(2) |
公的資金の配分について
 |
現行制度導入の背景・経緯
・ |
1990年代からの予算及び人事に関する学校裁量及び親の学校選択の拡大。 |
・ |
近年の学校予算の公正性、安定性及び透明性向上の要請。 |
・ |
キリスト教系学校(公営私立)への国庫補助を可能にする「教育の自由の保障」(1917年憲法改正)による、公立と公営私立への補助金の平等化。 |
・ |
1990年代の地方分権化による地方の財政権限拡大。 |
・ |
穏健党政権による公共サービスの選択自由化の理念に基づく学校選択の拡大、公営私立への公的補助金導入。(ただし、選択拡大策の採用は地方の判断) |
|
|
 |
各国における教育予算の配分状況
) |
イギリス |
|
○ |
教育技能省が、地方教育当局を通じて「公立」及び「公営私立」へ間接的な補助金を支出(地方交付金)。2006年から学校教育費は交付金から特定補助金に。 |
○ |
公的補助の算定は、児童生徒数と年齢を基本とし、これに児童生徒の社会経済的背景・追加的教育支援ニーズ、過疎地調整(初等教育のみ)等の補正要素が加味される。
※ |
|
ただし、児童生徒基本単価が一律に決まっているわけではない。例えば、地域特性等の補助金が決定された後に算出される点が問題とされている。 |
※ |
CIPFA, An Introductory Guide to Education Finance in England 2005. |
|
○ |
2005年度の地方教育当局(LEA)毎の児童生徒単価は2,936ポンドから5,181ポンドまで様々。 |
○ |
基本となる金額に、LEA毎に異なる複雑な係数を次々と掛け合わせ、最終的には前年度ベースに一定率を上乗せから「子ども一人当たり単価」は、実際のLEAや学校における積算と関係が無く、その合理性・客観性が常に議論の対象になっている。 |
○ |
2006年度の「全額国庫負担」の導入に際しては、全国的な児童生徒単価を使用せず、前年度実績をベースに配分。 |
2005年度の教育費の積算(LEAごとに以下の流れで算出)
ア.就学前 |
|
 「児童単価」 2,892ポンド 児童数  「追加教育経費」 単価1,450ポンド 係数 児童数  「教員確保困難係数」 1〜1.5 総額調整
|
イ.小学校 |
|
 「児童単価」 2,266ポンド 児童数  「追加教育経費」 単価1,450ポンド 係数 児童数  「密度補正経費」 187ポンド 児童数 係数  「教員確保困難係数」 1〜1.5 総額調整
|
ウ.中学校 |
|
 「生徒単価」 2,968ポンド 生徒数  「追加教育経費」 単価1,450ポンド 係数 児童数  「教員確保困難係数」 1〜1.5 総額調整
|
エ.高コスト児童生徒 |
|
「単価」 8,168ポンド 対象児童生徒数 「教員確保困難係数」 1〜1.5 総額調整 |
※ |
「追加教育経費」の係数は、「生活保護・失業手当を受ける家族の児童生徒」「扶養家族税額控除を受ける家族の児童生徒」「英語を母国語としない児童」「特定人種の生徒」等で算出 |
※ |
「密度補正」の係数は、小学校のみ1991年の国政調査に基づいた指数を使用 |
4つの段階を合計して総額を算出し、それを児童生徒数で除した額を算出
(1) |
一人あたり対前年度比が5.5〜8.75パーセントの範囲に収まる場合、その合計額を使用 |
(2) |
一人あたり対前年度比が5.5〜8.75パーセントの範囲に収まるように総額を調整
(最終的なLEAごとの児童生徒単価は、全国平均3,327に対して、2,936ポンド〜5,181ポンドまで様々) |
|
2006年度の「義務教育特定負担金」の地方への配分【概要】 |
教育技能省が、以下の手順で、149の地方教育当局(LEA)ごとに配分額を算出。
 |
前年度の各LEAの子ども一人単価を算出 【全国平均3,411ポンド】
「2005年度の予算額」 総額251億ポンド 「2005年度の子ども数」 総数736万人 (A)「2005年度の子ども一人単価」
|
 |
子ども当たり上乗せにより基本配分額を算出 【総額262億ポンド】
(A) 「最小上乗せ ロンドン5.1パーセント、その他5.0パーセント 」 「2006年度の子ども数」 総数732万人 (B)「2006年度の基本配分額」
|
 |
政策増を加えた配分額を算出 【総額266億ポンド】
(B) 「政策増 LEAにより異なる 」 総額4億ポンド (C)「2006年度の配分額 政策増後 」
|
 |
前年度予算が国の積算を下回るLEAに上乗せをした配分額を算出 【総額267億ポンド】
) |
2005年度の予算額が国の積算額を下回ったLEA 【44のLEA】
(C) 1/4 「2005年度の国の積算額」−「2005年度の予算額」 (D)「2006年度の配分額 下限調整前 」 |
) |
それ以外のLEA 【105のLEA】
(C) (D)「2006年度の配分額 下限調整前 」 |
|
 |
最終配分額を決定 【総額267億ポンド】
) |
「2006年度の配分額」(D)が「2005年度の予算額」より4パーセント以上多いLEA 【全149のLEA】
(D)「2006年度の配分額 下限調整前 」 (F)「2006年度の最終配分額」 |
) |
それ以外のLEA 【該当なし】
「2005年度の予算額」 「4パーセントの上乗せ」 (F)「2006年度の最終配分額」 |
|
|
|
○ |
国の算定を参考に、学校の特性により所管の学校の予算を決定。 |
○ |
教育技能大臣が学校予算の最低水準を定めていたが(「前年度比で〜パーセント増」といった形)必ずしもそのとおり配分されなかったため、2006年から学校教育費は交付金から特定補助金に移行。(図表2参照)。 |
○ |
多くの特定補助金は学校を単位に交付し、教員確保のための補助金は、教員を単位に交付する等、イギリスにおいても、「学校単位」「教員単位」の積算は数多く存在。 |
|
) |
オランダ |
|
○ |
中等学校の経常費の算定方法は、「人件費」と「物件費」(清掃費、光熱費、施設設備費等。初等教育は教材費含む。)に分けて1校あたりの費用を算出(図表1参照)。公立・公営私立校の校舎及び敷地等資本的経費の用意は地方(市町村)の負担。 |
○ |
人件費は校長等管理職、一般教員、補助教員、特別支援教育担当など職種毎に在学者数に応じた配置数が定められ、これに一人当たり人件費(平均給与額相当)を積算し、職種別の人件費を合算して算出(図表2参照)。 |
○ |
家庭環境(親の教育レベル及び文化的バックグラウンド)に応じて、児童生徒1名に対する係数が人件費算定の際に加算され、移民等の家庭出身者(オランダ語を母語としない)である児童生徒については多くの教育費が支給される。 |
○ |
公立校の場合は、地方政府(市町村)、公営私立校の場合は学校の理事会に対して配分。 |
○ |
中等学校では、各学校に対して補助金を一括配分し、その配分額の中で各学校独自の裁量により人件費やコンピューターの購入などの使途を決定する一括配分方式を1997年から導入。初等学校は2006年8月から完全導入予定(既に一部の初等学校には導入済み)。 |
|
○ |
各学校への市当局からの公的資金の配分額は、毎年10月1日に各学校の在学者が確定し、ここから算定された教職員数に基づき算出。 |
○ |
転校や年度途中からの入学で在学者数が大きく増えることもあり、この場合年度途中(1回のみ)で教員を増やすための公的資金の配分も認められている。 |
 |
図表1 オランダにおける教育予算の配分方法(中等教育の場合) |
 |
図表2 オランダの中等学校(大学予科学校)の人件費算定方法 |
|
) |
スウェーデン |
|
|
○ |
各コミューンの全収入に占める国庫負担は15パーセント程度。国庫負担のほとんど(3分の2。全収入の10パーセント)は交付金で、残り(全体の4〜5パーセント)は使途指定の補助金。使途指定の補助金は教員の雇用や研修に充てられる。 |
|
○ |
初等中等教育は地方(コミューン)の所管であり、コミューンの税収により維持。コミューンから学校への公財政の配分の方式は、各コミューンによって多様。 |
○ |
児童生徒一人当たりの経費を算出し、その経費に各学校の在学者を積算して配分する地方もある。ハンディがある子どもにはアシスタントがつく場合もあり、その経費も負担される。 |
○ |
人口の少ない地域は税収が少ないため、国が地方間の財政の均衡を図るために交付する平衡交付金(ロビンフッド税)を受け、学校を維持している。 |
○ |
ナッカ市は、1992年から子ども一人当たりにかかる総教育費を決め、それを人数に応じて機械的に配分し、その使途を完全に学校に任せるというシステムを採っている。同じようなシステムは、290あるコミューンのうち、ナッカ市のほか10程度しか採っていない。また、そのほとんどが、保守系(穏健党)が与党であったり、以前政権党だったコミューンである。 |
○ |
辺境地の小規模な学校には子どもの数が少なくてもパソコンを整備したり、先生も配置するので児童生徒数一人当たりの経費は高額。校舎及びその他の施設・設備の提供は私立でもコミューンの責任で実施(公立、私立とも借料を支払う)。 |
|
|
|