【全体】
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アメリカの経済的負担軽減等を目的した補助などの特定層を対象としたものと、イギリス等における全児童生徒数を考慮した補助金配分という、2つの異なる側面からバウチャーの定義が論じられており、バウチャーの概念自体が曖昧で、その定義ははっきりしていない。 |
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専門家の見解によると、チリ、ニュージーランドの例を参考にすると、全国的なバウチャーの導入によって、ソーティング(階層化)が起こる可能性があるとされている。 |
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諸外国の例からすると、全国的なバウチャーの導入によって、教育成果が向上したという十分な検証がされているとは言えない。 |
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【アメリカ】
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ごく一部の地域で教育バウチャーが導入されているが、導入した地域においては、低所得者と高所得者の間に極めて大きな格差が存在し、所得格差が教育格差につながっているという明確な問題意識が背景となり、格差是正目的のバウチャーを導入するに至った。 |
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アメリカで実施されているバウチャーは、低所得者等を救済する意味合いが強く、フリードマンの提唱していたような、全生徒を対象にしたバウチャーを通じて教育に競争原理を持ち込むなどといったものとは性格が異なり、格差是正目的のものである。 |
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宗教系の学校に補助をしてはならないという憲法上の制約を回避するための一つの手段として、バウチャーを導入したという経緯もある。 |
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アメリカにおいても結局、バウチャーの全国的な導入には至っていない。これは、政教分離に違反するのではないかという議論もあり、中には地方裁において違憲判決もあった。 |
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バウチャーの考え方が提唱されたとされるアメリカですら、バウチャーの効果については、賛否両論様々である。 |
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【イギリス】
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歴史的に教会のイニシアチブに設置が由来され、公費によって維持されている「公営私立学校」も、現状に着目すれば公立学校と考えた方がよい。 |
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イギリス、は教会との関係から、公営私立の学校に公的資金を配分してきたという歴史的背景があるが、私立との競争などを目的として導入したものではなく、これをもってバウチャーということはできないのではないか。 |
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パブリックスクールに代表される私立学校には公費補助が無い代わりに、国の定めた教育課程に従う必要も無いし、入学者も選抜できることになっている。 |
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児童生徒単価は積算の出発点であり、児童生徒数が減少したとしても、学校の運営に最低限必要な人件費や運営費を確保する必要があるため、さまざまな補正がなされた後、前年度の予算をベースに配分がされている。 |
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児童生徒数が決まった上で、標準法により必要な学級数・職員数を算出し、公費を配分している日本と同様、イギリスにおいても「学校単位」「教員単位」「LEA単位」の積算を行い、学校に公費を配分している。 |
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教育水準向上の成果は、教育費の総額を増やした上で、全国テストや学校評価等の施策 を導入した成果であって、資金配分方法との因果関係については、さらなる検証を要する。 |
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【オランダ】
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宗教的自由に基づく学校選択を保障するという目的から、公営私立学校にも公的補助をしてきたという背景がある。 |
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【スウェーデン】
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学校選択の方法は各コミューンにより様々。ナッカ市のような児童生徒に応じて公費を配分し、その使途を完全に学校にゆだねているのは、290あるコミューンのうち10コミューンほどである(その他のコミューンの実態の詳細は不明。)。 |
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【チリ】
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専門家の指摘によると、チリにおいては、バウチャー導入の結果、公立学校から私立学校に生徒が移行し、私立校に移行した子どもの学業成績の向上が一部みられたものの、ソーティング(階層化)による格差の拡大がみられた(注)との報告がなされている。
(注) |
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Hsieh, Chang-Tai and Miguel Urquiola, When Schools Compete, How Do They Compete? - An Assessment of Chile’s School Voucher Program, 2003. |
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元々、フリードマンが提唱していたバウチャーも理念的で曖昧なところが多かった。 |
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バウチャーは教育政策全体のうちのごく一部の非常に狭い概念である。 |
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特定の目的のために実施されるバウチャーと、そのような方式を一般にまで広げた(全国的に広げた)バウチャーを分けて考えた方がよい。 |
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特定層に対するバウチャーと児童生徒の全体を対象とするバウチャーとを2つに分けて定義づけるのは、一つのものを部分的に見るか全体で見るかという視点に過ぎないため、難しいのではないか。 |
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仮にバウチャーを定義づけるとするのであれば、競争原理の導入と選択の自由という2つの観点を考慮することが重要。 |
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そもそもは一律に配分するのがバウチャーである。所得格差を考慮して一人当たりの金額が変化するようなものは、バウチャーと呼べるかどうかわからない。 |
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バウチャーはどこで、誰に対して実施するのかというコンテクストによって、かなり効果が変わってくる。 |
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バウチャーの額を上げ過ぎると、私立学校が授業料を引き上げるといったモラルハザードが生じるかもしれない。 |
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諸外国の事例を参考に、現時点で、仮に当研究会として諸外国の教育バウチャーを大別すると、
A: |
教育利用券の発券によるバウチャー、 |
B: |
(発券を伴わないが)全児童生徒数を考慮して公費配分を行うもの、 |
C: |
経済的負担軽減等のための特定の目的のためのバウチャー |
など、3つの類型に分けて考えられる。
多様な教育の機会均等や学習者の選択肢拡大などの観点は重要であるが、同時に、教育の機会均等・教育水準の確保を基本として踏まえつつ、教育全体の質の向上のための様々な教育改革の施策を推進すること等が重要。
このような観点から、A及びBを導入した場合、導入に伴う負担増やその効果・意義が不明確であるが、Cの一部特定目的のためのバウチャーは検討に値するのではないか。 |
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幼稚園の現行制度の中であればバウチャーを検討することは考えられるのではないか。 |
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義務教育においては、教育の機会均等・公平性・水準の確保を基本として教育政策を進めることが重要であり、バウチャーを導入することが適切であるとは言えないのではないか。職業訓練等、義務教育以外の対象者が不特定多数である分野であれば、バウチャーのメリットがあるかもしれない(再掲)。 |
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専門分野に特化した教育(音楽教育等)や職業訓練など、特定のものであれば、バウチャーの導入を検討できるかもしれない。 |
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競争ではなく、現在行われている経済的負担軽減の措置のように手当として教育バウチャーを検討することは意味があるのではないか。 |
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高等教育段階においては、奨学制度などを含む多様なファンディングシステムについて検討の余地があるだろう。 |
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バウチャーを導入する際のコストを考えた場合、バウチャーの額や、整備のための諸経費のほか、スクールバスの運賃等の通学費に関しても考慮する必要があるため、非常に複雑である。 |
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政策的な誘導の手段としてバウチャーを実施するのであれば、コストの半額以上の額のバウチャーを支給するなどしなければ効果は薄く、少額のバウチャーではあまり効果が無いかもしれない。 |
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全国的にバウチャーを導入するとなると、国がいくら払うのか、地方がいくら払うのか、その割合はどのくらいか、地方差はどれくらい考慮するのか、など、相当考慮しなければならない事項があり、現実的には、公平なバウチャー価格を設定するのは不可能。 |