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委員懇談会 議事録・配付資料

1. 日時
平成18年12月25日(月曜日)13時30分〜14時30分

2. 場所
三田共用会議所 第4特別会議室(4階)

3. 議題
(1) 教育基本法等について(報告)
(2) 教育再生会議の動向について(報告)
(3) 意見交換
(4) その他

4. 配付資料
資料1   教育基本法について
資料2 教育再生会議の動向について
資料3 高等学校における必修科目の未履修について
資料4 いじめ・自殺の件について

5. 出席者
(委員)
鳥居会長、安彦委員、江上委員、衞藤委員、黒田委員、中嶋委員、増田委員、松下委員、湯川委員、高倉臨時委員、田村臨時委員、森臨時委員、山本臨時委員、渡久山臨時委員、石臨時委員
(事務局)
結城事務次官、林文部科学審議官、玉井官房長、金森総括審議官、尾山大臣官房審議官、田中生涯学習政策局長、銭谷初等中等教育局長、樋口スポーツ・青少年局長、合田大臣官房審議官、布村大臣官房審議官、清木生涯学習総括官 等

6. 議事
【鳥居会長】 それでは定刻でございますので、ただいまから会議を始めたいと思います。きょうの会議は、中央教育審議会の総会と呼びたいところなのですが、総会というより、むしろ委員懇談会と呼んだほうがふさわしいと思います。若干、総会委員の人数が不足しておりますのと、教育基本法を審議いたしました平成15年のときにいろいろとご協力を賜りました委員の方々、専門委員、臨時委員の方々に、きょう、わざわざご出席を賜っております。そういう意味で、皆さんとご一緒に審議を行うという意味で、中央教育審議会委員懇談会と呼ばせていただきたいと思います。
 きょうは、主な議題といたしまして、まず教育基本法について報告をしていただきまして、それから、皆さんのご意見を後で伺うことにいたします。それから、そのほかにも教育再生会議の問題がございます。教育再生会議につきましても、中央教育審議会としてどんなことが今、再生会議で行われているのかを新聞報道、テレビ報道以外のところで伺うのは、きょうが初めてでありますので、伺っておきたいと思います。
 そのほかに、いじめの問題でございますが、幾つか事務局のほうでご報告を予定しているようでございます。それらのいろいろな報告を受けた後で、それぞれ、どの問題につきましても、皆様、ご意見がおありだと思いますので、ご意見をぜひ伺いたいと思っております。
 それでは最初に、公開の問題を一応お諮りしておきたいと思いますが、きょうは懇談会ではありますけれども、今後の教育改革の取り組みについて、国民の皆様の間で広くご議論いただくという意味で公開としたほうがいいのではないかと思います。皮肉を言いますと、非公開で行われている再生会議については、新聞やテレビでたくさん報道される。毎回、公開している中央教育審議会についてはほとんど記事になることはない、新聞で報道されることはめったにないというのが実情でございますが、国民の皆さんに正しく報道してくださることを期待して公開したいと思いますが、いかがでございましょうか。皆様のご同意が得られれば公開としたいと思います。
 それでは、既に報道関係者はお入りだと思いますので、公開ということでお願いいたします。
 早速でございますが、結城文部科学次官から一言ごあいさつをお願いいたします。

【結城事務次官】 事務次官の結城でございます。12月15日に改正教育基本法が成立し、先週の22日に公布・施行されました。この機会に、中央教育審議会委員の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 国会審議の状況につきましては、後ほど田中局長のほうからご説明をさせていただきますが、今回のこの結果につきましては、中央教育審議会におけるこれまでのご審議のたまものでありまして、委員の皆様方の多大なるご尽力に感謝を申し上げたいと思います。
 戦後に制定されました前の教育基本法は、時代の変化に対応するべく、約60年ぶりに改正されました。教育の憲法と言うべき基本法の改正によりまして、安倍内閣の最重要課題とされております教育改革はようやくスタート台に立ったと言えるのではないかと思っております。私ども文部科学省といたしましては、この新しい教育基本法の成立を受けまして、国民及び教育関係者に、その趣旨などについて周知を図るとともに、新しい教育基本法の精神をさまざまな教育上の課題の解決に結びつけていくために、関係法令の改正や教育振興基本計画の策定などの具体的な取り組みにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 改めまして、委員の皆様方には、これまでに精力的なご審議をいただきましたことに感謝申し上げますとともに、教育の再生を確かなものとし、日本の未来を担う立派な人材をつくり上げるべく、これから努力してまいりますので、引き続き、皆様方の英知を結集し、積極的なご議論、ご審議を賜りますようにお願い申し上げまして、私のあいさつとさせていただきます。ほんとうにどうもありがとうございました。

【鳥居会長】 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、教育基本法につきまして、田中生涯学習政策局長からご説明をお願いいたします。

【田中生涯学習政策局長】 生涯学習政策局長の田中でございます。本日は、先生方におかれましては、お忙しいところありがとうございました。
 今、次官からごあいさつ申し上げましたように、12月15日の臨時国会におきまして新しい教育基本法が成立したところでございますけれども、その経緯あるいは国会でのご審議等につきまして簡単にご説明をさせていただきたいと思います。
 まず資料1をごらんいただきたいわけでございますけれども、教育基本法成立までの経緯という1枚紙をまずつけております。そこにございますように、平成12年の教育改革国民会議が報告を出されたわけでございますけれども、これを受けまして、本中央教育審議会において、ご審議、ご答申が出されたわけでございます。そして、平成15年3月20日にご答申をいただいたわけでございますけれども、その後、与党におきます検討を踏まえまして、本年の4月28日に、政府といたしまして教育基本法案を閣議決定し、第164回通常国会に提出をしたわけでございます。その後、衆議院におきまして審議が始まったわけでございます。
 1枚ページをめくっていただきますと、より詳しい教育基本法の審議経過というのがございます。5月11日に衆議院に教育基本法に関する特別委員会が設置されたわけでございまして、森山眞弓元文部大臣が委員長のもとで審議が始まるわけでございます。そして、さきの通常国会におきましては、そこにございますように、49時間に及ぶ議論がなされるわけでございますけれども、国会が閉幕となり継続審議となったわけでございます。そして、9月26日に第165回臨時国会が開会されまして、10月30日から、再び教育基本法案の質疑が始まったところでございます。この臨時国会におきましても、そこにございますように、55時間10分というご質疑がなされたわけでございます。したがいまして、衆議院は2つの国会で104時間10分のご審議を賜ったわけでございます。
 それから、衆議院で成立いたしまして、直ちに参議院に送られたわけでございます。参議院では、11月17日に、これも中曽根弘文元文部科学大臣が委員長でございましたけれども、教育基本法に関する特別委員会が設置されまして、11月22日以降、この特別委員会で質疑がなされたわけでございます。そして、そこにございますように、参議院では85時間20分というご審議をいただきまして、12月15日の参議院本会議で可決・成立したところでございます。衆参合わせますと、そこにございますように、約190時間というご審議を賜ったところでございます。
 そして、この法律につきましては、12月22日、先週の金曜日に公布・施行されたわけでございます。これに伴いまして、12月22日付で、事務次官から教育基本法の施行についてという通知を出させていただいたところでございまして、次のページから、その写しを載せておるところでございます。
 1枚はぐっていただきますと、第1 法律の概要、第2 前文及び各条の趣旨及び内容ということで、各条文につきまして趣旨と内容を規定したものを次官通知として発出させていただいたところでございます。また同通知には、別紙1といたしまして、教育基本法改正法成立を受けての内閣総理大臣の談話、同じく教育基本法改正法成立を受けての文部科学大臣談話を載せておるところでございます。
 次に、それぞれの国会におきますご審議の論点についてご説明をしたいと思います。最後の2枚の資料をごらんいただきたいわけでございますけれども、教育基本法改正に関する国会審議の主な論点というもので、2枚紙にまとめておるところでございます。本日は、これらの論点のうち、特にご議論となったところについてご紹介をさせていただきたいと思う次第でございます。
 まず総論でございますけれども、総論として議論の中心となりましたのは、現在のいじめや不登校、学級崩壊といった教育上のさまざまな諸課題が教育基本法の改正によって解決できるのかというようなご審議が多くなされたわけでございます。これに関しましては、教育基本法は、我が国の教育の根本的理念や原則を定めるものでございますから、教育基本法自体が現実の諸課題への対策を規定するものではございませんけれども、今回の改正の狙いは、今日、教育の抱える問題を解決するために教育が目指すべき目的や理念、事柄を明らかにすることによりまして、教育関係者だけではなくて、国民一人一人の共通理解を図ることによって社会全体で教育改革を推進していこうと、その第一歩となるものであるという旨のご説明をしたわけでございます。いじめや不登校への対策につきましても、そういういじめや不登校を解決していく上で、今日、重要と考えられる理念、事柄を新しい教育基本法の目標等の中に明示をしておるところでございまして、これらを踏まえまして、学校をはじめとする個別の教育現場において、具体的な場面においても、これまで以上の充実した指導が行われ、これらの解決につながるものであるという旨のご答弁を、安倍総理大臣をはじめ、文部科学大臣、官房長官等、お答えをしていただいておるところでございます。
 また、今回の教育基本法の目指すべき人間とはどのようなものかというご議論も賜ったわけでございまして、これは、中教審のご答申の中でも触れられておるところでございますけれども、私どもといたしましては、これらを3つにまとめまして、知徳体の調和のとれ、生涯にわたって自己実現を目指す自立した人間の育成、公共の精神を尊び、国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成、我が国の伝統と文化を尊重し、国際社会で活躍できる日本人の育成を目指して、今回、教育基本法を改正するものでありますといった旨のご説明をさせていただいてきておるところでございます。
 2つ目に教育の目標でございますけれども、特に第2条第5項で、我が国や郷土を愛するといったところの問題が大きくクローズアップされてくるわけでございますけれども、これに関しましても、中教審のご答申を踏まえまして、グローバル化が進展する中で、みずからの国や地域の伝統・文化について理解を深め尊重し、我が国や郷土を愛する態度をはぐくむことは、日本人として、これから国際社会を生きていく上で極めて重要なことである。まさに、その国際化が進展する中で必要になってきていることを教育基本法上、明確にしたものであるということを繰り返しお答えしてきておるところでございまして、我が国の国土や歴史への理解を深め、国や郷土を愛する心と国家の発展に寄与しようとする態度を一体として養っていこうとするものでありますというお答えをしてきておるわけでございます。
 また、ここで言う我が国は、いわゆる統治機構、時の政府や内閣を愛するという趣旨ではなくて、歴史的に形成されてきた国民や国土、伝統文化などからなります歴史的、文化的な共同体としての我が国を愛するという趣旨である旨、お答えをしてきておるところでございまして、これを条文上、明確にするためにも、伝統と文化をはぐくんできた我が国と郷土を愛するというふうに規定をしておるところでございます。
 また、この条文では、心と態度の関係がよく聞かれたわけでございまして、ここで態度といたしましたのは、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛することと、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する、この2つのことを一体として規定するということから、「郷土を愛する」で一たん切ることなく、郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うということで、この5号というものを一つの態度として受けているんだということを繰り返しご説明してきておるところでございます。したがいまして、ここで言う態度というのは、心と態度というものは一体的に培われていくものであるということをご答弁させていただいてきておるところでございます。
 また、この我が国を愛する態度を評価するのか、内心の自由を侵すことになるのではないかという議論も行われたわけでございますけれども、我が国と郷土を愛するということは、決して子どもたちの内心にまで立ち入って強制する趣旨のものではない、教育の目標として書かれたものでありますという旨をご答弁してきておるわけでございまして、現在も、社会科や道徳等におきまして、我が国の国土の特色あるいは国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績などを理解し、我が国に対し、あるいは郷土に対し愛情を深めるとともに、国家の発展に寄与しようとする態度をはぐくむ教育が行われておるところでございます。したがいまして、これらを評価するに際しましては、児童生徒の内心を調べて、国を愛する心情を持っているかどうかということを評価するのではなくて、あくまでも我が国の歴史や伝統に対する学習について、意欲、関心、態度を持っているかどうかを評価するのでありますという旨をご答弁してきておるところでございます。
 それから、生涯学習の理念、私立学校、家庭教育・幼児教育等を新たに規定しておることにつきましては、国会におきましても評価していただいたものと認識をしておるところでございます。
 続きまして、宗教教育についてでございます。宗教教育に関する寛容の態度、あるいは宗教の社会生活における地位を教育上、尊重することにつきましては、従前の教育基本法を引き継いでおるところでございますけれども、今回は、中央教育審議会の答申を踏まえまして、尊重すべき内容といたしまして、新たに宗教に関する一般的教養を規定したところでございまして、今後、学習指導要領の見直し等を検討する中で、宗教に関する知識や宗教の意義などについて、各学校団体において、一層、適切に指導ができるよう努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 あわせて、宗教教育の中では、宗教的情操というものが大事なのではないかということが大きく議論になったわけでございます。このことに関しましては、中央教育審議会におきましても、人格の形成を図る上で、宗教的情操をはぐくむことは、大変、重要であるけれども、宗教的情操という言葉は多義的であって、宗教的情操は特定の宗教に基づかなければ涵養できないのではないかといったご意見もあったことから、宗教的情操を法律に規定することはしなかったところでありますという旨のお答えをしたところでございます。現在、道徳等を中心に、宇宙や生命の神秘あるいは自然といった人間の力を超えたものに対する畏敬の念をはぐくんできておるわけでございますけれども、こうした取り組みは、今後とも充実していく必要がある旨のお答えをしてきておるところでございます。
 それから、第16条、教育行政につきましては、不当な支配について、これをどうして残したのかというご意見。一方では、不当な支配は残っているけれども、それ以外のところが全部、変えられているではないかという両方からのご意見があったわけでございますけれども、これにつきましては、一部、教職員団体等が教師の教育権を主張いたしまして、教育行政は教育内容や方法にかかわることができないという主張がなされてきたところでございます。これらを踏まえまして、昭和51年の最高裁判決におきましては、国は、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についても、これを決定する権能を有するということが最高裁の判決として出されておるところでございます。これを踏まえまして、教育は、不当な支配に服することなくとの規定は引き続き残しますけれども、法律の定めるところにより行われるべきという文言を新たに加えることによりまして、教育も、当然のことながら、国会において制定される法律に基づいて行われる必要があることを明確にした旨のお答えをしてきておるところでございます。
 それから、教育における国の責任ということが、国会でも大きな論点となったわけでございますけれども、教育について、国が最終的な責任を有することが政府案には書かれていないのではないかといったご指摘がなされたわけでございます。これに対しましては、新しい教育基本法の5条、義務教育におきまして、国と地方公共団体が適切な役割分担及び相互の協力のもとに、その実施に責任を負う旨を定めておるところでございます。また第16条では、教育行政について、国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図る、これが国の役割として、また地方公共団体は、地域の実情に応じた教育施策を実施すべき旨を地方公共団体の役割として規定しておるところでございまして、さらに具体的な事柄については、学校教育法や地方教育行政の組織及び運営に関する法律で明らかにされているところであるといった旨のお答えをしてきたところでございます。
 今後、文部科学省といたしましては、新しい教育基本法に示されました理念のもとで、教育振興基本計画の策定をはじめといたしまして、各種の施策の充実、そして関係法令の改正等に取り組みながら、一方では、国民の方々に今回の教育基本法の改正の趣旨を十分ご理解していただき、国民全体、社会全体で教育改革が推進できるように、広報活動にも努めてまいりたいと考えておるところでございます。今後、中央教育審議会の先生方におかれましても、教育振興基本計画の内容あるいは教育基本法の具体化のための法律改正の中身等に関しまして、今後、ご審議を賜りたいと考えておるところでございまして、先生方におかれましても、引き続き、ご協力方よろしくお願い申し上げる次第でございます。
 説明は以上でございます。

【鳥居会長】 どうもありがとうございました。
 平成15年の3月20日に、この中央教育審議会で教育基本法の中教審としての原案を決定したわけですけれども、ちょうどその瞬間にアメリカのイラクへの戦争が始まりまして、陪席しておられた遠山文部科学大臣が、急きょ官邸においでになるというようなことがあったのを思い出します。それから3年数カ月かかって、やっとのことで通った、今、ご説明のとおりの状況でございますが、いろいろとご意見がおありだと思います。後ほど、ぜひご意見を聞かせていただきたいと思います。
 それでは、関連いたしまして、高等学校における必修科目の未履修でありますとか、初等中等教育、各段階におけるいじめ、自殺等が続いて起こっておりまして、そのことが教育基本法の審議にも大きな影響を及ぼしてまいりました。一方、初等中等教育局長をはじめ、文部科学省の皆さんには、この問題についての対応に、大変、苦慮されておられました。この間の事情について、銭谷初等中等教育局長からご説明をお願いしたいと思います。

【銭谷初等中等教育局長】 初等中等教育局長の銭谷でございます。
 資料3と4に基づきまして、高等学校における必履修科目の未履修の問題といじめの問題につきましてご説明をさせていただきます。
 ちょうど国会で教育基本法の審議が始まりました10月ごろから、初等中等教育をめぐりまして大変大きな問題が2つ発生いたしました。基本法の審議の中でも、この2つの問題は、随分、取り上げられまして、私どものほうから、いろいろご説明を申し上げたわけでございますが、この間、中央教育審議会が開催できませんでしたので、その間の事情につきましてご報告をさせていただきます。
 まず資料3でございますが、高等学校における必履修科目の未履修についてと題した資料でございます。1ページ目にございますように、高等学校の学習指導要領におきましては、高校生が、将来いずれの進路を選択する場合でも、最低限、必要となる知識や技能等について、ある程度、幅広い分野について学ばせる必要があることから、資料3の2ページにございますように、必履修教科・科目を定めているところでございます。この高等学校の必履修科目につきまして、資料3の1ページの2の最初の丸にございますように、10月24日に、各地の高等学校におきまして必履修科目を生徒に履修させていないということが報道され、学習指導要領に反する事例が判明いたしたわけでございます。文部科学省では、10月25日に未履修の実態調査を実施いたしまして、その結果が資料3の3ページ以下にございますような結果となったわけでございます。
 結論的に申し上げますと、高等学校5,408校のうち663校、全体の12.3パーセントの高等学校におきまして、必履修科目の未履修という問題が生じてございます。未履修の生徒の数は、第3学年の生徒数116万1,925人のうち10万4,202人、9.0パーセントという数に上ることが判明いたしたわけでございます。
 資料3の1枚目に戻っていただきまして、文部科学省では、この結果を踏まえまして、11月2日に未履修の生徒の卒業認定等の取り扱いにつきまして、初等中等教育局長名の通知を発出いたしまして、取り扱い方についてお知らせをしたところでございます。
 さらに11月8日に、その運用方針についても定めまして、これもご通知を差し上げたところでございます。その内容は、1ページの通知の概要というところに1から4まで記載しているところでございます。
 さらに、この未履修の問題がいつから始まっているのかということにつきまして、さかのぼりの調査を実施いたしました。5ページに、未履修の開始年度についてという資料が添付されているかと存じます。この表とグラフをごらんいただければ、おわかりいただけるかと存じますが、この663校のうち、平成14年度までに、既に、一部、教科科目の未履修という事態が発生していた学校は全体の34.5パーセントでございます。残りの学校は、平成15年度からということに相なってございます。
 1枚めくっていただきまして、資料の6ページでございます。どういう教科で未履修が多いかということでございますけれども、一番多いのが地理歴史科でございまして、6ページの2の表をごらんいただきたいわけでございますが、未履修のうち42パーセントが地理歴史科でございます。続いて情報科が23パーセントという結果になっております。
 文部科学省では、こういった未履修の実態及び過去にさかのぼっての結果を踏まえまして、さらに原因の究明と再発防止に向けた取り組みの徹底を、今、行っているところでございますが、去る12月22日には、この問題に関係をいたしました関係職員の処分等の対応について、教育委員会等に対して通知も行っているところでございます。今後、この未履修の問題につきましては、補習授業を各高等学校でしっかりやっていただくとともに、原因の究明、再発防止に向けた取り組みの徹底、さらに、中長期的には大学入試のあり方、高等学校教育のあり方について検討する必要があると考えておりまして、いわば、この問題により失われました公教育に対する信頼回復に向けて、私ども、取り組んでいく必要があると考えておるところでございます。
 それから資料4でございますが、いじめ・自殺の件についてと題した資料でございます。この問題につきましては、未履修の問題よりも少し早く、今年の10月上旬に、1つは北海道滝川市で昨年の9月に起きました小学校6年生の女子児童の自殺について報道がなされました。この件は、市教委が、当初いじめがあったとは考えていないという認識を示しており、また、児童が遺した遺書の内容について的確な市教委側の説明がなかったということが問題の発端でございまして、1年経って、市教委として、初めてこの遺書の内容を明らかにし、この問題の背景と、この自殺の背景について改めて問われた事案でございます。
 また同じころ、今年の10月でございますが、福岡県筑前町で中学校2年生の男子生徒が自宅で首をつり亡くなるという事件がございました。事件の聞き取り調査の中で、他の生徒からのいじめが明らかになるとともに、かつて担任の先生から、その子どもに対して不適切な言動があったことも明らかになって、大変大きな問題になったわけでございます。
 資料4の1ページの(2)の対応のところに記してございますが、文部科学省では、この北海道滝川市、福岡県筑前町の事案につきまして、副大臣あるいは政務官を現地に派遣いたしまして、遺族等からの事情聴取を行ったところでございます。さらに、ことしの10月19日に緊急の生徒指導担当課長会議を開催いたしまして、この問題に対する文部科学省の考え方を通知等によりお示しするとともに、各都道府県・市町村の教育委員会、学校における取り組みの徹底を求めたところでございます。さらに10月24日には、省内に、子どもを守り育てる体制づくり推進本部を設置いたしまして、そのもとに有識者会議も開催いたしまして、現在、対応を進めているところでございます。加えて、11月17日でございますけれども、文部科学大臣からお願いの文書を発表したところでございます。文部科学大臣からのお願いの文書は、資料の中ほどにございますので、後ほどごらんいただきたいと存じます。
 文部科学省としては、児童生徒がみずからの命を絶つということは、理由のいかんを問わずあってはならないことでありまして、この問題を、大変、深刻に受けとめてきたわけでございます。いじめは、どの子にもどの学校にも起こり得るという認識のもとで、問題を隠すことなく対応することが重要であるという姿勢で指導を行ってきたところでございます。先ほど申し上げました、11月17日の文部科学大臣のお願いの中でも、子どもたちに対して、「いじめるのはひきょうで恥ずかしいこと。そして、一方、いじめられていることをだれかに話す勇気を持とう」ということを訴えているところでございます。また、保護者や先生などに対しまして、子どもの示す小さな変化を見つけるため、毎日、少しでも子どもたちに言葉をかけ対話をしてほしいということを呼びかけているところでございます。
 なお現在、いじめや自殺の実態把握のために文部科学省が行っております調査について、見直しの作業を進めております。と申しますのは、文部科学省の調査結果で、平成11年度以降、いじめを理由とする自殺の報告がございませんでしたので、この点、実態把握が十分でなかったことを私どもは反省しなければならないという観点から、今、調査票の見直しを進めているところでございます。
 また、各学校、教育委員会の実践的な取り組み事例の紹介、施策の取りまとめ等について、今、作業を行っているところでございます。
 なお、あわせまして、去る20日に決定をされました補正予算案におきまして、教育委員会が行っております教育相談窓口を、夜間、休日を含めまして24時間対応とするための財政措置、並びにスクールカウンセラー等の配置を拡充して、小中学校を中心に、児童生徒に対する集中的な教育相談を実施するということを計上しておりまして、総額、約30億円で実施をしていきたいと考えているところでございます。
 加えて、現在、教育委員会の相談窓口の電話番号につきまして、全国統一ダイヤルを設け、その番号にかければ、それぞれの教育委員会の相談窓口につながるような、そういう方策についても検討を進めているところでございます。
 いじめの問題につきましては、引き続き、取り組みの強化を図ってまいりたいと思っているところでございます。
 以上、未履修といじめの問題につきまして、10月以降の経過につきましてご報告をさせていただきました。

【鳥居会長】 どうもありがとうございました。
 もう一つ、ご報告をいただいてから、ご説明をいただいてから、皆さんのご意見を伺いたいと思います。教育再生会議の動向につきまして、金森総括審議官からご説明をお願いします。

【金森総括審議官】 総括審議官をいたしております金森でございます。
 教育再生会議の動向につきましては、お手元に、資料2といたしまして、教育再生会議についてという資料をお配りしてございます。これに沿って説明をさせていただきます。
 まず教育再生会議でございますけれども、21世紀にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を図るため、教育の基本にさかのぼった改革を推進する教育再生会議を内閣に設置するというのが、その趣旨でございます。
 構成は、内閣総理大臣、内閣官房長官、文部科学大臣並びに17名の有識者の方々より構成されておりまして、内閣総理大臣が開催することになっております。
 会議の開催状況でございますが、第1回の会議が本年10月18日に開催されまして、総理などのごあいさつの後、有識者から自由にご議論をいただきました。
 第2回の会議では、学校再生分科会、規範意識・家族・地域教育再生分科会、教育再生分科会の3つの分科会を設置することを決定いたしました。
 11月29日には第3回の会議が開かれまして、いじめ問題への緊急提言を公表したところでございます。
 去る12月21日には第4回の会議が開かれまして、1月に取りまとめる予定の第1次報告の骨子案についてご審議がございました。
 各分科会でも、合宿集中審議などを含め、ごらんのような日程で開催されているところでございます。今後、議論を詰め、来年1月に第1次報告を取りまとめる予定になってございます。
 2枚目が、この教育再生会議の設置の閣議決定でございまして、ただいま申しましたような内容が、趣旨や構成として記述されてございます。
 3枚目は、教育再生会議の17名の有識者の方々の名簿でございまして、中央教育審議会の委員をしていただいております中嶋先生、野依先生も、この有識者のメンバーになっています。
 4枚目は分科会の検討事項ということで、どういった議論がなされているのかというのを、ごく簡単にまとめた資料でございます。教育再生のための理念と改革の方向をはじめといたしまして、教員の資質能力の向上、この中には、教員免許の更新制でございますとか指導力不足教員の問題なども含まれます。それから、3.教育委員会・学校の在り方の見直し、4.学習指導要領の改訂、授業時数の増加など、あるいは基礎学力の強化。それから、5.といたしましては、来年4月に調査結果を公表することになっておりますが、全国学力・学習状況調査の問題。6番目には、規範意識や情操の涵養ということで、自然体験活動やボランティア活動、芸術・文化活動などの推進でございますとか、学校規律を乱す生徒への指導、こういったことについてもご議論がございます。7点目は、来年4月から実施することにいたしております放課後子どもプランの円滑な実施についてもご審議をいただいているところでございまして、各分科会、大変、活発な議論が行われているところでございます。以上でございます。

【鳥居会長】 ありがとうございました。
 金森さん、今、ご説明のあった10月10日の閣議決定、2枚目の紙を読んでみるとわかりますように、教育再生会議の設置の根拠となるのは、この閣議決定だけですね。

【金森総括審議官】 そうです。

【鳥居会長】 ですから、そこに書いてあることを読むと、要するに内閣総理大臣が開催して有識者側が意見を述べることができるようになっているというわけですね。中央教育審議会は中央教育審議会令に基づいて、ここで出した答申は、文部科学大臣がそれを受けとめられて、答申に基づいて必要な法律の制定や制度の改正や、そういうものが行われるように仕組みとしてなっていますけれども、教育再生会議の答申というのは、どうもないようで、あるのは報告だけです。第1次報告が12月21日に骨子案が出されて、まだ最終報告にはなっていないと。この報告が出ると、それは、どういうふうに制度的あるいは法律的に扱われるんでしょうか。

【金森総括審議官】 教育再生会議で報告という形で結論が得られたものにつきましては、予算措置などですぐに施策として実行に移せるものもあれば、中には中央教育審議会にお諮りをして、具体的な実施方向についてさらに検討していくものもあろうかと思っております。この教育再生会議が設けられましたのは、教育改革あるいは教育再生ということになりますと、学校教育だけではなくて、子育ての問題とか家庭のあり方、あるいは地域社会、企業のあり方、勤務のあり方、こういったものがかかわってまいりますけれども、こういったものは文部科学省だけでは取り組むことが難しい事柄でございます。したがいまして、教育再生会議では、こういった文部科学省の所掌範囲に限らず、より広い視野から教育再生のための実効ある方策が議論されるということを私どもも期待をいたしているところでございまして、政府一体となって、この教育再生に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

【鳥居会長】 この間、二、三日前に確定した来年度予算の中には、そうすると教育再生会議絡みの何らかの予算が組まれたわけですね。

【金森総括審議官】 教育再生会議で議論がございます中の1つ、最後の資料の分科会の検討事項で、放課後子どもプランというのがございます。これは、来年度予算で実施をいたすことにしているものでございますけれども、この放課後子どもプランをより実効性が上がるように、また効果が生じるように、そういった観点からどういうふうにしたらいいのかということでのご議論もいただいているところでございます。

【鳥居会長】 そうすると、こう理解していいのでしょうか。教育再生会議で議論されたことがもとになってつくられた放課後子どもプランなる予算は、文部科学省の予算の一部となって組み込まれたわけですか。

【金森総括審議官】 正確に申し上げますと、教育再生会議の議論が始まります前から、私ども、こういったものを4月から放課後子どもプランとして実施をしたいということで進めてまいりました。来年度の予算案にも盛り込まれておりますけれども、それを実際に実施するときに円滑に実施するには、こういう観点から、こういったことも考えてみたらどうかということを教育再生会議のほうからご指摘をいただいているところでございまして、順番としては、むしろ、先に計画をしておった放課後子どもプランについて、今、再生会議のほうが、こうしたらもっとうまくいくのではないか、こんなようなご意見をいただいているというのが実情でございます。なお、これからまだいろいろなご議論があると思いますので、そういったものを通じて予算措置を伴うようなものも出てこようかと思いますけれども、それはこれからの課題と考えております。

【鳥居会長】 ありがとうございました。
 それでは、一通りのご説明をいただきましたので、これから議事に入らせていただきます。教育基本法成立を受けた教育改革の取り組みについて、これまでのご説明を踏まえまして自由にご討議いただきたいと思いますが、今、4つほどの説明がありましたけれども、どの問題からでも結構でございますので、ご自由にご意見をいただきたいと思います。
 どうぞ、増田委員。

【増田委員】 失礼いたします。
 先ほどご説明がありましたけれども、ことし1年を振り返りますと、高校において、必修科目をやらずに履修不足という問題が大きなニュースとなって、校長先生の自殺という悲しい出来事もありました。これは、学校が受験を重視するあまりに塾化したことに大きな問題があると思います。先日の教育再生会議のとき、座長の野依さんから塾を禁止すべきだというご意見があったと報道されましたが、今の受験システムですと、塾をなくしてしまうと余計に学校が塾化してしまうのではないかと私は危惧しています。日本の受験システムは、一昔前だというようなことも聞いていますけれども、教育先進国と言われるところがどういうふうになっているのかということを、より知ることが必要で、もっと勉強したいと思うんですけれども、その辺の受験システムということをこれから議論していくべきではないかと思っています。

【鳥居会長】 ありがとうございました。ほかにご意見は。山本委員、どうぞ。

【山本臨時委員】 今のこととも関係するんですけれども、教育基本法に新しく入った条項がございますね。第3条の生涯学習の理念と第13条の学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力というところについて、若干、申し上げたいと思います。
 今のお話に絡むのですが、第3条のところで生涯学習が入りましたが、その条文を読みますと、結局、いろいろ学習することができて、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現を図るとなっているわけで、これは生涯学習社会の実現というところに帰着すると思うんですけれども、その成果を適切に生かすことのできるというところが、我が国の場合、未整備なんです。
 これは、平成二、三年の中教審答申のときからの課題で、何度やってもうまくいかなかった問題なんです。しかし今度、これがうまく入ってきたので、このところの整備を図っていただきたいのですが、成果を生かすためには、国民の方々の学習した成果を証明する資料が必要です。広く使えるようにする資料が必要です。ですから、そういうものを出していく仕組みをつくっていく必要があると思います。それが広がっていくのには、10年、20年かかると思いますけれども、先進国でそこが未整備なのは我が国だけです。それが基盤にあれば、学校の問題もかなり楽になってくるはずなんです。今の受験の問題にしても何にしても楽になってくるはずなんですけれども、そこがないということで苦しいということがありますので、その点はぜひ、スロー・アンド・ステディーで、漸進的アプローチで結構ですから整備を図っていただきたい。
 それに絡んで、先ほどの13条なんですけれども、今のいじめとかいろいろな問題があります。こういう問題が出てくると、必ず、学校、家庭及び地域住民の連携・協力、地域の連携・協力と言うんですけれども、その中で、地域に対する手当がほとんど顧みられない状況がございます。つまり、地域住民というのは、もうでき上がっていて、何かそこに理想像があって、そこの協力が得られればうまくいくのではないかという錯覚。もう一つは、もうちょっと前には、地域なんかには教育力はない。だから、協力してもらうのは無理だと。この両論があったわけでございます。そのところは、実態をよく見ていただいて、地域住民の教育力をアップするには何が必要かということが重要だと思うんです。地味な話かもしれませんけれども、先ほどの生涯学習社会の実現というところで、学習成果を生かすというところの整備を図っていただければ、住民の方々のレベルも上がっていきますし、今のようなところでの協力というのも非常に力をつけてきてやってもらえると思います。ですから、この辺のところも、ぜひこれから整備を図っていただきたい。
 以上でございます。

【鳥居会長】 ありがとうございました。黒田委員、どうぞ。

【黒田委員】 関連したことなので、続けて発言させていただきます。
 今のご意見と趣旨は大体同じなのですが、実は教育改革国民会議の委員をやっていましたときに、高校で学習したことの達成度試験みたいなものをやって受験と切り離していただけないでしょうかということを申し上げました。というのは、進学率が増えても、たかだか50パーセントで、高校が、もしかして大学受験が悪いからこういう教育になっているんだということは、残りの進学しない人は無視しているんですかということにもなってしまうわけです。
 また、すぐに大学に進学しなくても、いろいろな社会経験をしてから進学しても使えるような、イギリスで言うとOレベル、Aレベルに対応するような、どのくらい教科を学習したかということをはかるようなものがあるといいですね、ご検討くださいということを申し上げたのですが、そのままになってしまいました。大学受験だけのために高校で勉強しているのではなく、受験制度を変えればいいのだというふうにならないようにお願いしたいと思います。

【鳥居会長】 湯川委員、どうぞ。

【湯川委員】 関連したことなんですけれども、大変気になっておりましたのが、今回の、高校での必須科目未履修の問題になっているんですけれども、小学生、小さい子どもたちが、夜の9時、10時という時間に塾から帰ってくる姿というのは、私は、海外あちらこちらに行っておりますものですから、まず見たことがないという、日本の子どもたちが、非常に特殊な状況に、小学校のときから置かれている。この異常さをどこかで救わなければ、いろいろなことにかかわってくるのではないかと思います。
 たまたま私の場合は、自分の子どもをちょっと特殊な学校に通わせたものですから、そこで、小学校高学年から中学のいわゆる受験期に学校で言われたことは、多くの国のお子さんたちがいらっしゃっている学校だったものですから、日本の親が自分の子どもたちの学校の勉強を手伝わないというのは、非常に日本は特殊な国だということを、うちの子どもが通っていた小学校でもよく問題にされました。もっと親が子どもの教育の面倒を見なければどうするんだと。それが塾に通わせているというのは、教育は学校任せというようなことも、私たち自身が考えていかなければならない問題なのだろうと思いますが、その辺の日本の特殊性というのも、いち早く気がついて子どもたちを何とかしていかない限り、こういう問題はずっとこれからも続くんだろうなと思います。
 あと、いじめの問題にも、それも関係してくるのですが、今回、カウンセラーをもっと置くためのいろいろな費用などが考えられたようなのですが、カウンセラーという、待っていて相談を受けるということではなくて、ほんとうに子どもたちの日常生活に目配り気配りをする、そういう学校のいじめ専門の先生たちというのは――何と言ったらいいんでしょうか――役割というのは、現状どうなっているのだろうか。カウンセラーを増やせばいいという問題ではないという気がしております。
 そして、たまたま、私がこの委員会に属したのは、基本法を皆様がすごく時間をかけておつくりになった後で入ってきたものですから、その辺に関しては、私はちょっと温度差があるかもしれませんけれども、せっかく時間をかけて責任を持ってすばらしい教育基本法をお考えになって、文科省に渡されて、それが、国民意識の中に浸透させていく段階で、どうして文科省が――この間のやらせの問題が、委員会の方たちにとって、とても心外な出来事だったのではないかと思うんですけれども、文科省への委員会からの抗議というんでしょうか、そういう声はなかったのかどうか。それも、ほんとうにちょっと不思議な思いがして、これも伺いたいことの1つです。

【鳥居会長】 中嶋委員、どうぞ。

【中嶋委員】 秋田に、これから飛行機に乗らなければいけないものですから、ちょっと恐縮です。
 教育再生会議と中央教育審議会の関係は、鳥居先生のおっしゃったとおりだと思いますし、あれは、あくまでも安倍さんの内閣、そこで自由に議論していただいて、それを取り上げるもの、あるいは法制化する必要のあるものは、それなりの審議にゆだねられるのだろうと思います。鳥居会長がおっしゃったように、いろいろ書かれるものですから、あの会議を非公開でやること自体に、もう問題があるのではないかと私個人は思っています。とにかく、みんなが自由に議論するという段階で、どんどん報道のほうが先走るものですから、何か、いかにも混乱しているような印象を与えていると思いますけれども、必ずしもそうではないと思いますし、むしろ中教審なり文科省なりに、今後いろいろお願いしなければいけないようなことが出てくるんじゃないかと、そんな雰囲気を感じている次第でございます。

【鳥居会長】 湯川委員からご質問が1つありましたけれども、事務局のほうで、何かお答えになることが用意してありますか。どうぞ。

【田中生涯学習政策局長】 湯川委員からご指摘いただきましたように、タウンミーティングの開催に当たりましては、文部科学省におきまして、あらかじめ発言候補者をお願いしたり、その発言候補者のための発言メモのようなものを作成し、お渡ししたことは、ほんとうにタウンミーティングの趣旨を損なうものであって、ひいては教育行政に対しまして国民の信頼を損なうようなことになったことを、私どもは深く反省しておるところでございまして、今後、こういうことが二度と起こらないように、職務の遂行に適正を期してまいりたいと考えておるところでございます。

【鳥居会長】 ありがとうございました。それでは、まず田村委員、それから高倉委員、どうぞお願いします。

【田村臨時委員】 ありがとうございます。
 実は、教育改革国民会議以来、基本法改正にはかかわっておりまして、私なりには、17条の教育振興基本計画にかかわっての条文ができたことが画期的だというふうに非常に楽しみにしていたわけでございます。この振興基本計画を実施するというのは、開かれた教育行政、あるいは国民の意見がきちっとした形で教育の展開に反映されるということがないままに行われることに非常にあやうさを感じると。
 実は、この間の義務教育の問題で、突然出てきて、突然大きな制度変更が始まるようなことが、経験から、これは絶対に大事だと思いましたので、今、湯川委員からのご指摘もありましたが、ぜひひとつ、開かれた国民による教育が行われるように、この振興基本計画をご活用していただいて、基本法ができたら、でき上がったら終わりというんじゃなくて、そこから始まるんだと考えてよろしくお願いを申し上げたいと思っている次第です。ありがとうございました。

【鳥居会長】 ありがとうございました。じゃ、高倉委員、お待たせしました。

【高倉臨時委員員】 どうもありがとうございます。
 勝手でございますが、中教審絡みで、私がかかわってきた2つに焦点を合わせて、2点、発言させていただきたいと思います。
 実は昨年の12月8日に、特別支援教育を推進するための制度のあり方について、この答申の取りまとめをやりました。その立場からいたしますと、今度の教育基本法の第4条、教育の機会均等に第2項を入れていただきまして、障害のある者に対する必要な支援ということではっきりと書き込みをいただいたことに対して非常に感激を覚えております。なお、これが絵にかいたもちではなくて、ほんとうに実効のあるものになるために、今、田村委員もおっしゃいましたように、基本計画の中にも、必要ならば、きちっと書き込んで、それを担保するような、そういった措置をぜひお願いいたしたいと思います。
 第2点は、ちょうど昨年の同じころ、これも中教審からのご依頼のあった点でございますけれども、教員配置あるいは教員定数改善についての報告書をまとめました。そのほうは、若干は予算措置、その他、政策的に反映されましたけれども、ほとんどネグレクトされている。非常に残念に思いました。
 そういうことを考えますと、基本計画それ自体が、そういった教員の定数の改善というようなことに対する提言をきちっと実現させる、それを担保するような役割を果たすような規定の性格をぜひ持たせていただきたいと念願いたします。
 以上です。ありがとうございました。

【鳥居会長】 それじゃ、江上委員、どうぞ。

【江上委員】 今回、教育基本法で、第13条に学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとすると、こういう条文が定められたわけですけれども、この法文ができ上がったときに、文科大臣に、私は、企業という言葉が入らないのかと申し上げましたら、地域住民の中に企業という概念が含まれておりますとお答えいただきました。
 私は、これからの生涯学習を中心にしまして、企業が教育に果たす役割は大変大きいと思います。特に日本では、就労者の中で雇用者比率は高く労働時間も長いわけで、企業がどういう形であらゆる段階の教育に貢献できるのかというところを、今後の教育振興基本計画などで配慮して、ぜひ考えていただきたい。
 それとともに、もう一つは、教育再生会議の中では、5人ぐらい企業の経営者が入っておられます。私は、むしろ、この再生会議では、こういう横断的に解決できる方策をぜひ話し合っていただきたいと思います。もちろん、私も企業にかかわっている人間の一人ではありますけれども、なかなか文科省ではブレークスルーできない多分野の連携を、ぜひ教育再生会議で文科省の事務方からご提案をいただけるといいんじゃないかなと思いました。
 それと、先ほど教育再生会議と中教審の位置づけのことで、結果と報告と答申についての扱いのご説明があったんですけれども、金森総括審議官から放課後プランのお話があって、私が、やや理解が十分にできなかった点は、私は生涯学習分科会に帰属しておるんですけれども、そこで家庭や地域における問題ということで話し合ってきた中で放課後プランというのは出ているわけです。教育再生会議で放課後プランというのが出ていると。もちろん、結果的にいい政策が実現されることが何よりですが、中央教育審議会というのは一体何をやっているのかと、世論の中で、随分、話題になるわけです。きちっとした文科省としてのスポークスもしていただきたいと思っています。
 私は、今までの報道を見ている限りでは、伊吹文科大臣のコメントは、大変、適切だなと思っておりますが、一つ一つの政策などについても、ぜひ文科省から、中央教育審議会で議論したプロセスや内容もきちっと広報して国民の理解と共感を得るということは非常に大事だと思いますので、それをよろしくお願いしたいと思います。

【鳥居会長】 ありがとうございました。
 今の最初におっしゃった点は、旧第7条をどう書きかえるかという問題として提起されたわけですね。旧第7条には、家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は云々と書いてあって、明らかに工場内に設置された学校をはじめとする勤労の場所での教育がうたわれていたんですけれども、それを消すことになったという経緯がありまして、今、ご指摘のとおりだと思います。
 それでは、森委員、どうぞ。

【森臨時委員】 いじめの問題ですが、文部科学大臣からのお願いというのを見ておりまして、「いじめ」というのが平仮名で書かれているためにインパクトがないといいますか迫力がないので、私は、「いじめ」は漢字で書いたほうがいいんじゃないかと思うんです。草冠に優良可の「可」ですが、そうすると視覚的にも、これは残酷なことだ、過酷なことだという印象が強いので。
 そのヒントは、芥川賞受賞作で『海峡の光』というのがあるのですが、それは、いじめをモチーフにした作品で、いじめた人が大きくなって刑務所へ入ると、いじめられた人が刑務所の看守をしているという心理的葛藤を描いた非常にスリリングな小説なんですけれども、それはともかくとして、「苛め」と漢字で書くことによって国民の意識改革ができるんじゃないかということが1つ。
 第2点は、この文部科学大臣のお願いを見ますと、いじめは恥ずかしい、ひきょうなことだと、まず加害者に訴えている。これは非常にいいことだと思うんです。その次に、被害者に、苦しんでいる人は決して一人ぼっちじゃないんだよと訴えている。加害者がまずいるから被害者が出るので、加害者をなくすることを考えなきゃいけない。恥ずかしいとかひきょうということは人間の規範意識の問題ですから、これは安倍総理も規範意識の育成とおっしゃっているわけでありますから、規範意識の研究を生涯発達・教育論的にやっていただきたいと思うんです。家庭ではどうするのか、大きくなったらどうするのかと。
 それで、いじめが人の道から外れたことだということをわからせるためには、やはり人の道とは何かということからやらなきゃいけない。私は、人の道というのは、言われている五常の道で、「仁・義・礼・智・信」だと思うのですが、「仁」というのは、まず弱いほうを助けてから強きをくじくんです。「義」というのは、強いほうをくじいてから弱きを助けると、こういうことになっていますので、こういう場で申し上げると、ややひんしゅくを買うかもしれませんが、任侠といいますか義侠といいますか、そういうものが今、非常に欠けているんじゃないか。これが、ガキ大将の心理分析じゃないかと考えておりますが、いずれにしても、今後、規範意識というものを、人間のマナーとかルールとかを含めて、生涯発達論的に検討していただきたいと思います。以上です。

【鳥居会長】 ありがとうございました。じゃ、渡久山委員、どうぞ。

【渡久山臨時委員】 1つは教育基本法の部分ですね。改正教育基本法の中で特徴的なものは、今ありましたような、幾つかありますけれども、第4条、新しいのでは第5条になりますが、義務教育の年限の問題ですね。このことについては、早急に何らかの下級法で決めていくべきだと、ひとつ思います。
 もう一つ、新しく入ったものの中に幼児教育というのがございますよね。この幼児教育は、今、二元化されている格好になっていますが、縦の二元化じゃなくて横の二元化の方向性を今度はつくっていくというような方向ですね。例えば、5歳児や4歳児をすべて幼稚園にして、それ以下の子どもたちを、あるいは4歳児以下でもいいんですけれども、保育園にするという、そういう感じのもので持っていくのもいいんじゃないかと。
 それと8条には、この間、鳥居会長も言われたのは、私学教育がきちっと位置づけられましたから、特に日本の高等教育のほとんどが私学でやられているという現状を見ますと、このことについて、もっときちっと高等教育を重視するというようなことになっていきますと、必然的に私学教育を重視するという形になりますので、この部分も、今後の検討課題として新しい教育基本法に応じたことが出てこなくちゃいけないだろうと思います。
 同時に17条ですね。17条は、教育振興基本計画なんですね。実は、今ありましたように、教育基本法の改正、教育基本法についての答申を中教審でやったときにも基本計画を出しましたが、全く数値がないんです。ですから、今後、基本計画を立てるときには、数値目標をきちっと明確にしてやる。これは、昭和46年、1971年の答申には出ていたんですけれども、その後のいわゆる教育改革の議論にはほとんど数値が出てこない、数量的な提案がないんです。ですから、これでは、どんなにすばらしい意見が出ても、これをどういう形で実行していくんだというのがほとんど見えてこない。そういう意味では、この基本計画をつくっていくという法律ができたということは非常にいいことだと思うんです。
 珍しいことには、日本には29本の基本法があるんですけれども、財政計画がないのは日本だけですよね。これは、原子力基本法もそうです。原子力基本法については、ご案内のとおり、つくられたときから非常に国民的なアレルギーがあってできることじゃなかったのですが、残念ながら教育基本法もそういう状況になっていますので、ぜひともお願いしたいと思います。
 それから、未履修問題について私がいつも感じているのは、日本の学校教育が、義務教育をはじめ、あるいは高等学校教育まで、全部、受験シフトになっているんじゃないか。だから、学力もあるいは教育課程内容も、ほとんどが受験のための学校教育になっていないかということで、先ほどありましたように、大学受験を見直すとか、あるいはまた、それに応じた高等学校の教育課程を見直していくということは緊急な課題になってきたんじゃないかと感じているわけです。
 それから、いじめ問題では、私が一番気にしているのは、ここにも早期発見、早期対応ということについて文部科学省が提起されています。これはもう、そのとおりでありまして、それには賛成であります。ただ、これを実行していくためにどうすればいいだろうか。先ほどカウンセラーの問題もありましたが、もちろんカウンセラーを、より数多く配置することも非常に大事でありますし、生徒指導のための教員の配置というものも非常に大事ですが、今一番、学校現場で非常に困っているのは、超過勤務時間が常態化している、1日2時間くらいはある、週10時間以上ある、持ち帰りまで含めると14時間もなっている。その中で、勤務の対応をよく見ますと、子どもたちに接する時間が非常に少ないんです。ある意味では、雑務とは言わないけれども、教科指導のほかは、ほとんどそういうところに持っていかれている。
 ですから、子どもたちに接する時間を確保していくという意味では、教員の仕事の内容を精査することも大事なのですが、きちっとした教員配置が必要です。先ほどもございましたけれども、今のように40人学級をいつまでも続けているというようなことでは、いじめ解決にはならないと思うんです。第一義的には、僕は、こういう教育条件の整備をきちっとしていって、教育環境がいじめを早期に発見し解決できる状況をつくる、条件をつくるということが真っ先じゃないかと思うんです。そういう意味では、教職員の努力ということは非常に大事なのですが、努力ができるような状況づくりをしていっていただかなければ、これはなかなかうまくいかないだろうという感じがいたします。
 次に、再生会議の問題ですが、教育の免許制度の問題です。これは、10年間で中教審としては答申いたしました。それを、10年間では長いだとか少ないだとか、あるいは、先ほど鳥居会長も言われたように、全く新聞だとかテレビでしか見ていませんから、ほんとうの議論がどうだったかはわかりません。ただ、指導不足教員をやめさせるためには10年をもっと早くすべきだという意見のようでしたが、これは僕は違うと思うんです。
 1つは、指導不足教員というのは、既にそういう法律がありますから、それは適用できるわけです。これは、1年とも言わずに2年とも言わずに、それができるわけですから、もしもそういう事態が起こったときには、その法律で対応するということが筋じゃないかと。
 それから、今の教員免許制度の更新制を10年にしたのは、中教審でもいろいろ議論をして、どうしても、このほうが最も妥当性があるだろうという形で、あのときには、より多くの意見で決まっていたという背景がございます。そういうように、中教審で既に答申されている問題できちっと審議されている問題については尊重していただくということをぜひともお願いしたいと思います。以上です。

【鳥居会長】 ありがとうございました。それじゃ、角田委員、どうぞ。

【角田委員】 ありがとうございます。
 2つ手短に話をしたいと思います。既に出てきていることでございますけれども、まず教育基本法の11条に家庭教育の問題が加わって、これは、今までの地域社会というところが独立したというところに私は大きな意義を感じております。これが、いじめ問題の解決に向けてすぐに結びつくだろうとは思いませんけれども、先ほど来、出ているように、教育振興基本計画等とドッキングをしながら、家庭、地域社会、学校との連携ということでいじめ問題の解決が早急に行われればと思っています。
 同時に、今、教職員定数の改善の問題が、若干、出ておりましたけれども、小学校の教職員定数が、児童数が減少してきたために、児童数の減少に合わせて順減をするというのが国の施策で行われて、公務員が少なくなってきているというところがあるわけです。中学校にはついているスクールカウンセラーを、小学校にもぜひつけていただく。そうすることが、先ほどどなたか委員が申されたように、先生方の負担を軽減することになるし、担任以外の先生が入ることによって相談しやすい状況が出てくる、家庭との連携もつきやすいというふうなことになるだろうと思います。
 そのことは、私が2番目に話をしようと思いました教育再生会議のところにも大きくかかわってくるところでありまして、ぜひ教育再生会議では、そういうふうに各省庁をまたがるような横断的なものについての問題、あるいは財政的な問題、人的な措置、そういったことについて、特にお話をいただけるとありがたいなと思います。
 私は、今、教員免許更新制のワーキングチームに所属しているわけですけれども、そこで出てきていることと新聞報道に出てきている教員免許更新制が随分かけ離れてきている。問題教員を排除するために教員免許更新制をするということは、とても理にかなわないということが既に中教審の結論で出ているわけでございますけれども、それがまた、今そういうことで浮上されてきているということがあるわけです。
 ぜひ、この辺のところを十分に吟味していただいて、教育再生会議の本来のあるべき姿であるところの、もっと横断的な、省庁にまたがる問題を審議していただけるとありがたいなと思っています。以上です。

【鳥居会長】 ありがとうございました。じゃ、松下委員、どうぞ。

【松下委員】 先ほど江上委員がおっしゃった後半のところにかかわりがあるかと思います。最初に次官がごあいさつくださった中に、この教育基本法は、個々の具体的な、今起こっている課題に対応するものではないとおっしゃいましたが、私も、これは理念を掲げる法律であって、この法律ができたから、例えばいじめがなくなるとか、そういったものではないと思うのですが、今、一般的には、個々の課題にこれがどう対応するかということで議論が行われているように思います。例えば、愛国心という言葉に関して、国を愛するということが出てきますと、これは自由意思に制限を加えるものであるというような解釈がされたりということです。
 以前に、ゆとり教育ということが提唱されたとき、私は、一人一人の子どもの主体性を大事にして、自分でいろいろなことを考えて課題を発見して学習していくということを奨励しようとしている考え方であると思ったのですが、ゆとり教育を実施したから勉強しないで学力が落ちたというふうに短絡的に言われるとか、そういったことで非常に残念に思っています。このゆとり教育のことについては、以前に文科省の関係の方にこの話をいたしましたらば、「説明が足りなかったね」とおっしゃっていました。今回、基本になる法律が成立したことでございますので、報道関係の方には、ほんとうに、この法の言葉が何を意味しているかという真意を把握する努力をしていただいて発信をしていただきたいと思うことと、文部科学省をはじめ関係の方がたが、機会あるごとに、しっかり、この精神を説明して下さることをお願いしたいと思います。また一般的には、この教育基本法が、最近突然、改正ということで、課題になったという印象をもった方が多いと思うのですが、これからは具体的ないろいろな取り組みをしているときに、それが基本法の精神にのっとっているかどうかという検証をしばしば行って、教育基本法と具体的な取り組みとのかかわりを多くの方たちが理解できるようにすることが必要ではないかと思っております。

【鳥居会長】 ありがとうございました。それじゃ、衞藤委員、どうぞ。

【衞藤委員】 私は、第10条の家庭教育という項目が入ったということも、大変、評価したいと思います。特に、この中では、家庭教育を支援するという視点がはっきりと書かれたということで、これが基本法として書かれたということが、実際の施策あるいはほかの法律にどのように生かされていくかということに注目していきたいと思います。
 また、これは他の省庁、特に厚生労働省等の母子保健とか母子福祉の施策とも関連してまいりますし、また民間のさまざまな活動とも連携をとるということが、大変、大事なことでありますので、そういった視点で幅広くこれが実行されていくことを期待したいと思います。以上です。

【鳥居会長】 ありがとうございました。それじゃ、安彦委員、どうぞ。

【安彦委員】 私も、じゃあ最後に一言。
 2つあります。1つは、この基本法と、この扱いですけれども、いろいろ時間は確かにかけたというお話ですけれども、大方の認識ではあまり議論は深まらなかったと認識しております。私としては、特に最後の紙で議論されました国会での論議をかなりしっかりと踏まえていただいて、それをまた周知徹底していただきたい。そのためには、多少、時間がかかるのではないかと思っておりますが、そういう意味で、昨日の初中分科会、その他での議論でも、今後、法改正等で下位の法律にかかわってくるということであれば、そこの点についての方向というのはだんだんとはっきりしてくるかと思いますけれども、その部分での、先ほどからお話があるような、この中身について周知徹底するということを、かなりはっきり意図していただきたい。そして、誤解のないようにということを周知していただきたい。
 その点と、この再生会議ですけれども、鳥居先生が、先ほど再生会議のほうは報告に過ぎないとおっしゃいましたが、そうは言っても、私たち中教審は、ただの報告ではないという認識を持たねばならないと思います。その場合に、どの程度、あるいは、それにどうかかわったらいいのかについては、私ども自身、まだはっきりと決められませんし、これは、まだ事務方のほうも、その点についていろいろ参考となるようなことを意見として流していただきたいと思います。
 この点、私たちは、たとえ報告であっても内閣直属の会議ですから、先ほどのような、ある程度、分担があればいいのですけれども、分担というのも、私ども自身が既にやってきたことについて、さらに何かされているという状況になりますと、今後の審議の進め方についても影響してくる。この辺は、ぜひ両方にかかわっている委員の方については整理をつけて、私どもにもご報告をいただきたい。
 最後に高校のことですけれども、私は、一部改正のときにかかわりましたので改めて思い出すんですけれども、一部改正のときに、高校の委員の方からは、5日制を選べないかと。だめならば、5日制ないし6日制のどちらかを選べないかというご意見が出ましたけれども、そのときに、まだ15年度で始まったばかりで2カ月しかたっていない、そんな状況で、データもなしにそういうことを言われても社会的な責任を負えないから、ちょっと今回は我慢してほしいと申し上げました。
 今、未履修の開始年度を見ますと、15年度、つまり完全5日制が始まった時期に一番多くなっていまして、私たち、一部改正をやった翌年の16年度も、その辺の動きがあった、とまらないと。大体、そのときの議論が、時間数が足りないということが背景にあったんだと思いますけれども、主として、その高校の委員の方の理由といいますか、それが今おっしゃられたような背景で、進学校としての立場からしかご意見が出なかったものですから、小中学校の委員の方の賛成も得られない。産業界の委員の方からは、むしろ高校にも専門高校なんかがあるのにとたしなめられたようなところもあった。そういう意味では、改めて、今後のこととしては、特に高校というものについての、先ほどから出ているようなあり方ですね。単なる社会や保護者から期待されている役割ではなくて、本来、後期中等教育としての高校教育のあり方をきちっと固めていく必要があるんじゃないかと思っております。以上です。

【鳥居会長】 ありがとうございました。そのほか、ございませんか。
 最後に出てきた高校の問題は、今度の改正教育基本法では、高校というのは特に立てていないわけですが、どう読めばいいんですか。きょうは担当者がいないか。

【布村審議官】 大学についても高等教育という書き方ですし、幼児期の教育ということで、幼稚園ストレートではなくて、保育所も含めた幼児期の教育という規定ぶりになっていますので、高校も含めて学校教育に関する規定を照らし合わせて読んでいくということになろうかと思います。
 関連して、今後、学校教育法の小学校、中学校、高校の目的、目標規定の見直しも必要になってまいりますので、その議論の際に、未履修の課題なり、どういう要因で生じたのかといったところも、十分、含んでご議論いただきたいと考えているところでございます。
 それから、ちょっと1点だけ、今、安彦先生が――未履修の問題が、平成15年度から数は増えているのですが、学校週5日制は平成14年度から、平成14年4月からの導入でありますので、こちらは平成15年度の高校の指導要領の実施から大きく増えたというふうに受けとめております。

【安彦委員】 そういう意味です。私もそうです。

【鳥居会長】 布村審議官は、この教育基本法の原案をつくったときの担当課長ですから、大変ご苦労なさって、すべてご存じだと思います。
 それでは、ご意見も大体尽きたようでございますので、きょうはこのぐらいにしたいと思うのですが、皆さんに、私からのお願いがございます。先ほど来、繰り返していることですが、非公開で行っているはずの再生会議の内容については非常に詳しく報道が行われて、国民はそれなりの一定の理解をしておられます。一方、公開で行っている中央教育審議会についてはほとんど報道が行われることはない。報道が行われなくても、私たちとしては別に痛くもかゆくもありませんが、ただ困ったのは、それによって国民が何も理解しない、何が中央教育審議会で議論されているのか、教育のどこをどう変えようとしているのか、それが国民には全く伝わらないということが一番の問題だと思います。
 今回の教育基本法の改正につきましても、ごく一部のトピック、例えば国を愛する心についてはどんどん報道されますけれども、それ以外の新しくつけ加えられた項目がどれだけあったか。生涯学習について新しくつけ加えられたこと、あるいは障害者についての国の責任、地方公共団体の責任が明記されたんだということ、あるいは私立学校についての条項が明記されたんだと、今まではそれがなかったんだと。憲法89条で、公金は公の支配に属さない学校に出しちゃいけない、使っちゃいけないと決めていたのを、昭和50年の私学振興助成法で、国の資金が少しは私学に回るようになった。約280万人の大学生のうち210万人は私立の学校で学んでいる。それから、170万人の幼稚園生のうち110万人が私立の幼稚園で学んでいる。そのぐらいの割合の大きさを占めている私立について、初めて教育基本法の第8条で、国がその振興に尽くすべきであることが義務化されたということが国民には全く報道されていない。でも、国民の280万人の大学生のうちの210万人は私学で学んでいるんだということを、実は報道もされていないというようなことがたくさんあります。そのほかの幼児教育もそうですし、これから改めて教育振興基本計画をつくらなきゃならないということもありますので、そういうことを全く国民が知らないままに、まだきょうの時点でも事態は推移しているということを考えると、マスコミの方が後ろにおられるのに大変言いにくいですが、マスコミは当てにならない、もうだめだと。文部科学省がみずからどういう方法かで広報していかなければならない。
 ところが、きょう次官の名前で配られた、資料1の後ろにくっついているホチキスどめの一番厚い冊子がありますね。それの2ページから、「記」と書いて、この新しい教育基本法の一条一条について、その目的と趣旨と内容が一条ずつ書いてありますが、さっきから、ずっとこれを読んでみましても、趣旨も内容も、ただ条文を繰り返しているのとほとんど変わらなくて、これでは、だからどこが変わるんだということを国民に説得し切れないです。やはり、国民を説得することができ、国民に理解を求めることができるような何らかの仕組みを役所のほうでもつくっていただいて、ぜひお願いしたいと思います。
 我々は、あと1カ月で、この中央教育審議会の今期の任期を終わります。おそらく、今の様子で見ると、総会がもう一回、任期中に開かれる可能性はあまりないと思います。おそらく、きょうが事実上の最後になってしまう可能性がありますので、そのことを改めてお願いした次第です。
 また、続けて中教審の委員をお引き受けくださる方も中にはおられると思いますが、その方々には、教育基本法、そして教育振興基本計画の策定、それから、まだ懸案で残っているたくさんの事柄、例えば学習指導要領の改定の問題、教科書のつくり直しの問題、あるいは大学分科会――きょう、午前中、この部屋で大学分科会をやったのですが、その大学分科会の抱えているいろいろな問題をこれから真剣に議論していっていただかなければなりませんので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 長い間、いろいろとご協力を賜りまして、まことにありがとうございました。きょうは、この辺で終わりにしたいと思います。ありがとうございます。

─了─

(生涯学習政策局政策課)


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