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情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて


3 具体的な改善の方向

前項までの考え方の整理を踏まえ,本協力者会議では,学校における教育用コンピュータ,情報通信ネットワーク,教育用ソフトウェア,指導体制・支援体制の整備充実に関する改善の方向を以下のようにまとめた。

(1)教育用コンピュータ等の整備について

  1. 各都道府県等のコンピュータ整備状況を把握し,平成11年度までの教育用コンピュータ整備計画の達成に努力する必要がある。 
  2. 平成12年度以降の教育用コンピュータ整備計画を新たな観点から策定することが必要である。特に,コンピュータ教室を中心とした従来のコンピュータ配備から,多様な学習目的に対応できるように普通教室,特別教室,学校図書館などへの配備を進めることが必要である。 
  3. 校内のネットワーク化も進め,どこからでもインターネットに接続できるようにすることが必要である。その際,大型映像システムなどの導入も含め,学校の情報システムを検討する必要がある。 
  4. 学校図書館については,コンピュータやインターネット利用環境を整え,司書教諭の資質を向上し,「学習情報センター」として機能強化を図っていく必要がある。 
  5. 進路指導室,保健室,職員室等へのコンピュータ配備を進め,学校の情報化を促進する必要がある。将来的には,教職員一人一人が授業や学校運営等のために活用できるよう,学校内のコンピュータ整備を推進することが望まれる。 
  6. 特殊教育においては,障害の種類や程度に応じた情報機器やソフトウェアの整備・充実が必要である。 

(教育用コンピュータの整備計画と整備状況)
○平成6年度からおおむね6年間を目途に地方交付税措置による教育用コンピュータ整備計画が進められており,学校規模にかかわりなく,小学校は1校当たり22台(児童2人に1台で指導),中学校,高等学校(普通科)は1校当たり42台(生徒1人に1台で指導),特殊教育諸学校は1校当たり8台(児童生徒1人に1台で指導)を整備目標としている。
  平成10年3月現在,ほぼすべての学校にコンピュータが整備され,小学校では1校あたり平均 10.4台,中学校では1校あたり平均 28.1台,高等学校では1校あたり平均 71.1台,特殊教育諸学校では1校あたり平均  11.4 台という状況である。また,地方交付税措置とは別途,国が実施する学校図書館のモデル事業や「心の教室」の整備事業の一環としてもコンピュータ配備が進められており,整備目標から見て全体としてはほぼ順調に整備が進んでいる。

○平成11年度末を目途とする計画終了時点においては,この目標を達成するように各都道府県・市町村の努力が求められるところであるが,個々の地方自治体の状況を見ると達成状況に差がでている。国においては,整備の状況や今後の計画を把握し,特に整備の遅れている地方自治体の一層の努力を促すべきである。

(平成12年度以降の整備計画)
○平成12年度以降においては,新たな整備方針によって進められる必要がある。その際,次のような観点で行うことが適当であると考える。

  • 学校規模や児童生徒数を勘案する 
  • 平成14年度から実施予定の新しい学習指導要領の趣旨が十分生かされるようにする
    (例えば,高等学校においては,情報科の必修化を踏まえた整備を行う。) 
  • コンピュータの基本操作の習得などの一斉指導には集中型の配置,各教科や総合的な学習においては普通教室などへの分散型の配置が適していることを踏まえ,学習の目的に応じてコンピュータ教室,普通教室,特別教室,多目的スペース,学校図書館などへの多様な配置を推進する 
  • 学校内においてもネットワーク化を進めるため,必要な場所に電源と校内LAN用の情報端末を設置することや,移動が容易なタイプの機種の導入も進めていく 
  • 特殊教育諸学校のように複数の部を設置する場合には,それぞれの部毎に必要なコンピュータを設置しネットワーク化を図る 
  • 病院内に設置された小・中学校の特殊学級など,社会との交流が困難になりやすい場合や,障害の特性に応じて教科指導等におけるコンピュータやネットワークの利用が特に効果的と認められる場合には,各教室毎にコンピュータの設置やネットワークの導入について配慮する 
  • ○また,前項で示したように,コンピュータの活用は学習のためだけでなく,指導計画の立案や,学校経営等のためにも必要であることを踏まえて,今後は,保健室,進路指導室,職員室・事務室等への配備を進める必要がある。将来的には,教職員一人一人が授業や学校運営等のために活用できるよう,学校内のコンピュータ整備を推進することが望まれる。

    (学校における情報システム)
    ○今後の学習活動をより能動的なものにしていくために,子供たちによる学習成果の発表などを積極的に取り入れていくことが望まれる。コンピュータの導入やネットワーク化を進めていくにあたっては,電子情報の編集にデジタルカメラやスキャナーなど,画像や動画,音声,音楽などの入出力装置やプレゼンテーション用のプロジェクターなどの周辺機器も併せて導入し,設備を充実していくことが望ましい。コンピュータ画面を一斉提示できる大型映像システムを導入した教室などの整備も望まれる。
    また,学校における情報化環境を検討するに際しては,コンピュータ機器を単に増やしていくのではなく,その活用目的に沿っていつでも簡単に使えるような設計が大切であり,全体を一つのシステムとして整備していくことが重要である。予算上等の制約により,一度にすべての整備が適うことがなくとも,徐々に整えていく段階でシステムアップが図られるような計画的整備が必要である。

    (学校図書館の整備・充実)
    ○我が国の学校図書館へのコンピュータの設置率は,平成10年3月現在で 14.4 %にとどまっている。今後,学校図書館については,コンピュータやインターネット利用環境を整え,司書教諭の適切な指導の下に子供たちの主体的な学習を支援し,読書センターとしての機能に加えて,「学習情報センター」として機能を強化していく必要がある。

    (特殊教育における情報機器等)
    ○特殊教育においては,障害の種類や程度に対応した情報機器やソフトウェアの整備・充実が必要である。このため,特殊教育センターやソフトウェア・ライブラリーセンターにおいて,情報機器等に関する情報提供,ハードウェアの貸し出し等の業務を充実するとともに,国立研究機関,大学,企業等が相互に協力した研究開発の推進が必要である。


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