1.「新専門学校制度の在り方(専門学校の将来像)」の検討に至る経緯等
- 現行の専門学校(以下「専門学校」という。)は、昭和50年の学校教育法の一部改正により創設された専修学校制度の1つの課程(専門課程:高校卒業者同程度以上が入学対象)である。
- 専修学校は、我が国の教育制度において多様な教育機会を提供してきた各種学校のうち、一定の規模・水準を有するものを別の教育機関として位置づけたもので、柔軟かつ弾力的な教育等を実施できるように制度設計されている。
- 専門学校は、職業教育を担う中核的な高等教育機関として、企業や業界から高い評価を受け、職業人養成の成果としての就職率(対卒業者数)も高い水準を維持している(平成18年3月期の専門学校卒業者の就職率は79.7パーセント)。
- また、職業教育の著しい成果、あるいは大学等の設置・定員増に関する抑制方針等により、専門学校の入学者数・学生数は大幅に増加し、現在、18歳人口の減少、大学等での量的規制の撤廃のなかにあっても、高校卒業後の進学先として大学に次ぐ位置にある(平成18年度の新規高卒者の進学率は18.4パーセント)。
- 他方、これまで、大学審議会や中央教育審議会大学分科会では、大学等と専門学校との連携を深める、あるいは学生の流動性を高める観点から、専門学校を対象とする様々な提言が出されている。
- その結果、一定の要件を備えた専門学校について、次の制度改革が行われた。
- 専門学校の学修に対する「大学等での単位認定」
- 専門学校修了者に対する「大学編入学」「大学院入学」資格の付与
- さらに、今般の学校教育法改正案に規定されている「大学の履修証明」に関しても、専門学校での準用も示されている。
- しかしながら、専門学校は、その教育制度の成り立ちや定義、また、他の学校種に比してより柔軟かつ多様な教育機関のため、高等教育機関としての位置づけが必ずしも明確ではない。
- 団塊世代の大量退職による労働力人口の減少や技能伝承の衰退、個人の価値観の多様化や社会構造の変化による不安定就労者等の増加、初等中等教育段階でのキャリア教育の推進など、高等教育を取り巻く状況は劇的に変容している。
- 職業教育を切り口として高等教育の在り方を考えるとき、従来型の人材育成はもとより、社会人の能力開発に向けた再教育、不安定就労者等の自立支援教育、高校等でのキャリア教育支援やその成果の上に立った教育内容の提供等についても、積極的に対応していかねばならない。
- このように複雑高度化・多様化する社会において、高等教育全体の在り方が問われるなか、教育基本法の『職業及び生活との関連を重視』する教育の目標を達成するためには、学習者の立場や社会的な要請等を踏まえて、新専門学校制度の在り方、いわゆる「専門学校の将来像」を明確にすることが重要である。
- 特に、この「専門学校の将来像」は、中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」で記された、次の点を踏まえて検討する必要がある。
- 職業教育をキーワードとした教育体系の中で、専門学校の中核的な役割や位置づけを明確にする必要があること。
- 実践的な職業教育・専門技術教育機関としての専門学校の性格を明確化し、その機能を充実することが期待されること。
- 以上、作業部会は、「専門学校の将来像」について、
- 職業教育における中核的な高等教育機関としての専門学校の位置づけ。
- 各高等教育機関の職業教育にかかる使命や役割の明確な区分、それぞれの使命や役割に基づく職業教育の推進。
を目的として、制度面及び教育面で論点となる事項について、重点的に検討を行った。
- なお、「専門学校の将来像」は専門学校関係者によって検討を進めてきたが、その考え方や内容が、高等教育全体との関係、あるいは高等教育の今後の在り方において齟齬が生じることがないよう、中央教育審議会大学分科会委員等の高等教育の専門家に「中間的整理」として提示し、ヒアリングを実施した。
- ヒアリングにおいて指摘を受けた事項については、その重要性に鑑み、再度作業部会において議論の上、引き続き検討が必要な点として、この第1次報告に盛り込むこととした。