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情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて


(3) 教育用ソフトウェアの開発及び整備について

i 教育用ソフトウェアの現状と質的改善

  1. 子供たちの興味・関心を引き出し,創造性や思考力を育成する良質の教育用ソフトウェアの開発を支援していく必要がある。 
  2. 平成12年度以降のコンピュータの整備計画に連動させて,教育用ソフトウェアの整備計画を新たに策定する必要がある。 

(教育用ソフトウェアの現状と問題点)
○平成10年3月の調査によると,小学校では平均約29種類,中学校では平均約57種類,高等学校では平均約31種類,特殊教育諸学校では平均約28種類保有している。また,学校の保有するソフトウェアの約8%は,教員や教育センター等の職員等が作成した自作ソフトウェアである。
  教育用ソフトウェアは,教科指導に用いる学習指導用,教材作成や成績処理に活用する学習計画用,時間割作成や保健管理,図書管理に活用する学校運営用に大別できる。学習指導用ソフトウェアは様々な形態があるが,ドリル型,解説型,問題解決型,シミュレーション型,表現・コミュニケーション用のツール型,情報検索用のデータベース型などがある。

○教育関係者からは,教育用ソフトウェアの内容について,単なるドリル形式やノート代わり程度のものが多いとの指摘があり,また,ソフトウェア業界の関係者からは,開発コストがかかる割には学校からの需要が小さすぎてビジネスとして成り立たないとの声も聞かれる。このほか,コンピュータの技術革新が早すぎ,コンピュータの更新によって従来のソフトウェアが動作しなくなったり,機器の互換性などの問題点もある。

(良質なソフトウェアの開発・整備の必要性)
○このため,個に応じた多様な学習活動に対応し子供たちの興味・関心を引き出し,創造性や思考力を育成するソフトウェアを確保する観点から,国においては,教育実践の豊富な教員,情報処理技術者,当該分野や教科教育,教育工学の専門家,心理学者などが加わった研究グループに委託するなどによる研究開発を一層進め,良質なソフトウェアの開発・整備に努力する必要がある。また,今後は,インターネットで提供するより高度な教育用ソフトウェアも技術的進歩に応じて可能になるのではないかと思われるので,こうした観点からの研究開発も支援する必要がある。
また,教員等の自作ソフトウェアについては,著作権の問題を処理しやすいことから,教員のソフトウェア開発を支援し,それをライブラリーセンターに登録して他の教員が活用しやすくしておくことも必要である。

○このほか,特殊教育に関しては,障害のある利用者が容易に利用できるソフトウェアや障害の種類・程度に応じたわかりやすい教材の開発,点字情報の整備等が期待される。

○また,民間においては,単体としてのソフトウェアではなく図書教材と連携したソフトウェアや,活用のための実践事例や指導用マニュアル,資料集,児童生徒用活動シート,ビデオ教材などを組み合わせた教材開発が期待される。

(教育用ソフトウェア購入のための財政措置)
○現在,教育用ソフトウェア購入に関する財政措置は,地方交付税によって措置されている。教育用コンピュータの整備計画と連動して新しいコンピュータ導入時に1台あたり一定額が6年間にわたって措置されることとなっている。
  教育用ソフトウェア購入のための予算措置については,今後,平成12年度以降のコンピュータの整備計画に連動させて,新たに策定する必要がある。教育用ソフトウェアに対する財政措置は,ハードウェアとしてのコンピュータと不可分のものとしてソフトウェアを整備するためのものであり,各都道府県・市町村に対しては,十分な予算を確保し,情報化に対応した教育の円滑な実施を期待したい。

ii 教育用ソフトウェアに関する情報提供体制

  1. インターネットを活用するなど学校に対する教育用ソフトウェアに関する情報提供の方法について一層工夫・改善を図る必要がある。 
  2. 良質の教育用ソフトウェアの開発・普及を図る観点から,第三者的な教育関係団体による評価法の在り方に関して検討する必要がある。 
  3. 学校におけるコンピュータ等の情報手段の積極的な活用を促進する観点から,教員の研修において,教育用ソフトウェアを活用した指導法に関する内容を充実する必要がある。 

(ソフトウェアに関する情報提供の在り方)
○ソフトウェアに関する情報提供については,国の補助事業により各都道府県等の教育センター等にソフトウェア・ライブラリーセンターが整備されてきている。各センターにおいては2千から3千種類のソフトウェアを備え,学校が新たに導入する際の参考情報を提供する役割を果たしている。ただし,県内に1か所では所在地から遠い学校などは利用しにくく,また,著作権保護の観点から貸し出しができない場合があるなどの課題も抱えている。

(インターネットによる情報提供)
○このような事情から実際に必要としている人のところまでソフトウェアに関する情報が届いていない場合が多い。今後は,情報提供手段としてはインターネットを活用することが考えられ,こうした取り組みを奨励するなど,国においては,情報提供の在り方について引き続き検討し,工夫,改善を加えていく必要がある。

(教育用ソフトウェアの評価方法)
○また,教員や教育委員会が良質のソフトウェアを選択し易くするために,評価システムを検討することが課題となっているが,今後の教育用ソフトウェアの評価の在り方としては,第三者的な教育関係団体において,良いものを推奨していく方向で具体化について検討を進めることが適当と考える。

(ソフトウェアを活用した指導法の普及)
○ソフトウェアを活用した授業実践の指導事例集,アイデア集などが作られているが,一般の教員にまでなかなか浸透せず,ソフトウェアの活用拡大につながっていかない。教員研修の中でソフトウェアを活用した内容を充実し指導法を普及する必要がある。このため,各研修実施主体において,教育用ソフトウェアを使った授業設計や実践,研究授業や討論などを研修の内容に盛り込んでいくことが必要である。


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