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6.その他の諸課題について

(1)得られた調査データの取扱い

 全国的な学力調査により得られた調査データについては、非公表としたデータが情報公開請求によりすべて公開されることとなると、学校間の序列化や過度な競争が生じるおそれがあることや正確な情報が得られなくなる可能性があることなど、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられるため、「行政機関が保有する情報の公開に関する法律」第五条第六号イ又はハの規定を根拠として、同法における不開示情報として取り扱うことが適当であると考えられる。

 全国的な学力調査により得られた調査データについては、個人情報の適切かつ確実な保護はもとより、外部への漏えい、不適切な使用、改ざんなどにつながらないよう十分に配慮する必要がある。このような不正行為があった場合には、適切な法的措置を講じることが必要である。

 これらの調査データを研究機関や大学の研究者などに提供することについては、調査結果を活用して様々な視点から分析を深めることができるなど学術的な意義が高いと考えられる。ただし、適切なデータ管理などの視点を考慮しつつ、提供することが適当な調査データの内容などについて検討が必要である。

(2)国立学校、私立学校等の参加について

 全国的な学力調査は、原則として対象学年の全児童生徒を対象に実施するものである。したがって、国立学校及び公立学校については、国として一定以上の教育水準を確保することが求められることから、すべての国立学校及び公立学校が参加することを原則とする。

 私立学校についても、義務教育段階においては国として一定以上の教育水準を確保することが求められることから学力調査の対象とし、建学の精神に基づく個性豊かな教育活動が展開されていることに配慮しつつ積極的な参加を呼びかけることとする。ただし、全国的にも学校数が少ない(平成16年度においては、小学校187校、中学校709校)ことから国全体の状況を公表することとすることが適当である。

(3)配慮が必要な児童生徒に対する調査について

 盲・聾・養護学校及び小中学校の特殊学級に在籍している児童生徒については、国語、算数・数学に関して小中学校の当該教科の目標及び内容等に準じて指導を受けている児童生徒については学力調査の対象とし、下学年の内容や知的障害養護学校の教科の内容の指導を受けている児童生徒など、それ以外の児童生徒については学力調査の対象としないことを原則とする。

 小中学校の通常学級に在籍している認定就学者及び学習障害等の障害のある児童生徒については、通常の児童生徒と同じ教育課程で教育を受けているため、学力調査の対象とすることを原則とする。

(4)地域の特色ある教育活動への配慮

 昨年10月の中央教育審議会答申においては、義務教育の構造改革により、国の責任でナショナル・スタンダードを確保し、その上に、市区町村と学校の主体性と創意工夫により、ローカル・オプティマム(それぞれの地域において最適な状態)を実現する必要があると示されている。

 したがって、都道府県及び市区町村等は、全国的な学力調査で測定できる学力は特定の一部分であり、対象とする学年や実施教科も限定されていることも踏まえつつ、この全国共通の基盤の上に、自主性・自立性を持って特色ある教育活動を行うことが期待される。

 また、全国的な学力調査は、都道府県や市区町村等が独自に学力調査を実施することを妨げるものではなく、地域の特色ある教育活動の成果を適切に把握する必要がある場合には、独自の学力調査や体力調査など学校教育の様々な成果を把握するための調査を実施することが望ましいと考える。

 さらに、学校評価や児童生徒の学習状況の評価など学校教育にかかわる評価に当たっては、この調査結果を有用な情報の一つとして活用するとともに、多面的な評価のための一側面であることを十分認識した上で調査結果を活用するなど、適切な評価活動が推進されることが求められる。

(5)実施体制や将来の展望など

 実施体制については、国は質の高い問題等を作成するために実施に向けた所要の体制整備を行う。また、調査問題の印刷・発送・回収作業や調査結果の採点・集計作業など民間を活用できる業務に関しては、確実な業務遂行、迅速かつ客観的な採点の実施、学校等への負担軽減、個人情報の確実な保護などに十分配慮した上で、公平かつ透明な選定方法により民間機関へ委託することが適当である。

 国は、全国的な学力調査の意義・目的を教員、児童生徒、保護者等に対して明確に示すことが重要であり、そのための説明会の開催やパンフレットの配付などにより全国的な学力調査の普及啓発活動を展開することが必要である。

 国は、全国的な学力調査を実施することにより、地域における教育水準の達成状況をきめ細かく適切に把握することに加え、教育施策の成果と課題を全国規模で検証し、その改善につなげていくための施策の見直しや教育的な側面からの支援などに結び付けることが必要である。また、都道府県、市区町村、学校においても同様であり、それぞれの役割と責任に応じて、調査結果に基づいた教育条件の整備や教育指導の改善方策など具体的な実践に結び付けていくことが必要である。

 全国的な学力調査については、まずは国家的な規模で調査を実施することに意義がある。今後、この調査を継続的に実施していくにあたっては、その実施方法等について、都道府県や市区町村等各方面からの意見を十分に踏まえて絶えず見直しを行いながらよりよい調査となるよう努めていくべきであり、初年度における実施状況等を見つつ、将来的には対象学年や実施教科などを検討すべきである。なお、これらの検討にあたっては、全国的な学力調査の意義・目的を十分に踏まえて行うことが必要である。


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