第5章 初等中等教育における学習指導でのICT活用

第1節 学習指導におけるICT活用のねらい

1.学習指導におけるICT活用の考え方

(1)本章で取り扱うICT活用の範囲

 学習指導要領では、随所に学習指導におけるICT活用が例示されている。これらの例示はICT活用の目的によって、情報活用能力を育成するためと、教科の学習目標を達成するための2つに大きく分けられる。さらに、それらは教師によるICT活用と、児童生徒によるICT活用に分けられる。
 このうち情報活用能力を育成するためにICTを活用するケースは、第3章に記述されている。また、児童生徒によるICT活用の多くは情報活用能力の育成を目的としたものであるため、同様に第3章に記述されている。
 本章では、教科の学習目標を達成するためのICT活用について述べる。その多くは教師によるICT活用であるが、加えて教科の学習目標を達成するために児童生徒がICTを活用するケースについても述べる。

(2)学習指導要領等からみた学習指導でのICT活用の重要性

 学習指導要領の総則において、教師がコンピュータや情報通信ネットワークなどの「これらの情報手段に加え視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」と記述されている。学習指導要領解説総則編では、「これらの教材・教具を有効、適切に活用するためには、教師はそれぞれの情報手段の操作に習熟するだけでなく、それぞれの情報手段の特性を理解し、指導の効果を高める方法について絶えず研究することが求められる」と記述されている。
 これらの記述が、学習指導におけるICT活用の必要性の根拠である。これらのことから、授業の中でICTを効果的に活用し、指導方法の改善を図りながら、児童生徒の学力向上につなげていくことが重要であると考えられる。また、ICTを「有効、適切に」活用することが示されていることから、ICTの教育効果や活用する上での配慮点を十分考慮することが重要であるといえる。
 学習指導要領解説総則編第2章「教育課程の基準」によれば、学習指導要領は「目標、指導内容」等についての基準を示すものとされている。一方、目標や指導内容をどのように教えるかという「指導方法」は、学校および教師が工夫改善していくものであり、学習指導要領の総則において配慮する事項として示されている。その中でも、学習指導でのICT活用については、個別指導やグループ別指導、教師の協力的指導等の指導方法や指導体制の工夫改善とともに、教育効果が期待できる指導方法として取り上げられている。
 また、学習指導でのICT活用に関する記述は、情報社会の進展などの社会の変化を踏まえた特色を示すものであると考えられ、各学校が常に工夫改善を図りながら、社会の変化に対応した教育活動を推進することの必要性を示している。

(3)ICTを活用した学習指導とは

 ICTを活用した学習指導とは、主に教科の学習目標を達成するための教師によるICT活用であり、具体的な活用場面として、授業中におけるICT活用と、学習指導の準備と評価のためのICT活用の2つに分けられる。
 授業中におけるICT活用とは、教師が授業のねらいを示したり、学習課題への興味関心を高めたり、学習内容をわかりやすく説明したりするために、教師の指導方法の一つとしてICTを活用することである。その際のICT活用の目的は、情報の提示のためが最も多い。学習指導要領において、各教科等の中で示されたICT活用の例示では、その多くが映像や音声といった情報の提示である。さらに、教員のICT活用チェックリスト大項目Bの「授業中にICTを活用して指導する能力」に示される4つ全ての項目ともに情報の提示に関することである。教師がICTを活用して情報を提示することは、教師による発問、指示や説明とも関係が深く、全ての教科指導の数多くの指導場面で実施可能であると考えられる。これらの具体例については、第2節の1で述べる。
 学習指導の準備と評価のためのICT活用とは、よりよい授業を実現するために教師がICTを活用して授業準備をしたり、教師が学習評価を充実させるためにICTを活用したりすることである。これらの具体例については、第2節の2で述べる。

(4)ICT活用の効果について

 学習指導でのICT活用による効果については、これまでの調査研究などから明らかになっている。例えば、平成18、19年度に実施された文部科学省委託事業による調査研究において、全国で実施された752件の検証授業を分析評価した結果では、ICT活用して授業を行った教員の98。0%が、「関心・意欲・態度」の観点において効果を認めていた。それ以外の観点(知識・理解、思考・判断、表現・技能・処理)や、ICT活用によって児童生徒が集中して取り組めるようになることや児童生徒が楽しく学習出来るようになること等についても、多くの教師が効果を認めていた。また、児童生徒に対する調査によれば、学習に対する積極性や意欲、学習の達成感など全ての項目について、ICTを活用した授業の場合の方が評価が高かった。さらに、児童生徒に対する客観テストの結果によれば、各教科の得点や「知識・理解」や「技能・表現」の観点で高い効果が得られた。以上のように、ICTを活用して学習指導することは、教師のみならず、児童生徒に対しても学力向上に高い効果があることが明らかとなっている。

客観テストによって明らかとなったICT活用の効果の図

図: 客観テストによって明らかとなったICT活用の効果

平成18年度に独立行政法人メディア教育開発センターが文部科学省の委託を受けて実施した「教育の情報化の推進に資する研究(ICTを活用した指導の効果の調査)」結果から。

(5)学習指導の効果を高めるICT活用のために

 学習指導の効果を高めるICT活用のためには、ICT活用と教師の授業技術との関連を意識することが重要となる。単に授業でICTを活用すれば、教育効果が期待できるものではなく、ICT活用の場面やタイミング、活用する上での創意工夫が教師の授業技術に大きく関わっていると考えられる。つまり、「ICTそのものが児童生徒の学力を向上させる」のではなく、「教師の授業技術としてICT活用を明確に位置づけることが児童生徒の学力向上につながる」といえる。
 例えば、コンピュータや実物投影機等の映像をプロジェクタ等で大きく映すだけで、学力が向上すると単純には考えにくい。興味関心を高めるためであるならば、単に映像を見せるだけではなく、指導のねらいや児童生徒の実態に応じた題材や素材を教師が十分吟味して選んでいくことが重要である。また、その映像をタイミングよく教師が大きく映して提示したり、提示した映像などを指し示しながら発問、指示や説明をしたりすることで、ICT活用による効果が期待できる。より高い教育効果に結びつけるためには、ICT活用に加えて、指導のねらいの把握、日頃からの児童生徒の実態把握、授業におけるタイミング、発問、指示や説明といった従来からの授業技術との融合も重要となる。この観点から考えれば、ICTによる情報の提示は、板書のそのまま代わりになるものではない。提示した情報について説明等をした上で、従来通り重要な点は板書をし、児童生徒にノートをとらせる指導も重要となる。
 一方、児童生徒の立場で考えれば、ICTによって提示された情報を見て、教師の説明や指示等を聞き、対応する学習活動を行って学習が進むことになる。その際に提示される情報は、CD-ROMで入手された教科書準拠のコンテンツなのか、実物投影機で映した教科書であるのか、インターネットによって入手されたデジタルコンテンツなのか、或いは、プロジェクタなのかプラズマディスプレイなのかといった提示手段や機器の種類の違いよりも、教師の説明等がよりわかるための情報の提示となっているかが重要となる。また、より高次な情報の提示手段として、ICTの特徴の一つであるインタラクティブ性の活用がある。ICT機器を操作する教師とのインタラクティブ性が高ければより授業のしやすさは向上すると考えられるが、学力向上といった学習指導上の効果はむしろ教師と児童生徒とのインタラクティブ性を保障することの方が重要である。つまり、高価なICT機器であるかどうかや、技術的な難易度が高いといったこと、或いはICTの特徴を活かした機能といったことだけでは、学習効果を高めるために直接的な役割を果たさない可能性もある。このような点に配慮してICT活用を行う必要がある。指導の効果を高めるためのICT活用の具体的な研究や研修方法については、第2節の4で述べる。

(6)ICT機器について

 教育環境や教育機器は多様化しており、ICT機器の種類も多く、教師がICT機器を適切に選定し、授業の中でICT機器を効果的に活用することが望まれる。ICT機器を選定するにあたって、児童生徒にとって教師の発問、指示や説明がよりわかりやすくなるかが重要な観点となるだろう。例えば、情報提示のためのICT機器は、出力系(プロジェクタ、プラズマディスプレイ、電子黒板等)、入力系(教科書準拠デジタルコンテンツ、実物投影機、インターネット、地上デジタルテレビ放送、CD-ROM及びDVD等による教育コンテンツ等)の2種類に主に分けられる。その際、コンピュータ、インターネットや校内LANは、情報提示を支えるための基本インフラといえる。その他、児童生徒の知識の定着を図るために、各自がドリルソフトで学習する場合などには、児童生徒用のコンピュータを活用させることも想定できる。
 さらに、それぞれの情報手段の特性を理解し、適切に活用していく必要がある。どのようなICT機器を用いた場合においても、最終的には教師と児童生徒との関係を重視し、そのためには従来から培われてきた教師の授業技術に、ICT活用が適切に組み合わされることで効果が得られると配慮する必要がある。

(7)ICT環境の整備について

 文部科学省委託研究の結果によれば、ICT活用に関する効果は、ほぼ毎日或いは週に2、3回といったICT活用の頻度の高い教師ほど、ICTが授業の質を高め授業の改善に役立つと強く感じていることが明らかとなっている。つまり、日常的に高頻度で活用できるICT環境を整備することで、より授業の質が高まると考えられる。また、このためのICT環境の構築や、授業の質を高めるためのICT活用事例などは、高頻度で活用する教師のノウハウを活かしていくことが重要であろう。
 ICT活用の日常化のための具体的な方法については、第2節の3で述べる。

第2節 学習指導におけるICT活用の具体的な方法や場面

1.授業中におけるICT活用

(1)学習に対する児童生徒の興味・関心を高めるためのICT活用

 それぞれの教科の学習内容や学習対象に対して関心を持ち、進んでそれらを調べようとしたりするといった興味や関心を高めるためにICTが活用できる。児童生徒が各自で教科書にあるさし絵等を見るのではなく、大きく映してクラス全員で共有することで、これから読む物語のイメージをよりふくらませることができる。また、火山の噴火等の映像を大きく映して見せることは、よりリアリティをもたせることとなり、児童生徒に驚きや感動を与えることができる。

【具体的な活用事例】
  • 小中全学年 国語

  • プロジェクタや実物投影機等を活用して、教科書や図書資料などの挿絵や写真を拡大して提示し、物語や説明文の読み取りについて意欲付けを行う。
  • 小5年 社会、中学校社会

  • プロジェクタやコンピュータ等を活用して、衛星画像や航空写真を拡大提示して、日本や世界の地理的事象に対する関心を高めるようにする。
  • 小6年 理科 「月と太陽」

  • 月の表面の様子について、児童生徒に驚きや感動を与えるように、プロジェクタや大型テレビを活用して、大画面で鮮明な映像を提示する。
  • 中学校 理科 「大地の変化」

  • 動画コンテンツや静止画像を活用して、地震による被害や火山の噴火の様子を提示して、地表に見られる現象について関心を高めるようにする。
  • 小5、6年、中学校 音楽

  • 和楽器などの演奏の様子を動画コンテンツで視聴させ、実際の演奏への意欲付けを行う。 我が国の音楽や諸外国の音楽など、いろいろな種類の楽曲を鑑賞させ、楽曲について興味を持たせるようにする。
  • 中全学年 美術

  • 身近な地域や日本及び諸外国の美術の文化遺産などの映像を、ICTを活用して拡大提示して、美術文化に対する関心を高めるようにする。

(2)児童生徒一人一人に課題を明確につかませるためのICT活用

 学習指導を円滑に進めるためには児童生徒一人一人が課題を明確につかむことが欠かせない。そのためにICTが活用できる。教科書の問題文や図表を拡大提示することで、教師が言葉だけで伝える以上に、児童生徒一人一人がこれから学習する課題を把握することができる。また、自分の演技とお手本を比較できる映像等を見せることで、他者から言われるのではなく自分自身で課題に気づくことができる。

【具体的な活用事例】
  • 小中 算数・数学

  • プロジェクタや実物投影機等を活用して、教科書の問題文を拡大提示し、学習のねらいを確実につかませるようにする。
  • 小5年 算数 「立体図形」

  • 児童がノートに描いた見取り図や展開図をプロジェクタや実物投影機等で拡大提示し、いろいろな考え方を共有する。
  • 小5年 理科 「天気の変化 雲の量や動き」

  • 雲の量や動きを観察した際の画像と気象衛星の映像などを比べながら、実際の観察した結果と観察できない現象を関連づけながら考えさせるようにする。
  • 小中 体育 「器械運動」

  • 自分の動きを撮影したり、模範演技を確認したりして、演技や運動での課題を見つけさせるようにし、より良い動きができるように考えさせるようにする。
  • 小中 音楽 「楽器の演奏」

  • 児童生徒が演奏した様子をデジタルビデオカメラなどで撮影し、その様子を提示して、改善点や工夫点に気づかせるようにする。
  • 中2年 数学 「一次関数」

  • シミュレーションソフトを活用して、一次関数のグラフを提示して、表や式、グラフを関連づけて考えさせるようにする。
  • 中2年 外国語(英語)

  • 身近な場面における出来事や体験について、プロジェクタや実物投影機等を活用して映像や静止画、イラストを提示して、自分の考えや気持ちなどを英語で書かせるようにする。

(3)わかりやすく説明したり、児童生徒の思考や理解を深めたりするためのICT活用

 児童生徒のつまずきを防ぎわかる授業を実現するために、またよりよく思考や理解を深めるためには、映像等を組み合わせながら説明をすることが大切である。そのためにICTが活用できる。操作手順やグラフの読み取りなどを指導する際は、映像やグラフの拡大提示、シミュレーションソフト等を活用することで、よりわかりやすい説明が実現できる。また、複雑な事象等について思考や理解を深めるために、アニメーション映像をみたり、それについて意見をまとめた児童生徒のノートを拡大提示しながら話し合ったりすることなどを通して、より児童生徒の思考や理解を深めることができる。

【具体的な活用事例】
  • 小3~6学年 国語(書写)

  • プロジェクタや実物投影機等を活用して毛筆の模範を提示し、穂先の動きや点描のつながりを意識して描かせるようにする。
  • 小 全学年 算数

  • プロジェクタや実物投影機等を活用して、分度器やものさしなどの計器を拡大提示して、正しい使い方を指し示しながら説明する。
  • 小5年 社会 「我が国の工業生産」

  • 自動車工場での組み立てにおける工夫を、動画やアニメーションを活用して、工程別にとらえるようにする。
  • 小5年 理科 「体のつくりや働き」

  • 動画コンテンツなどを活用して、人や動物の体のつくりや働きなど、実際に見えにくい現象を提示して、呼吸、消化、排出及び循環の働きを理解させる。
  • 小中 家庭 

  • プロジェクタや実物投影機等を活用して、調理の基礎、包丁やミシンなどを実演して、手元の動きを拡大して提示し、調理や製作に必要な用具の安全な取り扱いや手順をわかりやすく理解させる。
  • 中2年 理科 「太陽系と惑星」

  • シミュレーションやアニメーションを活用して、実際に見えにくい恒星や惑星の様子を観察させ、恒星や惑星の特徴を理解させる。
  • 小5、6年 外国語活動

  • コミュニケーション場面等を再現したコンテンツやDVD等を用いることで、よりリアリティをもって学習することができる。

(4)学習内容をまとめる際に児童生徒の知識の定着を図るためのICT活用

 知識の定着のために、児童生徒が繰り返し学習をしたり、教師が児童生徒一人一人の定着の度合いを把握したりするために、ICTが活用できる。繰り返しの学習は、知識の定着には重要であるが単調になりがちである。ICTを用いたフラッシュ型教材等を活用することで、都道府県名の定着等においても、変化に富んだ繰り返し学習が実現できる。また、児童生徒が個々にドリル等に取り組むためのソフトウエアを活用すると、教師は一人一人の達成度や正答率等を把握することができ、より充実した学習指導が行えるようになる。

【具体的な活用事例】
  • 小全学年 国語

  • アニメーションソフト等を用いて、漢字の筆順や成り立ちなどを確実に理解できるようにする。
  • 小全学年 算数

  • 計算ドリルソフト等を用いて、計算を確実に身につけさせるようにする。
  • 小3、4年社会

  • フラッシュ型教材等を用いて、47都道府県の名称と位置を確実に理解できるようにする。
  • 小5年社会、中学校社会

  • 地図を大きく提示して、繰り返し読ませることで、世界の主な大陸と海洋、主な国の名称と位置を確実に理解できるようにする。
  • 小5、6年家庭 

  • 体に必要な栄養素の種類と働きについてまとめた図表を拡大提示し、確認することで確実に理解できるようにする。
  • 中全学年 外国語(英語)

  • 映像と音声を繰り返し示して発音等をさせることで、英単語の意味や読み方を確実に理解できるようにする。

2.学習指導の準備と評価におけるICT活用

(1)教育効果をあげるためのICT活用の計画

 授業の計画段階において、教育効果をあげるには、どの場面でどのようにしてICTを活用するかの計画を検討することが重要である。その際には、指導のねらいを意識し、そのために必要なICT機器、コンテンツ、教室環境の準備をする。また、授業が終わった後には、授業でICTを活用することで、どのような効果があったかを振り返り、次の授業の改善に活かすことも有益である。このようなことを繰り返すことで、授業におけるICT活用のイメージを把握することができる。

【具体例】
  • 指導のねらいに沿って、単元や題材のどの場面でコンピュータやインターネットなどを活用するかを検討する。
  • 授業でのICTを活用した提示の仕方を検討し、提示するタイミングや見せ方を工夫する。
  • 授業の中でICTを活用して、効果的であったかを振り返り、授業の改善に活かす。

(2)授業で使う教材や資料等を収集するためのICT活用

 授業で使う教材や、指導事例といった資料を収集するためにインターネットやCD-ROMなどが活用できる。また、授業で活用するための映像等を記録するために、デジタルカメラやビデオカメラ等を用いることもできる。インターネット等から入手できる気象情報といった情報は、最新であり実際に社会で使われているものも多い。このような授業に役立つ情報が職員室や教室にいながら入手できることはICT活用の大きなメリットである。そして、教材や資料等が蓄積されているインターネット上の場所やその入手の方法といったことも、教師間で日頃から情報交換することも有益である。ICTを用い、効率的な収集方法で指導のねらいに沿った資料を、的確に収集できる能力を身につけていくことが重要である。

【具体例】
  • 参考になる学習指導案や資料などを、インターネットを活用して収集する。
  • 授業で活用するコンテンツや学習ソフトを、インターネットやCD-ROM・DVDなどから収集する。
  • 授業で活用する画像や映像をデジタルカメラやビデオカメラで記録する。

(3)授業に必要なプリントや提示資料を作成するためのICT活用

 授業に必要なプリントや提示資料を作成するために、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどを活用することができる。作成した提示資料は、印刷して配布したり、プロジェクタ等で大きく映したりして提示できる。児童生徒の実態に応じて、教師の創意工夫にあふれた提示資料を作成することで、教育効果がより高まることが期待できる。また、ICTを用いて作成された提示資料は、再利用や共有がしやすく、それによって準備時間が短くてすむメリットがある。校内のサーバ等に保存し、教師間での共有することも有益である。著作権に配慮しつつ提示資料等を効率的に作成できる能力を身につけることが重要である。

【具体例】
  • 収集した資料を加工・編集して、提示用プレゼンテーションを作成する。
  • 収集した資料を用いて、ワープロソフトで配付用資料などを作成し、必要な部数を印刷する。
  • デジタルカメラで撮影した画像などを利用して、提示用の教材を作成する。

(4)評価を充実させるためのICT活用

 児童生徒の学習評価を充実させるために、成績の集積、学習状況把握のために表計算ソフト等が活用できる。また、学習活動の過程や成果などの記録や作品を計画的に集積したポートフォリオによる評価のために、コンピュータやデジタルカメラ等を用いて児童生徒の作品を記録したり集積したりすることができる。また、児童生徒が個別にドリル学習等を行うソフトウエアにおいて自動的に学習状況や成績などが自動的に集積されるものや、通知表などを作成するための専用のソフトウエアなどの活用も有益である。ICTを用いて、より効率的で充実した評価を実現することが重要である。

【具体例】
  • 児童生徒の作品や製作物をデジタルカメラなどで撮影して記録する。
  • 評価規準や評価の総括に必要な資料をインターネットなどを使って収集して、評価に役立てる。
  • 成績処理や評価の総括を行う際に、表計算ソフトや専用ソフトなどを活用する。

3.日常的にICTを活用した指導を行うための教室の準備

 日常的にICTを活用して指導を行うことが、指導の改善、学力向上ためには欠かせない。そのためには、ICTに合わせて教師の授業技術を変更するのではなく、それぞれの教師が長年にわたって培ってきた授業技術をさらに伸長させるためにICTが活用できるように、教室環境を整えることが重要となる。

(1)情報提示のためのICT活用と板書

 従来から多くの授業が、長く広い黒板の、その黒板全体を使って板書が行われ、それらを指し示したりしながら話をして進行すると考えれば、特にICT活用と板書との連携に配慮する必要がある。ICTを用いてスクリーン等に提示される情報は、黒板と比較すれば面積は小さく、板書と比較すれば短時間で切り替わってしまう傾向にある。一方で、従来通り、授業において板書をし、児童生徒にノートをとらせることは欠かせない。したがって、日常的にICTを活用する多くの教師は、スクリーン等に提示された情報を用いて説明をするものの、押さえるべきことは黒板に板書する、という組み合わせた活用を行っている。そこで、情報を提示するためのスクリーン等は、黒板上にあるか、或いは、近くにある方が両者の連携がしやすいといえる。ただし、それぞれの教師の指導方法に合わせることを考えれば、黒板の左右中央や、教室の左右中央のどこにスクリーン等を設置するかは、それぞれの教師が決められる方が望ましいともいえる。

(2)日常的なICT活用のための環境整備

 日常的にICTを活用するためには、準備時間を出来る限り短くすることが欠かせないが、そのためには2つの点に配慮する必要がある。一つは、ICT機器が普通教室や特別教室など全ての教室に常置されていることが望ましい。ICTが必要な授業場面でいつでも使えるように教室にICT機器が置いてあることが重要である。次に、準備時間が短いICT活用を行うことである。機器が設置や調整等が簡単で、すぐに使えるICT機器であること、そして、コンテンツなどの提示する情報の準備が短くて済むことが大切である。教科書がそのまま映る教科書準拠コンテンツの活用や、実物投影機を用いた児童生徒のノートの投影など、授業の流れに応じて、臨機応変に情報が提示できることで日常的な活用が促される。忙しい教師が、優れたコンテンツ等を必要に感じたときに、機器の設置やコンテンツの入手等の準備時間も少なく、すぐに提示できるように環境を整える必要がある。
 教室に機器を常置する場合には、清掃、班活動や給食の時間など、教室は多様な目的で使われており、その度に児童生徒や机の移動があることに留意する必要がある。機器同士をつなぐケーブル、スタンド等が教室にあると、掃除等の度に移動させる必要がある。また、ケーブル等につまずくといった危険にもつながる。これらに配慮した機器の設置が行われる必要がある。また、設置場所について調査結果によれば、日常的にICTを活用している教師と、そうでない教師で、それらの設置場所の回答が異なっていた。日常的に活用している教師のノウハウを活かした設置方法を検討する必要がある。

4.指導の効果を高める方法の研究や研修について

 学習指導要領解説総則編では「それぞれの情報手段の特性を理解し、指導の効果を高める方法について絶えず研究することが求められる」と記述されている。指導の効果を高めるためのICT活用の研究や研修を行う場合には、学習指導とICT活用を密接に関連づけながら行うことに留意する必要がある。例えば、コンピュータやインターネットを用いてデジタルコンテンツのダウンロードの仕方を研修しただけでは、授業でそのまま活用できるようにはならない。それらを、どのように授業で活用するかという視点が欠けているからである。そこで、具体的には、児童生徒がつまずきやすい学習場面や、指導に困難を感じる場面を取り上げ、ICTを用いて、どのように指導するとわかりやすくなるかといったことを明らかにしたり、ディスカッションしたりする授業研究や研修が考えられる。また、ICTを活用した指導場面を取り上げ、模擬的な授業をお互いに行う研修も考えられる。ICT活用は授業技術の向上や改善のためであり、ICT機器の操作の習熟のみならず、それを実際に授業で使うための研究・研修を同時に行うことが重要である。

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