まとめたり発表したりするなど,適切な事前指導・事後指導が大切である。
活動の円滑な実施のための配慮
  活動を効果的かつ安全に行うために必要な知識・技能やマナー等の習得のための事前指導が必要である。また,活動内容によってはあらかじめ実地調査による点検等を行う必要がある。
  さらに,活動によっては,例えば,受入人数の適正化や受入先との綿密な連絡調整など企画段階での配慮,活動を実施する際の留意点などについての十分な調整,参加者への周知・活動を支援するボランティア等の参加など受入先等への十分な配慮が必要である。また,例えば,学校において受入先を公表すること,感謝状や受入先であることを示す証(あかし)を贈呈するなど活動の場を提供した受入先が社会的にも評価されるような取組も重要である。
活動の適切な評価
  体験活動の評価については,点数化した評価ではなく,子どものプラスの面を積極的に評価し,どのような資質や能力が育っているのかという観点を重視して適切に行う必要がある。その際,子どもの感想・意見,保護者の感想・意見,受入先の感想・意見等を把握するなど適切な評価を行うための工夫をするとともに,その結果を次年度以降のプログラムの内容や活動の在り方に反映させていくことが求められる。また,高等学校においては,生徒の地域での自主的なボランティア活動等について,後述の「ヤングボランティアパスポート(仮称)」等の活用などにより,これらの活動を単位認定するなど積極的に評価することが考えられる。
事故発生時の備え
緊急時対応マニュアルを作成するとともに,必要に応じた地域の警察・消防等への事前の連絡,緊急時の連絡先リストの作成などの準備,保険の利用を行うことが必要である。なお,指導者等を含め損害事故や賠償事故を安価な保険料でカバーする保険の開発が望まれる。
4 教育委員会の役割
学校での取組の推進・支援
  都道府県,市町村の教育委員会においては,学校における取組が着実に実施されるように,後述の協議会・支援センター等を通じて,関係団体等と連携しつつ,基本的な活動方針等の策定や,児童生徒の発達段階に応じた適切な活動プログラムの開発や教職員向け手引書の作成を行うほか,学校での具体の活動の実施のために必要な支援措置を講じ,学校の取組を推進し,支援することが求められる。
教職員の意識・能力の向上
  教育委員会においては,教職員の資質能力の向上のため,地域のボランティア推進団体等の協力も得ながら,次のような取組を行うことが考えられる。
  教職員の初任者研修を始め各種研修においてボランティア講座や体験活動等の機会を設ける(初任者研修においては,奉仕体験活動,自然体験活動に関する指導力の向上を重視する)。
  活動の企画や指導などの中心となる教職員を養成するために,地域のボランティア推進団体等が実施するコーディネーターや指導者の養成講座等への参加を研修に位置付ける,ボランティアセンター,NPO等での長期社会体験研修を実施する。
また,以下のような取組を行うことが考えられる。
  夏休み等の長期休業期間など,授業がない期間を利用して,教職員に奉仕活動・体験活動等も含めた研修の実施や機会の提供を図る。
児童生徒の受入れ先となる施設や団体等で教職員の研修を行う等により,学校と受入施設や団体等との連携を深めるとともに,受入先の施設や団体等の実情を学ぶことにより,教職員のコーディネート能力を高める。
  また,教育委員会においては,1教員養成大学等と連携し教員を志望する学生を教育支援ボランティアとして活用すること,2教員採用選考においてボランティア活動等の経験を一層重視するための工夫(例:ボランティア活動等の有無を記載する欄を充実させる。),も求められる。

【学校における多様な体験活動の例】
○ボランティア活動など社会奉仕にかかわる体験活動 ・学校の周辺や駅前,公園,河川や海岸等の清掃,空き缶回収
・花いっぱい運動へ参加しての地域での花作りや環境美化
・老人ホーム等福祉施設を訪問し話相手や手伝い,清掃,交流
・幼児への本の読み聞かせや簡単な点訳
・得意な技術や学習を生かして,車椅子,お年寄り宅の電気製品,子どものおもちゃ,公園のベンチ等の簡単な修理・整備  など
○自然にかかわる体験活動 ・学校を離れ豊かな自然の中や農山漁村での自然とのふれあいや農山漁村体験,登山,郷土食作り
・学校林等での野鳥の保護活動
・身近な公園や川等の自然を生かした探求活動,フィールドワーク
・地域の特色を生かしウミガメの産卵地の保護,生態観察,放流  など
○勤労生産にかかわる体験活動 ・地域の農家の指導を得ながら米作りや野菜作り
・鶏,やぎ,羊,豚などの家畜や魚の飼育
・地域産業を生かした漁労や加工品製造の体験
・森林での植林,下草刈り,枝打ち,伐採,椎茸(しいたけ)栽培,炭焼き  など
○職場や就業にかかわる体験活動 ・生徒の希望を生かして地域の事業所や商店などでの職場体験
・将来の進路について学ぶインターンシップ  など
○文化や芸術にかかわる体験活動 ・身近な地域に伝わる和紙作り,染物,竹細工,焼き物等に触れる活動
・踊り,太鼓,浄瑠璃(じょうるり)など伝統文化や芸能を地域の人等から学び伝える  活動,地域の祭りへの参加  など
○交流にかかわる体験 ・老人会や一人暮らしのお年寄りを招いてのレクリエーション等の交流会
・幼稚園・保育所を訪ねたり幼児を招いたりしての幼児との遊び,ふれ  あい
・小・中・高等学校と盲・聾・養護学校との共同行事等を通じた交流
・学習を生かした地域の人との学び合いの交流
  (生徒から:パソコン,野菜栽培等⇔地域の人々から:わらじ作り,  郷土料理等)
・地域に在住する外国の人々を招いて生活や文化を紹介し合うなどの交流
・農山漁村部の学校と都市部の学校など特色が異なる学校の相互訪問交流  など

(2) 青少年の学校及び地域における奉仕活動・体験活動の促進のための取組
  学校及び地域を通じて,初等中等教育段階の児童生徒に対して,奉仕活動・体験活動を推進するためには,学校・地域・家庭が連携してこれらの活動をサポートすることができるような仕組み作りをすることが必要である。個別の教職員や地域の有志の属人的な努力や善意だけにその推進を依存していては,活動を長期にわたって存続させることができず,その効果も減殺されてしまう。
  このため,これらの活動の推進を図るために,以下のような体制等を整備していく必要がある。
1 学校及び地域の連携の在り方
  学校の教育活動と地域の活動のそれぞれの特性を生かすとともに,相互の有機的な連携が求められる。
  このため,特に市町村レベルにおいては,教育委員会が中心となり,あるいは主唱して,地域のボランティア推進団体や,福祉,農林水産,商工などの関連行政部局が密接に連携し,後述の支援センターなどの推進体制を整備することが重要である。
     また,地域での活動と学校での教育活動が日常的に密接な関係を持つ必要があり,1学校サポート(学校協力)委員会などの学校の推進体制への地域の関係団体の参加や,2地域で行われる奉仕活動・体験活動について,学校を通じて児童生徒やその保護者に情報提供を行うなど,日常的な連携協力関係を保つ工夫が必要である。
2 地域における活動の促進
  教育委員会,社会福祉協議会,NPO関係団体,スポーツ団体,青少年団体等地域の関係機関・団体が連携し,地域での多様な幅広い奉仕活動・体験活動の機会を拡充し,青少年の活動への参加を促していく必要がある。その際,例えば,a)高校生と小・中学生など地域の異年齢の青少年が協力して自ら活動を企画し実施する,b)親子が共に活動に参加する,c)従来,地域社会とのかかわりが薄い傾向にあった中高年が協力して活動を企画し実施する,d)小・中学生の活動への参加のきっかけや励みの証を作る(例:ボランティア活動等を記録するシール等),など地域ぐるみで活動を活発にしていく工夫が求められる。このため,後述のように,学校の余裕教室等を活用し,地域住民が関係機関・団体等の協力を得て活動を行う拠点(地域プラットフォーム)を整備するなどの取組が期待される。  
  また,企業においても,社会を担う主要な構成員として,学校や地域における様々な体験活動に対する施設の開放や,社員の指導者としての派遣,青少年の受入れなど,青少年の体験活動に対する積極的協力を求めたい。
  地域での自発的なボランティア活動は,特に中・高生にとって,人間としての幅を広げ,大人となる基礎を培う意味で教育的意義が大きいが,現状では十分に行われているとは言い難い。このため,例えば,(a)高校入試においてボランティア活動等を積極的に評価する選抜方法等を工夫する(例:調査書に活動の有無を記載する欄を充実させる。推薦入試において活動経験についてレポートを提出させる等),(b)高校生等が行う学校や地域におけるボランティア活動などの実績を記録する「ヤングボランティアパスポート(仮称)」を都道府県や市町村単位で作成し活用する,などの方策について検討する必要がある。
  特に「ヤングボランティアパスポート(仮称)」については,青少年の日常の活動の証としたり,高等学校における単位認定や,就職や入試への活用,文化施設,スポーツ施設等公共施設の割引や表彰を行うなど,いろいろな形での奨励策を検討することが考えられる。国においても,「ヤングボランティアパスポート(仮称)」の全国的な普及・活用が促進されるように,例えば1全国的なボランティア推進団体,関係行政機関・団体等が連携協力しパスポートの標準的なモデルを作成する,2入試や就職等で適切に活用されるよう大学や企業等に対し働き掛けるとともに,国等の行政機関においても,採用等に活用する,3青少年が文化施設,スポーツ施設を利用する場合の割引などを関係機関・団体等に呼び掛けを行うなどの取組を検討する。

学校及び地域における連携イメージ
※奉仕活動・体験活動を推進する仕組みの全体のイメージについてはこちらを参照。


(3) 国等において取り組むべき方策
  国等においては,以上のような学校や地域における取組を支援するため,関係省庁とも連携しつつ,(a)地域における推進体制の整備及び様々な場や施設・団体等における活動の受入れの促進,(b)奉仕活動・体験活動に関する教職員研修の充実,(c)青少年を対象とした学校や地域における発達段階を踏まえた魅力ある活動プログラムや活動に携わる指導者養成プログラムの開発・支援や,他のモデルとなる先駆的な実践の促進と学校や地域の参考となる事例集の作成,教職員向け手引書の作成,(d)教員志望学生による教育支援ボランティアの全国的普及,(e)子どもゆめ基金(注1)等を通じた体験活動を行う団体等に対する助成の取組を推進するとともに,青少年が小・中・高等学校それぞれの段階において,その発達段階に応じた活動の機会を得ることができるようにするために,次のような取組の検討が求められる。
1 奉仕活動・体験活動の実施状況の全国調査
  現状においては,青少年の奉仕活動・体験活動が必ずしも十分行われていない状況にかんがみ,学校内外を通じた青少年の活動の全国的な実施状況調査を実施し,その結果を分析・公表し,各学校及び地域での取組を促す。
2 学校内外を通じた活動の目標の検討
  活動の実施状況や支援体制の整備の進展状況等を見極めた上で,今後,青少年が高等学校卒業段階までに学校や地域を通じて行うことが期待される活動の目標を検討する。
3 ボランティア活動等と関連付けた大学入試の推進
  高等学校段階までの青少年の学校内外の生活において,大学入学者選抜の在り方が与える影響が大きい。大学にとっても,高等学校段階までに多様な体験活動を行った生徒は,大学入学後の学ぶ姿勢や意欲が高く大学教育の活性化にも資するものと考えられる。このため,大学においては,受入方針において,ボランティア活動等を積極的に行う学生を評価することを明確にし,例えば,論文試験にボランティア活動の実践を含め高等学校時代の活動を前提とした出題も含める、先述のヤングボランティアパスポート(仮称)を活用する等,高等学校段階までの活動経験と関連付けた大学入学者選抜の取組が期待される。


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