〔3〕教育長、教育委員会事務局の在り方の見直し

(1)教育委員会の使命の明確化

  • 教育委員会のもとには、日々の教育事務を執行するため教育長が置かれ、教育長を補佐する組織として教育委員会事務局が置かれている。教育委員会は、地方自治制度上、首長に並ぶ執行機関であり、教育事務全般について事務局を指揮監督し執行していくものとされている。しかし、首長とは異なり、委員の身分は非常勤であり、意思決定も合議で行うことから、教育委員会は教育の行政運営の基本的な方針について決定し、その決定に基づいて教育長以下教育委員会事務局が、日々の事務を執行しているところである。
  • このように、現行制度においては、教育委員会の使命は、地域の教育課題に応じた基本的な教育の方針・計画を策定するとともに、教育長及び事務局の事務執行状況を監視・評価することであると考えられる。このような考え方に立って、日々の教育事務の執行は専門的な行政官である教育長及び事務局に委ねつつ、教育委員会と教育長及び事務局が適度な緊張関係を保ちながら教育事務を執行する体制を実現することが必要である。

(2)教育委員会と教育長の関係の明確化

  • 教育長は、都道府県、市町村を通じて、教育委員の中から教育委員会が選ぶこととされている。都道府県の教育長については、昭和31年の地教行法制定時、教育委員以外の者を教育委員会が選ぶこととされていたが、平成11年の地教行法の改正において、市町村の教育長と同様に教育委員の中から選ぶよう改正された。これは、教育長の任命承認制度の廃止に伴い、新たな教育長の適材確保の方策として議会承認を要する職とする必要があったこと、教育長に任期を付し安定的な教育行政の実施体制を整える必要があったこと、行政改革が進む中で特別職を新たに創設することは困難であったことなどを理由とするものであった。
  • 現行制度のもとでは、教育長は教育委員を兼ね、教育委員会の会議に出席し議事に参加している。このような仕組みは、教育長について、教育委員として任命される際に議会同意が必要となり教育長の選任がより慎重になること、教育委員として任期が付されることで安定的な事務執行が可能となること、特別職の身分を有することとにより適材確保が期待されることなどの利点がある。
  • 一方、事務を執行する教育長が教育委員会の議事に参加することから、教育委員会と教育長の関係が不明確となっている、教育長の選任は教育委員の選任の過程で実質的に首長が行っているといった問題があり、教育委員会の意思決定から教育長を分離するとともに、教育長の選任に首長が関与することを明確にすべきとの指摘があるところである。
  • この状況を踏まえ、現行制度の利点が損なわれないよう配慮しつつつ、教育長の位置づけや選任方法の在り方について、教育委員会と教育長との関係を明確化する観点から検討していくことが必要である。

(3)教育委員会の自己評価

  • 教育委員会が地域住民や議会、首長に対する説明責任を徹底するとともに、教育委員会自体の活性化を図るためには、その活動について目標を設定し、実施結果について評価していくことが必要である。
  • このため、教育委員会が、教育長以下の業務の状況について評価を行うとともに、教育委員自身も、委員としての活動について評価されるようにしていくことが必要である。

(4)教育委員会事務局の体制強化

  • 教育行政の質は、指導主事、社会教育主事など専門的職員の存在に大きく左右されるものであり、その配置を充実することが重要である。
  • 特に指導主事は、学校に対する教科専門的な指導を行うもので、教育委員会事務局の中で中核的な職員であると言える。都道府県や政令指定都市では、学校指導に必要な一定の指導主事が配置されているが、市町村では小規模になるにつれ配置されず、全体でも指導主事を配置している市町村は全体の約三割に留まっている。今後、市町村において指導主事の配置を充実することが望まれる。
  • また、指導主事に指導的役割を担うのにふさわしい人材を確保するとともに、その業務について、専門性を必要としない一般行政事務をできるだけ削減し、専門的業務に特化していくことが望まれる。また、県費負担教職員の中から、指導力の優れた者を市町村教育委員会の判断で指導主事に充てることや、学校に勤務しつつ市町村内の学校全体に対する専門的な指導にあたらせることも有効である。
  • 事務局職員の人事全般についても、教育委員会の独自性に配慮し、教育行政に精通した人材を育成するとともに、首長部局との人事交流を行い、首長部局において財政、人事、市町村指導などを経験した人材をバランス良く配置することが望まれる。

(5)市町村教育委員会の事務処理の広域化

  • 小規模市町村において充実した教育行政が行われるためには、複数の市町村が共同で教育事務を広域処理していくことが有効である。このような方法としては、事務組合や広域連合の設置、教育委員会をはじめとした機関の共同設置などがある。
  • 教育事務の広域処理は、専門的職員の配置、事務組織の合理化、広域での学校指導や教育研究団体育成、施設設備の有効活用、人事事務の広域処理、独自の教育事業などが可能となるといった利点があるが、現在では十分に活用されているとはいいがたい状況にある。
  • 市町村合併が進む中で、小規模の教育行政の広域化が進むことが期待されるが、依然として小規模の市町村が多く残ることが予想される。これらの市町村に対しては、都道府県が積極的に支援していくとともに、事務処理の広域化に積極的に取り組むことが望まれる。

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