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第二章 教員の校務と学校の組織運営体制の見直し

1.教員の校務と学校事務の見直し

  •  教員勤務実態調査暫定集計の結果によれば、7月、9月、10月、11月の通常期の小中学校の教諭の残業時間が1日あたり平均約2時間となるなど、昭和41年の勤務状況調査の結果と比べ、残業時間が増加しており、まずはこの事実を認識する必要がある。その上で職務内容を分析すると、子どもの指導に直接かかわる業務以外の、学校経営、会議・打合せ、事務・報告書作成等の学校の運営にかかわる業務や保護者・PTA対応、地域対応等の外部対応といった業務に多くの時間が割かれている。教育の質の向上を図っていくには、何よりもまず、教員が子どもたちに向き合い、きちんと指導を行えるための時間を確保することが重要である。
  •  このため、教員の校務について見直しを行い、校長、教頭、教諭、助教諭、講師や事務職員などのそれぞれの職に応じた役割分担の明確化を図り、教諭、助教諭、講師(以下「教諭等」という)が子どもたちの指導のための時間を十分に確保できるようにすることが必要である。
     また、校長及び教頭は、学校組織のマネジメントをしっかりと行い、特定の教員の勤務負担が過重にならないよう、教員の時間外勤務の縮減や勤務負担の適正化等を図る必要がある。
  •  教員の校務を整理をした上で、なお教員が行う必要のある学校事務については、以下のような方策を通じて軽減・効率化を図り、時間外勤務を縮減していくことが必要である。
    • 1 Eメールや電子掲示板の活用などを通じて会議・打合せの回数・時間を縮減する。このため、教員に1人1台パソコンを整備することやICT活用を支援できる職員の確保など学校のICT環境の整備・充実を図る。
    • 2 国・都道府県・市町村等が行う調査の縮減・統合を図る。
    • 3 業務日誌、学校運営関連書類等の様式の簡素化・統一化を図る。
  •  あわせて、教員が抱える事務負担を軽減するため、事務職員が学校運営に一層積極的に関わるとともに、そのサポートにより、教員の事務負担を軽減することができるよう、事務の共同実施の促進、事務職員の質の向上のための研修の充実などを行うとともに、教育委員会の判断により大規模な学校や事務の共同実施組織に事務長(仮称)を置くことができるように制度の整備を行うなど、事務処理体制の充実を図っていくことが必要である。
     また、アウトソーシングが可能な業務については、専門的な能力を持った民間人や退職教員等を活用して積極的にアウトソーシングしていくことも必要である。
  •  学校をより地域に開かれたものとし、地域全体で支えていくため、地域対応に関連する活動や放課後・週休日の活動について、放課後子どもプランの推進などを通じて地域住民や退職教員等が積極的に参画するようにし、地域社会との連携を通じた教育の活性化や教員の負担を軽減するサポート体制の構築を図っていくことが必要である。
  •  学校を取り巻く社会環境は日々変化し、それに伴い、子どもたちが抱える背景も複雑化・多様化しているため、現在の教員には、いじめ、問題行動、不登校並びに被虐待児童及び外国人児童生徒への対応、発達障害も含めた特別支援教育といった様々な教育課題に取り組むことが求められている。
     これらの教育上の諸課題に対応するため、教員の職務の見直しや学校事務の軽減・効率化を図るとともに、教職員や外部人材の配置の充実、又は様々な教育課題に対応できるような研修の充実を図ることが必要である。
     なお、これらの諸課題は、必ずしも教育だけで解決するものではないことがあるため、外部専門家の活用や、福祉や医療等関係機関との連携を促進することも必要である。

2.学校の組織運営体制の見直し

  •  現在の学校はいわゆる鍋蓋型組織となっており、管理職である校長・教頭以外は職位に差がない教諭が大多数を占めている。その結果、学校をめぐる環境の複雑化に伴い、教頭の学校運営に係る各種調整のための業務が増大してきており、教員勤務実態調査暫定集計の結果においても教頭のこれらに係る勤務時間がかなり長くなっている。より円滑な学校運営を実施していくためには、教頭の業務のサポートが必要となってきている。
  •  このような状況を踏まえ、教頭の複数配置を促進するとともに、校長を補佐し、担当する校務を自ら処理する副校長(仮称)制度や校長及び教頭を補佐して担当する校務を整理するなど、一定の権限を持つ主幹(仮称)制度の整備を行うことが必要である。その場合においては、副校長(仮称)や主幹(仮称)の職務内容や既存の職との関係を整理するとともに、学校の組織運営上の必要性、学校規模や市区町村及び各学校の状況などを踏まえつつ、都道府県・政令指定都市教育委員会の判断により学校に配置できるようにすることが必要である。
  •  各学校においては、校務分掌上の部科や主任の在り方等既存の学校組織の在り方の見直しを行うとともに、必要に応じて都道府県・政令指定都市教育委員会から教頭の複数配置、主幹(仮称)や事務長(仮称)の配置などを受けることにより、一層効率的な学校運営組織の構築を図るとともに、校務分掌や役割分担の在り方を整理していくことが必要である。

3.学校の指導体制の充実

  •  教育の質の向上を図るためには、校外における研修の充実だけでなく、校内におけるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:職場内研修)を通じて、日々の実践の中で個々の教員の資質向上を図ることが重要であり、そのためには、指導力に優れた教諭が、他の教諭等に対して日常的に教育上の指導助言や研修を行い、学校全体として教員の指導力を高めていくことが必要である。
  •  このため、各学校の必要性に応じて、指導力に優れ、他の教諭等への教育上の指導助言や研修に当たる職務を担う指導教諭(仮称)の職を設け、都道府県・政令指定都市教育委員会の判断により、学校に配置できるように制度の整備を行い、教諭のキャリアの複線化に資するようにすることが必要である。
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