児童生徒の教育相談の充実について―生き生きとした子どもを育てる相談体制づくり―(報告)

平成19年7月
教育相談等に関する調査研究協力者会議

はじめに

  平成18年秋に全国で相次いで起こったいじめ自殺を契機として大きな社会問題となったいじめの問題、増加の傾向は見られないものの依然として多数に上る不登校児童生徒、多発する事件・事故や自然災害など緊急時の児童生徒に対する心のケア、家庭の養育力や教育力の低下、その極端なケースとしての児童虐待の深刻化、発達障害など特別な支援を必要とする児童生徒への対応、少年犯罪の低年齢化や携帯電話を介したネット犯罪の急増など、社会全体の環境の変化が児童生徒に大きな影響を与え、これらの問題はそのまま学校教育上の課題ともなっている。
  人間は社会の中で他人と関わりながら生きていかねばならず、生きていく上で悩みはつきものである。他方、人間は悩みを乗り越えていくことによって成長していくことも事実である。児童生徒も、学業の成績や将来の進路、部活動などの学校問題をはじめとして、友人関係、異性関係、家庭問題など、一人一人異なる悩みやストレスを抱えている。もとより、そうした悩みを克服していくことが心身の成長過程においては必要であるが、児童生徒の抱える悩みは、大人の悩みと異なり、いじめの問題に見られるように自ら解決することが困難であったり、虐待など自らの責任に起因するものではない悩みも多く、解決の時機を失すれば、その後の人生にも影響するような取り返しのつかない事態になる可能性もある。また、学校には、児童生徒の学習が適切に行われるための様々な観点からの環境整備が求められる。このため、児童生徒の悩みに対して、適切かつ可能な限り迅速に対応し、児童生徒が安心して学習に取り組むことができるよう教育相談の充実が必要である。
  学校における相談体制において、今やスクールカウンセラーは不可欠の存在になりつつある。昨秋と同様、いじめが社会的な問題となった平成7年度に、教員免許を持たない、言わば学校外の臨床心理の専門家として初めて全国少数の学校に導入されたスクールカウンセラーは、児童生徒の多様な悩みや相談に対応するため、その後順次拡大され、平成18年度には全国で約1万校に派遣(中学校では4校に3校の割合で派遣)されるようになった。この間、スクールカウンセラーに対する役割や期待は増大し、教育委員会及び学校にとって、その拡充を求める意見は極めて多い。
  本協力者会議は、児童生徒に関わる問題が多様化・深刻化している現状に鑑み、多様な分野の専門家を委員として、(1)教育相談(体制)の充実、(2)スクールカウンセラーについて主な審議事項とし、精力的かつ集中的に検討を行ってきた。また、毎回、教育相談に関わる多様な観点からのヒアリングも実施した。
  本協力者会議の報告が、今後の学校や教育関係者等における取組の指針となるとともに、国、各教育委員会、各学校、各教員及び各関係機関等においては、本報告を活用し、児童生徒の教育相談の一層の充実を図ることを期待するものである。

目次

1 学校における教育相談の充実について
(1)児童生徒をめぐる状況
(2)児童生徒の視点からの教育相談の在り方について
(3)教育相談に関する校内体制の充実について
(4)早期からの教育相談について
(5)教育相談に関する教員の意識及び能力の向上について
2 スクールカウンセラーについて
(1)経緯と現状
(2)スクールカウンセラーに関するアンケート調査結果について
(3)スクールカウンセラーの役割及び意義・成果について
(4)スクールカウンセラーに関する課題について
(5)今後の検討の方向
3 学校を支援する体制の充実について
(1)関係機関や専門家とのネットワークの構築について
(2)サポートチームの形成について

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課