(1) |
大学における養成内容の改善・充実 |
|
社会の進展の中で高度化・専門化する学芸員の業務を的確に遂行できるように,博物館の目的と機能,博物館倫理,関係法規など博物館に関する基礎的知識に加え,博物館経営や博物館における教育普及活動,博物館資料の収集・整理保管・展示,博物館情報とその活用等に関する理解と必要な知識・技術の習得を図る必要がある。このため博物館学に関する内容を充実する。
博物館実習は,体験を通して博物館業務を理解する有意義な学習であり,その一層効果的な実施のため,大学における事前・事後の指導を充実する必要がある。なお,実習内容の充実のため,学芸員を養成する大学側と実習を受け入れる博物館側又はこれらの関係団体等の協力により,博物館実習に関する適切なガイドラインを設定し,活用することを期待したい。現状では,博物館の組織運営体制の問題から博物館側の実習受入れが必ずしも円滑には行われていないとの指摘があり,関係者による協議組織の設置などにより,実習受入れのための大学と博物館の緊密な協力を図る必要がある。大学においては,その研究実績等に応じ大学博物館(ユニバーシティ・ミュージアム)を整備することにより,学芸員養成教育の場を自ら責任を持って確保する努力も求められる。
また,学芸員には,生涯学習社会における社会教育指導者として,人々の多様な学習ニーズを把握し学習活動を効果的に援助する能力が求められる。このため,生涯学習の本質や学習情報提供及び学習相談についての理解を図ることができるように,大学における養成内容を充実する必要がある。
以上から,大学における学芸員の養成内容を,次のように改善・充実することが適当である。 |
 |
現行の「社会教育概論」(1単位)を「生涯学習概論」(1単位)に改め,生涯学習及び社会教育の本質について理解を深める内容とする。 |
 |
現行の「博物館学」(4単位)を,博物館機能の高度化や情報化の進展等に対応する観点から拡充し,「博物館概論」(2単位),「博物館経営論」(1単位),「博物館資料論」(2単位)及び「博物館情報論」(1単位)の4科目(合計6単位)に編成する。なお,この4科目(合計6単位)は,「博物館学」(6単位)として統合して実施することができるものとする。また,「博物館経営論」,「博物館資料論」及び「博物館情報論」の3科目(合計4単位)は,「博物館学各論」(4単位)として統合して実施することができるものとする。 |
 |
「博物館実習」は現行通り3単位とするが,実習の効果的実施を図るため,その中に大学における事前・事後の指導の1単位を含むものとする。 |
 |
現行の「視聴覚教育」(1単位)を「視聴覚教育メディア論」(1単位)に,現行の「教育原理」(1単位)を「教育学概」(1単位)に,それぞれ名称変更するとともに,時代の変化に対応した幅広い内容とする。 |
 |
総単位数は,現行の10単位以上から12単位以上に2単位増やす。 |
|
各科目の単位数・内容等を一覧の形でまとめたのが,別紙2である。
各大学においては,これに基づき,学芸員養成のための適切なカリキュラムを編成するとともに,学芸員の専門性を高めるための所要の科目の開設とその内容の充実により,専門分野についての必要な知識・技術を備えた学芸員を養成することを期待したい。
なお,学芸員の試験認定における科目構成についても,大学における養成内容と同様の見直しを図る。
|
(2) |
養成を行っている大学の連携・協力の推進 |
|
現在,学芸員の養成を行っている大学は230ほどあるが,今後,これらの大学の連携・協力により,学芸員養成に関する情報交換・交流が活発化し,養成内容の一層の充実が図られることが期待される。
|
(3) |
試験認定科目免除措置の対象となる学習成果の認定範囲の拡大 |
|
学芸員の試験科目の免除については,現在,大学又は文部大臣の指定する講習において,試験科目に相当する特定の科目を修得した場合や講習を修了した場合に認められている。生涯学習社会にふさわしい開かれた資格制度とする観点から,今後は,専門的資質の確保に留意しつつ,これら以外の学習成果についても,学芸員資格取得のための専門的知識・技術の習得として評価し得るものは,この試験科目免除措置を積極的に活用できるようにすることが適当である。
新に試験科目に相当する科目として認定すべき学習成果として,次のようなものが考えられる。 |
|
|
ア |
国立教育会館社会教育研修所における研修のうち相当と考えられる学習 |
イ |
国立科学博物館・文化庁施設等機関における研修のうち相当と考えられる学習 |
ウ |
地方公共団体が実施する研修のうち相当と考えられる学習 |
エ |
専門学校での相当科目の修得 |
オ |
大学公開講座での相当と考えられる学習 |
|
|
なお,試験科目免除に当たって,その学習の内容・程度等に基づいた適切な取扱いが図られるように,試験実施機関である国において一定の基準を示す必要がある。
|
(4) |
資格取得及び試験認定受験資格の要件として実務経験の対象範囲の拡大 |
|
学芸員の資格取得及び試験認定受験資格の要件として,一定の実務経験が必要とされる場合があるが,現在は,学芸員補の職や学校教育法第1条に規定する学校において博物館資料に相当する資料の収集,保管,展示及び調査研究に関する職務に従事する職員の職などに限定されている。
生涯学習時代における広い視野に立った博物館活動の展開が求められていることに対応し,今後は,現在認められている実務経験以外にも,学芸員の職務遂行の上で意義があると考えられる実務経験を積極的に評価していくことが適当である。
新に評価すべき実務経験として,次のようなものが考えられる。なお,その際必要とされる経験年数については,学芸員の養成科目を修得した短期大学卒業者が学芸員資格を取得するまでに3年以上の実務経験が必要とされていることを考慮し,原則として,3年以上とすることが適当である。 |
|
ア |
社会教育主事,司書その他の社会教育施設職員 |
イ |
教育委員会等において,生涯学習,社会教育,文化振興,文化財保護に関する職務に従事する職 |
ウ |
博物館等において専門的事項を相当する非常勤職員又は,ボランティア(展示開設員など)なお,上記のウの実務経験の評価に関しては,適切な取扱いが図られるように,国において一定の基準を示す必要がある。 |
|