戻る

はじめに

  中央教育審議会は,昨年4月11日に文部科学大臣から「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」諮問を受けた。その際,具体的審議事項として,1初等中等教育段階までの青少年に対し,学校内外を通じて様々な奉仕活動・体験活動を充実する方策について,2初等中等教育を修了した18歳以降の青年が様々な分野において奉仕活動を行える社会の仕組みづくりについて,3社会人が生涯にわたって奉仕活動等を行うことができる環境づくりについての三つの検討事項が挙げられている。

  今日,いじめ,校内暴力,ひきこもり,凶悪犯罪の増加など青少年をめぐり様々な問題が発生し,深刻な社会的問題となっている。こうした問題の背景には,様々な要因が考えられるが,思いやりの心や社会性など豊かな人間性が青少年にはぐくまれていない現実とともに,他者を省みない自己中心的な大人の意識や生き方,さらには様々な社会的課題に対し行政だけでは適切に対処できないという状況等が深くかかわっている。
  社会の形成者となる青少年に自信を持って未来を託すためには,今こそ,こうした問題に正面から向き合い,手立てを講じないと取返しがつかなくなる状況にあると言える。

  中央教育審議会では,こうした認識に立って,諮問事項について検討し,「奉仕活動・体験活動」が,我々が直面する問題を解く糸口となると考えた。「奉仕活動・体験活動」は,人,社会,自然とかかわる直接的な体験を通じて,青少年の望ましい人格形成に寄与する。大人にとっても,家族や周囲の人々,地域や社会のために何かをすることで喜びを感じるという人間としてごく自然な暖かい感情を湧き起こし,個人が生涯にわたって,「より良く生き,より良い社会を作る」ための鍵となる。国民一人一人が「奉仕活動・体験活動」を日常生活の中で身近なものととらえ,相互に支え合う意識を共有し活動を重ねていくことができる社会的な環境を,皆で協力して作り上げていくことが不可欠であると考える。

  今回の答申では、「奉仕活動・体験活動」が個人や社会にとってどのような意味を持ち,社会においてなぜ推進する必要があるのか,「奉仕活動・体験活動」の範囲をどのようにとらえるのか等について整理し,その上で,初等中等教育段階までの青少年,18歳以降の青年や勤労者等の個人の「奉仕活動・体験活動」の奨励・支援のための方策,「奉仕活動・体験活動」を社会全体で推進していくための社会的仕組みの在り方や社会的気運を醸成していくための方策等についてまとめた。

  本答申をきっかけとして、個人がごく自然に、日常的に「奉仕活動・体験活動」を行い自立した個人が社会に参画し、相互に支えあうような社会の実現に向けての取組を推し進める気運が高まることを切に願うものである。


ページの先頭へ